つい先日、アルツール・ベテルビエフ(カナダ)がトップランクを離脱した、との報。
ベテルビエフは、トップランクにとって「Cash cow」(金のなる木)ではありませんでしたが、ともかく、ボクシングファンを大いに湧かせてくれた存在でした。
これからフリーエージェントになるというベテルビエフですが、ビボルとの第3戦以外に需要があるとするならば、それはおそらく、次世代のボクサーのステップアップファイトです。
不運なことに、このトップランク所属で締結された最後の試合となるデオン・ニコルソン戦は中止。このキャンセル理由は確か不明で、このあと、またニコルソン戦が組まれるのか、それとも、デビッド・ベナビデス(メキシコ)やデビッド・モレル(キューバ)、はたまたナジー・ロペス(プエルトリコ)といった若きボクサーたちの登竜門となるか。いずれにしろ、若きボクサーたちにとっては危険きわまりないゲートキーパーです。
ともかく、崖っぷちとも言えるトップランクにいても試合は舞い込んでこないでしょうから、フリーエージェントのベテルビエフを応援しましょう。
さて、前置きが非常に長くなりましたが、今週末はそんなトップランクの興行です。
一応、独自のプラットフォームをつくり、全米で見れる状況をようやく作ったトップランク。その第一弾として、ラファエル・エスピノサvsアーノルド・ケガイをメインに据えた興行が開催されます。ちなみに、この独自プラットフォームである「TopRank Classics」でライブ配信される第2段は、テンシン・ナスカワvsタクマ・イノウエです。
ということで今回のブログは、エスピノサvsケガイのプレビュー記事。
↓崖っぷちトップランクの記事
↓そんなトップランクに所蔵するボクサーたちの行く末は?

11/15(日本時間11/16)
WBO世界フェザー級タイトルマッチ
ラファエル・エスピノサ(メキシコ)27勝(23KO)無敗
vs
アーノルド・ケガイ(ウクライナ)23勝(14KO)2敗1分
2023年12月、あのビッグアップセットからもうじき2年です。
当時フェザー級最強と思われていたロベイシー・ラミレス(キューバ)と倒し倒されの大激闘を演じ、WBO世界フェザー級王座を獲得した「El Divino」ラファエル・エスピノサは、その勝利がフロック出なかったことを証明するための防衛ロード。
これまで3度の防衛戦をすべてストップ勝利でクリアしており、2度目の防衛戦ではラミレスをサイド退けています。
185cmという大型フェザー級ながらも近い距離で戦うことを好むエスピノサは、普通にパンチを出しても打ち下ろしのパンチとなり、しっかり打ち込めば全体重が自然と乗るようになります。さらに、対戦相手としてはインサイドに潜り込むしかない状況となるため、必然的に前傾となりますから、そこにエスピノサはアッパーカットという武器を有しています。
果たして、このボクサーを攻略するには、と考えると、まっすぐ入れば上からくるパンチ、下から潜り込んでくるパンチの餌食になる可能性が高いですから、サイドから攻め入る必要がありますね。
ただ、そのサイドを使った攻撃が得意であるキューバの雄、ロベイシー・ラミレスが勝てなかったのですから、一筋縄でいく相手ではありません。
さらに、ラファエル・エスピノサは、12Rのうちに1,000発ものパンチを繰り出す事ができるボリュームパンチャーであり、スタミナモンスターです。これはかなり厄介な王者ですね。
ではアーノルド・ケガイとの相性はどうか、という話。
ケガイも多くの手数で攻め入るボクサーで、そのボクシングはブルドーザー型。
ぐいぐいと攻め入る姿は、強引に見えて非常に理知的で、これはウクライナの偉大な先人たちのエッセンスを少々取り入れているようなグローブさばきが見られます。
かといって、その根底には、ロマチェンコのような回り込むサイドステップ、ウシクのような見事なヒットアンドアウェイとは異なり、彼のルーツであるかつての韓国のファイトスタイルを取り入れたかのようなスタイルです。
おそらくこの試合は、打撃戦になるのでしょう。
ケガイからすれば、エスピノサはこれまでの相手と比べ、身長こそ高いですが、噛み合う相手と言えます。エスピノサからすれば、なかなか厄介な相手ですから、ここはしっかりと打ち勝つという結果が求められる相手。
ケガイは、特にそのパンチのアングル、バリエーションに富んでいる印象ですが、そのアッパーカットはエスピノサの顎には届きません。逆に、ケガイがガチンコでエスピノサの真正面にとどまるならば、やはりエスピノサは打ち放題となり、やがてそのパンチボリュームに呑まれてしまうのではないでしょうか。
なので、我慢くらべの展開になり、最終的にエスピノサが打ち勝つ、というのが大方の流れでしょう。
とはいえ、お互いのパンチが当たる距離で戦う、という行為は、エスピノサにとっても危険な行為。バチバチの打ち合い、そして素晴らしいノックアウトが生まれそうですね。
戦いの先に
さて、このWBO世界フェザー級王者、ラファエル・エスピノサは、井上尚弥がフェザー級に上がった時の対戦相手、その第一候補です。
それは、トップランク所属で井上とのマッチメイクが容易であること、さらにWBOは王者が階級を上げた時、自動的にトップコンテンダーに昇格させる、という決まりがあり、必然的に井上尚弥はエスピノサにとって指名挑戦者となるからです。
もし井上が中谷に勝利し、フェザー級にアップする場合、もちろん4団体すべてで1位とはなるでしょう。しかしその頃、王座統一戦が決まっている、暫定王者がいる、そういう理由も考えられるために、井上陣営としても最もストレスなくたどり着ける王座はこのWBO。
なので、エスピノサとしてはそれまでしっかりと王座を保持しておきたい、という思惑はあるでしょうし、トップランクとしてもその日がくるまで、せめてこの王座はトップランク内でまわしておきたい、という要望もあるでしょう。
(ちなみにケガイは、以前と変わっていなければトップランクと契約していると思います。)
ラミレス戦を除けば、やや慎重にみえるエスピノサの防衛戦の相手。おそらくあと1年、この王座を守りきれるかという勝負のように見えますね。
リンドルフォ・デルガド(メキシコ)23勝(16KO)無敗
vs
ガブリエル・ゴラス・バレンズエラ(メキシコ)31勝(17KO)4敗1分
IBF世界スーパーライト級の挑戦者決定戦として組まれたセミファイナル、リンドルフォ・デルガドvsガブリエル・ゴラス・バレンズエラも要注目のカードでしょう。
リオ五輪にも出場経験のあるデルガドは、ここ数年で存在感を増しているボクサーの一人。
ブライアン・フローレス(メキシコ)、ジャクソン・マリネス(ドミニカ共和国)、エルビス・ロドリゲス(ドミニカ共和国)といったプロスペクト、曲者、パンチャーらタイプの違う相手を次々と攻略し、無敗のままこの舞台にエントリー。
ゴラス・バレンズエラといえば現WBC王者のサブリエル・マティアス(プエルトリコ)と戦い、8RTKO負けを喫していますが、それ以前にもモンタナ・ラブ(アメリカ)と良い勝負をしたり、我らがスティーブ・スパーク(オーストラリア)に引導を渡したりとなかなかの強豪です。
このボクサーをクリアし、デルガドは世界王者への挑戦権を獲得できるか。
いずれにしろ、ここはギリギリではIBF王座を獲るのは難しい。IBF王者はリチャードソン・ヒッチンズ(アメリカ)、巧さに定評のあるボクサーです。
デルガドはメキシカンとしてはテクニカルなボクサーファイターで、ゴリゴリのメキシカンとは一線を画すボクサーではありますが、今後の期待のためにもしっかりとぶつかってねじ伏せてほしいものですね。
その他のアンダーカードと配信情報
「いつもの」トップランク興行らしい雰囲気の漂うこの興行は、そのほかにエミリアーノ・バルガス(アメリカ)、リチャード・トーレスJr.(アメリカ)といったトップランクが大事に育てているプロスペクトたちが集合。
配信は、北米はTopRank Classicsという、トップランクが新たにつくったプラットフォームで行われます。このプラットフォームは、基本的には過去の試合が見放題、というものですが、今後はライブ配信も行っていく、とのこと。
米国ではTubiやROKUといったところから見れるらしいので、とりあえずこれで北米のファンたちがトップランク難民になることはなさそうです。(南米ではESPN Knockoutや、TVアステカ等、これまで通りのプラットフォームが放送だそうです。)
このTubiやROKUといったストリーミングサービスは、当然日本では契約ができず、VPNを使ったとしても契約時には結局北米のクレジットカードが必要なので、日本から見ることはできません。
今回は、WOWOWが生配信してくれるのでありがたい。
今後もトップランク興行はどんな小さいものでも配信してくれるとありがたいですね。
放送日時は日本時間で11/16(日)10:00頃。翌日11/17(月)21:00からのレギュラー放送でも放映があるようです。
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