「The Middle」、ミドル級のみという斬新な興行。主だったミドル級ファイターたちが出場しており、9人いる日本ランカーのうちなんと6人が出場しており、出場してない3人のうち2人は竹迫と細川チャーリー忍(先日挑戦者決定戦で激突)なので、とんでもない出場率です。
なかなか試合経験をつくれないミドル級のボクサーたちは、きっとこんな興行を求めていたのでしょうね。こういうコンセプトがしっかりとした興行は大注目です。
放映がYoutubeというのはもったいない気もしますが、まだ実績が積めていないのだから致し方ありません。ヘビー級のトーナメントをLeminoで流すよりもきっと見応えがあるのだから、ここは配信プラットフォームがしっかりついてほしい興行ですね。
ということで今回のブログは、六島ジム興行、The Middleの観戦記。

10/5(日)You will be the Champion「The Middle」
酒井幹生(角海老宝石)6勝4敗1分
vs
荒本一成(帝拳)3勝(1KO)無敗
日本ミドル級2位の酒井と、4位の荒本の激突。
東農大卒、自体校の出身、アマエリートと言われる立場で2019年にプロデビューした酒井は、国本陸、細川チャーリー忍、そしてワチュク・ナァツに3連敗を喫しますが、前戦で可兒栄樹に勝利して連敗脱出。方や荒本はアマミドル級において頭一つ抜けた存在であったために期待されてのプロデビューでしたが、プロに馴染めないのかプロでのパフォーマンスは今ひとつ物足りません。
酒井にとっては荒本を喰う大きなチャンスであり、荒本にとってはこの段階では絶対に負けられない戦いです。
この戦いは、双方のボクシング人生の舵取りにとって非常に重要な一戦。
初回、リング中央に歩み寄った両者はジャブの差し合いからスタート。しかし早々にプレスをかけはじめた荒本、酒井の左ガードが下がったところに右を当て始めます。
距離が近くなると左フックからの左ボディ、またアッパーを交えたコンビネーションも良い荒本、酒井も近い距離で耐えてアッパーを返します。
やっぱりYoutubeだとリングの音を拾わないのでもったいないですね。これだけの興行に配信がつかなかったのは残念です。
2R、荒本の左フックに対して酒井が左アッパーをカウンター。そこからペースを上げて連打を見舞う酒井、良い攻撃を見せます。
しかし中盤に入る頃、荒本も右をヒット、その後もコツコツとジャブをヒットしているのは荒本の方か。とはいえ酒井もアッパーをヒットして荒本の顔を跳ね上げると、荒本もアッパーをお返し、これはかなり危険な打撃戦に突入しています。
この近い距離の戦いに手応えを感じているか、ラウンド終了後酒井がガッツポーズ。
3R、中間距離でスタートして接近戦へ。互いに力強いパンチを繰り出す打撃戦。後半、酒井が左右のボディを打ってチャージ、フィジカルで押していきます。
荒本もアッパーカットで酒井の顔面を跳ね上げ、右カウンターもヒットしますが、酒井は気持ちを前面に押し出したボクシングで退かず。
4R、荒本はアングルが良いですね。右はまっすぐのストレート、アッパー、やや外側を回す右と多彩なパンチをヒット。
酒井は叩きつけるような右、これは荒本にブロックされています。しかし近い距離での細かいパンチは良いですね。終盤にも回転力ある手数で荒本を押し返しています。
これでやっと半分か、というバチバチの打ち合いですね。
5R、酒井のスリーパンチコンビネーションがヒット。下がる荒本ですが、近い距離で受け止め、距離を作って右をヒット。これは甲乙つけがたいラウンドが続きます。
ボディの打ち合いから酒井が右オーバーハンドをヒット、荒本はクリンチ!その後も酒井が回転力ある連打、荒本は低い姿勢で押し、ここを脱すると今度は左フックをヒット!今度は酒井がダメージを負います!
6R、ややガードを下げている酒井、荒本は丁寧で速いジャブ。これをヒットすることでボクシングを改めて組み立てよう、ということでしょうか。
このハイペースでの打撃戦に若干の疲れが見えるか、酒井。ブロッキングポジションこそしっかりしていますが、打っていくと若干バランスを崩しているように見えます。
後半にも荒本の右、このカウンターは酒井にとって怖い。
7R、これまで以上にしっかりと足を使いだしたようにみえる荒本。小さなバックステップから右、これのアングルが良い。近い距離で戦いたい酒井はプレス、しかしインサイドに入るまでに荒本のジャブは脅威です。
それでもなお、気持ちを見せる酒井は左右のボディを主軸として、パンチをもらいながらも左右を繰り出し、荒本を押していきます。
もうこれは技術を超えた気持ちの勝負!
ラストラウンド、おそらく、各ラウンドで荒本が少しずつ上回っている状況のように思います。どちらも決定打、明確な場面を生んでいない、もしくはお互いに良いパンチを当て合っているとも言えます。
リング中央でがっぷり四つで組み合った両者、酒井のジャブに合わせて荒本の右がヒット。サークリングしながらもストレート系のパンチを繰り出す荒本、荒本のタイミングに酒井は力を込めたパワーパンチで対抗します。
最後の最後まで気持ちを見せた両者、素晴らしいファイトでした。
判定は、78-74✗2、79-73、3-0で荒本一成。
ポイント上は圧勝というポイント差ではありますが、荒本は苦しい試合をクリアした、と言えるでしょう。試合を終えた荒本が、意外ときれいな顔に見えるのは、Youtubeの画質のせいなのか、芯を外しているのか、それとも皮膚が強いのか。
いずれにしろ、まだまだスケール感として村田諒太には遠く及びません。
とはいえまだ25歳、どうしても期待はしてしまうので、これからもどんどん向上していってもらいたいものです。
WBOアジアパシフィック・ミドル級タイトルマッチ
OPBF東洋太平洋ミドル級王座決定戦
国本陸(六島)14勝(8KO)1敗
vs
イエ・ヌリ(ウズベキスタン)8勝(5KO)無敗1分
現在5連続KO中の国本陸。その5名の中には日本ミドル級最強と謳われた竹迫司登の名前もあり、現在の日本ミドル級の中ではこのボクサーが日本代表と言って良いでしょう。
日本王者であり、WBOアジアパシフィック王者でもある国本は、この試合でOPBFタイトルを獲得するとアジア3冠王者となります。
今回迎える対戦相手、イエ・ヌリについては全く知らないボクサーですが、OPBFのシルバー王者であり、キャリア9戦のうちで2度目の10回戦。ウズベキスタンというお国柄、弱いということはないのでしょうが、BoxRecを見る限りではトップアマではなさそうです。ただまだ23歳、国本陣営が勝てると踏んで組んだこの試合も、蓋を空けてみれば超強敵だった、なんてことも考えられます。このヌリは韓国を主戦場として戦っているボクサーのようですね。
さて、未知との遭遇というのはいつも面白いものです。とにかくがんばれ国本。
初回、ぐっとガードを固めてプレスをかける国本。ヌリは広いスタンスから鋭いジャブと素早い出入り。国本の方がジャブの一瞬のスピードは上、アクションが多いのはヌリの方です。
あまり手を出さない国本に対して、ヌリはコンビネーション。相手が手を出さなければ自分は打ちやすくはなっていきますが、国本のガードが固く、ヌリが何を打っても無駄、と思えば精神的に優位に立てます。
ヌリはスキルはありそうですが、国本のガードを崩す術を今のところ持たず、中央アジアにいがちなゴツゴツとした無骨なパワーを持つフィジカルモンスターとは少し異なるボクサーに見えます。
2R、ただ、やはりスキルのあるヌリ、左右のアングルは非常に多彩。ガッチリとして、打つところないんじゃないかぐらいの国本のガードの、ほんの少しの間隙を縫っての左ボディ、右のオーバーハンド。
国本はガードで距離を積めて右のパワーパンチ、これでヌリの体幹はブラされています。
手数は圧倒的にヌリ、パワーは国本に分がありそうですが、如何に。
3R、国本の突き刺すようなジャブが良いな、と思っていましたが、そのジャブから右を打った際、国本は若干身体が流れます。ここそ見逃さないヌリ、そのうち終わりに左から入ってチャージ!ここをブロッキングでしのぎますが、ちょっと見栄えは悪いか。
その後は国本が離際に左ボディ、右と右の相打ち気味のパンチでヌリのバランスを崩すなどしており、少しずつ国本が戦いやすくなってきたイメージ。
4R、ヌリはガードの固い国本に対して、ガード剥がしを使おうと試みていますが、この固いガードをはがせるわけもありません。国本は手数が少ない分、隙が少ない状態、この国本に対してヌリは多角的なコンビネーション、これは一つの正解でしょう。
国本は丁寧なジャブを突いてこれをヒットしていますが、ちょっとやっぱり手数が少ないか。
5R、ポンポンと手出していくヌリ、国本はガードで押して強打。ヌリの打ち終わりにリターンを見舞う国本、このラウンドは良いボディショット。
6R、相変わらず良いジャブを打つ国本、そこからビッグパンチにはあまり繋げられていませんが、非常に冷静な戦い方ですね。左ボディショットをヒットしたあと、右ストレートを上に返してここは良い攻撃を見せていますが、そこからもう一つ行きたい。
ここを深追いしない、もしくはヌリが早々に動くから追えないのか。
7R、国本がプレスをかけてボディショット。ヌリは頭を前に出すことでボディを遠くしているように見えます。つまりは、ボディを嫌がっているということだと思います。
互いに右をヒットし合い、パンチの交換。国本の手数も増えてきており、ヌリの手数は若干減ってきて、だいたい同じぐらいになってきたか。
8R、国本が前に出るもヌリもしっかりと受け止め、さらに再度に回るので、ヌリもロープに詰まるようなことはありません。
ヌリは相変わらずエネルギッシュで、国本はコンビネーションが出始めています。
国本の良い右がヒットしてもヌリも退くことはせず、これは本当に難しい戦いですね。
9R、4パンチコンビネーションで攻め込むヌリ。ヌリからすると国本のガードは厄介極まりないものでしょう。
しかしヌリも疲れてしまうこともなく、快調に飛ばしていることから、国本にとってもかなり難しい相手です。
国本は右のアッパーを差し込みますが、やっぱりこのあとに続けてほしい。
終盤、国本の右で顔を弾かれたヌリ、しかしその後もヌリもクリーンヒットを奪ってラウンドが終了。
ラストラウンド、やっぱりヌリは上手いですね。打った後にすっと頭を差し出して、国本のリターンを出させないようにしています。これはそろそろ注意し始められましたが、もうこのラウンドであれば問題ないでしょう。
と、なんとここで国本がダウン。ジャブのカウンター、でしょうか。
ヌリはここがチャンスとばかりに攻め入ります!国本はダメージは無さそうに見えますが、ここで打っていくと隙ができる可能性もあります。
国本はあえてなのか、ここまでのボクシングを変えず、ジャブを当てての丁寧なボクシングから右。
ヌリも最後の力を振り絞ってコンビネーション!お互いに、自分のボクシングを貫いた10ラウンズ。
判定は、97-92国本、95-94ヌリ、98-91で国本。
2-1の判定で国本陸。
98-91ということは、ヌリがダウンを奪取した最終ラウンドしかとれていない、という計算になりますね。そういう見方もあるのか???
ちょっとヌリにはホームタウンデシジョンと思われても仕方ないような判定が出てしまったわけですが、個人的にも全体的に見栄えが良かったのは国本だった、と感じます。
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