ボブ・アラムはもう93歳。誕生日はジョン・レノンの命日でもある12/8、あと一ヶ月で94歳となります。
そんなボブ・アラムの率いるトップランクは、1973年の設立(1966年に前身となるメイン・バウトが創立)以来、50年以上にわたりボクシング界の主要なビッグマッチをいくつも手掛けてきています。
その功績はまず、モハメド・アリのプロモートにはじまり、1980年代には黄金の中量級と呼ばれた4KINGSのリーグ戦を牽引。
そして1990年代から2000年代にかけてはフリオ・セサール・チャベスからオスカー・デ・ラ・ホーヤへのスターの継承、初期のフロイド・メイウェザーJr.のプロモート、そしてマニー・パッキャオを見出し、スターダムへ登らせます。
2010年代以降もタイソン・フューリーやシャクール・スティーブンソン、テオフィモ・ロペス、そしてワシル・ロマチェコ、井上尚弥、テレンス・クロフォードと数々の偉大なボクサーとの契約を締結、その活動のプロモートをしてきました。
キャリア初期をトップランクで過ごし、有名になったら出ていく、というパターンが多いのは、ボクサーたちにとってもトップランク式の育成方式が好意的に受け止められていることを意味しているのでしょう。当然、これに囚われないキャリアを築いているボクサーもいるわけですが。
とはいえ、そのトップランク王国にも翳りが見え始めている現在。中断期間を挟みつつ、長くトップランク興行を中継してきたESPNのボクシング中継の撤退というのはその最たるもので、現在もトップランクに身を置く、世界王者を含めてのボクサーたちは「自前興行」という恩恵を受けられずにいます。
だからなのか、今後のトップランク所属のボクサーたちの試合は試練が多く、だからこそ非常に楽しみなものでもあります。
ということで前段が長くなりましたが、今回のブログは続・トップランクの件、今後に控えるトップランクの世界王者たちの興味深いマッチアップについて。

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ザンダー・ザヤスは早々に統一戦へ?
ここ数年、トップランク流に大事に育てられきたボクサーといえば、このザンダー・ザヤス(プエルトリコ)。彼がトップランクと契約したのは17歳だったか、史上最年少でこの大手プロモーターとの契約を勝ち取っています。
その後2019年10月にプロデビューしたザヤスは、このトップランク流の育成システムに乗っかり、6年間のうちに22戦、そのすべてに勝利しています。
前戦では空位のWBO世界スーパーウェルター級王座を獲得しており、その相手もこれまでメジャー4団体王座に挑戦した経験のないボクサーだったので、あの試合がザヤスに世界王座を獲得させるためのマッチアップだった、と言われてしまうことはある程度許容しなければならないことです。
さて、そんな23歳のザヤスは、これまでしっかりとした技術を見せてきましたが、まだまだ試されていないことも多い。なのでこの世界タイトルの初防衛戦では、比較的楽に思える相手をあてがう、というのがプロモーター側の考えとしては自然でしょう。
しかしこのザヤスは、欲があるのか、功を急ぐのか、ともかく過酷なテストを志願。それは前戦でヨエニス・テレス(キューバ)を破ってWBA王者(戴冠当初は暫定、現在は正規王者に昇格)に輝いたアバス・バラオウ(ドイツ)。
初防衛戦でいきなり王座統一戦に挑もうというのだから、かなりの強気です。
このザヤスvsバラオウはすでに口頭で合意を得ており、この試合は1月下旬に計画されるとのこと。そして、この興行が、トップランクと新たなプラットフォームの門出となるのではないか、との予想が出ています。
以前は複数のプラットフォームとの契約を匂わせていたトップランク。空白期間は短ければ短い程良いので、この頃までにはなんとかしてほしいですね。もしこの興行が新プラットフォームとのこけら落とし興行となるのであればうってつけで、注目を集めることもできるでしょう。
ブライアン・ノーマンJr.も挑戦
トップランク所属のボクサーで、勢いのある王者といえばWBO世界ウェルター級王者、ブライアン・ノーマンJr.(アメリカ)。日本手もその旋律的な強さを見せてくれたノーマンは、次戦は11/22、サウジアラビアで元2階級制覇王者のデビン・ヘイニー(アメリカ)を迎えます。
これはトゥルキ・アラルシク主導のもとで行われる「RING」興行で、ノーマンはトップランクを飛び出して中立国でのファイトに臨みます。
6月、日本の佐々木尽戦では圧倒的なパフォーマンスを披露し、次代の怪物候補に躍り出たブライアン・ノーマン。この戦いのファイトマネーは300万ドル(約4.5億円)というものですから、彼にとっても過去最高のファイトマネーであり、ある一定、一つの夢を掴んだと言える戦いでしょう。
これは非常に難しい戦いであり、これまでの実績ではヘイニーが勝るも、ウェルター級という階級、前戦でのパフォーマンスを見ればノーマンに分があります。ヘイニーは「ロー・アクション」なファイターであり、このペースをノーマンが打ち砕けるかが最大の焦点です。ヘイニーのボクシングは、「技巧」というよりも「臆病」とも言えるファイトスタイルなのであまり好みではありません。ここはノーマンに劇的なノックアウト勝利を挙げてほしいところですね。
いずれにしろ、この戦いは50-50に限りなく近いファイトでしょう。
PBCへの殴り込み?
トップランクと同様に岐路に立たされているのがアル・ヘイモンを軸としたPBC(Premier Boxing Champions)。こちらは長くShowtimeのケーブルネットワークで配信されていましたが、現在はそのプラットフォームをAmazon Prime Videoに移しています。
ただ、ShowtimeやFOXで放映していたころは月1〜月2の放送頻度だったのに、Amazon Primeでは2-3ヶ月に1度とその数を激減させています。
もともとPBCはPBCのボクサー同士を戦わせる、ということがほとんど(指名試合等を除く)でしたが、人材流出も甚だしく、所属選手中最も人気のあるボクサーであるジャーボンタ・デービスがいろいろな意味で使い物にならないため、他所と交わることも致し方のないところまで来ています。
数が減ったとはいえ、プラットフォームを持っているがゆえにトップランクよりはマシだと思われるPBCは、この12月6日(日本時間12/7)、PPVカードを予定。そのメインカードはイサック「ピットブル」クルス(メキシコ)vsレイモント・ローチ(アメリカ)というものですが、そのアンダーカードには世界ミドル級の3団体王座統一戦、ジャニベック・アリムハヌリ(カザフスタン)vsエリスランディ・ララ(アメリカ)、そしてWBC世界スーパーフェザー級タイトルマッチ、オシャーキー・フォスター(アメリカ)vsスティーブン・フルトン(アメリカ)が予定されています。
トップランクに所属している両ボクサー、つまりはアヌリハムリとフォスターは、オッズ上はそれぞれが優位。しかし、フォスターは-114と超がつくほどの僅差で、これはこれまで以上に厳しい戦いが待っている可能性があります。
どうなるvsマッチルーム
そしてさらに、厳しい対戦相手を突きつけられる王者もいます。
IBF世界ライト級王者であるレイモンド・ムラタラ(アメリカ)は、指名挑戦者であるアンディ・クルス(キューバ)を迎えます。この試合は2026年初頭に行われる、とのことなので、もしかするとザヤスvsバラオウと同じ興行に組み込まれるのかもしれません。
ムラタラにノーチャンス、とは言えませんが、ムラタラにとって、というか、この階級のすべてのボクサーにとって、アンディ・クルスは脅威です。念願の世界王者となって、初防衛戦がアンディ・クルスというのは不憫でしかないですが、これが群雄割拠のライト級たるもの、どうにか頑張ってもらいたいものです。
さて、フェザー級においては11/15(日本時間11/16)にラファエル・エスピノサ(メキシコ)vsアーノルド・ケガイ(ウクライナ)。ここはある程度、トップランク側からは安心してみていられる戦いになるのではないか、ということが予想されますが、そのフェザー級とライト級の間の階級、スーパーフェザー級の問題は非常に深刻です。
高い人気を誇る、トップランクの稼ぎ頭の一人であるエマニュエル・ナバレッテ(メキシコ)。頻繁なリング登場でも知られるこの3階級制覇王者は、次戦ではIBF王者、エドゥアルド・ヌニェス(メキシコ)との王座統一戦が計画されています。
3/7に開催されるというこの試合は50-50と言われていますが、正直ここ最近のナバレッテのパフォーマンスは冴えず、ナバレッテの変則的なブローにも微動だにせず、ブロッキングで受けきりそうなヌニェスは、ナバレッテにとって相性が良いとは言えない相手ではないでしょうか。
変則的な軌道から打ち込むのが得意なイメージのあるナバレッテですが、ヌニェスは崩れず、どんな変則的な攻撃でもブロッキングで受け止めてしまいそうです。
ここに挙げたすべてのマッチアップは、トップランクに所属している世界王者たち、詰まりはトップランクを支えているボクサーたちが関与している戦いであり、そのほとんどがあと3ヶ月以内で行われる戦いです。
もし万が一、のすべてに負けてしまったら?
もはや崖っぷち、どころではないかもしれません。
好マッチメイクの連続、その結果は如何に。これまで大変お世話になってきたトップランク、この正念場はなんとか乗り切ってもらいたいものですね。
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