イギリス、リバプール。
最近ボクシング興行が増えている、のかどうなのかはよくわかりませんが、よく目にする機会があるのはニック・ボールのおかげですし、プラットフォームをDAZNに変更したクイーンズベリー・プロモーションのおかげです。
DAZNというプラットフォームは、全世界に自分のところのボクサーを売り出すのに最も適当なプラットフォームである、と言えます。
早く日本のプロモーターたちにも参戦してほしいと思います。このままでは、いつまで経ってもガラパゴスのままです。
さて、ともあれ、またもリバプールで行われたニック・ボールの防衛戦。今回のクイーンズベリー興行には、ボールのほか、アンドリュー・ケインやジャック・ターナーといったリバプール出身、軽量級のプロスペクトたちも登場する、日本のボクシングファンにとって非常に興味深い興行になっています。
ということで今回のブログは、ボールvsフィゲロアの観戦記。

2/7(日本時間2/8)英国・リバプール
WBC世界バンタム級挑戦者決定戦
アンドリュー・ケイン(イギリス)14勝(12KO)1敗
vs
アレハンドロ・ゴンサレス(メキシコ)19勝(6KO)6敗3分
「ネクスト」ニック・ボールとも言えるコンテンダー、アンドリュー・ケイン。
ボールほどの特異性はありませんが、非常にアグレッシブなファイターですね。今回はWBC世界バンタム級挑戦者決定戦、このボクサーが井上拓真vs井岡一翔の勝者に挑む事になるのかもしれません。
さてゴング、ケインは黒のウィニングを着用。それだけで応援したくなります。
対するゴンサレスはライバル社のグローブに、トランクスには日本語で「コネホ」の文字。これはスペイン語で「うさぎ」を意味し、彼のニックネームのようです。
まず様子見のラウンド、ケインはステップを踏みながらもインサイドに入ろうとする立ち回り。対する「コネホ」ゴンサレスは、確かにうさぎのように飛び跳ねる系のフットワークで快調にジャブ、コンビネーション。
おそらくウェイトの載ったパンチではないでしょうが、このフットワークは捕まえづらいかもしれません。
2R、ケインもパンチのつなぎが良くなってきました。この回転力というのはアンドリュー・ケインの特徴の一つであり、今やボールとも相まってリバプールのボクサーは「とにかく空振りしても手数が出まくる」というイメージです。あと坊主。
ただ、ゴンサレスも反応が良いですね。
3R、プレスをかけるのはケイン。ゴンサレスが出すパンチのほとんどはリードブローで、なかなか右を出すところまでパンチを繋げられていません。
4R、ゴンサレスはやはり基本的にディフェンス主体ながらも、時折激しくパンチを振るう場面が出てきています。
長いジャブ、更に長いボディジャブはタイミングがよく、ケインはちょっと入りきれないイメージ。インサイドに入っても、ゴンサレスのディフェンスはステップとボディムーブを組み合わせて良いもので、このラウンドはゴンサレスのボディジャブにポイントが流れるのではないでしょうか。
5R、ゴンサレスはケインの攻撃にかなり慣れてきているか、かわしてのカウンターも様になっています。ケインはややリズムが探鳥で、近づけないからか連打も出ていません。
もう少し削りに行かなければ、リズムに乗ってしまっているゴンサレスを捕まえられない可能性があるのではないか、と思います。
終盤にはゴンサレスがプレスをかける場面もあり、アレハンドロ・ゴンサレス、強振して空振りするも、メキシカンらしさが出てきています。
6R、ケインのプレスがいつも通りになりつつありましたが、ここでゴンサレスの右オーバーハンドがヒット。下がりながらのカウンターが良いゴンサレス、ケインが打ち込んできたときにも迎撃する等して、ハートも強いですね。
7R、良い攻めを見せているのはゴンサレスの方で、ケインはジャブの次のパンチを繋げられません。中盤、ケインはサウスポーにスイッチしたりしてみますが、迷いがあるのは明らか。
8R、そろそろ巻き返さなければならない、と感じたのか、ケインはラウンド開始早々に強い攻め。しかし、それも続かず、ゴンサレスのジャブが非常にタイミングがよく、これをかいくぐってインサイドに入れません。
長い距離でのワンツーをヒットしたゴンサレスは、近づいて左のボディを強振。中盤にはプレスをかけてケインを追いかけていき、ロープに詰めてラッシュ。ケインのパワーパンチでの反撃も何のその、パンチを出し続けるゴンサレス、後半、ちょっとケインの動きが落ちたか、というところで右のボディショット、ケインは大きく身体を歪ませます!
ここにゴンサレスは追撃すると、ケインはダウン!!!
ボディでのダウン、これは深刻です!ここまで確かにゴンサレスは強いボディを何度かケインに決めていましたが、ここまでダメージがあるとは。
再開後、残り時間は30秒!すぐに回復するダメージではないでしょうから、本来ケインは時間を稼ぐべきでしょう。
しかし再開後、ケインは前に出てゴンサレスと向き合い、ゴンサレスはこれ幸いとプレスをかけてボディを連打!ケインは左右のフックを顔面に集めます!ゴンサレスは顔面へのパンチをもらいながらもボディを規則正しく、そして強くショット、終盤に右ボディをヒットするとケインはこのラウンド2度目のダウン!!!
立ち上がったところでラウンドが終了!!ビッグアップセットまであと僅か。。。!!
9R、ケインのダメージはどうか。ボディを打たれないよう、足を使う必要がありそうなケインですが、なぜだかそんな事はしません。これは勇気があるというよりも蛮勇に近いのでは。
それでも少し足を使いはじめたケイン、クリンチも駆使しての時間稼ぎ。しかしゴンサレスが攻め込んだところで左フック、これは相手を回そうとしたものの感じがしますが、それがヒットするとゴンサレスはバランスを崩してダウン!
会場は大盛りあがりですが、ゴンサレスは不服そう。スリップにも見えるものでした。
と思いましたが、なんだかダメージがありそうなゴンサレス。
そしてやけに自信満々にグイグイと相手の前に進み、強打を見舞うケイン!
明らかに動きの落ちたゴンサレスに4パンチコンビネーション、下がるゴンサレスに止まらない連打!ゴンサレスはダウン!!
立ち上がるも、ここでレフェリーがストップ!!!
とんでもない大逆転KO勝利です!アンドリュー・ケイン!!
ボディで2度のダウン、というのはそのまま決められてもおかしくはなく、8Rにもう10秒時間があったならば、勝敗はまた違ったものになっていたかと思います。
ゴンサレスは掌から勝利がするりとこぼれ落ちましたが、アンダードッグとして敵地のリングに上がり、株を上げる試合だったのではないでしょうか。
ジャック・ターナー(イギリス)13勝(12KO)無敗
vs
ファン・カルロス・マルティネス・ウルビナ(ニカラグア)10勝(4KO)3敗1分
あわやアップセットが起こりそうだったですが、何とか勝ちきったアンドリュー・ケイン。そんなケインに続いて登場するのはスーパーフライ級のコンテンダー、ジャック・ターナーです。
やっぱりボクシングは何が起こるかわかりません。なのでこの試合もしっかり見なければなりませんね。
初回、まずは高身長のターナーが鋭いジャブ。しかしその直後、マルティネスも鋭いジャブをターナーに決めています。
その後ターナーが力強いボディを見舞いますが、これがどうやらローブロー。休憩を与えられたのちに再開、マルティネスのスイングもなかなか鋭いですね。
やや前傾に構えるターナー、小気味よくコンビネーションが出ますが、これが非常に力強い。マルティネスはこの迫力にちょっと手数が減っています。
終盤、ターナーはパワージャブでマルティネスのバランスを崩し、右のボディショットから左フックをフォロー。これでマルティネスはダウン!立ち上がったところでラウンドが終了しています。
ターナー、このスイングは明らかにパワーがやばいですね。
2R、ジリジリとプレスをかけるターナー。鋭いスイングのこのパンチを連続して打てるターナーは、相手にとって脅威ですね。
この強打の嵐の中に、マルティネスはいかにパンチを返せるか、というのがマルティネスにとっての戦い方ですが、分断のためにマルティネスはクリンチを選択。
その後もステップワークを駆使したディフェンシブな戦法で、さらに言えばこれで逃げ切れているわけでもなく、ちょっと苦しいですね。
3R、やはり明らかにエスケープの構えのマルティネス、これに対してターナーは飛び込みの左フックのダブル。大振りで打ち終わりが雑に思えるほどのスイングですが、以外とこのボクサーはミスブローのあとにバランスを崩す事が少ない。これだけのスイングは、もっとバランスを崩していてもおかしくありません。
そのうち終わりを狙ってパンチを出しはじめたマルティネス、せいぜい出すのは一発がやっとですが、出さないよりは幾分も良いでしょう。
後半、ターナーのプレスに捕まったマルティネスはなりふり構わずクリンチ、というかもうガッチリとしたハグ。このしつこいハグにレフェリーは減点。
追いかけて追いかけて、思いっきり振りかぶってフルスイングするジャック・ターナー。とても素敵なボクサーですね。
4R、開始のゴングが鳴るも、マルティネスはコーナーを出てきません。ノー・マスとのこと。
これは致し方ありません、マルティネスはもう初回からビビってしまっていました。
とにかくパワーと勢いはものすごいのでしょう、これは今後も楽しみなボクサー。
現在、WBA8位、WBOで10位。そろそろ世界的強豪との対戦が見たいですね。
WBA世界フェザー級タイトルマッチ
ニック・ボール(イギリス)23勝(13KO)無敗1分
vs
ブランドン・フィゲロア(アメリカ)26勝(19KO)2敗1分
さて、いよいよメインイベント。
世界王者となり4度目の防衛戦にして、リバプールに凱旋しては3度目の防衛戦のWBA世界フェザー級王者、ニック・ボール。ケインと同じく黒のウィニングですね。対するはその旺盛な手数としつこい連打で相手の心を折る「ハートブレイカー」ブランドン・フィゲロア。
打撃戦以外の展開にはなり得ないファイトです。
初回のゴング、フィゲロアはサウスポースタートです。ボールはこの高身長の相手に大きく攻め入ろうとしています。フィゲロアはどうやらストレートの距離での打ち合いをしたいようで、ジャブを多用。しかし先にビッグ・ヒットを奪ったのはボール、沈み込んでからの左アッパーをヒットして会場を沸かせます。
当然のごとく早々に距離はつまり、両者ともにアッパー、フックを繰り出す展開。一発の強さは体全体を使ってパンチを放つポール、ややもらい方がよくないフィゲロアは手数勝負と言った感じ。
2R、若干ステップを踏み出したフィゲロアは相変わらずサウスポー。ちょっと得で戦いたいのか?と思いましたがそうでもなく、自ら攻めて距離を潰しています。いずれにしろ、距離が開いた際にはサウスポーからの左ストレートを有効と考えてのことなのでしょう。
サウスポースタンスを主軸として、時にオーソドックスにスイッチするフィゲロア、ボールは固いガードと左のフックを上手く使い、こちらも右も左も関係なく時折スイッチしながら打ち込んでいきます。
早くも想定された通りの打撃戦の展開。
3R、アツくなりすぎる二人のファイター、距離はほとんど詰まりっぱなしです。ジャッジにとって非常に難しいラウンドがこれからも続いていくのでしょう。
そして、おそらく優劣がつくとすれば後半のはずです。
4R、前半、フィゲロアの真っすぐの左ストレートがボールの顔を跳ね上げる場面があり。中盤にも同じパンチでボールは後ろに押されます。
これはジャッジの印象をフィゲロアに持ってこれるかもしれません。
5R、そうはいっても、この我慢くらべの展開、さっきはこっちにつけたから今度はあちら、みたいに、ジャッジの中で調整が働くことも考えられますね。
このラウンド、ニック・ボールが鼻から出血。しかし気にする事はなく、後半、ボールは右ストレートをフィゲロアにコネクトしています。
6R、初回ほどはガチャガチャした展開にはならず、両者ともに相手のパワー、距離、コンビネーションを把握している状態かと思います。このラウンドは離れ際二ボールが良い左フックをヒットしたり、左アッパーからのワンツー等良い攻撃を見せているように見えます。
ただ、鼻血の影響で呼吸がしづらいのか、それとも元々こんなものなのか、ボールのクリが開いているように見えるのはちょっと気になるところですね。
7R、このラウンドはボールのパンチが比較的多く当たっているように見えます。但し、これはフィゲロアの髪の毛が長く、揺れるところにも起因しているかもしれません。
特に映像で見る場合、この髪の毛の揺れの効果は大きい。ボールの鼻血はまだ止まっていないようですね。これだともしかしたら鼻から酸素を取り入れられてないかもしれません。
8R、フィゲロアが意識して上下に打ち分けるコンビネーションを使っ散るように見えます。やや長めの距離での右ボディを織り交ぜ、オーソドックスにスイッチして左ボディ。
幾度かはボールをロープ際まで押し込んでチャージ、ここから抜け出せるか。
9R、このラウンドもフィゲロアは手数とフィジカルで押し込んでいきます。途中被弾もしますが、ボールが下がる事が多くなっているように見えます。
パワーパンチで単発気味のぼーる、一発一発は手打ちに見えてもどんどんどんどん手数が出てくるフィゲロア、やはり後半に抜け出してくるのはフィゲロアなのかもしれません。
ボールの一発が当たればデカいですが、こまめに頭の位置を変えるフィゲロアには、なかなか単発では当たりません。
10R、このラウンドもフィゲロアのコツコツとしたパンチがボールの顔面を捉えているように見えます。かといって、ボールがダメージを負っている風ではありませんが、やはりこのクリーンヒットはポイントになりえます。
11R、流れも何もあったものでもないですが、なんとなく若干フィゲロア優位か、それでもとにかくこのチャンピオンシップラウンド勝負でしょう。
フィゲロアはもちろん、このラウンドに来ても元気に攻め入ります。前ラウンドまでよりも力感は増しているようにすら思います。
ボールが左フックを振り抜いても平然と打ち返してくるフィゲロア、この圧倒的な手数はボールの手数を少なくすることにも寄与しているでしょう。
ラストラウンド、当然ここは攻めるフィゲロア。やっぱりボールは下がってしまいます。
とここでまさかの事件、フィゲロアの左ストレートが、ニックボールのフルスイング左フックのカウンターとなり、ボールがダウン!!!
前のめりのダウン、レフェリーはカウントを数え。。。立ち上がるも、ダメージはかなりのもの!倒れ方を見れば、止めても問題ないところですが、ホーム、リバプールの観衆の前でそれは出来ない相談なのかもしれません。
再開後、襲いかかるフィゲロア、ブロッキングしたままロープ外へ落ちるボール!レフェリーはストップ!!!
ブランドン・フィゲロア、最終回TKO勝利で王座返り咲き!!
絶対最後までいくと思っていましたが、ドラマの幕引きは本当に突然のものでした。
ボールは反撃することに頭をとられたことで全くもってフィゲロアの左を予想しておらず、思わぬところでもらってしまったのでしょう。
おそらく、それが考えられないほどに疲弊していた、削られていた、ということなのかもしれません。
「ハートブレイカー」フィゲロアは、ニック・ボールのように決してハートばブレイクされないボクサーにとっても、ブレインをブレークさせるボクサーなのかもしれません。
フルトン第2戦では情けない負け方をしてしまったフィゲロアですが、真正面から戦ってくれるニック・ボールのようなボクサーには、まさに無類の強さを発揮すると言えます。
さてさて、フェザー級。
フィゲロア、カリントン、エスピノサ、レオ。
やはり大きく飛び抜けたボクサーはおらず、王座統一戦が待たれますね。
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