「FOTY」と略されるプライズには、2つの意味があります。
一つはFighter Of The Yearであり、それは日本語で年間最優秀選手賞と呼ばれるもの。MVPともいわれる、その年に最も活躍したたった一人のボクサーに与えられるプライズです。
そしてもう一つは、Fight Of The Year、年間最高試合賞。一つの試合は、2人のボクサーが、また陣営が、そしてレフェリーやジャッジ、そのイベント規模、試合を取り巻くそれまでの道のり、等々を考慮して選出されるもので、この判断基準は私にとってひどく難しい。
なのでこの年末に色々なプライズを考える時、この賞だけはスキップしてしまうことも多いのです。
とはいえ、なんだかんだ今年は(ずっと言い続けている事ですが)このFight Of The Yearについては個人的には決まっているので、その回答は得やすい。
ということで今回のブログは、2025年、信太的ファイト・オブ・ザ・イヤーについて。

2025年、Fight Of The Yearの定義
これですよ、と指し示す事は今年に限ってはひどく簡単なことです。しかし、それだともう終わってしまうので(笑)つらつらと書きたいと思っています。
私的Fight Of The Year(以下FOTYと略します)については3月の試合だったので、それ以降は単純に「その試合」以上に私の琴線に触れる試合があったかどうか、というのが判断基準でした。
ちなみに、私的FOTYの基準というのは、まずタイトルショットか、それに準ずる試合である、という「試合の格」というものを条件としています。
そして必然的に、どちらか一方、もしくは両方に対して思い入れがあることも非常に重要です。そうでなければ、ただ試合を観るだけで琴線に触れる、ということは難しい。
必ずしも接戦である必要はありませんが、当然、倒し倒されの大激闘である方が琴線には触れやすいし、「予想」とは異なるファイト、「期待」を上回るファイトであったほうが当然ながら感動するものです。だからやはり、「激闘」であることも非常に重要なファクターです。
2025年、FOTYの次点
先にFOTYの次点について書いておきましょう。
ちなみに、私は異常無ほど記憶力が悪いのですが、それでもなお、覚えている試合=素晴らしい試合たちです。どんなに素晴らしい試合でも忘れていることもあるかもしれませんが。
まず、おそらく日本のボクシングファンがFOTYを考える時、必ず絡んでくるであろう堤聖也の試合。
Mr.FOTYとも言うべき堤は、2025年、2試合を行いましたが、そのどちらもFOTY候補にノミネートされていてもおかしくはありません。
2/24:堤聖也vs比嘉大吾
12/27:堤聖也vsノニト・ドネア
堤vs比嘉は初戦も好ファイトでしたが、この9ラウンドというのはもはや伝説となり得るものでした。序盤から比嘉が上手く戦い、このまま試合が決まりそうなところでダメ押しのダウンを奪ってからの堤の奮闘。
比嘉はもし、あそこでダウンを奪わなければ勝利できていたのかもしれない、とさえ思うほどですね。3戦連続で世界タイトルに挑戦、というかつて聞いたこともない3連戦をやってのけた比嘉大吾。持っているのか、それとも持っていないのか。この試合は語り草となる一戦ですね。
そして未だ記憶に新しい、堤vsドネア。
この試合も序盤にリードされ、あわやダウンかというパンチをもらった堤でしたが、そこから見事無までに持ち直しました。ドネアは特に前半、非常にシャープで、スタミナを温存しつつも強いパンチを堤にヒットしており、前戦とは全く違った強さを見せてくれました。
しかしやはり、後半に進むにつれて動きが落ちてきたのは明白で、堤はそのチャンスをしっかりとものにして勝利。ドネアがまだ続けるのだとしても、前半をしのがれた後は厳しい後半が待っているのかもしれませんね。
さて、その他にも記憶に新しいのは、試合前からFOTY候補、ともいわれていたWBO世界ライト級王座決定戦、サム・ノークスvsアブドゥラ・メイソンです。
11/22:サム・ノークスvsアブドゥラ・メイソン
RING興行として、リヤドで開催されたこの超豪華イベント、クアドラプル・タイトルマッチのトップバッターとして行われたこの試合。
ともに高いKO率を誇り、「ネクスト王者」と謳われて久しい無敗プロスペクト同士の試合は、その勝敗、試合内容においてはこの興行で最も注目していた戦いでした。
二人の若きプロスペクトは、世界初戴冠を狙い、真っ向勝負。
その中で、これまでの戦いよりも冷静な試合運びを見せたメイソンが判定勝利。完全なクレバネスを身に着けたわけでもない、というところがまたこの好勝負を生んでおり、この21歳の王者には是非とも今後も倒し続けてほしいと思います。
この試合もそうですが、この興行のセミで行われたバム・ロドリゲスvsフェルナンド・マルティネスにしても、「予想外」の出来事は起こっていません。
「予想外」というのもやはりFOTYの基準の一つなので、それを挙げるとするならば、やはりラスベガス決戦、「モンスターがシンコ・デ・マヨを救った」と言われる一戦は外せません。
5/5:井上尚弥vsラモン・カルデナス
キム・イェジョン、ラモン・カルデナス、ムロジョン・アフマダリエフ、そしてアラン・ピカソ。
年間4試合をこなした井上尚弥の2025年、最も好ファイトとなったのはそれまで無名のボクサーだったラモン・カルデナスです。
これまでの戦いと違い、ガッチリとガードを上げてモンスターに挑んだカルデナス。その戦いは、結局攻めきれなかったMJや、もはや勝つ意気込みがかんじられなかったピカソとは異なり、アップセットを本気で起こそうという気概があったように感じました。
手数こそ多くなかったですが、あの左フックは最後まで鋭いスイングで非常に怖く、結果的には完敗ながらも痛烈なノックダウンを奪っても見せました。
ちなみに、この試合で井上尚弥の世界戦連続KO記録は途絶えてしまいますが、井上尚弥の世界戦連続KO記録は11。これは、1962年以降の記録ですが、ダリウス・ミハエルゾウスキの14回、、ウィルフレド・ゴメスの13回に続き、クロフォードとならんで歴代3位タイという記録です。
とにかくこの戦いは、井上尚弥の試合としては非常に珍しく、最後の最後までドキドキさせてくれた試合で、心を揺さぶられましたね。
あともう一つだけ。
「予想外」といえば、戦前の「予想外」というのはいわゆるアップセットというものですが、戦う最中、これは無理だろうというところから一気に逆転に持っていく、というのも「予想外」の一つ。前述の堤聖也vs比嘉大吾なんかもその一つですが、もっと明確に「試合中にこれは無理だろ」から試合をひっくり返した試合を思い出しました。
6/8:ファビオ・ウォードリーvsジャスティス・フニ
戦前、個人的には50-50に見えていた戦いでしたが、おそらくAサイドはウォードリー。そんな中、4R以降、決定的に抜け出したのはジャスティス・フニの方で、ラウンドが進むごとにフニノパワーパンチがウォードリーを捉えるようになっていきます。
ウォードリーは疲労感もあらわ、フニは素晴らしい集中力とインテリジェンスを発揮し、スタミナも大丈夫そうなところ、にウォードリーのカウンター(おそらく狙ってものではない)がヒットしてフニがダウン、そのまま試合が終了。
このレベルで非常に珍しい、とも言えるワンパンチ大逆転ノックアウトは、完全に負け確の流れの中で、ボクシングの恐ろしさを再確認した一戦でした。
ちなみにこの戦いでWBAの暫定王者となった(はず)のウォードリーは、次戦でWBO世界ヘビー級暫定タイトルマッチに出場。
ジョセフ・パーカーとの一戦は、これもまたFOTYクラスの一戦で、クロスファイトの中でまたもウォードリーの強打が試合を決めた、という一戦。
10/25:ジョセフ・パーカーvsファビオ・ウォードリー
クロスファイト、といえばつい先日の中谷潤人vsセバスチャン・エルナンデスの一戦も、とてつもないクロスファイトであり、好ファイトでした。
最高のスタートを切った中谷でしたが、このエルナンデスの特性なのでしょう、尻上がりに調子を上げていき、結果的に「やりたいこと」が出来ていたのはエルナンデスの方だったのかもしれません。
その中でも中谷のアッパーは幾度もエルナンデスにヒットしており、Compuboxに頼らずとも、その的確性では上回っているように見えました。
名を上げたのはBサイドとしてリングに立ったセバスチャン・エルナンデス。
スーパーバンタム級で相手選びに運がなかったのではないか、とも思える中谷潤人は、それでもサバイブ、「評価を下げた」というファンもいることは容易に想像できますが、それでvs井上尚弥が楽しみでなくなったか、というと全然そうではありません。
当然、井上尚弥はエルナンデスのようには戦わないのです。
むしろ、この苦闘という経験を経て、中谷潤人がどのように化けるのか、これは非常に楽しみな事です。
12/27:中谷潤人vsセバスチャン・エルナンデス
2025 , Fight Of The Year
さて、そんなわけでつらつら次点を並べていたら、思い出すことも多くて長くなってしまいました。もっと他にもあるのだと思いますが、ここらへんにしておきましょう。
そして当然、私的FOTYはこちら
3/13:寺地拳四朗vsユーリ阿久井政悟
大注目のフライ級、王座統一戦。王者と王者の戦いながらも、戦前、明らかに格上なのは2階級制覇王者、寺地拳四朗でした。
しかし開始のゴングが鳴ると、ユーリ阿久井の動きのキレはこれまで見たどの試合よりも素晴らしく、特にその強いジャブは拳四朗に勝るとも劣らないものでした。
拳四朗としても下がっては危険、と判断していたのでしょう、リング中央でユーリ阿久井と真っ向勝負。下がる相手を追いかけるのはユーリ阿久井の得意分野ですから、拳四朗はこの場所で、回転力での勝負を選んだのでしょう。
もちろん、これは大きなリスクを伴うものです。
この日の拳四朗がいつもよりも被弾が多く、その被弾しているのはユーリ阿久井のパンチ。しかし、このアメージングボーイのタフネスは異常なもので、一進一退の攻防を続ける中での最終12RTKO勝利。11Rまでの採点は、106-103、104-105×2だったので、もしこのラウンドをダウンなし、拳四朗が取ればドロー、ユーリ阿久井が取ればユーリ阿久井の勝利、という内容でした。
手に汗握る12Rと、劇的な決着。これ以上にFOTYにふさわしいファイトは世界全体を見てもないと思います。
やはり口惜しいのは、次戦で拳四朗がリカルド・サンドバルに敗れてしまったことと、先日のリヤドでウィリバルド・ガルシアとの試合がキャンセルになってしまったこと。
ユーリ阿久井はこの敗戦から良い形で再起を果たしており、拳四朗の2026年にも期待したい。
あともう一つ、なんとかしてほしいのは、拳四朗にしろ、ユーリ阿久井にしろ、今後またU-NEXT BOXINGを主戦場とするとは思うのですが、ど平日開催はなんとかしてほしいところ。とりわけ豪華にしてくれるU-NEXT BOXING興行は本当にありがたいのですが、平日にトリプルタイトルマッチをやられると、ギリギリのタイムスケジュールをこなしている身としては睡眠時間が削られてしまいます。まあ、その点を差し引いてもこの試合がFOTYです。
今年も様々な好ファイトを期待しましょう。
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