今月も、国内ではダブルアジアタイトル戦を擁するダイナミックグローブや、クアドラプル・タイトルマッチとなるフェニックスバトル、海外でもセバスチャン・フンドラvsキース・サーマンといった注目ファイトがありますが、最も注目すべき興行は何といっても3/15(日)に行われるU-NEXT BOXINGです。
トリプル世界タイトルマッチに加え、バンタム級の挑戦者決定戦という大ボリューム興行、これを平日にやるなら泣くしかありませんが、今回は珍しく日曜日。
楽しみで仕方ありませんね。
もう一週ずれていれば、出張と重なって現地観戦できたのに。。。というのは個人的に若干残念なところではありますが、ともかく楽しみで仕方ありません。
ということで今回のブログは、3/15(日)に開催されるU-NEXT BOXING、メインイベントのWBA世界バンタム級タイトルマッチ、ノニト・ドネアvs増田陸のプレビュー。

3/15(日)U-NEXT BOXING
WBA世界バンタム級挑戦者決定戦
ノニト・ドネア(フィリピン)43勝(28KO)9敗
vs
増田陸(帝拳)9勝(8KO)1敗
まずは「フィリピーノ・フラッシュ」、ノニト・ドネア。
もはや説明不要、ボクシング界の生ける伝説です。 前戦、堤聖也(角海老宝石)に挑んだ一戦を改めて振り返ってみると、そこには40代に突入したボクサーが一般的に見せる「衰え」とは別の次元の強さが同居していました。
結果こそ判定負けでしたが、あの試合で見せたドネアのパフォーマンスは、やはり世界トップレベルのそれでした。全盛期の、光が走るようなスピードや、相手を置き去りにするようなステップワークは確かに影を潜めたかもしれません。しかし、代わりに研ぎ澄まされたのが、相手の動きを読み切り、最小限の動きで最大の結果を生む「当て勘」と「殺傷能力」です。
堤戦で見せたあの右アッパー。堤をダウン寸前まで追い込んだあの一撃。
ドネアというボクサーは、12ラウンドのどこかで、必ず「何かしらの一発」を当てる術を持っています。これは単なる技術ではなく、数々の死線を潜り抜けてきたレジェンドだけが持つ、野生の勘に近いものなのでしょう。
一方で、冷静に直視しなければならないのはスタミナの欠如、そして中盤以降の失速です。 堤戦でも、前半はドネアの重厚なプレッシャーと一打必倒の雰囲気で支配していましたが、後半は堤の止まらない手数と執拗なボディワークに屈する形となりました。
出力のコントロールが難しくなっているのか、あるいは一発に頼りすぎるあまりにコンビネーションが減っているのか。 今回、若くて馬力のある増田を相手に、12ラウンズという長丁場をどうマネジメントするのか。レジェンドが最後に見せる輝きなのか、それとも限界の露呈なのか。そこには一抹の不安と、それを上回る期待が入り混じっています。
対するは、帝拳ジムが送り出す「侍」、増田陸。
彼のキャリアを語る上で欠かせないのは、その左ストレートの圧倒的な破壊力です。 数々の鮮烈なノックアウトシーンを演出してきた増田の、最も衝撃的なノックアウトといえば2024年2月に行われたジョナス・スルタン戦。あれは本当に見事でした。
増田の左は、ボクシングのパンチというよりは、鋭利な刃物で空間ごと切り裂くような、そんな凄みを感じさせます。
しかし、その圧倒的な攻撃力の裏側には、危ういバランスも同居しています。
増田のボクシングは、いわば「先行逃げ切り」に近いとも思います。序盤、相手がまだ自分の距離を掴めていないうちに、あるいはその強打の脅威に戦慄している間に、一気に飲み込んでしまう。 前戦のホセ・カルデロン(メキシコ)戦でも上々の立ち上がりを見せましたが、相手がその強打を耐え抜き、死に物狂いで反撃に転じてきた際、守勢に回った時の脆さが顔を出したのも事実です。
「もしあのまま試合が続いていれば、まさかが起こり得たのではないか」 そう思わせるような展開は、トップ戦線で戦い続ける上での課題と言えるでしょう。
増田の強打は、相手が慣れる前、つまり序盤にこそ最大の威力を発揮します。
しかし、今回の相手はノニト・ドネア。数えきれないほどの強打者と対峙し、地獄から生還してきた男です。ドネアを序盤で簡単に倒し切ることは、世界中の誰もが成し得なかった(井上尚弥という例外を除いては)至難の業です。
増田にとって、この試合は「自分の刀を抜くタイミング」をいかに見極めるか、そしてドネアの経験という名の盾をどう切り裂くかという、極限の知恵比べでもあります。
鍔競り合いもチャンバラもない
この戦いは、必殺の武器を持つ者同士の戦いです。 増田陸の左は一撃必倒。日本刀の切れ味を持ち、触れれば終わりという恐怖を相手に植え付けます。
しかし、対峙するノニト・ドネアの左フックもまた、歴史に名を刻んできた至高の逸品です。その当て勘は今なお健在であり、相手が「当たるはずがない」と思うタイミングで、死角から顎を打ち抜きます。このドネアも左フックもまた一撃必倒であり、同じく日本刀のような切れ味を持っている、と言えるのではないでしょうか。
もし、増田が絶対の自信を持って踏み込み、あの左ストレートを放った瞬間、ドネアがそれをもらいながらも、伝家の宝刀・左フックを合わせたなら……。 あるいは、ドネアのプレッシャーに対し、増田が一点の曇りもないタイミングで左を突き刺したなら……。 考えるだけで、背筋が凍るような恐ろしさを感じます。
この戦いは、まさに「日本刀同士の斬り合い」です。
実際の真剣勝負において、映画や時代劇で見るような、刀と刀が何度もぶつかり合う「チャンバラ」はまず起こりません。そんなことをすれば刀はすぐに毀れてしまいます。 真の斬り合いとは、静寂の中での間合いの奪い合いであり、先に斬った者が勝つ。ただそれだけです。
この戦いも、おそらくはそういう性質のものになるでしょう。 どちらかが「当てた」瞬間に、全ての勝負が決する。 当たったが最後、当てられた方は再起不能に近い深いダメージを負ってしまうことが容易に予想されます。12ラウンズという時間は設定されていますが、実質的には毎秒がクライマックスであり、一瞬の瞬きすら後悔に繋がりかねない緊張感が会場を支配するはずです。
増田が若さとスピードを活かしてドネアを翻弄するのか。 ドネアがその老獪な戦術で増田を罠に嵌め、一撃で沈めるのか。 技術云々を超えた、生物としての「強さ」と「執念」のぶつかり合い。私たちは、その目撃者になるのかもしれません。
ドネアvs増田の先にあるもの
そして、この凄惨な試合を勝ち抜いた者に与えられる報酬は、あまりにも過酷で、そして魅力的なものです。 WBA世界バンタム級王者、堤聖也への挑戦権。
物語の皮肉を感じずにはいられません。 ノニト・ドネアも、増田陸も、直近の敗戦の相手は堤聖也です。 ドネアは激闘の末に判定で屈し、増田もまた、その強打を封じ込められて判定で敗れました。
どちらの試合も、堤が「ほんの少しの差」で競り勝ち、泥臭く勝利を掴み取ったものでした。改めて振り返ると、堤聖也というボクサーの勝負強さ、そして相手の良さを消しながら自分の形に持ち込む戦術眼は、今のバンタム級において異質なまでの輝きを放っています。
勝者が目指すのは、その堤へのリベンジ。 ドネアが勝てば、レジェンドの誇りを懸けた再戦。 増田が勝てば、帝拳の侍による意地の雪辱戦。 どちらが勝っても、世界バンタム級の物語は、これ以上ないほどドラマチックな展開を迎えることになります。
なお、現王者・堤聖也については、指名挑戦者であるアントニオ・バルガスとの対戦が取り沙汰されています。
一部の情報では、4/11のエストラーダvs那須川天心のビッグイベントに追加カードとして組み込まれるのではないかという噂もあり、ファンとしては気が気ではありません。 もしそうなれば、3月から4月にかけて、バンタム級はまさに爆発的な盛り上がりを見せることになります。
3/15(日)、有明アリーナ。 一撃に全てを懸ける男たちの、静かな、しかし烈火のような戦い。 日本刀の切れ味が勝るのか、それとも長年磨き抜かれた名剣の重みが勝るのか。 その結末を、私たちは心して見届ける必要があります。
配信情報
この興行は、U-NEXTでライブ配信。
配信日時は、3/15(日)15:30とのこと。メインイベントは19:00頃でしょうか。
3月、U-NEXTは超がつくほど充実しており、今週末3/7(土)にダイナミックグローブ、来週のウィークデー3/12(木)にTREASURE BOXINGが放映されます。しかも、今加入すれば、4/3(金)に行われるTREASURE BOXING(レネ・サンティアゴvs谷口将隆、小國以載vsマーロン・タパレス)までたった2500円ぐらいで視聴することができます。
ちょっと今入る人、恵まれすぎというくらいのベストタイミング。
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