今週末はバージル・オルティスJr.vsエリクソン・ルビンです。
この戦いは、この階級の「最終章」ともいえるビッグマッチへのチケットを賭けたサバイバルです。
勝者が掴む足がかり。
それは、IBFの無敗王者バフラム・ムルタザリエフとの王座戦かもしれません。あるいはWBC王者セバスチャン・フンドラへの挑戦かもしれません。
そして何より、ウェルター級から階級を上げ、Sウェルター級デビュー戦をわずか118秒の衝撃KOで飾った「本物の怪物」ジャロン・エニスとのスーパーファイトか。
他にはWBA王者のアバス・バラオウ、WBO王者のザンダー・ザヤス、いずれにしろ群雄割拠の戦国時代と化したスーパーウェルター級は、来年以降、大きな戦いが待っているはずです。
この試合は、そうしたSウェルター級の「本当に面白いマッチアップ」に、果たしてどちらがふさわしいのかを見極める、極めて重要なオーディションである、と思います。
ということで今回のブログは、11/8(日本時間11/9)、アメリカで開催されるバージル・オルティスJr.vsエリクソン・ルビンのプレビュー記事。

11/8(日本時間11/9)アメリカ・テキサス
WBC世界スーパーウェルター級暫定タイトルマッチ
バージル・オルティスJr.(アメリカ)23勝(21KO)無敗
vs
エリクソン・ルビン(アメリカ)27勝(19KO)2敗
2016年のプロデビュー以来、21連続KO勝利という金字塔を打ち立てたバージル・オルティスJr.。「世界」という冠がつくここ2戦のタイトルマッチは判定勝利、それもかなりギリギリの判定勝利を得ているという印象ではありますが、それでもなお、やはりこのレコードは圧倒的です。
この21連続KO中の中には、ウェルター級時代、エギディウス・カバラウスカスやモーリス・フッカーといった強敵も含まれており、彼のパワーには疑う余地はありません。
しかし、ご存知の通り、横紋筋融解症という深刻な体調問題に見舞われ、長期のブランクを余儀なくされました。復帰後、彼はSウェルター級に階級を転向しています。
復帰後は4戦、4勝(2KO)。
ここ最近の2戦では、ウェルター級時代のとにかく倒せるというパフォーマンスが戻ってきたかというと、正直、まだ本領発揮とは言えない印象ではあります。特にセルヒー・ボハチュク戦では、2-0での勝利となり、かなり微妙な判定勝利。あの試合は、オルティスが才能で劣るはずのない相手に極限まで追い込まれ、「精神的にも肉体的にも消耗しきっている」ように見えた、非常に懸念の残る内容でした。
彼は「デストロイヤー」であることにこだわり過ぎて、力み、空回りし、自らスタミナを消費してしまったように思います。
"無敗"のレコードは守っていますが、Sウェルター級のトップ戦線で戦う上での「アジャスト」が完了しているのか。このルビン戦は、彼の真価が問われる正念場です。
対するは「ザ・ハンマー」の異名を持つ、エリクソン・ルビン。
アマチュアエリートから鳴り物入りでプロ転向した、技巧派のサウスポーです。
彼のキャリアを語る上で、2つの敗北は避けられません。
1度目は、若くして世界初挑戦したジャーメル・チャーロ戦でのKO負け。
2度目は、あのセバスチャン・フンドラと繰り広げた、壮絶な倒し倒されの殴り合いの末のKO負け(正しくはルビン陣営の棄権負け)です 。
しかしフンドラ戦では、ダウンを奪われても立ち向かうハートの強さという、スキルだけではないところを見せてくれました。
チャーロ戦のとき、おそらく訳が分からないまま終わってしまったことから、実感はなかったでしょう。しかしフンドラ戦では、一矢報いるも実力負けという内容であり、この試合を機にフンドラは「イロモノ」から「本格派」へと完全に脱皮を遂げています。
このような勝利を献じてしまったルビンは、ここでアンダードッグに成り下がってもおかしくないボクサーでした。しかし、彼は見事な復活を遂げました。
まず、ルイス・エイリアスを5Rで屠り、再起を飾ります。その後は当時無敗のプロスペクトだったヘスス・ラモスJr.を、自らのボクシングの原点ともいえるこれこそがオーセンティックと言えるボクシング 、すなわち足とジャブを使ったクレバーなボクシングで完封し、判定勝利を収めました。
続く直近の試合でも、無敗のアードリアル・ホームズJr.をTKOで下しています。
彼はもはや「期待のホープ」ではありません。地獄を見て這い上がってきた「サバイバー」として、トップコンテンダーの座に居続けています。オルティスにとって、これ以上ない「本物」のテスト相手だと思います。
浪漫と基本と
個人的な希望を言わせてもらえば、私はバージル・オルティスがその「真の力」を見せつけ、ルビンをノックアウトする展開を期待しています。
なぜなら、これはボクシングの「ビジネス」としての側面も含めての意見ですが、ルビンは既にフンドラに敗北しているからです。
彼がもしここでオルティスに勝ったとして、その先にある「次」のカードは何か。フンドラとの再戦でしょうか。失礼ながら、それでは少し、Sウェルター級の「面白い流れ」が停滞してしまうように思うのです。
その点、オルティスは、Sウェルター級でのパフォーマンスがまだ「圧倒的」ではないにしろ、未だ「無敗」です。「無敗」は「底を見せていない」ということにつながります。
その人気と商品価値もあいまって、彼が「デストロイヤー」としての完全復活を印象付ける「KO勝利」を収めてこそ、ファンが見たい「次」のビッグマッチに繋がっていくと考えるからです。
オルティスが無敗王者ムルタザリエフと対峙する姿。
オルティスがフンドラの持つベルトに挑む姿。
そして何より、オルティスが「怪物」ジャロン・エニスと対峙する姿。
エニスとはスーパーライト級で同時期に戦っていた頃から比較の対象であり、私個人としても大いに比較していたことは記憶に新しい。そこから2つ、階級は上がり、正直両者の実績には差がありますが、是非とも直接対決を見てみたい一戦です。それはぜひ、無敗同士で。
これらを実現させるためにも、オルティスにはボハチュク戦のような「力任せの空回り」を克服し、ルビンというクレバーなサバイバーを「賢く」破壊することを期待したいのです。
もちろん、ルビンがラモス戦のように徹底したアウトボクシングでオルティスの強打を空転させ、オルティスが再び焦れて消耗する展開も十分にあり得ます。
オルティスが「本物」なのか、それとも「ウェルター級までの選手」だったのか。その答えが、今週末、明らかになります。
いずれにしても、勝ったほうの評価は大きく上がるはず。ルビンも好きなボクサーですが、ここはオルティスを応援したい。
アンダーカードと配信情報
この興行に組み込まれていた、フロイド・スコフィールドvsジョセフ・ディアスの試合は、スコフィールドの負傷によりキャンセル。これは非常に残念なことで、この興行はメインイベントの人気にのみ頼る興行となってしまいました。
他のカードは、前戦でベクテミル・メリクジエフに敗れたダリウス・ファルガム(アメリカ)の復帰戦で、デビッド・スティーブンス(アメリカ)というどこにでもいそうな名前のボクサーが相手。このスティーブンスは15勝(10KO)2敗という戦績で、こちらも同じくメリクジエフに敗れています。
他にはロビン・サーワン・サファー(スウェーデン)vsデリック・ミラーJr.(アメリカ)という無敗対決がありますが、プロスペクトというには年を取りすぎており(サファーが32歳、ミラーJr.35歳)、めちゃくちゃ夢を見れるマッチアップとは言えません。
他にはアマリ・ジョーンズ(アメリカ)、エリック・プリースト(アメリカ)といった若き無敗プロスペクトたちも登場ですが、彼らの相手はまだ、世界レベルではありません。
さて、この興行はDAZNでライブ配信。
日程は、日本時間で11/9(日)10:00の開始。おそらくメインイベントはお昼すぎ頃でしょう。
これを見逃す手はありません、是非ともDAZNで盛り上がりましょう。
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