ニューヨーク、というのは、プエルトリカンが多く住む地域です。
もともと、プエルトリコがスペイン領からアメリカの自治領となった際、多くのプエルトリカンがアメリカのニューヨークへ移住し、現在もニューヨークにプエルトリカンたちの大規模コミュニティが存在する地域。
だからこのNY興行というのは、プエルトリコのボクサーたちにとってもちろんホーム。
サブリエル・マティアスにとっても、久々にリング復帰するマニー・ロドリゲスにとっても、そしてもちろんジェイビエール・シントロンにとっても、ホームカミングファイトです。
この非常に楽しみな興行は、PPV.comというプラットフォームで配信されるPPVファイト。これは本当にもったいない事で、DAZNならばもっと多くの人の目に触れたはずなのに。
ということで今回のブログは、1/10に行われたNY興行の観戦記。
↓プレビュー

1/10(日本時間1/11)アメリカ・ニューヨーク
ジェイビエール・シントロン(プエルトリコ)13勝(6KO)1敗
vs
ビクトル・サンドバル(メキシコ)38勝(24KO)5敗
いつのまにやら、シントロンの相手が変わっていました。このビクトル・サンドバル、28歳にして40戦以上のキャリアを持つボクサーで、最近負けが混んできているとはいえ、負けた相手はタイトルチャレンジャーのヤンキエル・リベラ、統一王者のリカルド・ラファエル・サンドバルといった強豪たち。ゴハン・ロドリゲスには勝利していることから、実力者であることはわかりますね。
初回のゴング、長いジャブを伸ばすシントロン。このサンドバルはいきなりフルスイングから入ってくるボクサーです。この時代において、驚くほど個性的。
そして開始20秒そこそこで、シントロンはこのサンドバルのフルスイングを被弾!それも一発だけではなく、右のオーバーハンドからの左のオーバーハンドを被弾!!シントロンはこれでダウン!!!!
強烈な右から左のフルスイングで、シントロンの顔は左右に思いっきり弾けていました!
すぐさま立ち上がりましたが、大丈夫なのでしょうか。。。!?
再開後、なりふり構わないクリンチでしのぐシントロン!かまわず大振りのフルスイングを続けるサンドバル!!!
この大振りの間にクリンチ、ヘッドバッドアピールでなんとかエスケープしたシントロンは、仕切り直しと言わんばかりに長いジャブとステップ。
そしてこの大振りに見事に右カウンターをあわせ、今度はサンドバルがダウン!!
立ち上がったサンドバル、それでも攻めてきますがここもシントロンがバックステップからのカウンターショット、サンドバルは2度目のダウン!
残り時間は1分、シントロンは仕留めきりたいでしょうがこのフルスイングは超危険。
果たして、シントロンは攻め、またも大振りになるサンドバルに打ち下ろしの左から右のスリークォーターブロー、でしょうか、おそらくこれが顔面に入り、サンドバルは三たびダウン!もう心が折れていそうなサンドバル、シントロンの猛攻を受けて一発逆転を狙いますが、最後はコーナー際でへたり込むようになってレフェリーストップ!
ジェイビエール・シントロン、初回TKO勝利!!!
ものすごいフルスイング・パンチャーでした、ビクトル・サンドバル。負けたのに楽しそうなのが色々な意味でもう何かすごい。彼はボクサーではなく、ただの戦士ですね。
一方でシントロン、開始20秒のダウンは完全に意識を断ち切られてもおかしくないようなショットでした。このダウンシーンは、違法アップロードでも何でもいいから見たほうが良い。そこから4度(3度かも)のダウンを奪って大逆転を成したシントロン、只者ではありませんね。
また日本人との絡みも楽しみです。
エマニュエル・ロドリゲス(プエルトリコ)22勝(13KO)3敗
vs
フェルナンド・ディアス(アメリカ)16勝(6KO)6敗1分
エマニュエル・ロドリゲス、20ヶ月ぶりのリング。ブランクの影響とモチベーション、加齢による反応や能力の衰え、不安を出せばキリがありませんが、そこは元世界王者、きっと大丈夫なのでしょう。
マニー・ロドリゲスにとって、明らかな格下であるこのフェルナンド・ディアスというボクサーは、久々のリング復帰であるマニーにとっては丁度良い相手とも言えます。
ここにディアスのモチベーションによる能力補正というものがついてきたとしても、圧倒したい相手ですね。
さて初回、まずはリング中央でジャブからの様子見。ディアスも良い動き。
しかしこのジャブの差し合いで分がありそうなのはやはりロドリゲスで、そこから攻め入ってくるディアスを相手に早々に右カウンターをヒット。
後半、左を振って強引に入ろうとしたディアスに、ロドリゲスはバックステップしながらの左カウンター!これがジャストミート、ディアスはダウン!
これはおかえり、ロドリゲス!
残り35秒、ここは強引には仕留めに行かないロドリゲス、しっかりとジャブを突いて、長い左フックを浅くもヒットする等して削ります。
2R、ディアスも良いジャブを持っていますが、ロドリゲスには届きません。このディアスのジャブの打ち終わりに右をリターン、ジャブを打っては長いジャブを届かせるロドリゲス。
ディアスはもっとボディを狙うべきですが、中間距離で戦っているのでどうしても押されていますね。どちらかというとロドリゲスが右のボディアッパーを打っており、こちらが良い。
3R、ジリジリとプレスをかけるのはロドリゲス。ディアスはジャブだけでなく左フックも鋭くて良いですが、今のところロドリゲスにヒットしていません。ディアスの勝ち筋としては、偶然でも何でもこれを当てる事かもしれません。
このラウンドもディアスのジャブに対して右のリターンをヒットするロドリゲス、集中している状態では大きな衰えはなさそうです。
4R、ジリジリとプレスをかけるロドリゲス、ジリジリと下がるディアス。
KO率に反して一発のパワーはありそうなディアス、ですがそのパワーも効果的には使えていません。
出ようとすればロドリゲスのカウンターが待っている状態で、恐れずに行けるところはこのディアスにもマチズモの血が流れているところなのでしょう。
5R、ディアスの逆ワンツーが浅くもヒット。初回から、この逆ワンツーは良いですね。
パンチをつなげる回転力もあるディアス、ちょっとロドリゲスは被弾が増えているかも。ただ、ダメージを受けるほどのものではないですね。
中盤、ロドリゲスはディアスを詰めて連打を披露しています。
6R、変わらずプレスをかけるのはロドリゲス。そろそろ前に出ないと勝ち目がないディアスですが、やはりロドリゲスのカウンターを警戒しているのか、なかなか前には出られません。
このラウンドはロドリゲスも集中力を取り戻したか、ディアスの攻撃をしっかりと距離ではずしてリターン、を徹底しています。
7R、ここでようやくディアスが出始めます。やはりこのボクサーはパンチのつなぎがよく、次から次へと手が出てきます。最初からこの戦いをすればよかったのに。
決して打たれて強くない(と思ってしまうのは井上尚弥戦があるからなのですが)ロドリゲスは比較的フィジカルも上の方ではなく、ディアスがグイグイとくると押し込まれてしまいます。
ディアスが距離を潰して連打、これはポイントこそ取りづらいですが削るのには良い。そして、体が密着するこの距離において、ロドリゲスはディアスに比べるとスペースがあかなければパンチを出せていません。
8R、このラウンドは激しい打撃戦。揉み合いの時間も増えていますが、ディアスのやる気が完全に良い方向へ働いています。
中盤、ロドリゲスは左右のボディを叩いてディアスを下がらせ、この打撃戦から抜け出します。
その後はディアスも体で押し込んでいきますが、その中でロドリゲスはカウンター、ディアスの攻撃はそこでストップ。
9R、ガチャガチャとくるディアス、ロドリゲスもこれを迎え撃ちます。この展開になると初回のようなカウンターショットは難しいですね。
ロドリゲスはボディを含めた打ち分けが良い。この近い距離でもしっかりと戦えていますね。
この距離でのロドリゲスの方が的確で、ディアスが勝っているのはフィジカルの、押し込む強さぐらいでしょうか。
ラストラウンド、足を使ってジャブを打ち始めたロドリゲス。おそらく、それで良いでしょう。
ここしかない、とばかりに勇んで出てくるディアス、しかし足を使い始めたロドリゲスには当たりません。
どころか、うちに行ったところをサイドに回られてコンビネーションをヒットされています。
後半に入るとロドリゲスも近い距離で闘う場面も増えましたが、ディアスはロドリゲスを捕まえられないまま試合が終了。
判定は、97-92、99-93×2、3-0の判定でエマニュエル・ロドリゲス。
良くも悪くもロドリゲスらしい試合。ただ、攻められてちょっと弱気になる(弱気に鳴ったように見える)ところもそのまま、という印象ですね。
ともかく、かつてはバンタム級最強の一人と目されていた王者の帰還。是非また日本で見たいですね。
WBC世界スーパーライト級タイトルマッチ
サブリエル・マティアス(プエルトリコ)23勝(22KO)2敗
vs
ダルトン・スミス(イギリス)18勝(13KO)無敗
さて、楽しみなスーパーライト級戦。
王者、サブリエル・マティアスは薬物陽性反応により、それが微量であれどファンの失望を買った事は事実。特に規律に厳しい日本のボクシングファンにとっては、その失望たるや相当なものでしょう。それは私にとってもそうで、であればダルトン・スミスの勝利を望むかというとまた微妙なところ。
個人的にはスミスのスタイルも好きですが、マティアスのスタイルは意味不明だからもっと好きです。
どちらが勝っても微妙な気持ちになりそうなWBC世界スーパーライト級タイトルマッチのゴング。
初回、まずリング中央から快調にジャブを飛ばすのはスミス。マティアスは大きく状態を動かし、いつも通りブロッキングで見る構え。いつもよりも上体を動かしているように感じますが、かといってスミスの鋭いジャブをかわせる訳ではないですから、ほぼ無意味です。
ただ、この序盤のラウンドでマティアスがリードされるのはいつものこと、スミスはまるでマスボクシングかシャドーボクシングのように打って離れてを繰り返します。特にジャブが良い。
ステップワークもよく、マティアスの歩くプレスからスルスルと抜け出しては左を右をビシバシと決めています。スミスは素晴らしいスタート、明らかにポイントを失ったマティアスはいつも通りのスタートです。
2R、マティアスがいつもより早い段階でギアアップ。これはマティアスにとってなかなか危険なことで、まだスミスのスピードに慣れておらず、ここは当然カウンターを喰らっています。
スミスは巧く、近づかれればクリンチ。奥手のアングルもよく、右ストレートとオーバーハンドの軌道を巧く使い分けでいます。危ない距離にはグッと体を入れて距離を潰し、マティアスの強打を徹底して打たせないようにしているのも素晴らしい。おそらくプエルトリカンが多く集まったニューヨークの会場からはブーイングですが、これはダルトン・スミスへの賛辞のようなものです。
やっぱりこのスミスは明らかにリアム・パロの戦い方を参考にしているようで、絶対に足を止めない事が肝要。
3R、良いコンビネーションで攻めるスミス、そしてこれまで足を使ってきた場面でもぐっと距離を詰めて自らリターンを決めています。素晴らしい勇気、やはりこの英国ボクサーは気骨のある素晴らしいファイターです。
逆ワンツーで攻めるスミス、やや頭を下げて突っ込む癖がありますが、腰高なマティアスはこれを嫌がります。こういうテクニックもうまいですね。
後半に入ろうかというところでマティアスは連打で反撃、こうなるとやや動きが止まってしまうスミスはこれに巻き込まれたくはないですね。
まだ3Rですが初回のようには足が動かないスミス、相打ち上等で打ち合いに身を投じます!これは、マティアスのパワーに対して耐えられるという判断なのか、それともすでに危機感を感じ取っての一か八かの玉砕なのか。
終盤、マティアスの左フックがスミスを捉え、スミスは若干足が揃ったように見えます!しかしスミスもその後反撃、鋭い左フックをヒット!これは真っ向勝負で譲らないスミス、素晴らしい!マティアスもちょっと驚いているかもしれません。
4R、ダルトン・スミス、左フックをフルスイング!ボクシングスキルでは決して負けてはいませんが、フルラウンドにわたってマティアスのプレスを捌ききれない、ということなのでしょう、真正面で相対します。
そしておそらく、このスミスにはこの打ち合いの中にも勝機がある。
動きながらも打ち合うスミスは、元々バランスが良くないマティアスの、バランスが整わない時点での打ち合いを選択しています。
退いてはいけないところでは退かないスミス、マティアスはいつも通りに見えてスミスが引いたり押したりしながらの打撃戦を展開する中で、それにあわせてしまっており、いつものようなパンチは打てていないのかもしれません。(いつも手打ちに見えますけど)
後半は足を止めての打ち合い、スミスの被弾も増えます!これはかなり危険な距離、しかし印象的な左フックをヒットしたスミスは、その後、マティアスを体で押し込みます!
この近い距離でマティアスの左がヒット!スミスはぐらり!!
しかし持ちこたえたスミスは、強打を返してラウンドを終了!ゴング後、まだパンチを出しているスミス、空を切りましたがもう結構危ないんじゃないでしょうか。。。
5R、ここもリング中央、真っ向からの打撃戦です!
回転力にまさるスミス、コンビネーションの左フックをヒット!マティアスも押し返し、お互いの頭が揺れながらもスミスは左ボディのダブル、から顔面に返します!
マティアスのショートの左右がスミスの顎を揺らします!しかしスミスは動じずボディショットから顔面へ!なんというタフネス!!
フィジカルはスミス、スミスはまたもマティアスを体で押し込んでロープ際、揉み合いながらの打ち合いです。
レフェリーに引き離されてリング中央に戻り、中間距離のやり取りの中からまっすぐに伸ばしたスミスの左がマティアスにヒット!マティアスの動きが一瞬止まります!!
ここで一気にいかなかったスミス!マティアスが不用意に伸ばした左に、右クロスをリターンするとマティアスはダウン!!!!
立ち上がるも、レフェリーはストップ!!!!
Dreams Come True!!in New York City!!!
これはなんということ!!ビッグアップセット!
ダルトン・スミス、5RTKO勝利で世界初戴冠!!!
両者ともに、本当に素晴らしいファイトでした。
結果は5Rでダルトン・スミスのノックアウト勝利ですが、かなりのピンチに陥っていたのもまた事実。
幾度も「マティアスのKOパンチ」を叩き込まれたダルトン・スミス、心も折れず、本当によく戦い抜いたと思います。
マティアスのパンチはKOアーティスト、と呼ばれるもののそれではなく、とにかく対戦相手の心が折られるパンチ。それをあれだけもらっても倒れず、逆に向かっていったスミスは、この日のためにとてつもない準備をしてきたのでしょう。
どっちが勝っても微妙な気持ちになる、と思っていたこのファイトは、ダルトン・スミスのこの戦い方とこの勝利により、とても晴れやかなものになりました。
マティアスを「悪」と断じたくはありませんが、悪の栄えた試しなし、です。
この試合はFOTY候補としても良いぐらいのファイトだったと思います。
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