2月21日(日本時間2月22日)、ボクシングの聖地ラスベガスのT-モバイル・アリーナで開催される「High Stakes」(一か八か、とか、大勝負、みたいな意味だそうです)と銘打たれたビッグイベント。
メインカードのマリオ・バリオス対ライアン・ガルシアという注目(?)の一戦のアンダーカードとして、非常に興味深い2つの対戦が組まれています。
1つは、IBF世界スーパーライト級タイトルマッチ、20勝無敗の王者リチャードソン・ヒッチンズに、強打のメキシカン、オスカー・ドゥアルテが挑む一戦。そしてもう1つは、実力者フランク・マーティンが、新鋭キラーとして知られるナヒール・オルブライトと激突する一戦です。どちらも今後のスーパーライト級の勢力図を占う上で、決して見逃せない戦いです。
ということで今回のブログは、バリオスvsガルシアのアンダーカードにセットされた、スーパーライト級トップ戦線の2戦をプレビュー。

2/21(日本時間2/22)アメリカ・ラスベガス
IBF世界スーパーライト級タイトルマッチ
リチャードソン・ヒッチンズ(アメリカ)20勝(8KO)無敗
vs
オスカー・ドゥアルテ(メキシコ)30勝(23KO)2敗1分
リチャードソン・ヒッチンズは、現在のスーパーライト級において最も「ボクシングが巧い」選手の1人と言えるでしょう。ハイチにルーツを持ち、2016年のリオデジャネイロ五輪にも出場した輝かしいアマチュアキャリアを持つヒッチンズは、プロ入り後もその卓越したディフェンス技術と、スピード感あふれるジャブを武器に白星を積み重ねてきました。
これまでのヒッチンズに対する評価は、「極めて高い技術を持つが、倒しにいかない安全運転のボクサー」というものが一般的でした。しかし、その評価を一変させたのが、2025年6月に行われたジョージ・カンボソス・ジュニアとの防衛戦です。地元ニューヨークのリングに上がったヒッチンズは、元3団体統一王者を相手に圧倒的なパフォーマンスを披露。それまでの「判定決着」のイメージを覆し、8ラウンドに見事なボディショットでカンボソスを沈め、TKO勝利を飾りました。
この試合で見せたヒッチンズのボクシングは、まさに「玄人好み」の技術に「凄み」が加わったものでした。リーチを活かした正確無比なジャブで相手をコントロールし、絶妙なタイミングで強打を織り交ぜる。ディフェンスにおいても、相手にクリーンヒットを許さない集中力の高さは特筆すべきものがあります。今回の防衛戦では、その「進化したヒッチンズ」が、プレッシャー自慢のドゥアルテをどう捌き、あるいはどう迎え撃つのかが最大の焦点となります。
対する挑戦者のオスカー・ドゥアルテは、まさにヒッチンズとは対照的な「ファイター」の魅力を持つ選手です。メキシコ出身のドゥアルテは、高いKO率が示す通り、一撃で試合を決めるパワーと、執拗なプレッシャーを武器に戦います。
彼のキャリアにおいて最大の転機となったのは、2023年12月に行われたライアン・ガルシア戦でしょう。結果こそKO負けを喫したものの、中盤までガルシアを追い詰め、そのパワーの脅威を世界に知らしめました。その後、彼は名匠ロベルト・ガルシアのもとでトレーニングを積み、技術的な成長を遂げています。
直近の試合である2025年8月のケネス・シムズ・ジュニア戦は、ドゥアルテの強さが存分に発揮された試合でした。技巧派のシムズに対し、ドゥアルテは12ラウンドにわたってプレッシャーをかけ続け、パワフルな左右のフックで相手を削り続けました。結果はマジョリティ・デシジョンでの勝利でしたが、その攻撃的な姿勢とタフネスは、誰が相手でも脅威となることを証明しました。ドゥアルテにとって、今回の世界初挑戦は悲願のタイトル獲得に向けた千載一遇のチャンス。自慢の強打を、ヒッチンズの難攻不落のディフェンスにどう届けるかが鍵となります。
この試合の構図は、非常に明確です。ヒッチンズが距離を支配してドゥアルテを完封するか、それともドゥアルテがその壁をこじ開けて強打を叩き込むか。
ヒッチンズとしては、序盤からジャブを多用し、ドゥアルテを近寄らせない展開を望むでしょう。カンボソス戦で見せたような、相手の出入りを完全にコントロールするボクシングを徹底すれば、ドゥアルテの焦りを誘い、カウンターのチャンスも生まれるはずです。一方で、ドゥアルテがこれまでの相手と違うのは、打たれても前進を止めない精神力と、一発で形勢を逆転させるボディブローの強さです。
いつだって、スキルフルなボクサータイプに番狂わせを演じる事ができるのは、ゴリゴリのファイタータイプです。
注目したいのは、ドゥアルテがロベルト・ガルシアとのコンビで培った「追い足」。単に突っ込むのではなく、角度を変えながらヒッチンズの逃げ道を塞ぐことができれば、試合は混沌とした展開になるでしょう。いわゆる「リングカット」というスキルが、果たしてヒッチンズを捕まえられるかどうかの勝負。
ヒッチンズの洗練されたボクシングを、ドゥアルテの泥臭くも強力なプレッシャーが飲み込むのか。あるいはヒッチンズが、再び見事なストップ劇で「スーパーライト級最強」の一角であることを証明するのか。非常に見応えのある、緊張感に満ちた12ラウンドになることが期待されます。

フランク・マーティン(アメリカ)19勝(13KO)1敗
vs
ナヒール・オルブライト(アメリカ)17勝(7KO)2敗(1NC)
これは素晴らしいマッチアップだと思います。
「The Ghost(ザ・ゴースト)」の異名を持つフランク・マーティン。その名の通り、捕まえどころのないスピードと、サウスポースタイルから繰り出される鋭い攻撃が持ち味の選手です。デリック・ジェームスに指導を受けるマーティンは、かつてライト級で最も恐れられるボクサーの1人と目されていました。
彼のキャリアにおける最大の試練は、2024年6月のジャーボンタ・デービス戦でした。序盤はスピードと技術で好スタートを切り、タンクの手数の少なさからペースを握る時間帯もありましたが、後半にデービスの破壊的なパワーに捕まり、8ラウンドKO負け。初黒星を喫したものの、トップ戦線で通用する実力があることは十分に示したと思います。
その後、2025年12月に行われたランセス・バルテレミー戦では、4ラウンドに見事なKO勝利を収め、再起を飾っています。今回のナヒール・オルブライト戦は、再び世界タイトル挑戦へと駆け上がるための重要なステップとなります。ライト級からスーパーライト級へと主戦場を移し、よりパワフルになった「ゴースト」が、どのようなパフォーマンスを見せるのか注目が集まります。
ナヒール・オルブライトは、戦績以上の恐ろしさを持つボクサーです。彼は、期待のホープや実力者を相手に「番狂わせ」を演じることでその名を上げてきました。
2023年には強豪キーショーン・デービスと対戦し、当初は判定負けでしたが、後に相手の薬物検査陽性によりノーコンテストとなる激闘を演じました(内容は非常に競ったものでした)。さらに2025年6月には、ケルビン・デービスを相手に明白な勝利。
この勝利は、キーショーンへのリベンジを成功させたに等しい勝利です。いや、ちょっと言い過ぎか。
オルブライトの武器は、高い身体能力と、どんな状況でも諦めない精神的なタフネスです。相手のペースになりかけても、粘り強くチャンスを伺い、一発の重みのあるパンチで試合をひっくり返す力を持っています。
エリート街道を歩んできた選手にとって、オルブライトのような「負けを恐れず、常に勝ちを狙いに来る」タイプは、最もやりづらい相手と言えるでしょう。
この試合の注目ポイントは、マーティンがオルブライトの「不気味な粘り」をどう攻略するかです。技術、スピード、パワーの総合力ではマーティンが上回っていると考えられますが、オルブライトは相手の隙を見逃さない鋭さを持っています。
マーティンとしては、デービス戦の反省を活かし、集中力を切らさずに自分の距離で戦い続けたいところです。サウスポー特有の角度からの攻撃でオルブライトを寄せ付けず、中盤以降にダメージを蓄積させていく展開が理想的でしょう。しかし、オルブライトがマーティンのスピードに慣れ、乱戦に持ち込むようなことがあれば、波乱の展開も十分にあり得ます。
マーティンが圧倒的な力の差を見せて「ゴースト」の完全復活を印象付けるのか。それとも、オルブライトがまたしてもトップボクサーのキャリアを狂わせる「ジャイアント・キリング」を達成するのか。
テクニカルでありながら、一瞬も目が離せない激しい攻防が期待されます。
配信情報
この興行は、DAZN PPVでライブ配信。
DAZNの配信開始時間は、日本時間2/22(猫の日)の7:45からです。
メインイベントはいつも通り昼過ぎくらいになるでしょうね。
メインイベントは余り興味が湧かないファイトですが、そのアンダーカードは素晴らしく、このスーパーライト級の2戦のほか、WBA世界スーパーライト級タイトルマッチ、ゲイリー・アントワン・ラッセルvs平岡アンディという最注目の試合もあります。
そう、スーパーライト級祭りであり、そのどれもが興味深い試合です。メイン以外は。
PPV料金は3,000円、これは必ず視聴しなければならない興行です。
↓アントワンvs平岡のプレビュー
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