2/8(日)はフェザー級の世界タイトルマッチ、そしてその前日、2/7(土)はバンタム級の世界タイトルマッチです。
メキシコ、グアラダハラのリングに登場するのは、昨年9月に自身初の世界タイトルを獲得しての凱旋初防衛戦となるクリスチャン「チスパ」メディナ。
敵地・ハポンに乗り込み、現地の大スター武居由樹を衝撃的なノックアウトで破って世界初戴冠を果たしたチスパは、これをクリアすればジェシー・ロドリゲス戦も囁かれる大事な一戦を迎えます。
ということで今回のブログは、クリスチャン・メディナvsアドリアン・クリエル、BXSTRS×マッチルームのメキシコ興行のプレビュー。

2/6(日本時間2/7)メキシコ・ハリスコ州グアダラハラ
WBO世界バンタム級タイトルマッチ
クリスチャン・メディナ(メキシコ)26勝(19KO)4敗
vs
アドリアン・クリエル(メキシコ)26勝(5KO)6敗1分
2025年9月、名古屋の地で日本のボクシングファンに凄まじい衝撃を与えたクリスチャン・メディナが、ついに母国メキシコで初防衛戦のリングに上がります。
現王者クリスチャン・メディナ、彼の評価が一気に上がったのは、言うまでもなく前戦での武居由樹との一戦でしょう。
当時、破竹の勢いで世界王座に君臨し、その爆発的なパンチ力でパンチャーとしての地位を確立していた武居に対し、メディナは完全なるアンダードッグとしての来日でした。しかし、試合開始のゴングが鳴った瞬間、我々が目にしたのは「本物のメキシカン・プレッシャー」の真髄でした。
この「チスパ」メディナは2度目の来日であり、2023年の来日時には西田凌佑に敗れていましたから、鋭いパンチを持っているにしても十分に対策可能なボクサー、として映っていました。しかし、この武居戦では完全な武居対策、サウスポー対策を施しており、それは那須川天心とのスパーリングがそうさせたようですが、残念なことにこの試合は武居の未来のビッグマッチ、vs那須川天心戦を奪う結果となってしまいました。
武居戦でのメディナは、序盤から臆することなく距離を詰め、武居の長いリーチと変則的なアングルからの攻撃を無効化していきました。特筆すべきは第1ラウンド。メディナが放った真っ直ぐな右ストレートが、完璧なタイミングで武居の顎を捉え、無敗の王者をキャンバスへ沈めたシーンです。あの瞬間、IGアリーナは凍りつきました。メディナのパンチは、単に力任せなものではなく、非常に鋭いスイングと素晴らしいタイミングを伴ったものでした。
その後の展開も、メディナの戦術的な質の高さが光りました。武居がサイドステップを使い、アングルを変えようとしても、メディナは丁寧なブロッキングと絶え間ないプレスでその退路を断ちました。ガードの上からでも構わず叩きつけるような左右のフック、そして懐に入り込んでからのえぐり込むようなボディブロー。メディナのボクシングは、相手に一息つく暇も与えない、まさに相手を窒息させるようなボクシングでした。
最終となった第4ラウンド、メディナはコーナーに追い詰めた武居に対し、凄まじい回転力の右アッパーを連打しました。レフェリーが割って入るまで、メディナの勢いは全く衰えていませんでした。
あの一戦で、彼は単なる「タフなメキシカン」ではなく、トップレベルの技術と爆発力を兼ね備えた「Chispa(火花)」であることを世界に知らしめたのです。今回、彼は王者として初めて地元グアダラハラのファンにその姿を見せることになりますが、そのプレッシャーすらも力に変えてくるに違いありません。
▼観戦記
一方の挑戦者、アドリアン・クリエル。彼もまた、ボクシング界に衝撃を与えた一人として記憶されています。その最たる例が、2023年11月に行われたシベナティ・ノンシンガとの第1戦です。
当時のノンシンガは、南アフリカが誇る「スペシャル・ワン」として、その機動力とシャープなジャブで絶対的な優位が伝えられていました。
対するクリエルは、それまでKO率が低く、どちらかと言えば「判定まで持ち込む泥臭いファイター」というイメージが強かった選手です。しかし、モンテカルロの地で彼が見せたパフォーマンスは、その評価を根底から覆すものでした。
クリエルは立ち上がりから、かつてのメキシコ人ボクサーが体現していたような執拗なプレスを敢行しました。ノンシンガのジャブをヘッドスリップでかわしながら肉薄し、自らの距離で戦うことを強いました。そして第2ラウンド、試合を終わらせたのは一本のオーバーハンド・ライト。それはクリエルのキャリアの中で最も力強く、そして正確な一撃でした。ノンシンガはそのまま失神し、ボクシング界に新たな衝撃が走りました。
▼観戦記
クリエルはその後、ノンシンガとの再戦でベルトを失い、サニー・エドワーズ戦でも苦杯を喫しましたが、その後の再起戦では白星を重ね、バンタム級へと階級を上げてきました。
クリエルの強みは、その執念深いインサイドワーク。但し、これまでライトフライ級〜フライ級を主戦場としてきて、そこでこのKO率、と考えると、やはりさすがにメディナ相手にそのパワーが通用するとは思えません。
では、アドリアン・クリエルに勝ち筋があるのか、を考えてみましょう。
まずこの試合は、十中八九近い距離でのファイトになると思いますが、両者の「プレスのかけ方」には違いがあると感じます。
王者のメディナは、よりトータルバランスに優れ、どの距離からでも強打を打ち込めるパワーファイターです。特に武居戦で見せた右ストレートと右アッパーは、バンタム級でも屈指の破壊力を秘めていると思います。
対するクリエルは、より重心を低く構え、相手の懐に潜り込んでからのショートパンチ、そしてそこからの執拗な揉み合いを得意とする「泥臭い」プレッシャーです。メディナが力強く強打を放てる空間を、クリエルがいかに潰していけるかが鍵となるでしょう。
個人的に注目したいのは、序盤の主導権争いです。メディナは立ち上がりの集中力が非常に高く、武居戦のように早い段階でダウンを奪い、試合の流れを決定づける力があります。クリエルとしては、メディナの初動をいなしつつ、いかに早い段階で得意の密着戦に持ち込めるか。メキシコ人同士の戦いらしく、ジャブの差し合いよりも、肩をぶつけ合うような至近距離での削り合いが展開される可能性が高いでしょう。
とはいえ、どう考えてもメディナ優位は動きません。ただ、アドリアン・クリエルはアップセットを起こすなにかを持っているボクサーとも言えます。KO率こそ低いですが、そのパンチは非常に力強く感じた、というのも、紛れもない感想です。
もしかしたら、密着状態で戦った時、メディナもそれほど力を発揮出来ない可能性もありますしね。
ともあれ、バンタム級の動向は日本のボクシングファンにとって最大の関心事。メディナのスカ勝ちに期待して見ましょう。
アルベルト・モラ・ガルシア(メキシコ)13勝(9KO)無敗
vs
ホセ・アマロ・ゲレロ(メキシコ)12勝(4KO)1敗1分
また、この日のアンダーカードで行われるスーパーフェザー級の10回戦、アルベルト・モラ・ガルシア対ホセ・アマロ・ゲレロの一戦も見逃せません。
無敗を維持するアルベルト・モラ・ガルシアは、現在メキシコのスーパーフェザー級において非常に期待されているプロスペクトの一人のようです。
映像を見る限り、彼のボクシングは、長身を活かしたロングレンジからのジャブと、返しの左フックが非常に強力です。直近の試合でも堂々とした戦いぶりを見せており、その安定感は既に中堅レベルを凌駕、地域タイトルもいくつか獲得しているようです。
対するホセ・アマロ・ゲレロは、サウスポースタイルの技巧派です。戦績こそKO率は高くありませんが、そのフットワークとディフェンス技術は一級品。ガルシアのようなパワーパンチャーに対し、いかにフラストレーションを溜めさせ、自分の土俵に引き込めるかが焦点となります。
この階級のメキシカンといえば、エマニュエル・ナバレッテをはじめ、エドゥアルド・ヌニェス、「ベナド」ロペス、あとは「ロッキー」エルナンデスやらオスカル・バルデスなんかもいます。
そういった王者、元王者に絡んでいけるか、そんな注目の一戦ですね。
放送・配信情報
この興行は、日本時間2/7(土)AM10:00からDAZNにて生中継される予定です。メインイベントはお昼すぎくらいになりますね。メキシコでは金曜日の夜なので、日本時間でいつもの「日曜の昼」ではないのでご注意ください。
メキシコの熱狂的なオーディエンスに囲まれたリングで、二人の戦士がどのようなドラマを紡ぎ出すのか。休日の午前中を費やす価値は、十分すぎるほどにあります。
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