5月2日(土)、東京ドーム。「THE DAY」まで、いよいよあと数日となりました。
メインの井上尚弥(大橋)vs中谷潤人(M.T)、実質セミファイナルの井上拓真(大橋)vs井岡一翔(志成)については別記事でプレビューを書きましたが、「THE DAY」の注目試合はそれだけではありません。残り5試合にも、それぞれ一本記事が書けるくらいの読み応えと見どころが詰まっているのではないかと思います。
ということで今回のブログは、「THE DAY」残り5試合のプレビュー記事です。
↓井上尚弥vs中谷潤人のプレビュー
↓井上拓真vs井岡一翔のプレビュー
5月2日(土)東京ドーム
武居由樹(大橋)11勝(9KO)1敗
vs
ワン・デカン(中国)9勝(3KO)1敗
実際のセミファイナル、メインの井上尚弥vs中谷潤人の前にセットされたのはこの一戦。
2025年9月、IGアリーナ。WBO世界バンタム級王者としてクリスチャン・メディナ(メキシコ)との防衛戦に臨んだ武居由樹(大橋)は、4回1分21秒のTKO負けで王座を陥落しました。K-1時代を含めてもキャリア初のKO負けという、非常に衝撃的な形での敗戦でした。
あれから約7ヶ月、今回、スーパーバンタム級に階級を上げての再起戦となります。
対するワン・デカン(中国)は、戦績9勝(3KO)1敗。ただしBoxRecには掲載されていない試合も存在するとされており、実際にはより豊富なキャリアを持つ選手だそうです。WBAアジア・スーパーバンタム級王者でもあり、WBA世界スーパーバンタム級15位にランクされています。
このデカン、2024年4月にフィリップス・ンギーチュバ(ナミビア)と12ラウンドを戦った経験があります。
ンギーチュバはその試合でWBOアフリカのスーパーバンタム級王座を獲得した、日本でもお馴染みの選手。強打を持つンギーチュバを相手に最後まで倒れずに戦い抜いたデカンのタフさは、侮れないのではないかと思います。
とはいえ、この試合を「武居が勝てるかどうか」という視点で見ている方はほとんどいないでしょう。武居由樹にとって、勝利は前提であり、問われるのは「どう勝つか」ではないかと思います。
メディナ戦の敗因を整理し、そのリカバリーができているかどうか。東京ドームというこれ以上ない舞台で、自分が「まだやれる」ということを強烈なかたちで示せるかどうか、そのあたりが、この試合の最大の見どころになるのではないでしょうか。
タフなデカンをKOできれば、武居由樹の評価は間違いなく上がるでしょうし、世界復帰に向けての空気感も大きく変わるのではないかと思います。勝利以上のものを求められる、そういう試合ではないかと思います。
OPBF東洋太平洋ウェルター級タイトルマッチ
田中空(大橋)5勝(5KO)
vs
佐々木尽(八王子中屋)20勝(18KO)2敗
この試合、最終ラウンドのゴングを聞かないのではないかという気がしています。
「ハマのタイソン」こと田中空(大橋)は2001年生まれの24歳。身長165cmとウェルター級としては非常に小柄でありながら、幼少期から憧れてきたマイク・タイソンのように、大きな相手を強打で圧倒するスタイルを追求してきた選手です。
武相高校・東洋大学でアマチュア5冠を獲得し、父・田中強士トレーナーと二人三脚でここまで歩んできました。
プロ入り後はデビューからここまで5戦全試合KO勝利。強弱を組み合わせたリズムのある攻撃に絶対的なパンチ力を持つパンチャーで、2025年6月のOPBF王座獲得戦ではディフェンス面での大きな課題を露呈したものの、同10月の初防衛では坂井祥紀を相手に素晴らしいパフォーマンスを発揮しており、スピード感ある成長を見せています。
対する佐々木尽(八王子中屋)は20勝(18KO)2敗。このKO率が全てを物語っているのではないでしょうか。
20勝のうち18KO、つまり9割以上の試合をKOで決めてきたパンチャーです。2025年6月にはブライアン・ノーマンJr.との世界タイトルマッチで5RKO負けを喫しましたが、2026年2月の再起戦では白星を取り戻し、この挑戦に辿り着きました。
田中の初防衛戦後にリングイン、挑戦を表明した場面を覚えているファンも多いはずで、あの日から半年以上が経ってようやくその約束が東京ドームで果たされます。
田中はリズムを変えながら仕事ができるパンチャー、佐々木は圧倒的なKO率が示す通り一発の破壊力が武器の強打者。
どちらもディフェンスにやや難があるとも感じられ、「当たれば終わる」可能性を双方が持った状態での激突となります。
国内ウェルター級最強決定戦と言っていいこの一戦。
日本人でウェルター級の世界王者はまだ誰も生まれておらず、この試合の勝者がその歴史を塗り替える最右翼になるのではないかと思います。
どちらが勝っても驚きませんし、どう決着するかも予想がつきません。この興行で最も凄まじいファイトになるかもしれないという期待があります。
阿部麗也(KG大和)28勝(10KO)4敗2分
vs
下町俊貴(グリーンツダ)22勝(12KO)1敗3分
田中vs佐々木のKO決着必至とも言えるファイトと対照的に、こちらは技術戦・判定決着の可能性が高そうな一戦ではないかと思います。
阿部麗也(KG大和)はこれまで数々の国内サバイバルマッチを経験しており、アメリカでの世界挑戦も実現しているボクサー。
この世界初挑戦は2024年3月、IBF世界フェザー級王者ルイス・アルベルト・ロペス(メキシコ)に挑戦しましたが、8回TKO負けで世界挑戦は失敗に終わりました。
その後2025年6月に日本王座を再獲得し、現在IBF世界8位、WBC世界7位にランクされています。
精度の高いジャブと伸びのある左ストレートで試合を組み立て、被弾を最小限に抑えながらポイントを積み上げる技巧派で、左カウンターには一発で流れを変える可能性を持っています。
一方の下町俊貴(グリーンツダ)も、スーパーバンタム級で国内のライバルたちを次々と退けてきた元王者。
日本スーパーバンタム級王者として4度の防衛を果たした後、「世界を狙う」という目標のためにフェザー級転向を決断し、昨年2月に王座を返上しました。
身長179cmの長身サウスポーで、IBF世界フェザー級6位、WBO世界2位というランクを持っています。デビュー5戦目から2度の引き分けを挟みながら現在20連勝中で、ジャブで距離と主導権を握りながら左を打ち分けるスタイルです。
世界挑戦を経験してきた阿部と、世界初挑戦を目指して日本タイトルを返上してきた下町。どちらにとっても「世界への最後のマイルストーン」として位置づけているのではないかと思いますし、負けられない理由がそれぞれにある一戦です。
サウスポー対サウスポーという構図は、右ジャブの取り合い、前足の取り合い、角度の駆け引きが焦点になりやすく、双方ともポイントを積み上げるタイプとなれば判定になる可能性は高そうです。ただ阿部の左カウンターや下町の左ストレートが機能するような場面が生まれると、展開は一気に変わるかもしれません。
こちらもまた、予想が非常に難しい一戦だと思います。こういう試合こそ、蓋を開けてみないとわからない面白さがあるのではないでしょうか。
いずれにしても、東西の技巧派サウスポーが激突するこのサバイバル戦、非常に楽しみですね。
OPBF東洋太平洋・WBOアジアパシフィック スーパーミドル級タイトルマッチ
ユン・ドクノ(韓国)10勝(8KO)2敗1分
vs
森脇唯人(ワールドスポーツ)1勝1分
元オリンピアン、森脇唯人(ワールドスポーツ)。
法政大学・自衛隊体育学校を経て全日本選手権5連覇、アマチュア通算118戦92勝という圧倒的なキャリアを積み上げた後、2025年5月に史上4人目となるA級プロテスト合格でプロの世界に踏み込みました。
プロ入り後も足踏みしている時間はありませんでした。6月にプロデビューを果たすと、わずか2戦目の2025年12月にOPBF東洋太平洋・WBOアジアパシフィックスーパーミドル級の2冠王者であるユン・ドクノ(韓国)への挑戦を決行しました。
あの試合では、森脇は初回にダウンを奪うという理想的な立ち上がりを見せました。主導権を握り「勝てる」という空気が漂う中、偶然のバッティングが発生、ユンが左目上を大きくカットしドクターストップとなり、4回時点での負傷引き分けという、非常に後味の悪い結末に終わりました。
あの内容を見る限り、森脇が優位に進めていた印象がありましたし、悔しさを感じた試合でした。
ただ同時に、プロ2戦目でこれだけやれるという事実は、森脇の実力が本物であることを証明するものでもあったのではないかと思います。
今回のダイレクトリマッチ、森脇は今度こそ完全なかたちで強さを示さなければならない立場にあるでしょう。
東京五輪代表として、全日本5連覇として積み上げてきたものを、プロのリングで証明する舞台として、これ以上ない機会ではないかと思います。プロ3戦目で2冠王座獲得を東京ドームでやってのければ、それはセンセーショナルな出来事になるでしょう。
ユン・ドクノも8KOというフィニッシュ力を持ち、前回の内容を踏まえた上での修正と対策を施してくることが予想されます。
やはり簡単な試合にはならないかもしれませんが、今の森脇唯人には期待してしまいます。
WBOアジアパシフィック フライ級タイトルマッチ
富岡浩介(RE:BOOT)11勝(8KO)4敗 王者
vs
田中将吾(大橋)5勝(3KO) 挑戦者
「THE DAY」の幕を開けるオープニングファイトは、WBOアジアパシフィックフライ級タイトルマッチです。同年代の2人が、まったく異なる道を歩んできた末にここで交わります。
王者の富岡浩介(RE:BOOT)は、早い段階からプロの世界に飛び込み、その才能は早くから注目されていた選手です。
ただその道のりは順風満帆ではなく、全日本新人王決定戦でのまさかのKO負け、日本ユースタイトル戦での僅差判定負け等、いくつもの敗北を経験してきました。
それでも諦めずに積み重ねてきたキャリアの中で、以前よりも考え、落ち着いてボクシングをするようになってきた印象があります。
その努力が実を結んだのが2026年2月の長尾朋範からのWBOアジアパシフィックフライ級王座奪取で、現在WBO世界4位というランクも今の富岡の充実を示しているのではないかと思います。
対する挑戦者の田中将吾(大橋)は、東洋大学で国内トップクラスのアマチュアキャリアを積み、同じ東洋大・大橋ジム入りの田中空とともにプロ入りしました。
アマチュア6冠の実績を持ち、プロ入り後は5戦5勝(3KO)。
プロデビュー戦こそダウンを奪われましたが、その後は危なげのない試合運びで格の違いを見せつける試合が続いています。
WBOアジアパシフィックフライ級9位にランクインしており、今回がプロ6戦目ではあるものの、満を持したタイトル挑戦となります。
片や早々にプロの世界に飛び込み、敗北を乗り越えながら王座まで辿り着いた富岡。
もう一方は日本最高峰のアマチュアキャリアを着実に積み上げ、勝負所を見極めてタイトルに挑んできた田中。
どちらの選択が正しかったのか、それをリングの上で決める試合、と言えそうです。
富岡にとっては、掴んだベルトを守ると同時に「自分の積み重ねは間違っていなかった」ということを証明する試合でしょう。田中にとっては「アマチュアで培ったものはプロの世界でも通じる」ということを示す一戦です。どちらにも意地があり、どちらにも証明したいものがある。
東京ドームのオープニングを飾るのにふさわしい一戦ではないかと思います。「THE DAY」はここから始まります。
とまあ、ここまで書いてみて感じるのは、この興行の贅沢さ。
どのカードも単体では語り尽くせない面白さを持っており、それが東京ドームという空間の中で一夜に詰め込まれています。メインだけでも十分すぎる夜に、これだけの試合が並ぶ。
やがて伝説と呼ばれる日、「THE DAY」の開幕まで、あともう少しです。
いや、もはや始まる前から伝説では?
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