信太のボクシングカフェ

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ボクシングが大好きです。大好きなボクシングをたくさんの人に見てもらいたくて、その楽しさを伝えていきたいと思います。

ザンダー・ザヤスの世界王座戴冠。フェリックス・トリニダード、ミゲール・コットの後継となるには何が必要か。

※当ブログでは商品・サービスのリンク先にプロモーションを含みます。ご了承ください。

ザンダー・ザヤスがWBO世界スーパーウェルター級王座を戴冠。

週末に行われたトップランク興行では、ブルース・キャリントンのWBC世界フェザー級暫定王座戴冠とともに順当なトピックとなったこの試合は、かねてより評価の高かったザヤスの伝説への第一歩となったはずです。

しかし、です。

胸を熱くさせるような「なにか」はそこにはありませんでした。

お世辞にも「超一流ボクサー」とはいえない(あくまでも見た感じの話)ホルヘ・ガルシア・ペレスを結局は倒しきれなかった、もしくは倒し切ろうとするボクシングをしなかった、という結果はある種残念な面もあり、プエルトリコのレジェンドたちとは今はまだ比べられるレベルにない、ということも露呈しました。

古くはウィルフレド・ゴメス、そして我々世代には強烈な印象を残しているフェリックス・トリニダード、そしてミゲール・コット。

偉大なる先人たちの後継と期待されるザンダー・ザヤスは、以後、プエルトリコの熱狂を再現できるのか。

今回のブログは、ザンダー・ザヤスについて。

 

 

 

ザンダー・ザヤスのキャリア

プエルトリコ、サンファン生まれのザヤスは2025年9月に23歳となります。現役世界王者で言えばブライアン・ノーマンJr.が最も若い王者だったので、現在は現役最年少王者、ということになりますね。

ボクシングをはじめたのは5歳の頃だったようで、6歳で初のリングを経験、プロボクサーになることを意識しはじめたのは10歳の頃のようです。

その後ザヤスが11歳の頃にアメリカに移住、もともとの才能に加え、ボクシングの中心地で技術を身に着け、15歳のときと16歳のときで全米選手権を連覇しています。

東京五輪には出場資格変更(19歳以上となった)のため断念、プロ転向を決意。

数々のプロモーターからのオファーを受けた結果、トップランクとの契約に至りました。

このことは大きなニュースとなり、ザヤスはトップランク史上最年少でのプロ契約という触れ込みでのプロデビューを叶えました。

この過去に例のない出来事は、周りの評判を更に高め、期待を高め、メディアは彼を「天才」と評し、プエルトリコのスーパースターへの道筋を作っていきました。

2019年にプロデビューしたザヤスは、初戦と第二戦を初回KO勝利で飾り、「さすがは天才」の声も自然と湧き上がり、その喧伝通りの結果を残します。3戦目は判定勝利ながらも圧勝、その後も連戦連勝でキャリアを築いていきます。

 

 

 

この頃からすでに完成度は高く、それでいてスピードや攻撃力には申し分もなく、気も強かったザヤス。当然、この頃はまだ「将来有望なティーン」という評価でしたが、ほぼ確実に世界王者となる器はこの頃から備わっていたと言えます。

トップランク・プロスペクトらしく、ハイペースで試合をこなしたザヤスは、2021年に6試合を実施、そして2022年には早くも地域タイトルへの挑戦。

この頃、ザヤスは19歳〜20歳くらいになりましたが、非常に安定的なパフォーマンスを発揮しだし、特にレンジコントロールやステップワーク時のバランスにおいて秀逸でした。対戦相手の質が上がるにもかかわらず、被弾も最小限で、ディフェンス面での向上も見られました。

この地域タイトルを防衛しながらキャリアを積んだザヤスは、年齢とともに体も出来上がっており、上半身のでかさはガルシアとは大きく違いました。

世界タイトル前のビッグウィンはパトリック・ティシエイラ戦で、この元王者を相手に完封勝利。しっかりとパンチを当てつつ被弾を最小限に抑えて完璧な勝利でした。

そして先日のガルシア戦でも被弾はほぼせず、完勝という内容で見事世界王者に輝きました。

 

 

 

コットの後継?

ザヤスがボクシングに興味を持ち、熱心にトレーニングを積んでいた頃、ミゲール・コットはまだ現役で、ビッグファイトをいくつもこなしていた頃です。

ただし、ミゲール・コットというボクサーとザンダー・ザヤスは全く持って異なるファイトスタイルであり、醸し出す雰囲気も異なるのだから、後継だの何だのと言わない方が良いのでは、と思うところですね。

ミゲール・コットというボクサーは非常にテクニカルで且つ、パンチャーであり、どうしても激闘型、名勝負製造機、という印象が強くなってしまうのは彼のキャリア後半のファイトによるものでしょう。

自分の頭の中にあるコット像と、今回のザヤスの戦いを比較してみれば、今後ザヤスがコットのようになるか、というとなりそうにありません。

ティシエイラ戦でも、今回のガルシア戦でも、被弾覚悟でいけば倒せるチャンスは幾度もあったのではないか、と思います。

ティエイラはあの試合で顔面骨折していたようで、おそらく幾度か行ったチャージを続けていればどこかでストップできたでしょうし、今回のガルシアについても打てば当たるのだから、もっと連続攻撃を仕掛けていればストップ勝利は可能だったはずです。

しかし、ザンダー・ザヤスはそれをしませんでした。

 

 

 

トリニダードの後継?

「相手を倒そうとする意志」という面において、コットとは異なり、それに輪をかけて、当然のことながらフェリックス・トリニダードとも異なります。

トリニダードは20歳でIBF世界ウェルター級王座を獲得した俊才であると同時に、世界中で大人気だったボクサー。プエルトリコの国民的スター、というだけでなく、全ボクシングファンのスターだったような印象です。

見ればわかる人間らしさを持っていて、情熱的で、光のようなイメージ。オスカー・デ・ラ・ホーヤとの無敗対決は我々世代の最大のビッグマッチだったし、フェルナンド・バルガス戦も印象深ければ、バーナード・ホプキンス戦で味わったあの絶望感というのは未だに鮮明に覚えているレベルです。もうあれから四半世紀が経とうとしていますが、全く色褪せないのがこのフェリックス・トリニダードの魅力でしょう。

トリニダードの後継となるには、間違いなくドラマが必要です。トリニダードの試合はどれもドラマティックであり、それは時代がそうさせたのかもしれませんが、試合前からワクワクドキドキさせられるようなライバルがいて、更にその内容も非常にドラマティックなものでした。それは、リング上で相対する二人のボクサーが、どちらも相手を打ちのめそうというマインドから生まれたものでもありました。

ザヤスの試合にはドラマティックさはなく、この先にライバルが現れたとしても、彼のインテリジェンスはきっとドラマティックな展開を好まないでしょう。

 

 

 

新時代の旗手としてのザンダー・ザヤス

おそらく、22歳時点でのザンダー・ザヤスに足りないのは熱狂です。

フェリックス・トリニダードはおそらくもともと情熱的な性格で、それに感化される形でそのパフォーマンスで熱狂を作り出しました。

ミゲール・コットは寡黙なタイプでしたが、内に秘めた情熱をリングで発揮し、ビッグマッチとも絡んでその試合は非常に面白いものでした。

いずれのボクサーも現地の観客、PPVファイトを見るファンたちに届けたものはボクシングの面白さそのものです。

そしてそれはおそらく、ウィルフレド・ゴメスにしたってそうだったでしょう。

ボクシングというスポーツは常に観客の感情とともにあります。

「上手い」とか「巧い」という評価は、心を震わせる「凄い」「熱い」の前では霞みます。「KOだけがすべてではない」と言いつつも、そう言わなければならないほど、ボクシングの醍醐味はノックアウトである、と言えます。(人を見た目で判断してはいけない、という注意喚起が必要なほど、人は見た目で判断しがちだということと似ています。)

端的に言えば今のところ、ザヤスの試合には心が揺さぶられるような試合はまだありません。

そしてそれには、彼の物語をかき乱すような存在が必要です。

 

 

 

トリニダードにとってのホプキンス、コットにとってのマルガリート。

素晴らしいステップワークと距離感、ディフェンステクニックを持つザンダー・ザヤス、リングIQは高く、「現代の」ボクシングを全うに遂行しているボクサーです。この先、このまま行くのであれば、「凄い」けれどもプエルトリコのボクシング史において、語り継がれるようなボクサーにはならないかもしれません。

プロモーションと今後

11歳からアメリカで過ごしているザヤスは、プエルトリコの国民たちにとっては感情移入しづらい存在となるはずです。例えば、ノニト・ドネアが国籍はフィリピンなのにも関わらず、フィリピン人からは応援されない存在であるように。

しかしザヤスはプロデビュー以来、プエルトリコ国旗を伴って入場する、ということを繰り返しており、実のところは(少なくともアメリカ在住のプエルトリカンにとっては)大人気のボクサーです。この辺のプロモーションは成功と言って良いでしょう。

あとは、プエルトリコに住む人々を取り込むことと、そして何よりも彼ら-それはアメリカに住むプエルトリカンも含めて-を熱狂させることです。

 

 

 

これから数多くのチャンスが訪れるであろう、ザンダー・ザヤス。

もしかすると、彼自身が熱を作り出すよりも、熱を持っているボクサーたちに何もさせず、残忍なまでに「何もできない」を作り出し、「恐怖」をもって熱狂とは別のなにかを作り出すことも、彼の価値を高める可能性もあります。

それには例えばティム・チューやバージル・オルティスJr.は良い相手かもしれないですし、もしかして熱を作り出せる相手がいるとすればやっぱりフンドラやムルタザリエフかもしれません。

若き王者がどのような道に進むのか。彼のようなスター候補は、「勝てば良い」だけではありません。

熱狂を作り出せる王者になれるのであれば、個人的には最上の喜びとなるわけですが、それがなくとも、恐怖と静けさで支配する王者がいても良いかもしれません。それはすなわち、ザンダー・ザヤスという新たな時代の到来となるのでしょう。

 

 

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