日本のボクシング界ではやはりマルティネスvs井岡の再戦がピックアップされる中、世界的にみればこのダブルタイトル戦が話題の種でしょうか。
個人的には注目のボクサー、レイモンド・ムラタラがいよいよタイトルショットに臨むという試合に注目しています。一方でスーパーフェザー級に上がったことでパフォーマンスが落ちている、と言っても過言ではないエマニュエル・ナバレッテ、そろそろ落日のときが訪れようとしているように思いますが、それは今回になるのかどうなのか。アップセットの可能性も秘めた一戦。
ということで今回のブログは、ナバレッテvsスアレスをメインに据えた、トップランク興行の観戦記です。

5/10(日本時間5/11)アメリカ・カリフォルニア
IBF世界ライト級暫定王座決定戦
レイモンド・ムラタラ(アメリカ)22勝(17KO)無敗
vs
ザウル・アブドゥラエフ(ロシア)20勝(12KO)1敗
IBF世界ライト級王者といえば、ワシル・ロマチェンコ。ロマチェンコの動向はまだ不明で、もう正直に言えばこのまま引退で良いような気もします。ボクシングには「余分な数戦」をするには危険なスポーツであり、年齢的にも反応的にもすでに適正階級を過ぎていると思われるロマチェンコはこのまま終幕で良いと感じます。
さて、チャンスが巡ってきたのはレイモンド・ムラタラ。トップランクにはキーショーン・デービスもおり、ライト級への挑戦は事欠きませんが決定戦への出場は彼にとって大きなチャンス。対してアブドゥラエフは良いボクサーですが、こちらも決定戦への出場は大きなチャンス、互いにここは獲りたいところ、過去最高のパフォーマンスを発揮すべき時です。
初回、積極的にジャブを突いていくのはムラタラ。アブドゥラエフはしっかりとガードを掲げ、まずはしっかりと様子見。まずこのムラタラのスピードに慣れなければなりません。
アブドゥラエフがボディジャブ、それに対してムラタラが右をリターン。アブドゥラエフもこのリターンには警戒しています。
2R、ムラタラがダブルジャブ、そして左のアッパーをヒット。アブドゥラエフもジャブから右のボディ、退きません。
中盤にはムラタラがワンツー、これがアブドゥラエフにヒット。その後もアブドゥラエフの攻撃に対してムラタラはコンビネーションをリターン、左フックをヒットしています。やはり序盤はムラタラ、アブドゥラエフはこのスピードに対応できるようになるのか。
3R、ムラタラがスイッチ。オーソドックスでちゃんとパンチも当たっているのでこのスイッチにはあまり意味がないような気がします。
少々の時間を経てオーソドックスに戻したムラタラ、徐々にコンビネーションが出てきました。ちゃんとアクションのあるファイトですが、会場からブーイングが流れる場面も。おお、なんかカリフォルニアの観客はとても短気。
後半にかけてはアブドゥラエフのリターンが良い。
4R、頭を振って攻め入る姿勢のアブドゥラエフ。ムラタラも柔らかく身体を使って躱して攻め入る構えです。
やや無理をしてワンツーを放つ風のアブドゥラエフに対して、ムラタラはマイペース、そのマイペースが速いですが良いコンビネーションを次々と出しています。
ジャブを打たせると打ち勝つムラタラ、アブドゥラエフは後半に勝負をかけようという心づもりだと思いますが、ここでダメージを与えられては後半に繋げられません。
5R、ジャブから左ボディ、自然にスイッチするムラタラ。上手にサイドにまわり、比較的余裕が出てきたように見えます。
中盤、アブドゥラエフはやや強引に攻めると良い攻撃を見せられますから、もっと行くべきなのでしょう。ただ、スピード差があり、アングルが良く、さらに回転力のあるムラタラに対し、そうそう強引にはいけないかもしれません。
6R、アブドゥラエフがプレスを強めて前に出てきます。そろそろ行かなければならない、というのは当然のことながらわかっているようです。
しかしムラタラは下がることなくアングルを効かせたパンチを打ち込み、特にアブドゥラエフのガードの間隙を突いてのアッパーは効果的です。
ムラタラがコンビネーションで攻め入るとアブドゥラエフは強いリターン、これにはムラタラも気をつけなければなりません。
7R、中間距離では圧倒的にムラタラですから、アブドゥラエフはもう一歩近づきたい。ムラタラはあまり深く入るとアブドゥエラエフのリターンが活きてくるので、ちょっと長い距離で戦ったほうが良さそうです。
特にムラタラが右を打った時、やや身体が流れる事があるので、そこでのアブドゥラエフの左フックには気をつけたいところ。
8R、アブドゥラエフは接近戦で戦おうと強い踏み込み。しかしムラタラも非常にディフェンスが良い。警戒心を持っているムラタラは必要以上には攻めませんが、やはり随所でジャブが良い。
終盤、ムラタラがワンツーアッパー。これが一呼吸で放たれるのでめちゃくちゃ速い。このアッパーがヒットしています。
9R、特に近い距離ではアブドゥラエフの左フックを警戒しているムラタラ、右は思いっきりは打ちません。どちらかというと戻しを意識しています。アブドゥラエフが一発打てば3パンチのコンビネーションを返すムラタラ、その後はすぐにポジショニングを変えています。
10R、スピードで圧倒できている、という事実がある分、ムラタラはあまり無理をしないようです。スピード重視のコンビネーション、アブドゥラエフのパンチは届かないのだから、ムラタラにとっては楽な戦いになっています。
もう一歩入ると危険なので、ここは堅実な勝利を目指すようです。
11R、もう行かなければならないアブドゥラエフはプレスを強めます。もうこのラウンドはファイナルアタック、手数を増やして強い攻めを見せますが、ここでムラタラは右カウンターをヒット。ディフェンスを意識した右は決して強烈なパンチではありませんが、アブドゥラエフの顎を跳ね上げています。
その後も強く出てくるアブドゥラエフにピンポイントで左アッパー、焦りがあるのはアブドゥラエフで、ムラタラは中盤にも上手く左ボディショットを入れています。
後半、これまた上手く右アッパーを顔面に差し込んだムラタラは、その後もジャブでアブドゥラエフの顎を跳ね上げ、付け入る隙を全くもって与えません。
ラストラウンド、もはや倒して勝つしかないアブドゥラエフ。エネルギッシュに攻め入り、ムラタラはがっつりと打ち合うというよりも要所で打ち合い、要所でカウンター、要所で距離を取るという上手い戦い方です。
ただただエスケープするだけでも勝利は確実でしょうが、そうしないのはボクサーとしての矜持か。そうはいってもやはり倒して終わろうという気概を見せることはなく、確実にゴールテープを切りました。
判定は、118-110、119-109✕2、3-0でレイモンド「デンジャー」ムラタラ!
1ポイントないし2ポイント、アブドゥラエフに流れていたのが驚きなほど、完勝だったレイモンド・ムラタラ。とくに初のタイトルショットのときは慎重になりがちですが、今回のムラタラは慎重なほうだったでしょう。それをさせたのはやはりアブドゥラエフに危険を感じたからなのでしょう。
ともあれ、ムラタラは待望の初タイトル。次の戦いは、ワシル・ロマチェンコになるのか、どうなのか。
WBO世界スーパーフェザー級タイトルマッチ
エマニュエル・ナバレッテ(メキシコ)39勝(32KO)2敗1分
vs
チャーリー・スアレス(フィリピン)18勝(10KO)無敗
さて、メインイベントです。たとえ相手がオリンピアンであろうとも、圧倒すべきはナバレッテの方です。この戦いで負け、もしくは苦戦しようものならナバレッテは評価を落としてしまうでしょう。
スキルがあり、カウンターを持っているスアレスは、ナバレッテよりも距離が長いらしい。並び合ってみるとそうは見えませんから、BoxRecは記載間違いかもしれません。
ともあれ、ゴング。
初回、36歳スアレスが一気にいきます。これはなかなか意外、大きな動きでフルアクションです。これにビビるナバレッテではなく対抗するように荒々しくナバレッテも反撃。
最初にいくことでナバレッテを前に出させる作戦だったのか、スアレスはやはりリターンを狙います。ナバレッテもポンポンと手数が出ますが、そのリターンのスアレスもパンチの繋ぎが素晴らしいですね。これは最後までいかなそうな展開。
後半、ナバレッテのワンツーでぐっと腰が落ちたスアレス。それでも強気に反撃、ちょっとやっぱりナバレッテのタイミング、軌道に対してはカウンターは取りづらいでしょうから、スアレスも攻めるのは正解でしょう。
2R、引き続き非常にアグレッシブなスアレス。これは非常に気骨あるボクサーです。一か八か、このチャンスを掴もうとしています。
固いガードでナバレッテの攻撃を受け止めたのち、一気呵成に攻め立てるスアレス。良い攻撃です。そしてカウンターも変わらず狙っており、回転力がある分、これはチャンスがありそうな感じがします。
3R、スアレスは非常にハイペース。かなりエネルギッシュに攻め入ってナバレッテを下がらせています。ナバレッテも負けじと応戦、こちらも強く攻めています。お互いに強振、後先考えないファイトを展開、これは非常にエキサイティング。
4R、スアレスがクリーンヒットを奪うと、ナバレッテもとてつもなく力強い連打。お互いにガチンコの打撃戦というかもはや力比べという展開、どちらのパンチングパワーが上か、どちらの耐久力が上か。
現代の主流、ディフェンシブなボクシングとは真逆の、ともかくガードやディフェンスよりも攻撃偏重の打ち合い、だからこそともに被弾があります。
5R、スアレスがここでスイッチ。ちょっと休むのかと思いきや、全然そうでもない。スアレスもちょっと調整しつつ戦っているのか、下がるべきところは下がり、いくべきところはいくという戦い方。足を使うことが増えてきたスアレスに対し、ナバレッテはちょっと空振りが増えてきたような感じ。
しかし後半に入るとナバレッテの攻めがスアレスを捉え始め、ナバレッテは強烈なパンチを繋げれています。かと思えば今度はスアレスが攻め入り、これはもうなんというか一見すると非常に原始的な戦いに見えます。
6R、早々にスアレスの左ボディが刺さりますが、ここでナバレッテの左眉から出血。バッティングによるカットでしょうか、スアレスがサウスポーから頭を右に倒したタイミングだったので、これはよく起こってしまうオーソ✕サウスポーのバッティングの形。
と思ったら、スローが流れると頭は当たっておらず、左ボディが刺さったと思いましたが顔面への左スイングでした。これはパンチによるカットか。
ナバレッテはカットを気にしつつ、強い攻撃!しかしやや冷静さを失っているか、ここはスアレスの得意のカウンターショット!この左目に血が入る状況はナバレッテにとってかなりキツい。ビッグアップセットの予感!
ナバレッテはスアレスの右が見えないのではないか、と思うのですが、その闘志は衰えず、後半には素晴らしい左ボディショット!これで明らかに顔をしかめたスアレス、大きく距離をとってエスケープ!
走って距離を詰めてパンチを見舞うナバレッテですが、そこにスアレスのカウンター!!一瞬腰が落ちかけたナバレッテですが、それでも攻撃を止めず、ここでゴング!!
これはとんでもない試合です!
7R開始後、ドクターがチェック。ナバレッテの出血は止まっています。
ただ、傷はかなり深そうで、ナバレッテはちょっと動きが鈍ったか。ガードを高く掲げて距離を詰めようとするナバレッテ、こういうナバレッテの姿は非常に珍しいものです。
その後はいつもどおり大きなパンチを振っていくナバレッテ、どこかで擦れたのか、やはり早々に出血しています。
引き続きピンチが続くナバレッテに対してスアレスは比較的冷静に見える立ち回り、ナバレッテが見えないであろう右パンチから入ります。出血を気にしすぎているナバレッテ、スアレスの左フックを浴びて後退!
ナバレッテの強い反撃にスアレスは上手く右オーバーハンドをコネクト、ナバレッテはまだ元気ですが、この出血はもう止めても良いかもしれません。
8R、開始後にまたドクターチェック。ドクターは首を横に振り、ストップを宣告!!
これは、負傷判定なのでしょうか?それともスアレスのTKO勝利なのでしょうか??スローで見る限りはスアレスのパンチでカットしたように見えましたが、スアレスは喜んでいないですし、いったいどうなのか。
しつこいぐらいスローが流れると、スアレスの右があたったあと、ナバレッテが顔を上げているときにスアレスのあご付近にあたってカットした。。。のか?スコアカードを集めているので、負傷判定というのがオフィシャルのようです。
アクシデンタルヘッドバットというアナウンスが流れ、判定は、78-75、77-76✕2、エマニュエル・ナバレッテ。
ナバレッテのコールにより会場は湧きに湧きましたが、果たしてこれは?
判定が出るのに非常に時間がかかりましたが、これはナバレッテのTKO負けか、負傷判定かということで揉めていたのでしょうか。いずれにしろ、カットの際のレフェリーの判断はバッティングだったので、これは仕方ないのかもしれません。
残念なのはチャーリー・スアレス、運がなかったとしか言いようがありません。
思ったより騒がないチャーリー・スアレスですが、これは再戦が必要かもしれませんね。
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