アメリカはテキサス州、サン・アントニオ。
中規模興行を主としてプロモートして、昨年あたりから世界王者を排出するなどして大躍進を遂げたProBoxTVの興行です。こちらはアプリ、Youtubeで無料配信を行っており、全世界どこでも無料で見れるという大きな強みを持っていますから、もっともっと広まってほしいですね。
このProBoxTVはコンテンダーシリーズと銘打って世界ランカー同士の中規模興行を手掛けており、そこに出場するボクサーたちはキラッキラのプロスペクト、というよりも実力はあるが日の目を見ていないプロスペクトや、一度挫折を経験したコンテンダーたちが復活を期して立ち上がる場所のような様相を呈しています。
そして今回のProBoxTVの興行は、「井上尚弥と戦いたい」と口にしているスーパーバンタム級の上位コンテンダー、ラモン・カルデナスと井上尚弥のスパーリングパートナーとして来日経験のあるブライアン・アコスタが戦うランカー対決がメインイベントで、元世界王者のシャフカッツ・ラヒモフの復帰戦がco-mainです。
ということで今回のブログは、このProBoxTVの観戦記。

2/8(日本時間2/9)アメリカ・テキサス州
シャフカッツ・ラヒモフ(タジキスタン)17勝(14KO)1敗1分
vs
ジャスティン・パウルド(アメリカ)17勝(8KO)2敗
BoxRecを見ると2023年4月のジョー・コルディナ戦以来の再起戦となっているシャフカッツ・ラヒモフ。しかし2024年2月にエドゥアルド・ヌニェス(メキシコ)と戦い、初のKO負けを喫しています。これはIBA(国際ボクシング連盟、アマチュアの団体)がぶちあげたプロ試合の試合なので、通常のプロボクシングの試合とはカウントされないようですね。
面倒臭いし追いきれないので、戦績等はBoxRecを参照しています。
さて、ゴリゴリのファイターであるシャフカッツ・ラヒモフ。大復活を望みます。対するはジャスティン・パウルド、前戦でミゲル・マドゥエノ(メキシコ、2/15にプログレイスの代役としてオスカー・ドゥアルテと対戦予定)に敗北してからの復帰戦です。
初回、しばらく見ないうちに髪の毛が伸びた「shere khan」(ジャングルで一番恐れられているトラだそうです)ラヒモフ、ガードを固めて体を降って前進。ライト級だからなのか、スーパーフェザー級時代のフィジカルは感じず、どこか足元もふらついてバランスが良くない用に見えます。
サウスポー、ラヒモフが低く入ったところにパウルドのひっかけるような左フック、これでバランスを崩したラヒモフはグローブをマットにタッチ、これがダウン判定。タイミング的には仕方ないかもしれませんが、足が引っかかった感じで、ちょっと不運なダウンですね。
2R、ジャブで牽制し、ラヒモフが入ってくるところに左フック、もしくは右のストレートやアッパーを狙うパウルド。ラヒモフはインサイドで勝負したいところですが、なかなか力寄れない時間が続き、良い距離でパウルドの真っすぐの右を浴びています。これは結構やばい展開です。
3R、これしかできない、というラヒモフ(おそらく決してそんなことはないのでしょうが)はプレスを掛けて攻め入ります。しかし前半はパウルドの右ボディを浴びて下がり、ラッシュを受ける場面も。
距離が開けばパウルドのワンツーがラヒモフを襲い、なかなかラヒモフの見せ場は訪れてきません。
4R、勢いよく襲いかかるラヒモフ。接近戦で左をヒットして会場をやや沸かせます。ここからというところでしかし、パウルドも右のスリークォーター気味のブローをカウンターでヒット、その後もアッパーからフックでラヒモフを下がらせます。
接近戦でもラヒモフは圧倒することはできておらず、弾くようなストレートを持っているパウルドは幾度ともなくラヒモフの顔を跳ね上げています。
5R、パウルドも近い距離で自信を持ったか、ラヒモフに対して下がらずその場で対応。ポジションを変え、頭の位置を替え、ジャブのような右ストレートを使い、上手く戦っています。
対してラヒモフは頭を振ってはいるものの、打ち終わりに頭が止まってしまい、その次点でパンチをもらっているからあまり意味を成しません。
回転力こそあれどパウルドのガードを破れないラヒモフ、かといって彼はピンポイントパンチャーではないですから、この階級ではパワーレスなファイターに成り下がってしまっているかもしれません。
6R、パウルドもフィニッシュを意識しているのかもしれません、手数をさらに増やしてきます。ここはラヒモフの距離、ではあるものの、当て勘の良いパウルドのパンチを幾度も浴びています。
パウルドは左のジャブ、右のジャブを使い分けてからのコンビネーション、このコンビネーションに対応できないラヒモフ。後半にもパウルドはワンツーをきれいにヒット、ラヒモフはかなりダメージをためてきているように思います。
7R、もやはりフィニッシュを狙ってアクティブに攻めるパウルド、もうラヒモフはほとんど下がりっぱなしの対応です。
ラヒモフのパンチも当たってはいるものの、タイミングが良いのは明らかにパウルドで、ラヒモフの浅いヒットでパウルドはびくともしません。
8R、若干距離をとった、というか元に戻したパウルド、この距離では完璧二話ウルドのワンツーが入ります。そして同時に、ラヒモフは何もできません。
この距離でプレスをかけるパウルド、不用意に頭を動かしたラヒモフに対して右をヒットしてラヒモフを下がらせ、最高のポジション、最高の距離感でワンツーをヒット!このワンツーは試合を通してラヒモフにヒットしていましたが、このストレートでラヒモフはガクンと崩れ落ちるようにダウン!!
レフェリーがかけよったところでコーナーからもタオルが投入、試合終了!!
ジャスティン・パウルド、8RTKO勝利でサバイブ!!
両者ともに敗北からの復帰戦、サバイバルマッチでした。しかし蓋を開けてみればラヒモフは全くもって何もできず、試合後に発表されたProBoxTVのパンチスタッツでは、ラヒモフ72/390、パウルド255/574と圧倒的な差がついていました。
シャフカッツ・ラヒモフ、これは残念。一つの負けでボクシングが崩れてしまうことはままあることですが、果たしてこれがそうなのか、それとも階級の壁なのか。
ラモン・カルデナス(アメリカ)26勝(14KO)1敗
vs
ブライアン・アコスタ(メキシコ)20勝(8KO)無敗
さて、スーパーバンタム級のコンテンダー・ファイト。テキサスはサンアントニオ、つまりは地元出身のラモン・カルデナスがAサイドですが、アコスタにもなかなかの声援が注がれます。
向かい合ったときの身長はアコスタがかなり高いように見えます。BoxRecを見ると5cm差、映像では画角のせいでしょうか、もっとあるように見えますね。
初回、まずは左を突きあう展開、互いに警戒心があります。アコスタのジャブの打ち終わり、カルデナスの右カウンターがヒット。これは良いタイミングです。
ともにまだ様子見段階ですが、カルデナスはアコスタの長いジャブを距離で外し、攻めてきたところに良いタイミングの左フック。もうタイミングを掴んできているのかもしれません。
2R、アコスタが鋭いジャブワンツー。これに若干面食らった風のカルデナスでしたが、その後は余裕を持って距離を取ります。
アコスタはあまり良い攻撃はできていませんが、ブロッキングはなかなか良く、クリーンヒットはさほどもらっていないよう。そしてブロッキングしているアコスタを崩せるほどのパワーはカルデナスにないことから、カルデナスがアコスタをノックアウトするにはカウンターショットが必要そうです。
インターバル中のカルデナスは笑顔、かなり余裕が見えますね。気持ちよく戦えてはいるのでしょうが、大きなダメージはまだ与えられていません。
3R、アコスタが大きな左右のフックで攻めますが、カルデナスはショートのフック。ボクサーとしての完成度は大きくカルデナスが上回ります。
このラウンド、攻勢に出たカルデナスは飛び込みの左フックをヒットし、プレスをかけての攻撃を試みています。コンビネーションで隙をつくってクリーンヒットを生み出し、自分からボクシングを作っています。さすが上位ランカー、そのボクシングの幅は広い。
4R、このラウンドはカルデナスがガードを固めて距離を詰めるというスタート。この接近戦でもカルデナスのショートカウンターがヒット、しかしおそらくこの体を寄せ合った距離はアコスタも得意なのでしょう、カウンターをもらいながらも手が出てくるところは怖い。そして、この展開はもしかしたらアコスタにとって好む展開かもしれません。
アコスタは水を得た魚のように力強いパンチを振り、手数も非常によく出ています。アコスタの良いところは、被弾してもそのスイングを辞めるつもりがないところで、こういうイカれたボクサーは打ち合い野中でこそ真価を発揮します。
身長が高く、線が細く見えたアコスタですが、そこはさすがメキシカン。カルデナスはこの距離での打ち合いはやめておいた方が良いのではないでしょうか。
5R、前ラウンドを経て、アコスタとしては近い距離での乱打戦に巻き込むべき、とわかったはず。序盤こそカルデナスの攻撃に対してバックステップを使いますが、ここは受け止めるべきと思い直したのか、中盤以降は体ごとぶつけていく展開。
ただ、カルデナスの上下の打ち分けは良く、そしてカウンターもあるので、思うように距離を詰められないか。
6R、このラウンドも早々にカルデナスの「ビッグライトハンド」が炸裂。右オーバーハンドのカウンターです。カルデナスはフィニッシュを狙っているのか、プレスをかけてアコスタを下がらせ、軽いコンビネーションを打ってアコスタを煽ります。ここで出てこさせてカウンター、というのが筋書きなのでしょう。
後半にも打ち合いの中で左フックカウンターをヒットしたカルデナス、しかしアコスタはタフですね。全く動きが落ちません。
7R、もうポイント的には後がないアコスタ、ペースアップして攻め入ります。もう行くしかない、とハッパをかけられたのかもしれません。
しかしそうなるとカルデナスもカウンターを取りやすくなり、序盤早々に左フックの相打ち。これはカルデナスが合わせたように見えましたが、ダメージを負ったのはカルデナスの方だったようで、その後の攻防でアコスタの何ともない押すような左でカルデナスがダウン!!!
しかもダメージがありそうです!
逆転を狙って一気にいくアコスタ、残り時間は2分強!
足が動かないか、ブロッキングとボディムーブでしのぐカルデナス、ジリジリと下がりながらも右ボディアッパーをカウンター、ただこれはあまり力が入っていないでしょう。
それでも一定の効果のあるこのカウンターショットを見せているから、アコスタもふいには攻め込めず、カルデナスはその後も動かない足を無理やり動かしながら時に速いだけのワンツーを繰り出してなんとかしのぎます!
途中、アコスタの強い右をヒットされて更にダメージを溜めたようにみえるカルデナスですが、ここをなんとかサバイブ!!!
アコスタは千載一遇のチャンスを逃したかもしれず、カルデナスはこの大ピンチに素晴らしいサバイブ能力を見せました。
8R、ここはいきたいアコスタ、カルデナスは少々回復しているようで、先程のラウンドよりは足は動いています。しかし、ちょっと弱気にもなっているのか、アコスタを近づけないような軽打のコンビネーション、隙の少ないコンパクトなパンチ、ガードを固めてくっつく、等々とにかく強いパンチをもらいにくい戦い方を徹底しています。
その中でも決して全くディフェンシブになって逃げ回る、とはならないところは素晴らしいところですね。
ラウンド後半にはパワーパンチとは言えませんがコツコツとカウンターパンチをヒットしたカルデナス。ただその後、アコスタも強打をヒットして反撃しています。
9R、グイグイと攻めるアコスタ、カルデナスも随分回復はしたようで、ショートカウンターをヒット。しかしここまで来るとやはりアコスタのパンチもヒットしています。
このラウンドに来ての回転力は圧倒的にアコスタで、やはりもらいながらも、そして空振りしても気にせず左右を振り続けられるのは素晴らしいことです。
カルデナスもショートのカウンターをヒットしてその巧さを見せ、終盤にはアコスタをロープに押し込んで中間距離からのワンツーをヒット。
ラストラウンド、7Rにアコスタがダウンを奪って以来、わからなくなっています。判定ではカルデナス勝利がかなり高い確率ですが、もう一度ダウンがあればわかりません。
アコスタとしては捲るにはもう一度くらいダウンポイントがほしい。
このラウンドの序盤はカルデナスが近い距離でカウンターショットをヒットして優勢、中盤に入ろうかというところでアコスタが無遠慮に距離を詰めてチャージ。
それ以降は近い距離での打撃戦、互いに交互にパンチをヒットしながら、死力を尽くしてのファイト。相変わらずカウンターをヒットするカルデナス、もらいながらもパンチを振るうアコスタ、両者が持ち味を発揮して最後の最後まで打ち合い、ラウンドが終了!!What a Fight!!
試合終了後は両者ともに勝利をアピール。両者のトータルパンチスタッツは、カルデナス144/421、アコスタ139/554でほぼ互角であり、カルデナスはダウンポイント以降に巻き込まれてしまったことは悔やまれるし、アコスタは前半もっと何とかならなかったのか、という感じです。
果たして判定は、95-94✕2、97-92、でラモン・カルデナス。
ちょっと届かなかったブライアン・アコスタ。スロースターターが祟りましたが、最初からもっと泥臭く行けていれば結果は変わったかもしれません。
カルデナスはさすがのサバイバル能力もあり、世界上位ランカーにふさわしい試合だったと思います。とにかくアコスタのタフさにもつれ込んだ、と思える試合で、良いカウンターショットを序盤からヒットできるのは素晴らしいセンスだと思います。
素晴らしいファイトではありましたが、井上戦を熱望されるパフォーマンスだったか、というとそうではないラモン・カルデナス。
井上尚弥のスパーリングパートナーとして来日経験もあるブライアン・アコスタは初黒星となりましたが、世界ランカーとしての意地は見せられたと思います。そしてアコスタは今後フェザー級で戦いたい、とのことですね。
両者の今後に期待しましょう。
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