先週末、ジャロン・エニス(アメリカ)がエイマンタス・スタニオニス(リトアニア)に圧勝、WBAとIBFの統一ウェルター級王者になるとともに、リングマガジンベルトを手にしました。
そこで次の対戦相手候補として名前が挙がったのはWBO世界ウェルター級王者、ブライアン・ノーマンJr(アメリカ)です。
そのノーマンは、エニスvsスタニオニスの2週間前に防衛戦を行っているから、タイミング的には悪くありません。しかしその試合のあと、挑戦状を叩きつけた佐々木尽(八王子中屋)の挑戦を、しかも日本で受けるというニュース。
ウェルター級の世界王者が、日本人ボクサーの挑戦を受けるために日本に来るというのは実に35年ぶりであり、日本ボクシング史上3度目の出来事です。
ということでおそらく近く正式発表されそうな、ブライアン・ノーマンJr.vs佐々木尽について。

現在のウェルター級世界戦線
長らく日本人にとってほぼ無関係だった大人気階級、日本人ボクサーが世界挑戦を叶えるというだけでもすでに快挙です。
現在、このウェルター級で最高の評価を得ているのはジャロン・エニスで、これはゆるぎようのない事実でしょう。
キャリア初期からスペシャルなプロスペクトとして持ち上げられていたエニスは、ちょうど1年ほど前、リングマガジンが発表された2029年の(妄想)P4Pリストでは、P4Pキングに輝いています。
↓ちなみ2位はバム、3位はジュント・ナカタニ。
現在リングマガジンのウェルター級ランキングで、1位は空位(そんなことあるんか)、2位にスタニオニス。3位にブライアン・ノーマンJrときて4位にマリオ・バリオス(アメリカ)です。
スタニオニスはエニスに刃が立たなかったですが、ランキングは据え置き、それほどリングマガジンの選定委員たちはエニスを別格と見ているのかもしれませんね。
ときに、バリオスはもうちょっと下でも良さそうなものですが。
5位にはブライアン・ノーマンJr.に敗れたジョバンニ・サンティリャン(アメリカ)、そしてエニスvsスタニオニスのアンダーカードで強さを見せつけたシャフラム・ギヤソフ(ウズベキスタン)が続いています。
7位に佐々木尽、その後はアレクシス・ロチャ(アメリカ)、ラウル・クリエル(メキシコ)、そしてロハン・ポランコ(ドミニカ共和国)。日本人と関係のない階級とはいえ「誰これ?」みたいなのが入っていないのはやっぱりこの階級は激戦区で、注目すべきプロスペクトも多いのでしょう。
日本人ボクサーのウェルター級挑戦
日本人ボクサーのウェルター級挑戦の歴史は、以前のブログで書きました。もう5年も前で、その頃とは明らかに状況が変わっています。が、日本人がこの階級に挑戦してきた歴史は一つたりとも足されてはいません。
↓改めて、非常に読みづらい。(それは別に今もか。)
たぶんこの頃は緊急事態宣言が出て暇だったのでしょう、文章はアレですが我ながらよく調べています。
日本人ボクサーでウェルター級の世界タイトルに挑戦したのは、辻本章次、龍反町、尾崎富士雄、そして佐々木基樹のわずか4人。そして、そのうち日本開催は1976年のホセ・ピピノ・クエバスvs辻本章次、そして1989年12月10日のマーク・ブリーランドvs尾崎富士雄という2度のみです。
そして、6月か7月と噂されるこの試合が決まれば、日本ボクシング史上3度目のウェルター級世界王者の来日となります。
奇跡のタイミング
たとえば佐々木が5年早く生まれていたとして、今と同じような活躍をしていたとします。そうした場合でも、おそらく日本での世界挑戦は叶わなかったはずです。
2020年当時と大きく異なることは、ボクシングは賛否両論ありつつも地上波から離れ、大配信時代となったこと。
そしてさらに、配信コンテンツとしてのボクシングが大きな視聴者数を生み出し、各プラットフォームにとって良いコンテンツとなったことで信頼を得たことで、より大きなお金が動くことになりました。
Amazon Prime Video、U-NEXT、ABEMA、そしてLemino。どの配信会社もボクシングコンテンツを取り扱っており、これらの配信会社が出してくれる放映料は様々なファイトを可能にしてくれています。
井上尚弥が底上げしたこの波にのり、佐々木尽というスター候補は前人未到の記録に挑戦することができます。もちろん、海外挑戦でもこの怖いもの知らずの若者には期待感が高かったわけですし、海外でファンをびっくりさせてほしいという気持ちもないわけではありませんが、ここは魔境ウェルター級、ホームで挑戦できる利を活かさない手はありません。
井上尚弥という稀有なボクサーがいでて、ボクシングに注目が集まったこと。
そしてそれをきっかけとして配信コンテンツとしてのボクシングは各プラットフォームの信頼を得て、より大きなお金が動くことになったこと。
そこにウェルター級という階級で、日本人ではおよそ考えられないほどのスター性を持つボクサーが現れたこと。
様々な奇跡が絡み合って、この一戦の実現まであと一歩のところまで来ています。
100万ドルのオファー
ブライアン・ノーマンJrは、すでにジャロン・エニスと双璧をなすウェルター級王者です。しかしそれは、前戦でスタニオニスがエニスに対してほとんど何も出来ずに終わったことで、繰り上がったようなイメージでしょう。
ノーマンはまだまだ実績不足、タイトルを獲得したジョバンニ・サンティリャン戦でももちろん前戦のデレック・クエバス戦でもまだその真価を見せていません。さらには、彼も佐々木と同じく若く、2000年生まれの24歳です。彼はまだ完成形ではなく、向上の余地がある年齢です。
ここでエニスと王座統一戦を戦うよりも、敵地とはいえ、今ボクシングが盛り上がりを見せている日本で、コンテンダーとの防衛戦という方が良いでしょう。
ちなみに、このクエバス戦の前、エニスvsノーマンが話題に上がっていましたが、その時にノーマンが提示された報酬は170万ドルだったそうです。おそらく王座決定戦で王座を獲得したばかりのルーキー王者という状態ではなく、もっと防衛を重ねて評価を高めることで、より良い報酬を手に入れられるとの算段が働いたのでしょう。ブライアン・ノーマンJr.は、マリオ・バリオスと違い、対エニス戦をメガマッチにできるポテンシャルを持っているボクサーだと思います。
そう考えると、このノーマンJrにとってはその道程において、100万ドルというオファーは魅力的でしょう。100万ドル超、と伝えられているので、日本円にすると2億ぐらいにはなるのかもしれません。
いずれにしろ、ノーマンが日本で戦うことを嫌がっていない事も含め、ノーマンvs佐々木の実現可能性は非常に高いでしょう。
6月か7月!
具体的な日程こそでていませんが、海外のニュースサイトでもこの試合は6月か7月に実現可能性がある、と伝えられています。
そしてあわせて、エニスの次戦はシャフラム・ギヤソフの可能性がある、とも。
このあたりの試合をさほど変わらない時期に行い、最終決戦を盛り上げていくというのは良いプロモーション活動かもしれません。
そこに、風穴を空けてその座を奪い取ることができるのもまた、筋書きの無いドラマであるボクシング。
佐々木にとっては、この戦いこそが1つ目の天王山であると同時に、ここに勝利すればジャロン・エニスへの挑戦権を確保できるということ。しかもおそらく、性格的に佐々木はエニスを恐れないでしょうし、もったいぶったことはしないでしょうから、もしかするとこの試合も早々に実現するのかもしれません。
もちろん、少しはもったいぶってもらいたいわけですが。
実際のところ、エニスvsノーマンはマッチルームvsトップランクです。この部分においては、もう壁は非常に低くなっているものの、あるはある状態。逆に言えば佐々木が絡むことでこの壁は一気に取っ払われるのもまた現実です。
ブライアン・ノーマンJr.vs佐々木尽。
この戦いは、今後のウェルター級の動きを左右する一戦となるのかもしれません。正式発表を待ちましょう。
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