PBCのPPVファイトから、もうすぐ1週間。
クアドラプル・タイトルマッチの中で、日本で最も注目されたファイトはオシャーキー・フォスターvsスティーブン・フルトンだったでしょう。
50-50のファイト、と海外でも言われていたこの試合は、フルトンがまさかのウェイトオーバー。それだけならまだしも、WBCはこのスーパーフェザー級タイトルマッチを、ライト級暫定王座がかかる試合に変更。
フルトンが望んだ事ではないように思いますが、一気にフルトンは悪者になってしまいました。
このWBCの裁定については、フルトンには罪はありません。この試合について、フルトンに大きな罪があるだけです。
そしてそこから1週間も経たない日本時間12/12(金)フルトンが保持するWBC世界フェザー級王座を手放したとのニュース。
ということで今回のブログは、PBCファイトのThe Aftermath。

オシャーキー・フォスターはスーパーフェザー級に戻る
浮かれ騒いで複数階級制覇に向かうボクサーが多い中、オシャーキー・フォスターは非常に堅実です。
フォスターは、手にいれ(てしまっ)たWBC世界ライト級暫定王座を返上、WBC世界スーパーフェザー級の王座を選びました。
結果的に、スーパーフェザー級王座を保持しながらもライト級挑戦となったフォスター、ひどくまともな判断です。
そもそもこの戦いがライト級のタイトル戦として成立するのか、というのはひどく難しい問題で、BoxRecを見るとフォスターは130lbsを記録。正しい記録は調べていませんが、130lbsのリミットいっぱいであれば、ライト級のウェイトは130lbs〜135lbsですから、下限の方のリミットに当てはまる、ということなのでしょうか。
もし万が一、フォスターがここでライト級の暫定王座をセレクトした場合、1/10に行われる予定のリカルド・ヌニェスvsハディエル・エレーラの勝者とともに暫定王者が2人体制となってしまうところでした。
実際のところは正規王者がシャクール・スティーブンソンで、シャクールはこの王座を保持したままWBOスーパーライト級王者であるテオフィモ・ロペスに挑み、おそらく勝利するだろうからこのWBC王座は返上するのでしょう。それも見越して、ということなのでしょうが、およそ理解できることではありません。
オシャーキー・フォスターは、かねてよりシャクールにラブレターを送っており、もしシャクールがライト級にとどまる状態であれば、もしかすると喜んでこのWBC暫定王座を受け入れたかもしれません。しかし、そうはなりませんでした。
まずは、WBCの大暴走を止めてくれたオシャーキー・フォスターのちゃんとした判断力に感謝しましょう。
ちなみに、フォスターには今指名挑戦者はいませんが、次のエリミネーションバウトはマイケル・マグネッシvsマーク・マグサヨのようです。これはまた興味深いですね。
↓フォスターについての記事
いったいフルトンに何が起こったのか
たぶん、別に何も起こっていないのでしょう。
それでも、フルトンのパフォーマンスはあまりにも悪く、そして、なにも策を持ってきていないように見えました。
いずれにしろ、フェザー級の王者が、スーパーフェザー級でウェイトオーバーする、という現実は、何かしらの問題を抱えていたのではないか、と勘ぐるには十分な理由があると思います。
これから挙げる「フルトン擁護論」については、当然のことながらフォスターにも言える事であり、それを含めてフォスターの素晴らしさが際立つもの、だと思います。
まず、フルトンのパフォーマンスに影響を与えたのは、この試合の度重なる延期によるところが大きいでしょう。
この試合は2度の延期を経て、ようやく決まった試合でした。
もともとは8月、そして10月、そして12月、ここまで集中力をキープしなければならないのはボクサーにとって非常に大変なこと。もう一度いいますが、同じ事がフォスターに起こっているのだから、フォスターは本当に素晴らしいボクサーだと思っています。
しかしながら、それ以前にフルトンがウェイトに大きな問題を抱えていたのも事実であり、フルトンは5月、SNSに「84.3kg(164lbs)」と体重を報告していたそうです。当時のフルトンは、フェザー級のウェイト(126lbs)で戦っていると考えれば、なんと17kgも減量しなければならない状態です。
これを考えれば、最初の予定通り8月に試合が行われていたならば、今よりももっと悲惨な結果になっていたのかもしれません。
ともあれ、フルトンはオフのとき、異常なぐらいデカくなるボクサーのようです。
普段の体重が(報告した体重が過去最大だとしても)大きいフルトンからすれば、ウェイトをキープしなければならない時間は非常に大きなストレスになるのでしょう。それが延期に次ぐ延期により、フラストレーションが溜まってしまい、十分なトレーニングができなかったのだとすれば、それは起こり得る事です。
10km走れ、と言われて、その直前でやっぱりあと5km、なんて言われれば、人は皆嫌なもので、ゴールがあるからこそ頑張れるのです。
そしておそらく、フルトンにも油断はあったのだと思います。
オシャーキー・フォスターはエリートロードから一度は外されてしまったボクサーであり、フルトンは世界最高のボクサーに敗れはしたもののまだエリートクラスをキープ。それは井上からの敗戦からわずか2戦で2階級制覇を成し遂げ、そしてその王座戴冠戦は素晴らしいパフォーマンスだった、と見られています。
きっと、フォスターには勝てると踏んでいて、そこにフォスターが過去最高とも言えるパフォーマンスを見せたことで、大いに計算が狂ってしまった、というところなのでしょう。
それはもう初回からわかってしまったことでしたが、フルトンにはこの劣勢を覆せる策、パワー、勢いはなく。それでもフルトンは、自身のパフォーマンスに恥じるような発言をSNSに投稿しており、かつ、再起を表明しています。
そしてこのほど、自身の保持するWBC世界フェザー級王座を返上。
これは単にもうフェザー級へは落とせない、ということなのか、それとも恥ずべきパフォーマンスを犯してしまった自らへの戒めか。
いずれにしろ、井上尚弥からの初黒星のあと、カルロス・カストロ戦は良いパフォーマンスとは言えませんでした。この次、2度目となる敗戦からの復帰戦のパフォーマンスは要注目です。
フルトン返上の余波
スティーブン・フルトン、WBC世界フェザー級王座返上のニュースで、チャンスが回ってきたのはブルース・キャリントン。
キャリントンは1/31、カルロス・カストロとの防衛戦が予定されているWBC世界フェザー級暫定王者で、これを機に正規王者に昇格するはずです。(ただ、日本時間12/12の時点での記事では、キャリントンvsカストロの試合は「王座決定戦」となる、とのこと。キャリントンの暫定王座はなかったことになるのかもしれません。)
いずれにしろ、これはなかなか興味深い戦いです。
「シュシュ」キャリントンは、キーショーン・デービスとも親交の深いエリートレベルのボクサーで、身長173cm、リーチはなんと183cmと恵まれた体躯を誇ります。
一方で、カルロス・カストロは、これまで3敗していますが、それはルイス・ネリ、ブランドン・フィゲロア、そしてスティーブン・フルトンといずれも元王者とのノンタイトルマッチで、はっきりと倒されて負けたのはフィゲロア戦のみ、ネリにもフルトンにもスプリットの判定負けで、この判定は大いに物議を醸しているものです。
キャリントンがここを難なく、またキレイな勝ち方でクリアしたならば、大きく評価を上げる事ができる上、来年以降にはモンスターを迎えるこの階級でその存在感を増すはずです。
まあ、ここでもカストロが2024年9月にフルトンに敗北してから1年3ヶ月の間、1試合も試合をしていないのにこの位置にいる(というかきた)ということは、WBCらしいといえばWBCらしい謎裁定ではあります。
このカストロはヒスパニック系のテクニシャンでもあり、フルトンを大いに困らせるスキルを持ったボクサー。未だ底を見せていないブルース・キャリントン、ここでその真価が問われる一戦ですね。
ちなみにこの勝者は休養王者(笑)レイ・バルガスとの統一戦が指令されるらしい。バルガスはもう休養王者じゃなくて、ただの休養中のボクサーです。
↓キャリントンも好きなボクサーの一人
フェザー級ではもう一つの注目マッチアップ!
さて、今回のフルトンの動きとは全く関係ないところですが、フェザー級でもう一つ、注目のマッチアップが決定したようです。
イギリス時間で2/7、WBA世界フェザー級王者、ニック・ボールがブランドン・フィゲロアを迎えて防衛戦を行う、とのこと。
私はボールも非常に好きなボクサーですが、基本的に彼に求めていた相手はこのフィゲロアのようなボクサーです。
それは、ファイトしてくれるボクサー。
ニック・ボールは突進型のファイターで、当然ボリュームパンチャーであるフィゲロアとは噛み合うはず。
身長差はBoxRec上で18cmもの差があり、上から打ち下ろすフィゲロア、下から突き上げるボール、この2人が接近戦で相まみえるのだと思うと待ちきれません。
2021年、フルトンとのスーパーバンタム級王座統一戦に敗れたフィゲロアは、減量苦からフェザー級へ転級。その後カルロス・カストロ、マーク・マグサヨ、ジェシー・マグダレノといった強敵を撃破、WBC世界フェザー級王座を獲得して2階級を制覇しています。
しかし2025年、フルトンとの再戦で敗戦。この試合のフィゲロアはどこかおかしかったと思うのですが、何の弁明もしていないのでフルトンがフィゲロアの良さを出させなかった、ということなのでしょう。いずれにしろ、どっちが勝っていてもおかしくなかった初戦と比べ、再戦は圧倒的な敗北。フルトンの方が頭が良い、ということなのでしょうね。さすがクールボーイ・ステフ。
ともあれ、このフルトン第2戦からの敗戦後、ジョエト・ゴンサレスと戦い再起を飾ったフィゲロア。改めて見てもこのレジュメはものすごいものです。
これはバチバチの打ち合いになること必至、ボールも好きなのですが、それ以上に私はこのフィゲロアが好きです。
どうせならここで王座返り咲きを果たしてほしい。
これは注目すべき試合であるだけでなく、大打撃戦が予想され、FOTY候補の試合かもしれません。
The Aftermath
aftermathという言葉は、出来事のあとの結果や余韻、その後の影響を指し示す言葉として使用される言葉です。
このオシャーキー・フォスターvsスティーブン・フルトンの余波は、フェザー級の周辺階級で大きな影響をもたらしています。
フルトンのウェイトオーバーというのはファンからすると本当にがっかりすることではありますが、フルトン本人もきっと思うところはあるのでしょう、その言葉はもう未来に向かっていっています。
もはや体重超過に慣れきってしまった我々にとっては、ウェイトオーバーしたボクサーが「ちゃんと」負けてくれたことでそれをチャラにする心の余裕があるはずです。(もしフルトンが買っていれば話は別なのです。たぶん。)
まだまだ未来のあるボクサーたち、今後の好勝負を期待しましょう。
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