2024年を振り返ってみれば、最も話題を攫ったビッグファイトは間違いなくオレクサンドル・ウシクvsタイソン・フューリーでした。
試合が決まる前からのこの試合は史上初めてとなるヘビー級4団体統一戦と喧伝され、おそらく当初はナチュラルな大型ヘビー級であるフューリーが優位、ウシクが勝利する(その可能性は十分にあったと言えるのだが)ことは大偉業である、という認識でした。
12月に再戦が組まれたこともあり、結局2024年中ずっと話題に中心にいたファイトであり、蓋を開けてみればウシクは2戦して2勝、歴史にその名を刻みました。
そして2025年のビッグファイトの一つはアルツール・ベテルビエフvsドミトリー・ビボル2であり、これは初戦を経てもどちらが勝利するのかを判断するのが非常に難しい試合であるがゆえ、再戦も非常に注目されるのでしょうし、場合によってはラバーマッチがある可能性も十分高い。
そして2025年の話題を攫うであろうもう一つのビッグマッチの交渉が一気に進み、契約締結も間も無く、とのこと。
ということで今回のブログは、2025年9月対戦と噂されるサウル「カネロ」アルバレスvsテレンス・クロフォードについて。

そもそもの発端とは
そもそもこの戦いがピックされた発端は、テレンス・クロフォードがウェルター級で4団体統一を成し遂げた直後のことでした。
2023年8月、クロフォードはポッドキャストの「ジョー・ローガン・エクスペリエンス」に出演し、スーパーミドル級でカネロと戦いたい、という意向を示しています。おそらくこれが最初でしょう。
クロフォードはこの前の月に当たる2023年7月、エロール・スペンスJr.を降して史上初めて2階級での4団体制覇に成功、歴史に名を刻むとともに、すでにこの当時から次に戦う相手がいないという状況でした。
ウェルター級(147lbs)だったクロフォードとスーパーミドル級(168lbs)だったカネロの間には21lbs(約9.5kg)というウェイト差があり、流石に何かの冗談かと思われていました。
この戦いに対して、カネロはおそらく本気にしなかったのではないかと思いますが、同月(8月)末に公開されたYoutubeのインタビューで、「可能性はある」と言っているようです。
このことに反応したショーン・ポーターは、クロフォードの能力を高く評価しているが故、3階級の差があろうともクロフォードが勝利する可能性はある、とコメント。ボクシングファンの間でも、「両者のウェイト差」と「スキルの差」においてどちらが勝るのか、が焦点となり大きな議論になっています。
2024年、「進展なし」だが。
その後この話題は度々ファンや識者の間で議論されてきていますが、主な論点としては下の二つです。
①スーパーミドル級で戦っているカネロに対して、クロフォードは小さすぎる。つまりは、パワーや耐久力についてはカネロの分がある。
②それでもなお、クロフォードの方がボクシングスキルは上回っているので、もしかするとクロフォードが判定でカネロに勝利する可能性がある。
これはつまり、やってみなければわからない、そんな状態であるとも言えないか。どっちの何が勝るのか、は議論では決着がつかないものです。
ということは、これは少なからず勝負論がある戦いとなるのではないでしょうか。
2024年の2月、マイク・タイソンはクロフォードがカネロと戦うには「危険すぎる」と発言。これは確かに、多くのファンと評論家が行き着く一つの答えです。
同月、カネロはクロフォードとの対戦について「得るものがない」と発言、対戦に消極的な姿勢を見せました。これはクロフォードと戦おうとするカネロへの批判があったためなのかもしれないし、5月と9月に戦う相手がおおよそ決まっており、2024年中にこのファイトが実現しないということを分かっての発言だったのかもしれません。
2024年8月にクロフォードはイズライル・マドリモフと戦い、スーパーウェルター級タイトルを奪取。しかしこの戦いは、それまでのクロフォードの圧倒的なパフォーマンスと比べると苦戦と言って良い内容であり、クロフォードがキャリアの中で最も苦労した戦いとなりました。
この試合で勝利したことにより、クロフォードはカネロとの階級差を「2階級」としてほんの少しカネロ戦への実現を近づけるとともに、パフォーマンス的に無謀だという声を増長させるような結果に。結局議論は平行線です。
9月にもクロフォードはカネロに対して自信がある旨の発言、カネロはしばらく沈黙も、12月、カネロは「ファイトマネー次第」と発言、これはもはや「トゥルキ・アラルシク次第」とも取れる発言でした。
2025年、明けて。
2025年1月、カネロvsクロフォードのニュースは年明け間も無くに流れました。この頃は5月開催との噂もありましたが、今現在、最新のニュースとして伝えられているのは「9月の対戦で合意」です。
場所はラスベガスであり、サウジアラビアではない。これは良いニュースで、リヤドシーズンをサウジ国外ではもうやらない、と言っていたアラルシクですが、例外は認めるようです。
カネロとクロフォードは、トゥルキ・アラルシクが主催したリング・アワードに出席。その際、カネロとアラルシク、クロフォードとアラルシクはそれぞれ別の日に個別で面談しており、そこで合意形成に至ったのかもしれません。ちなみに契約は5月の予定で、これはカネロがシンコ・デ・マヨ興行を無事にクリアしたら、ということなのでしょう。
しかしこのトゥルキ・アラルシクという御仁は直接ボクサーと話し合ってマッチメイクを決めるのでしょうか。。。確かに今までも含めていくつものツーショット写真はあるので、本当にそうなのかもしれません。
ともあれ、2025年9月というのはもちろんカネロにとってのベストな選択であるように思います。
まず一つは、クロフォードの相変わらずの不活動はその感覚を鈍らせるであろうこと。クロフォードはもう37歳であり、前戦から1年以上のブランクというのは彼にとって通常の出来事ではあれど、それが一気に2階級を上げてのトップボクサーとの対戦となれば本来テストマッチの一つや二つも欲しいところ。
ただ、もともとライト級からキャリアをスタートさせているクロフォードにとっては、スーパーミドル級というのはテストマッチとしても危険すぎるきらいもあります。クロフォードとしてはテストマッチ無しで臨む、というのが自らの商品価値を維持したままカネロ挑戦を成し遂げるためにできること、とも言えるのでしょう。
そしてもう一つは、カネロが5月に試合を挟めることと、その相手に対してファンや関係者がどうこう言う、ということを防ぐことができるからです。
カネロの対戦相手は常に注目されており、誰を選んでも文句を言われることは必定。ただし、9月にクロフォードとのビッグマッチ(これについてもきっと文句を言う人は非常に多いとは思うのですが)がある、となるとカネロも慎重になって然るべき。おそらくはPPVファイトとはなるのでしょうが、ここはIBF王者のウィリアム・スカルあたりが適当で、ここに勝利して4団体統一王者に復帰してクロフォードの挑戦を受ける、というのが最も綺麗な着地でしょう。
この試合に対して、カネロが勝って当たり前の試合なのか、いやいや相手はクロフォードだぞ、なのか、これはきっと意見が分かれるところなのでしょう。未知すぎて反対したくなり気持ちもわかりますし、カネロ何やってんだ、ベナビデスと戦えよ、となる気持ちもわかります。
ただ、オレクサンドル・ウシクがアンソニー・ジョシュアと、タイソン・フューリーと合計4度戦い、そして4度降しているという事実を無視してはいけません。
果たしてクロフォードにどれくらい勝つ気があるのかは正直謎なところ。
ともすればおそらくキャリア最大となるファイトマネーを「退職金」として受け取ろうという魂胆で、あわよくば勝って再戦に漕ぎ着け、この退職金を上乗せしよう、と思っているのかもしれません。
そういうものをひっくるめて、このレガシーファイト(とクロフォードは言っている)がどうなるか、というのはなかなかに楽しみなことではないでしょうか。
カネロにとっては勝って得るものは少なく、負けて失うものが超多い気がします。
クロフォードにとっては勝っても負けても得るもの(カネ)がありますが、負ければ「バカな挑戦」と言われるリスクがあります。
2人の殿堂入り確実なボクサーが、リスクを背負ってリングに上がる。これはこれで、ボクシングでやり切ったもの同士の着地点としてはありなのではないか、とも思います。
ともあれ9月、ほぼ間違いなく、2025年の最大注目ファイトになりそうです。
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