この試合は、シャクールが圧倒的に優位な試合です。
Oddscheckerによると、シャクールが-1200、セペダが+680(7/1時点)というもので、シャクールにベットするならば1200ドル賭けてようやく100ドルの儲け、セペダに100ドルベットしたならば680ドルにもなる、というほどの差です。
こんなにも大きな差が開いているにも関わらず、この試合はPPVのメインを張り、注目されています。
オッズ差はあれど、階級最強vs無名挑戦者という構図ではないこともひどく影響しており、さらに両者のスタイルの大きな違いもあります。
そしてこの戦いは、このどちらかが覚醒するかもしれないマッチアップ。
ということで今回のブログは、あと10日ほどとなったシャクールvsセペダのプレビューです。

7/12(日本時間7/13)アメリカ・ニューヨーク
シャクール・スティーブンソン(アメリカ)23勝(11KO)無敗
vs
ウィリアム・セペダ(メキシコ)33勝(27KO)無敗
私個人としてもこの試合は非常に楽しみにしていますが、セペダが勝てる可能性は非常に低い、とも感じています。シャクール圧倒的優位というオッズも納得のいくもので、それでもなお、どこかでやはりセペダの勝利に期待してしまいます。
お互い無敗ではあるものの、戦ってきた相手の「格」は大きくシャクールが勝り、さらにそのパフォーマンスもまた、大きく異なります。
シャクール・スティーブンソンは3階級制覇王者で、現在のライト級においてはリングマガジンランキングで2位。王座が空位で1位にジャーボンタ・デービスがいますが、レイモント・ローチ戦でタンクは大きく株を下げたのだから、1位と2位の間にほとんど差はないでしょう。
2017年のプロデビュー以来、そのスキルを如何なく発揮して3階級制覇を成し遂げたシャクール・スティーブンソンは、そのプロキャリア、少なくとも我々のようなファンが見るリング上での彼はほとんど苦労をしていない、と言えます。それほど、圧勝に次ぐ圧勝。
唯一挙げるとするならば、2023年11月のエドウィン・デ・ロス・サントス戦ですが、これはもう両方とも敗者というに相応しい内容だったのですが、カネロvsウィリアム・スカルを経験した現代人にとっては些末なものでしょう。
さて、シャクールの初タイトルは2019年10月のことで、ジョエト・ゴンサレスとの王座決定戦。
このタイトルは1度の防衛戦もせず返上しているから、もともと複数階級制覇のためのものだったのでしょう。2021年6月、当時はまだ無名だったジェレミア・ナカティラからダウンを奪う完勝で暫定ながらもスーパー・フェザー級王座を獲得。
このタイトルはジャメル・ヘリング、オスカル・バルデスといった錚々たるメンバー(というか元世界王者とのちの世界王者)を破って2度の防衛に成功しています。3度目の防衛戦ではウェイトオーバー、秤の上でタイトルを失いつつものちの世界王者、ロブソン・コンセイサンを撃破。体重差はあったとはいえ、後にも先にもコンセイサンをここまで完璧に打ち破ったボクサーは未だいませんし、ヘリングもバルデスもシャクール相手に何もできませんでした。
ライト級に上げたシャクールは、日本で抜きん出た存在だった吉野修一郎に6RTKO勝利。日本ではフィジカルがかなり強い方だと思っていた吉野がフィジカル面でも全く刃が立たず、ショックでしたね。
その後は悪名高きサントス戦をクリアしてライト級王座を獲得して3階級性は、初防衛戦ではアルテム・ハルチュニャン、前戦でスコフィールドの代理で急遽リングに上がったジョシュ・パドレイを相手に9RTKO勝利。
ここまで完璧なキャリアで、しっかりと強豪にたいして勝利しているにも関わらず、シャクール・スティーブンソンはそのスタイルからあまり好まれるボクサーではありません。
一方で酸いも甘いも経験してきたのが、ウィリアム・セペダ。
「camaron」(エビ)のニックネームを持つセペダは、2015年にプロデビューしてから連戦連勝、2020年頃からアメリカのリングに立ち始めます。
アグレッシブなファイトスタイルが人気を博す、12Rで1,000発ものパンチを繰り出すボリューム・パンチャー。
これまでに降した相手としては、プロスペクト対決となったヘクター・タナハラやジョジョ・ディアス、レネ・アルバラード、ハイメ・アルボレダ、マキシ・ヒューズ、ジョバンニ・カブレラ。
ジョジョやアルバラードは元世界王者ですが、セペダと戦った時点ではプライムタイムを過ぎていたボクサーであり、なかなかに評価が難しいですね。
そして最も苦戦したのがテビン・ファーマーで、この試合の初戦はファーマー勝利を推す声も多いほど。とにかくファーマーのカウンターショットは有効であり、おそらくセペダとしては仮想シャクールということでファーマーを選んだのでしょうが、完全に裏目に出てしましましたね。
ファンとしては、ファーマー戦を経ずにシャクールに挑戦していたならば、十分に勝機は見いだせたかもしれません。
このファーマー戦こそがvsシャクールを語る上での重要なファイトになっており、結果、オッズの差は開いています。
スタイル・メイクス・ファイト
ディフェンス能力に長け、距離を作るのが巧いシャクール。技巧派サウスポー、という部類に入るのでしょう。対してセペダは圧倒的な手数と前進力を持っており、当然驚異的なスタミナとタフネスを持っています。
なのでこの試合はセペダが追いかけ、シャクールがリングをダンスする、そんな戦いになるという見方が一般的なのかもしれません。
しかしおそらくそうはならないのが、シャクールが今後のキャリアで輝きたいと思っているからです。
ビッグマネーを稼げる興行に出るには、やはり人気というものは不可欠です。ここ最近、特にライト級のタイトルを獲ってからのシャクールのファイトは本当につまらないものになってしまい、これはスーパーフェザー級時代とは大きく異なります。
これが体重のせいなのかはわかりませんが、いずれにしろ、シャクールはあと2〜3歩ほど、もしくはあと1歩でプロモーターから見放される立ち位置にいるのではないか、ということが推察されます。
なのでシャクールは、今回リスクを背負って、大きく足を使うことなくセペダを止めるつもりではないだろうか、というのが思うところ。
周りのシャクールの評価は高く、決してパワーレスではありません。それは吉野戦を真剣に見たボクシングファンは当然のように知っていることで、フィジカルもパンチングパワーも強い。それでもシャクールの試合に人気が出ないのは、やはりリスクを犯すことなく、とにかく安全策でゴールテープを切るところにあるのでしょう。
ただこれがもし、シャクールの足の動きが最小限で、セペダの打ってきたところに次々とカウンターをあわせる、という戦いであれば、また全く異なるかもしれません。
そうやって面白いファイトをすれば、また大金が転がり込んでくるのだから、シャクールにとっても正念場。前戦は相手の評価が低かったですが、今度はある一定評価されチエルボクサーなのだから、ここはシャクールにとっても正念場、と言えるのです。
対してセペダはそのアグレッシブなファイトスタイルから被弾も多く、今から引退後を心配してしまうようなボクサー。ファーマー戦では良いパフォーマンスを見せられなかった、だからこそこのシャクール戦ではその反省を活かして戦うことができるので、もしかしたら、という希望的観測が頭をもたげてくるのです。
果たしてセペダは、本物か。をれが、この戦いのテーマでもあります。
セペダは未知なのか、それとも
「無敗」ということはまだせ底を見せていない、ということの証明です。それはシャクール・スティーブンソンには明らかに言えることですが、セペダはどうか。
セペダはファーマー戦であわや黒星、というところまで追い詰められてしまったこともあり、すでに底を見せてしまった感のあるボクサー。
手数と勢いだけで駆け上がってきた、とも言えるこのセペダからすれば、ファーマーやシャクールのようなボクサーは天敵とも言えます。
ファーマーはとにかくカウンター、リターンを主軸として、クリンチワークを多用、セペダに対して上手く戦った、という印象で、もしシャクールが同じ戦い方をしてきた場合、ファーマーよりもフィジカル面、パワー面で大きく優位なシャクールは、よりイージーにセペダを退けることができるでしょうし、セペダのKO負けもあり得るのではないか、と思ってしまいます。
そんな中で、セペダ勝利のカギはどこにあるのか。
ファーマーが取った戦法は、どちらかというと弱者の戦法で、「セペダ対策」をしてきた、というものです。ファーマーの立ち位置で言えばそれは当然のことで、ここでビッグウィンを勝ち取ることができれば世界戦線復帰は全くもって夢ではない、というマッチアップでした。
ではシャクールがその戦法を選択するか、というとどうでしょうか。
シャクールは王者としてセペダを迎え撃つ立場にあり、オッズを見れば分かる通りシャクールにとっては「勝ち方を問われる試合」なのです。
シャクールは「リングを動き回る」という戦い以外に、「エンターテイメント」ファイトもできることを見せたい、と(厳密に言えば陣営が)語っています。
これはおそらく、ガッツリ前に出て打ち合うというよりも、セペダの全身をある一定の距離で、しかもそれはカウンターやリターンでストップし、そしてセペダを停止させる、そういうい意味だと捉えます。シャクールのスキルをもってすれば、そんなことができるのでしょうか。
ウィリアム・セペダの前進というのは、まるでアミバが残悔積歩拳を喰らったかのようにもはや自分の意志とは無関係に進んでいる(この場合は前)ほどの前進です。(同年代ならわかるはず)
もしシャクールが、私の思った通りの戦法を取ったならば、中盤以降に足を使ったとしてもセペダの勝利です。それは、たとえ試合にはシャクールが勝利したとしても、我々はセペダを褒め称えなければなりません。
シャクールがリスクを取るのか、それとも、というのがこの試合の見どころだと思います。
そしてシャクールがもし、警戒しすぎてデ・ロス・サントス戦のように(まったく手を出さない状態に)なるのだとすれば、ウィリアム・セペダは試合にも勝ってしまうでしょう。
ということで、シャクールがいったいどう出るのか、それを楽しみにしておきましょう。
ところで、2026年に北斗の拳はリバイバルのアニメシリーズが配信されるそうです。どうか原作を汚さぬよう、期待したいものですね。(何の話。)
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