週末、ミニマム級は動きませんでした。
リベンジを期して挑んだWBC世界ミニマム級タイトルマッチ、重岡優大は初戦よりも差をつけられてメルビン・ジェルサェムに判定負け。
そしてWBA・WBO世界ミニマム級統一王者、オスカー・コラーゾは圧倒的な強さを見せてエドウィン・カノ・エルナンデスを屠っています。
一時は日本人ボクサーがミニマム級を支配するのでは、と思っていましたがそうはならず、ミニマム級大国であるタイも没落、そしてフィリピンですらなく、なんとこの階級を蹂躙しているのはプエルト=リコにルーツを持つアメリカ人です。
非常に悔しい話ではありますが、この階級の主役はオスカー・コラーゾです。
今回はミニマム級の世界戦線を見ていきましょう。

リングマガジン&WBA&WBO王者
オスカー・コラーゾは28歳、「El Pupilo」というのは少年とか男の子、みたいな意味、これは彼が小さいからでしょう。
アメリカはニュージャージー州、ニューアークで生まれ、子供の頃から野球とボクシングが好きだったそうです。ニューヨーク近郊に住むプエルトリカンの大半が好きだというニューヨーク・ヤンキースの大ファンで、かつ、「オスカー」という名前はオスカー・デ・ラ・ホーヤにちなんでつけられたということですから、非常にスタンダードな育ち方をしたのでしょう。
運動神経の良かったコラーゾが、成功を求めてボクシングを選んだというのはごく自然なことだったと思います。
2020年にプロデビューしたコラーゾは、プロ5戦目でビック・サルダールを撃破。ダウン応酬となったタフの試合でしたが、この試合でコラーゾはその力を証明しています。
そして2023年、7戦目で現在のWBC王者、メルビン・ジェルサェムを7R終了TKOで降し、世界タイトルを初戴冠。以来WBO王座は5度の防衛を果たしており、その道程でノックアウト・CPフレッシュマートを倒して王座統一を果たしています。
今回はメキシコのリゾート地、カンクンでの試合でしたが、これまでプエルトリコ、パナマ、カリフォルニア、サウジアラビア、メキシコ等で戦ってきたコラーゾは、オスカー・デ・ラ・ホーヤからニューヨーク、マディソン・スクエア・ガーデンでの試合のオファーを受けています。
一応次戦は6月とされており、これはプエルトリコでのホームカミングマッチだとのこと。ニューヨークもホームカミングになるのではないかと思うのですが、ミニマム級の王者がMSGに登場することは稀で、コラーゾにとっても大いに名誉なことなのでしょう。
ミニマム級として非常にパワフルで、倒せるパンチャーであるコラーゾ。ちょうど1年と少し前くらいであれば、ここに重岡兄弟を加えた3人がミニマム級をエキサイティングにするメンバーだと海外でも紹介されていましたが、完全に明暗が別れてしまいました。
コラーゾが狙うはメルビン・ジェルサェム!
同日、時差があるのでコラーゾvsヘノの数時間後、メルビン・ジェルサェムvs重岡優大が行われました。
コラーゾはカノ戦での勝利後、この勝者と戦いたい、どちらでも良い、と発言しています。
これがプエルトリコで決まるのか、MSGで決まるのか、もしくはその先かはわかりませんが、ここは決まらない試合ではありません。すでに二人は2023年5月に戦い、コラーゾが勝利しています。
ジェルサェムは重岡優大を相手に2度にわたり勝利、評価を高めています。間接的にコラーゾの怪物級の強さが際立ってしまいますが、ジェルサェムもこの再戦に勝てば大きく道が拓ける一戦、充実していて勢いもありますし、これはコラーゾにとっても侮れませんね。
ペドロ・タドゥランvs重岡銀次朗
5月、アンジェロ・レオvs亀田和毅のアンダーカードで激突する両者はダイレクトリマッチです。
2024年7月、王者としてタドゥランを迎えた重岡は、戦前の圧倒的優位予想に反してまさかの9RTKO負け。あの日の重岡に全く力感を感じませんでしたが、ともかく言い訳はできないほどの完膚なき敗北でした。
完全に決着がついたもののダイレクトリマッチはどうなのか、というのはおそらく議論に上がることですが、ともあれこの試合は直近で日本人ボクサーがミニマム級の世界戦線に生き残れるかどうかの正念場です。
兄・優大がどこか覚悟に欠ける戦いをしたのに対し、この階級で長期防衛を目標に掲げていた銀仁朗はどうなのか。相性とか戦うタイミングとか色々あると思いますが、果たして銀次朗がこのペドロ・タドゥランに負けたということは未だに信じられないことです。
決まってしまったダイレクトリマッチならば、どんなに掟破りでも、いや、掟破りだからこそ、ここは勝ってもらわなければなりません。
このタイトルを取ることで、そして防衛を続けていくことで、オスカー・コラーゾ戦を掴み取ることができるかもしれませんし、その日、彼を上回れば議論の余地のない階級最強のボクサーになれるはずです。
日はまだ沈まず
この階級のNo.1はコラーゾで、No.2はジェルサェム、そしてNo.3はというと少なくともあと2ヶ月ほどはペドロ・タドゥランとなるのでしょう。
ミニマム級で隆盛を誇ったタイのボクサーたちはもはやほとんどいないという状態で、コラーゾに続くのはフィリピン勢、そしてやっぱり日本人ボクサーたちです。
重岡兄弟が陥落しても、WBOアジアパシフィック王者となった高田勇仁、そして日本王者の松本流星がいます。勝ちと負けが50-50だった高田は、現在8連勝中で戦績を16勝(6KO)8敗4分としており、この痛快なストーリーはきっと多くのファンを味方につけるのではないかと思います。
そしてその高田とは全く異なるキャリアを歩むエリート、松本流星は、わずか4戦目で高田の返上した日本タイトルを獲得。現在5勝(3KO)無敗、最短距離でWBAのトップコンテンダーの位置まで上り詰めてきました。
この二人に世界ランクこそ落ちますが、石井武志がOPBF王者、前戦で初防衛戦を5RKOで飾っています。
高田にしても、松本にしても、そして石井にしても、このミニマム級において倒せるボクサーであり、そのパンチは非常にパワフルです。彼らはミニマム級という最も軽い階級で、フルラウンドにわたり非常に多くのアクションを展開し、さらにパワーパンチを放つということをやってのけてくれるのだから、面白くないわけがないファイトを展開してきています。
彼らがアメリカのボクシングファンに名を売るのにも、オスカー・コラーゾとの対戦は非常に魅力的ではないかと思います。
結局、目指すはオスカー・コラーゾ
長く軽量級が注目されて来なかった理由は、ボクシングの中心地であったアメリカ大陸にファイターが少なかったこと、そして重量級や中量級にある迫力がなかったこと。
しかしそれを払拭したのがローマン・ゴンサレスや井上尚弥であり、その波は今や最軽量級にも波及してきているのだと感じます。
それは、テレビ放映で必然的にないがしろにされてきた軽量級が配信という形で世に知られたこと、それ以前にファイトマネーが安いという理由でいくつかの興行が人気を博したこと、様々な要因がからみあって現在があります。
そこに出てきたノックアウトセンセーション、オスカー・コラーゾ。彼は、ミニマム級に大きなマネーをもたらすのかもしれません。
スピードとパワーは両立する、それを示している現代のミニマム級ファイターたち。これからこの階級は「素晴らしい前菜」から「素晴らしいメインディッシュ」に変貌を遂げようとしているのかもしれません。その旗手はオスカー・コラーゾ、そして当然、この階級のボクサーたちはこのコラーゾの首を狙うべきなのです。
きっと休むことなくリングに登場してくれるであろうオスカー・コラーゾ、ミニマム級のモンスターと評された彼の戦い、それに関わる日本人ボクサーたちの戦いを、これからも楽しみにしましょう。
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