さて、もう随分と長い時間が経過してしまいました。
12/16、PFPキングの一人、テレンス「バド」クロフォードが自身のSNSで引退を発表。
ライト級、スーパーライト級、ウェルター級、スーパーウェルター級とスーパーミドル級という5階級を制覇し、しかもそのうち3つではUndisputed王者に輝いたクロフォード。
生涯戦績は42勝(31KO)無敗、というもので、勝利数だけを見ればフロイド・メイウェザーJr.にこそ及ばないものの、恵まれないマッチメイクの期間もありながらも常に強敵を求め続けたその姿勢は、メイウェザーを上回ります。
TBE(The Best Ever)の一人にもなるやもしれないクロフォードの引退後、残されたスーパーミドル級のボクサーたちは如何にその覇権を争うのか。
ということで今回のブログは、クロフォード引退とその後について。

Crawford Vs. Spence: Should They Have Rematch? - East Side Boxing News
テレンス・クロフォードの偉業
テレンス・クロフォードは、そのボクシング競技の実力と人気の面において乖離のあったボクサーでした。
その理由の一つは、オマハという自身の故郷に強いプライドを持ち、プロモーターの言いなりにならず、おそらく甘言に乗らなかったことでプロモーションが非協力的だったことに起因しているのかもしれません。
「人気」というのを「PPVが売れること」とするならば、クロフォードは人気者ではありませんでしたが、間違いなくオマハの英雄ではありました。
今の時代、いや、今の時代だけでなく、ボクシングがショービジネス化した1980年代以降、ボクサーの人気というのはその実績やファイトスタイルだけでなく、やはりプロモーション活動によっても大きく左右されています。そのプロモーション活動がクロフォードには足りず、それは彼が地元を大事にしすぎた(=プロモーターにとっては扱いづらい存在だった)ということが想像でき、その原因の一端は彼が長く在籍したトップランクにあるのかもしれません。
さて、とはいえ、トップランクが彼に何もしなかったか、というとそうではありません。
スーパーライト級では4団体王座統一への道のりを示し、またその試合をマッチメイクし、ウェルター級進出のサポートもしました。
しかしそこからは、さっさとキャリアを進めたいクロフォードとの間に乖離があったことも事実。トップランクが用意するボクサーたちはアミール・カーン、ショーン・ポーターといった名のあるボクサーたちだらけでしたが、結局クロフォードの望む大一番は実現せず。
クロフォードではPPVが売れず、トップランクとしてもジレンマがあったことでしょう。
結局、当時の3団体統一王者で、全世界が待望したエロール・スペンスJr.との試合はクロフォード自らが掴み取った試合で、当時PBCに所属していたスペンスと、トップランク所属のクロフォードの試合は叶わぬライバル対決でした。しかしクロフォードはトップランクから離脱、自らアプローチをかけることでこの試合を実現し、さらに圧倒的な力をもってスペンスを倒し、誰しもが認めるUndisputed王者となるとともに世界最強のボクサーであることを証明してみせました。
史上始めて、2階級にわたり4団体制覇を成し遂げたテレンス・クロフォード。
そこから約1年後、スーパーウェルター級でイズライル・マドリモフを攻略して4階級制覇を達成すると、さらに2階級を上げてスーパーミドル級の4団体制覇王者、カネロ・アルバレスに挑み、見事5階級制覇、及び、3団体にわたるUndisputed王者となりました。
自身のSNSで綴った「これ以上証明するものは何もなく、偉大な存在として去る」。まさにそのとおりです。
スーパーミドルの勢力図が動く
スペシャルなボクサーの引退というのは寂しいもので、クロフォードはまだまだ十分すぎるほどに戦えるボクサーです。
たとえ年に1度だとしても、やはりしばらく負けることはないでしょう。
しかし、ボクシングというものは危険を伴うスポーツであり、引き際もまた肝心で、それはボクサー本人にしか決断ができないことです。
今はただ、クロフォードの早すぎる決断を尊重するほかなく、そして、我々ボクシングファンとしては過去にすがるのではなく、未来を見つめる事が偉大なるレジェンドへの餞となるはずです。
そして、すっぱりと潔くボクシングを引退するクロフォードに対し、傷つき、敗れ、かつての栄光からみれば落ちぶれた姿をさらしたとしても、まだリングにしがみつくボクサーもいます。それはしかし、みすぼらしいとは言えず、それはそれでまた格好も良いものだと思います。
このスーパーミドル級において、テレンス・クロフォードが去ったあと、その覇権を取り戻そうと一番槍を突くのは、もちろんサウル「カネロ」アルバレス、その人です。
一つずつタイトルを集め、スーパーミドル級の4団体王座を統一したのはカネロで、あのベルト集めを行っていた時のカネロはまさに無敵でした。
しかし今、そのパワーは鳴りを潜め、自信に満ち溢れたボクシングは過信へと変わり、相手を理知的に追い詰めていくストラテジーは見る影もありません。それでもカネロは戦い、どんなに衰えてもまだトップボクサーの一人であることは疑いようもありません。
ただ、カネロがまた覇権を握れるか、というとそれはそれで非常に難しい。
NEXT!
戦う相手を自由に選べたカネロ・アルバレスという巨人がいたからこそ、このスーパーミドル級のボクサーたちは注目を浴びながらもなかなか日の目を見ない状態が続きました。
この間、ランキングを駆け上ってきたのはオスレイス・イグレシアスであり、クリスチャン・ムビリです。
イグレシアス28歳、ムビリ30歳、年齢的にはプライムタイムを迎えようという両者。
イグレシアスは前戦でIBFの挑戦者決定戦を勝ち抜き、タイトルショット待ち状態。IBF1位はイグレシアスで、2位は空位、3位にカネロがいて4位にムンギア、という状態です。
待たされたイグレシアスは、IBFの王座決定戦に優先的な出場権を得ることになりましたが、相手はおそらくカネロではないでしょう。4位ムンギアも出場するかどうか(できるかどうか)怪しいところでもあり、その次に声がかかるのはカラム・シンプソン、ここが一番丁度良い。
いずれにしろ、間もなく世界王者になることは請け合いです。
ムビリはすでにWBCの世界スーパーミドル級暫定王者となっており、前戦ではレスター・マルティネスを相手に初防衛戦をこなしています。ただ、この試合はドロー、薄氷の初防衛でした。
このマルティネスはムビリとのドローで名を上げたボクサーで、リングマガジンでは4位にランクされる30歳、こちらも同年代ですね。
さらには、タイトルショットのチャンスがなかなか巡ってこないディエゴ・パチェコはまだ24歳ながらも強豪とのマッチメイクを次々とこなしてもう準備万端であり、いつ彼らを脅かす存在になるかはわかりません。
他にもケイレブ・プラントに勝利したホセ・アルマンド・レセンディス、ハイメ・ムンギアをアップセットで降したブルーノ・スラーチェ、思いもよらないボクサーが強いということが立て続けに起こっており、他にどのような強豪が眠っているのかはわかりません。
そしてミドル級から上がってきたハムザ・シーラズ、こちらも要注目。前戦では名のあるエドガー・ベルランガを良い形でノックアウトしており、注目度も高いはずです。
クロフォードの後継王者は?
まず、WBAは暫定王者にホセ・アルマンド・レセンディス。しかしWBAのことですから、この暫定王者は正規に繰り上がる、という当たり前のことをしないかもしれません。
そうなると、暫定王者がいながらの正規王座決定戦という意味不明な行動をとるか、もしくはレセンディスを正規王者に据え、暫定王座決定戦を行うか。
いずれにしろ、ランキング上位にはカネロがいることはもちろんのこと、ベクテミル・メリクジエフ、シーラズ、ダリウス・ファルガムあたりが王者候補でしょうか。
とはいえ、WBAですから、いきなり9位のパチェコが王座決定戦に出ても驚く事はありません。
WBCは前述の通り、ムビリが暫定王者。WBCはクロフォードが承認料の支払いを拒否したためにクロフォードからタイトルを永久剥奪、だったらもうムビリが正規王者になっていないとおかしいわけですが、なっていません。
1位はカネロ、2位にシーラズ、3位にレスター・マルティネス。いや、ここはムビリで良いでしょう。ちなみにWBCは、ムビリvsシーラズにWBC世界スーパーミドル級王座決定戦をオーダーする(した?)とのことですが、ここは別にすんなり格上げで良いのでは。
IBFは、王座決定戦にオスレイス・イグレシアスが出る事はほぼ確定。そして厳格なIBFは上から声をかけていくはずですが、3位はカネロです。カネロはおそらく、これを受けないでしょう。結局のところカラム・シンプソンとなりそうで、そうなるとイグレシアスが世界初戴冠となる可能性が非常に大きい。
WBOは1位にカネロ、2位にシーラズ、そして3位にパチェコ。実はクロフォードが引退を表明する1日前か2日前、リヤドシーズンはハムザ・シーラズvsディエゴ・パチェコを2月にやるために動いている、というニュースが出ていました。
これがもし実現するならば何かしらの王座決定戦となる可能性が高く、その場合、最も理にかなっているのはこのWBOの世界王座決定戦でしょう。
そんなわけで、無敗のプロスペクトたちの試合がもうすんなりと決まりそうな所まで来ているスーパーミドル級。これまで「カネロ」という大きな蓋の前に抑圧されてきたコンテンダーたちが一気に吹き出すこの階級、2026年は超注目です。
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