3/1、アメリカで行われたPBCファイト。
メインイベントでは大人気「タンク」デービスが登場。しかし対戦相手の質は高いとは言えないことから、試合自体の注目度は低いようです。ただ、これは井上尚弥にも言えることで、飛び抜けたボクサーたちはなかなかその選手に見合った対戦相手に恵まれることは少ない。異なることは、ライト級にはタンクの対戦相手に相応しいボクサーが多い、ということで、このことが「タンクは誰とも戦っていない」と言われる所以なのでしょうが。
とはいえ、常に圧倒的なパワー、素晴らしいタイミングのカウンターショットを披露してきたタンクは、現代のノックアウト・アーティスト。
今回もきっと素晴らしいノックアウトを見せてくれるはずで、そのことがこの興行のメインイベントの醍醐味です。
そして試合内容として最も興味深いのは、ホセ・バレンズエラvsゲイリー・アントワン・ラッセルで、個人的にはアントワンのポテンシャルが爆発してくれるような試合を期待しています。
もう1試合のプエジョvsマーティンも含め、このスーパーライト級世界タイトルマッチはほぼ50-50の戦いで、その試合内容とともに勝敗の行方も誰にもわからない、というオッズになっています。
ということで今回のブログは、アメリカではAmazon Prime Videoで放映されたPBCファイトの観戦記。
↓プレビュー記事

3/1(日本時間3/2)アメリカ・ニューヨーク
WBC世界スーパーライト級タイトルマッチ
アルベルト・プエジョ(ドミニカ共和国)23勝(10KO)無敗
vs
サンドール・マーティン(スペイン)42勝(15KO)3敗
初回、ジャブの距離からプエジョがコンビネーションで攻め入ります。速いですね。マーティンも右ジャブから攻め入る姿勢を見せますが、プエジョはバックステップで対応。
マーティンもスピードがありますが、中間距離での駆け引きからマーティンが行こうとすれば先にプエジョが動き、そうでなくともプエジョの長い距離にマーティンのパンチは届かず。終盤、距離を詰めたマーティンがコンビネーション。
2R、リング中央を陣取るのマーティンで、プエジョがサークリングする展開。マーティンはボディから狙っていく作戦か、良い入り方ができるようになってきており、その後のショートのボディも良い感じ。
ただやはりプエジョのストレートは非常に長く、ところどころでジャブをヒット。
3R、もっと塩っぽい試合になるかと思いましたが、なかなかどうして両者ともに攻撃に比重を置いた戦法です。プエジョが攻め入り、近い距離で左右のボディ。マーティンも応じることで後半には打撃戦にも発展しています。
まだ3ラウンド、互いに警戒心よりも相手に打ち勝つことを目的としているように見え、このままアクションの多いファイトになりそうです。
4R、それでもやはりもともと良いディフェンスをもっている二人だから、いかにアグレッシブにいったとしても軽々とクリーンヒットを当てられるわけではありません。駆け引きをしつつ、ややプレスをかけるのはマーティンで、プエジョは様々なアングルからのカウンターを狙います。
一発当たれば一気に攻め入ろうという気概があふれる両者、なかなかどっちつかずのラウンドが続きます。
5R、プエジョがガードを固めてプレス、マーティンのパンチをブロッキングで防いでリターン。もしかするとマーティンの攻撃に怖さがないからなのか、アントワン戦とは異なるボクシング。ただ、こういう相手はマーティンとしては得意な方でしょう。
6R、ちょっと振りが大きいプエジョ、マーティンは上体を柔らかく使い、当てさせません。プジョはいつからかプレッシャーファイターのような戦い方にしており、頭がかなり低い。もっと体格的なアドバンテージを活かした方が良いのでは、と思いますが、マーティンに対して難しいのでしょうか。
7R、プエジョがガードを固めて頭を下げて前進。マーティンも迎え撃ち、左右のボディ。プエジョはもっとジャブの距離で、ジャブを当てる工夫をしたほうが良いボクシングができると思いますが、マーティンに怖さがない分なのか、アグレッシブすぎるようなきらいがあります。
8R、少し長めの距離でプエジョの右、左がヒット。くっつく距離よりもここで戦ったほうが良い。その後はマーティンも強い左ストレートヒットして譲らず、そしてまた体が当たるぐらいの近い距離。
ジャブを打つプエリョ、これは工夫がないから当たらず、当たらないから近づきますが、近づいたところで先にてを出すのはマーティン。プエジョには中間距離で我慢して戦ってほしい。
9R、ここも体がぶつかる近い距離。マーティンのこの距離の回転力は素晴らしいですが、プエジョの右フックも良い。このラウンドはプエジョが右フックでマーティンの顔面を跳ねています。
10R、押すフィジカルと一発のパワーはプエジョ、回転力はマーテイン。どちらがジャッジの心象として良いのか、というのは非常に微妙なところでしょうか。
少しずつ、マーティンが避けきれなくなってきている風もあり、これはマーティンが疲れてきているのか、プエジョが余分に打っているのか、なかなか難しいところです。
11R、ちょっとマーティンに疲れが見えるか、プエジョが良い攻撃を見せています。ビッグショットが当たっているわけではないですが、マーティンは若干弱気になったのか、それともやはり疲労なのか、これまでのように効果的なリターンを出せていません。
ラストラウンド、近い距離でやるのは得策でないと判断したのか、マーティンは出入り+カウンターのボクシングに変更。
ポイント的には勝利を確信しているのか、やや余裕を見せたボクシング。このボクシングこそがサンドール・マーティン本来のボクシングに近い形かと思いますが、やはりこの戦い方で良いパフォーマンスを見せています。
そしてそのままゴング、プエジョの顔面を見る限りはやはりあまりダメージは感じません。
トータルのパンチスタッツはプエジョ150/526、マーテイン162/441とほぼ互角、ただパワーパンチには83/247、131/321とマーティンが大きく上回っています。
判定は、115-113マーティン、115-113プエジョ、そして116-112でプエジョ!
薄氷の勝利となったアルベルト・プエジョ。どちらが勝利でもおかしくはなかった、というかこれはジャッジの心象による、というところだったと思います。ただやはりマーティンのヒットにあまり力感を感じなかったために、個人的にはプエジョの勝利が妥当かと思いますね。まあ、いずれにしろ戦法としてはもっと良い戦い方があったような気もしますが。
WBA世界スーパーライト級タイトルマッチ
ホセ・バレンズエラ(アメリカ)14勝(9KO)2敗
vs
ゲイリー・アントワン・ラッセル(アメリカ)17勝(17KO)1敗
さて、本日のスーパーライト級戦の本命はこちらです。
イサック・クルスからタイトルを奪ったホセ「ラヨ」バレンズエラの初防衛戦、相手はアントワン・ラッセルです。今回もセコンドにはゲイリー・ラッセルJr.、世界戴冠を期待します。
初回、こちらもサウスポー同士ですね。細かくジャブで攻め入るアントワン。バレンズエラは少し下がりながらの対応になりますが、ボックスを試みているようです。
アントワンが入ってきたところに連打を狙うバレンズエラ、アントワンもこれには警戒しつつものステップイン。
2R、引き続きプレスをかけるのはアントワン、バレンズエラはカウンターで待ちます。バレンズエラはアントワンのジャブにあわせての左クロスカウンター、的確なジャブ、アントワンが入ってきたところに左手のアッパー。よく見えています。
アントワンはまずもってステップインをすることに苦労しており、効果的な攻撃をヒットできていないように見えます。もうちょっと行ききりたい。
3R、序盤にバレンズエラをコーナーに詰めるアントワン。非常によく手がでています。
中盤、アントワンは接近戦でさらに手数を増やしますが、この距離でバレンズエラも良く手を出して押し返します。ヒット数はどうやらアントワンのようですから、もちろんポイントはアントワンに流れているのでしょうが、ここまでのラウンドちょっとバタバタしているように見えます。
4R、それでもバレンズエラのスピードに少しずつ慣れてきたのか、アントワンはどっしり目に構えられはじめています。
バレンズエラはまだ余裕があるように見えますが、アントワンもかなり良い感じになってきて、中間距離の打ち合いでバレンズエラのパンチを被弾しても打ち返すことができています。
5R、PBCの非公式採点ではここまでフルラウンドでアントワン。とにかく手数で攻め立てているのが素晴らしいところ。
アントワンはワンツーで入る事が多いですが、これはバレンズエラがサイドに回って当てられることは稀です。それでも上体の動きがでてきたし、ブロッキング後のリターンも機能してきたアントワン、バレンズエラもロープに詰まる場面が増えてきており、ちゃんとプレッシャーがかかってきている感じになっていますね。
6R、バレンズエラがアントワンのプレッシャーを感じている、それだけでアントワンは一気に攻めやすくなったイメージで、フェイントも空振りですらも効果を発揮しつつあります。
相変わらずバレンズエラの良いディフェンスを崩せないアントワンですが、引き続き手数は素晴らしい。バレンズエラも良いカウンターを放ち、自ら攻めることもするので、このラウンドは難しい採点になりそうですね。
7R、ここまでのPBCの途中採点は変わらずアントワンのフルマーク。1R-4Rがそうなら、展開的には変わらないのでそうでしょうね。ただ、実際のところはわかりません。
バレンズエラは接近するまでは非常に慎重で、近づいてから力強いパンチを放っています。かなりハイペースに見えるアントワン、やはり手数というのは重要で、バレンズエラがどんなにがんばってリターン、カウンターを出しても押しているのはアントワンに見えます。
8R、ここまでのトータルパンチスタッツは倍近くアントワンが上。数字どおりであればバレンズエラはこのままではいけません。ポイントを取りに、どころか、もう倒しにいかなくてはいけないのではないでしょうか。
バレンズエラはアントワンの左に左をあわせるカウンターを狙っているように見えますが、ちょっとラッセルに押されるのが顕著に。このラウンド終盤には幾度か顔を跳ね上げられる場面が出てきており、ダメージも溜まってきているのかもしれません。
9R、ラッセルは試合序盤のバタつき感、挙動不審にも見える小刻みな動きは全くなくなり、どっしりと自信をもってプレス、そして力強いステップイン。バレンズエラのリターンがあっても構わずパンチを振るうその姿は、もしかしてどこかで終わらせてくれるのか、という期待が芽生えてくるものです。
完全に力みも消え、ナチュラルにパワーパンチを出していくアントワン、こうなると上下のコンビネーションも非常にスムーズ。ボディジャブから顔面への左ストレートをヒットしてバレンズエラを下がらせ、ロープ際に追い込んで力強い左!
一気にいくアントワン、バレンズエラは起死回生の左ボラードを狙うもアントワンのブロックの上、ちょっとダメージでの限界が近いかもしれません。
10R、ここまで来るともうアントワンの勝利が固く、あとは倒せるかどうか。バレンズエラは開き直って逆転KOできるかどうか、となってきました。
いつの間にかアントワンのコンビネーションは序盤よりも速くなっているように思われ、非常にスムーズです。
11R、試合序盤、全然届かなかったアントワンのワンツー、バナナのような左ストレートもバレンズエラを捉え、中盤にはロープ際で左ストレートをヒット。バレンズエラも左カウンターを狙っていましたが、ダメージを負ったのはバレンズエラです。
チャージをかけるアントワン、左ストレートでバレンズエラの顔を弾きますがバレンズエラもカウンターを駆使してこのピンチをエスケープ。
ラストラウンド、今度はバレンズエラがプレス。劣勢を意識してのことでしょうが、もうなかなか難しいかもしれません。バレンズエラは強いヒットを生みますが、アントワンも下がらず、リング中央での打撃戦!
途中どちらかのマウスピースが飛んだように見えましたが、レフェリーは無視!気づいてないのでしょうか。これは危ないですが、いずれにしろ二人はその後も打撃戦を続け、やはりこの打ち合いでもアントワンが打ち勝っています。
最終ラウンドのゴング後、勝利を確信したアントワンは両手をあげてアピール。バレンズエラは失意の表情、かなりのダメージを感じる顔つきです。
判定は、119-109✕2、120-108、ゲイリー・アントワン・ラッセル!
ポイント的には圧勝でしたが、特に序盤は若干戦いづらそうにしていたアントワン。ただそれも3Rくらいまでで、その後はもう自らのボクシングを完遂するような雰囲気で、相手どうこうではなく絶えず攻撃を続けていきました。
これは嬉しい勝利ですね。さて、この王者に挑むのは。。。いつになるかわかりませんが、指名挑戦者は平岡アンディ。厳しい戦いになりそうですが、前に出てくる相手だからこそ、平岡の良さも活きるかもしれません。
WBA世界ライト級タイトルマッチ
ジャーボンタ・デービス(アメリカ)30勝(28KO)無敗
vs
レイモント・ローチ(アメリカ)25勝(10KO)1敗1分
さて、メインイベント。みんなだいすき、ジャーボンタ・デービス!ここまで判定続きのこの興行をKOで締めるための試合ですから、やっぱりここはスカ勝ちしてほしいところです。
初回、まずはいつも通りじっくり見ていくスタイルのタンク。ローチ当然アグレッシブではなくて、中間距離での駆け引きからまずはジャブで様子見。
特に何事も起こらない初回が終了、というのはよくあることですね。
2R、プレスをかけ気味なのはローチ。こうして相手を出させてカウンターを決める、がタンクのスタイルです。ローチも「前に出されている」のかもしれません。
しかしローチも非常に慎重ですから、あまりタンクに手を見せず、このことはもしかするとタンクのカウンターチャンスを自然と削いでいるかもしれません。
アクションの少ないこの展開だとタンクも自ら攻める時間を作りますが、ローチはバックステップで対応。タンクも深追いせず、2R目も静かです。
3R、左右に動いて揺さぶりをかけるタンク。それには動じないローチ、かなり落ち着いています。
このラウンドもアクションは少なめですが、お互いに警戒しながらもようやく攻め始めたイメージです。フルラウンドこれやったら一体どっちが勝つんでしょうか。
4R、プレスをかけていくのはローチ。パンチスタッツが出ますが、アントワンvsバレンズエラと違ってひどいものです。
このラウンドはやや動きがあり、ローチがプレスを強めているため、タンクのカウンターが機能しているように見えます。ただ、ローチの攻撃が浅い分、タンクのカウンターも浅い。
後半、近い距離でローチが攻め、何か文句を言いたげにレフェリーの方にタンクが発言。これに対してローチがタンクにパンチをヒット。ああ、やはりタンクは集中力を維持できないようです。
5R、さて、そろそろ倒すための仕掛けをしていってほしいタンク。ガードを高く掲げ、打たせてリターンをしようと思っているような素振りですが、ローチはあまり乗ってきません。
中盤に若干パンチを出す場面もありましたが、さほどは続かず。ちょっとこの横着ぶりは心配になるものです。
6R、ローチが攻めますが、タンクは明らかに集中力が切れている感じで、レフェリーに向かって呼びかけ。タンクはさすがにやる気を出したのか、倒さないといけないという自分の役割を思い出したのか、低く構えて力強いパンチを出していきます。
攻めては絶妙な距離感をキープするタンクですが、ローチはプレスをかけつつもディフェンスに徹するという戦法でタンクの攻撃をブロッキング、その後打ち返すでもないのですが、とにかくもらわないことを徹底しているようです。そのため、必然的にカウンターを警戒してローチの手数も減ってしまいます。なんという(つまらない)試合なんでしょうか。
7R、もう半分が終わりましたが、何事も起こっていません。しかしここからローチが攻撃的になり、右ストレートを中心にタンクを攻め立てていきます。これは単発で終わらないのが良いところで、突然増えたこの手数にまだタンクもカウンターを取れずにいます。
いよいよヒートアップしだしたか、タンクも呼応するように攻め、ローチも退きません!
中盤、ローチの右ストレートが真正面からタンクにヒット、倒れてもおかしくないタイミングでしたが、タンクはケロリとしています。
8R、ローチが強く振ってくるようになっているので、タンクのカウンターも強いカウンターになってきています。ローチもタンクのパンチの後にリターンを決めるなどして頑張っています。特に右は良く当たっているイメージですね。
9R、ローチが軽い右を当ててスタート。がっちりとガードをするタンク、とここでなぜかタンクがいきなり膝をつきます。
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で、タオルで顔を拭いて。。。再スタート!なんだかよくわかりません。
再開後は近い距離での打撃戦、近い距離でタンクは左フックカウンター、右フックカウンターをヒット、このラウンドにしてようやくローチにダメージを与えていきます。
ローチもサイドに回ったタンクに右を追撃して当てるなどしてがんばります。
タンクの謎の膝つき事件のスロー映像を入ると、目に何か入ったのでしょうか?それでも勝手に中断してはいけませんし、レフェリーの裁定はお咎め無しで良かったのか。
10R、ここは手を出さないタンク、カウンター狙いです。ローチはテンポよくコンビネーションを出してきていますね。このラウンドまで来ると判定も考慮に入れなければならず、そうなった場合は手を出しておいた方が良いような気がします。
後半に入ると打撃戦の展開、双方のパンチがヒットしています。タンクにいつものパワーが感じられないのは、ローチのディフェンスの良さなのか、それともタンク自身の問題なのか。
11R、このラウンドはガードを固めて前に出るタンク。交互に攻めあう展開の中で、タンクの打ち終わりにローチが右をヒット。ローチはここにきてよく手が出るようになっており、回転力はなかなかです。これはポイント的にはタンク、危なくなってくるんじゃないでしょうか。。。
ラストラウンド、口をパクパクさせているから、何かしらをしゃべっているのでしょう、タンク・デービス。ローチを煽って前にださせ、カウンターを狙いたいのでしょうが、ローチは非常に冷静です。ちゃんとジャブから入るローチ、しかもタンクのカウンターをしっかりと警戒、カウンターありきでそのパンチへのリターンを狙っています。
後半もノーガードで誘うタンク、ここに同じくノーガードで乗らないローチ。
なかなかにひどいパフォーマンスだったタンク、この戦いで稀有の出来を見せたと言えるローチ。
判定は、115-113タンク、114-114✕2、1-0のドロー。
まあ、ドローといえばドロー、タンクの勝ちといえば勝ちですし、負けといえば負けでした。
非常につまらない試合だったタンクvsローチ、その原因はタンクのモチベーションの低さではないでしょうか。
試合前から引退するだのボクシングはもういいだのとのたまっていたタンク、体のキレ自体は悪くはなかったと思いますが、完全にローチのことを舐めきっていたのでしょう。
これは残念なパフォーマンスでした、タンク・デービス。レイモント・ローチは結果的に評価をあげた戦いになりましたね。
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