ノックアウトは、ボクシングの華。
それがすべてではない、とは言いつつも、やっぱりノックアウトが見たいのです。ノックアウト決着が大嫌いで、判定決着が大好き、というファンは稀でしょう。
接戦で素晴らしい戦いは、時としてどっちが勝っていた、等の無駄な議論を呼び、リマッチ、ときにラバーマッチへと発展します。しかしこのノックアウトという決着は、それまでの流れがどうあれ、絶対的な決着のつき方です。
ということで、毎年各所から発表されるKnockout of the year(以下KOTY)もあると思いますが、今回のブログは私的KOTYをピックアップしていきます。

新年早々の南半球クルーザー級最強決定戦
ジャイ・オペタイア vs デビッド・ニーカ
2025年1月8日(水) ゴールドコースト・コンベンションセンター(オーストラリア)
新年早々、南半球から届いた映像に背筋が凍りました。IBF世界クルーザー級王者オペタイアに、東京五輪銅メダリストのニーカが挑んだ一戦です。当初予定されていたシンカラの負傷による代役出場とはいえ、無敗のニカへの期待値は高かったはずです。
しかし、結果は残酷でした。第4ラウンド、オペタイアの右から左へのコンビネーションが直撃。ニーカはキャンバスに崩れ落ちたのですが、問題はその倒れ方です。仰向けになり、意識が完全に飛んでいるにもかかわらず、彼の目はカッと見開かれたままだったのです。
プロモーターのエディ・ハーンが「意識がないのに目が開いていた」と青ざめていましたが、まさにホラー映画のワンシーン。技術の高さが生んだ芸術的なKOですが、同時に人間の脳がバグを起こす瞬間を見てしまったような背徳感がありましたね。
↓観戦記
アイリッシュ、スターダムへの一撃
カラム・ウォルシュ vs ディーン・サザーランド
2025年3月16日(日) マディソン・スクエア・ガーデン・シアター(米国・ニューヨーク)
聖パトリックの日の週末、MSGがアイルランド一色に染まる中で行われたこの試合。「キング」カラム・ウォルシュの売り出し興行的な側面はありましたが、それにしてもフィニッシュが鮮やかすぎました。
第1ラウンド終了間際、ウォルシュの右フックがサザーランドの顎を打ち抜いた瞬間、サザーランドの体から「芯」が完全に抜けましたね。糸の切れた操り人形のように崩れ落ちる様は、まさに意識断絶。レフェリーがカウントを数える素振りすら見せずに試合を止めた判断は英断でした。ウォルシュ、顔もいいしパンチも強い。これは人気が出るわけです。
ウォルシュは今年3年、すべて米国です。特に3戦目は人気者、フェルナンド・バルガスに勝利、大きく名前を売っています。プロスペクト・オブ・ザ・イヤーあたりにノミネートされてもおかしくないですね。
ナイトメアからの奇跡の大逆転
ファビオ・ウォードリー vs ジャスティス・フニ
2025年6月7日(土) ポートマン・ロード・スタジアム(英国・イプスウィッチ)
個人的には50-50の戦いと見ていましたが、これはウォードリーのための試合でした。しかし、地元のサッカースタジアムに大観衆を集めたウォードリー、試合内容は散々で、フニのスピードとテクニックに翻弄され、顔面は腫れ上がり、9ラウンドまでの採点は絶望的。判定までいけば確実に王座陥落という状況でした。
ところが第10ラウンド、ドラマが起きます。フニが一瞬、気を抜いて正面に立ったその隙を、ウォードリーの右が見逃しませんでした。当たった瞬間、巨木が倒れるようにフニが沈む。あの瞬間のスタジアムの爆発的な歓声、鳥肌ものでしたね。「ボクシングは最後の一瞬まで何が起こるかわからない」という手垢のついた格言が、これほど重く響く試合もありません。
↓観戦記
驚愕と絶望。夢を砕いたホンモノのパワー
ブライアン・ノーマン・Jr. vs 佐々木尽
2025年6月19日(木) 大田区総合体育館(日本・東京)
我々日本のファンにとっては、あまりに辛く、そして直視すべき現実を突きつけられた一戦でした。佐々木尽の世界初挑戦。しかし、初回から絶望に飲み込まれることになりました。
佐々木が右を打てば左フックで倒され佐々木が左フックを打てば右で倒される。ノーマンが一気に来ないからこそ、佐々木は初回を生き延びる事ができましたが、もうこの初回で終わってもおかしくない内容でした。
そして迎えた第5ラウンド、ノーマンのカウンターの左フックを被弾した佐々木は、受け身を取ることなく後頭部からキャンバスに激突。見ていて「これはマズい」と直感する倒れ方でした。
その後の報道で、佐々木がこの試合前後の記憶を失ったと聞いて言葉を失いました。試合をしたことすら覚えていない。それがボクシングという競技のリスクです。勇敢さと無謀さは紙一重。コーナーのストップのタイミングも含め、深く考えさせられるKOでした。
↓観戦記
リスタート、一つの大きな終焉
フランク・マーティン vs ランセス・バルテレミー
2025年12月6日(土) フロスト・バンク・センター(米国・サンアントニオ)
タンク・デービスに敗れてからの復帰戦となったマーティンですが、相手は古豪バルテレミー。相対してみるとかなりデカいバルテレミーがプレスをかけていく展開。マーティンは後ろ荷重のサウスポーで、タイミングをずらしてのカウンターが得意なボクサーですが、老いたりとはいえキューバ出身のバルテレミーは簡単には倒されないのではないかと思っていました。
しかし第4ラウンド、マーティンの左ストレートが突き刺さると、バルテレミーはばったりと倒れました。背中からマットに張り付き、微動だにしない。元王者がここまで無惨な姿を晒すのは珍しいことです。歴戦の雄が、なす術なくリングに倒れてしまうのは本当に残酷なシーンです。
タンクに敗れはしたものの、まだまだこれから、ということをアピールしたフランク・マーティン。この試合はスーパーライト級だったので、今後140lbsで戦っていくのでしょうか。
私的KOTY
どれも途轍もないBrutalなノックアウトシーンだったと思います。
そんな中で、プラスするとするならば、、やはりこの試合を見た時のフィニッシュシーンに、どれほど驚愕したか、ということは大きなプラス要素だと思います。
そう考えると、オペタイアやマーティンのノックアウトは途中からある程度想像できたものであり、ノーマンJr.のノックアウトも、同様です。
ウォルシュvsサザーランドに関しては、想像する時間もなかった印象で驚愕のKOではありましたが、やはりファビオ・ウォードリーのノックアウトシーンには敵わないのではないか、というのが率直な感想。
すでにあの時、逆転の力は残っていないのではないか、とすら感じたウォードリーが、たった一発で試合をひっくり返したあの試合、あの一撃。
なので個人的なKO of the yearは、「ファビオ・ウォードリーvsジャスティス・フニ」です。
やはり事前には、ウォードリー若干優位とおもいながらもほとんど50-50の戦いだった、というところから、フニが抜け出し、もはやウォードリーの逆転の芽は潰えた、というところからの大逆転KO。
アンダードッグが、舐めてリングに上がったAサイドを倒す、という構図ではありません。あくまでも50-50の、無敗のコンテンダー同士が戦った末のこの内容、この勝ち方、あるいはこの負け方、これはドラマが詰まっていたファイトでした。
今年は、いったいどのようなノックアウトシーンを見せてくれるのでしょうか。
2026年のノックアウト・オブ・ザ・イヤーも期待しながら、今年もボクシングを楽しみましょう。
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