1月の有明決戦、井上尚弥vsキム・イェジョンが終了。
2024年がようやく終わった、と感じる人もいるのかもしれませんし、この戦いで2025年の世界戦戦がスタートしたと感じる人もいるかもしれません。
井上尚弥vsキム・イェジョンは予想の通りに実力差の大きい試合ではありましたが、何よりもキム・イェジョンの勇気には大きな拍手を送るべき(実際会場では非常に大きな拍手が送られていたことが本当に素晴らしいと思った)でしょう。
そして井上にしても、長くサム・グッドマン(オーソドックス)対策をしていたわけですから、この対戦相手がサウスポーに変更になった、ということはアップセットが起こりうる可能性を秘めていたものであり、(それはティム・チューvsセバスチャン・フンドラのように)そこを全くと言って良いほど苦にしなかったことは本当に物凄いこと。井上尚弥というボクサーは本当に万能だと感じます。
今回のブログは、この井上vsキムをメインに据えたLemino Boxingの感想戦。
Naoya 'Monster' Inoue beats Ye Joon Kim in fourth round - BBC Sport

モンスターvsパッキウェザー
当然と言えば当然の結果である、井上尚弥の4RTKO。
技巧派でオーセンティックなオーソドックスなボクサーファイターから、サウスポーへの変更という「これまでの対策が全く無に帰す」状態ながらも、当然の如く圧倒。
多少の被弾はあり、キム・イェジョンも鋭い左オーバーハンドを振り抜くなどして(対モンスターとしては)見せ場(らしきもの)を作ったというのは、ある種の好ファイトだったと思います。
ただ、自力の差は明らかではあり、やはり井上尚弥が井上尚弥らしさを発揮した試合であった、という他ありません。
さて、結局のところ気になるのは井上尚弥の今後のファイトです。
このキム・イェジョン戦をノーダメージでクリアしたことで、当初予定されていたスケジュールをほぼ予定通りこなせそうな井上尚弥。
元々4月と噂されていたラスベガス決戦は5月頃にずれ込む見込み、とのことですが、対戦相手の筆頭はアラン「ダビ」ピカソです。
そしてその後、9月にサウジアラビアでの決戦があり、12月。
なので井上尚弥の2025年は、4試合/年というのが想像できる状態になっています。
9月のサウジアラビアの筆頭候補は、ムロジョン・アフマダリエフ。一応WBAはこのMJとの対戦が早々に決まらない場合、井上尚弥の王座は剥奪という姿勢を見せています。
しかしこれはおそらくWBAがもう一度譲歩するのではないか、という見込みが強い。9月に実現するならば、剥奪の必要なし、としかねません。
そしてその次は、トゥルキ・アラルシクがご所望のニック・ボール戦の可能性がある、とのこと。しかもスーパーバンタム級王座を保持したままのフェザー級挑戦。これはアカンやろといつも批判している内容ですが、我が事(自国のボクサー)となればまあいいか、となります。(ブレブレ)
そして何よりも「戦うべき相手がいる」からスーパーバンタムに戻す、というのは間違いなく中谷潤人のことであり、これはもうおそらく来年の春頃、という青写真が見えているのでしょう。
いずれにしろ、当代きってのスターボクサーの次戦、注目しない方がおかしなものです。
今後も井上の次戦については追いかけて行きたいと思います。
↓同日、別々の会場で登場したMJとピカソ
待ってろ世界
坂井祥紀に久々の判定勝利を得た後のインタビューで、ウェルター級世界王者たちの名前を出し、「待ってろ世界」と吠えた佐々木尽。
このボクサーは非常に自己肯定感が強いのか、自分を卑下、謙遜するところがないところが非常に気持ちが良い。
アメリカの武者修行では、アルベルト・プエジョとスパーリングをして、勝てると感じたとのことですので、これは大変に心強い。
この佐々木尽vs坂井祥紀は「佐々木に世界に挑んで欲しい」が、「坂井に番狂せを起こしてほしい」という矛盾の気持ちが多くの人に芽生えてしまったマッチアップで、大変に素晴らしい戦いでした。
佐々木優位の中、坂井の素晴らしいファイトが光った試合であり、決して佐々木の出来が不出来だったわけではない。
坂井の打たれ強さには定評がありますが、ここ最近は効かされた場面もあったから、佐々木のパワーパンチに耐えられない、という意見も多かったと思います。ただ、蓋を開けてみれば坂井はそのブロッキングの技術を駆使して佐々木のパンチを耐え抜き、非常にテクニカルにコンパクトなアッパーを当て続けました。
この坂井祥紀が佐々木にとっての国内のラスボスだった、というのは事実だったのかもしれません。ここ最近のチャンピオンたちとの対戦の中で、最も苦戦した相手だったのは確かです。
さて、これで晴れて国内を卒業。
ここからは、チャンスが来れば早いような気もしますが、やはり海外の強豪との試合が見たいところです。佐々木尽が日本人初のウェルター級王者となるのを見届けましょう。
そして坂井祥紀、もしかしたら終わりが近いのかも、と思っていました。
しかし坂井祥紀はまだまだこれからのボクサーですね。今後の坂井のキャリアも楽しみにしましょう。
奈良井vs渡邊
これは2人のポテンシャルに比して、非常に残念なファイトだったと言わざるをえません。「噛み合わなかった」と言えばそれまでなのかもしれませんが、この二人のボクサーは元々「素晴らしいパフォーマンス」と「そうでない時」の差が激しい方のボクサーだと思っています。
お互いに一発で倒せるパンチを持つボクサーで、警戒するのはもちろんわかります。
それでもやはり少なくとももう少し貪欲に見せ場を作ってもらいたかったですね。
ちなみに、海外ではこの奈良井の勝利が「アップセット」と紹介されている記事もありました。個人的にはこの戦いは完全な五分五分のものであり、またその結末も予想しづらいものだったのだと思っています。
下町vs平野
こちらはある種予想通りのファイトとなった、ということはできるのですが、予想以上に下町にとって平野はやりづらかったし、予想以上に平野の下町研究が奏功していた、と言えるのではないかと思います。
平野は優れたボクサーであり、その体躯によりやりづらさを確立しているボクサーではありますが、下町としてはここは圧倒したかったでしょう。
早々にダウンを奪った下町は、最終ラウンドにはダウンを奪われて薄氷の勝利を飾っていますが、これは倒しに行った、見せ場を作りに行った結果であるから、個人的にはある程度評価はできます。
それにしたって、互いに自分のボクシングを貫いた結果、面白い試合ではなかった、これは事実としてあると思います。
もったいないファイト
この興行でベストファイトは、個人的には小林豪己vs高田勇仁でした。もちろんセミファイナルの佐々木vs坂井も素晴らしかったのですが、この戦いが個人的にはナンバーワンです。
佐々木vs坂井もノンストップ・アクション・ファイトでしたが、そのスピードをさらに早めたようなのがこのミニマム級のノンストップ・アクション・ファイトでした。
今回、ESPNで放送されたのは、セミファイナルとメインイベントのみ。
アメリカの観客にとって、バックボーンを知らない下町vs平野というのは全くもって楽しめない試合だったかもしれませんが、このオープニングファイトが放映されなかったのは非常に残念の極みです。
きっとこのファイトは、アメリカ大陸のファンたちにもウケる試合だと思います。ミニマム級というパワーとは無縁の階級ですが、このようにパワフルなボクサーが存在する事実を、軽量級を眼中に入れないファンに浸透させてほしい。見ようによっては、重量級よりも軽量級の方が美しく、面白いのです。
最近はヘビー級でも非常にテクニカルなボクサーが出てきています。ウシクはもちろんのこと、フューリーやそのほか、「ボクシング」をするヘビー級は多い。
それと同様に、井上尚弥や中谷純人をはじめとして、軽量級のパワーファイターたちも出てきています。
軽量級のボクサーたちは重量級のボクサーのボクシングを取り入れ、いかに強いパンチを打ち込むのか、を考え、そして重量級のボクサーたちは軽量級のボクサーたちを見て技術を学ぶ。
このような流れが時代の変遷とともにできつつあるのかもしれません。
と、この軽量級の試合を見ていてそう思うわけです。
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