さて、今週末(日本時間5/10)はいよいよファビオ・ウォードリーvsダニエル・デュボア。WBO世界ヘビー級タイトルマッチが、イギリスで開催されます。
ともにイギリス出身の強打者による英国ヘビー級の覇権争いとも言えるこの一戦、非常に楽しみですね。
そしてアメリカでは。。。なんとライース・アリームがウェイトオーバーにより、試合中止。なんてこった。。。アンジェロ・レオは長い期間のブランクにさらされてしまいますね。これは本当に残念です。
ともあれ、週末の大注目ファイト、ウォードリーvsデュボアは、ヘビー級の中で大きな動きを呼びそうです。
ということで今回のブログは、目前に迫ったウォードリーvsデュボアをさらに楽しむために、ヘビー級世界戦線の現在を見ていきたいと思います。
▼リングマガジン・ヘビー級ランキング

チャンピオン:オレクサンドル・ウシク(ウクライナ)
現在のヘビー級において、この男を超える者はいません。タイソン・フューリーとの二連戦でWBC・WBO・WBAの3団体を統一し、昨年7月にはウェンブリーのリングでダニエル・デュボアを5RKOで下して2度目の4団体統一を果たしたウシクは、今やこの階級の絶対的支配者です。
クルーザー級出身、ヘビー級としては小柄な体格でありながら、その技術と試合巧者ぶりはまさに別次元と言えるでしょう。
そのウシクですが、次戦は5月23日、ギザのピラミッドを背景にキックボクシングの英雄リコ・ヴェルホーフェン(オランダ)との一戦が予定されています。
ここまできたウシクがエンタメファイトに走ることについてはもう問題ではありませんが、コンテンダーたちにとっては「ウシク待ち」の構図が続くわけで、この間に誰が実力と存在感を示せるか、というのがこの階級における最大の焦点ではないでしょうか。
1位と4位が激突。
このブログがアップされた数時間後、1位のファビオ・ウォードリーと4位のダニエル・デュボアが激突。
ウォードリーは昨年6月、ジャスティス・フニ(オーストラリア)を9回まで大きくリードされながら10RKOで逆転、その後10月にはジョセフ・パーカー(ニュージーランド)をも11RTKOで下してWBO王座を手にするという、素晴らしい連勝劇を見せています。
一発のKO力と、追い込まれてからの逆転力という、非常に危険な側面を持つボクサーで、ここまでのKO率はほぼ100%。アマチュアのキャリアをほとんど持たないまま、経験と実績を着実に積み上げてきた英国の新星です。
一方のデュボアは、2024年9月にアンソニー・ジョシュアをウェンブリーで5RKOに仕留めてIBF王座を獲得するも、昨年7月の再戦でウシクに5RKOで敗れて王座を失っています。
今回のウォードリー戦は実に約10ヶ月ぶりの実戦復帰となるわけですが、破壊力という意味ではおそらくこの階級でも指折りのパンチャーであることは間違いなく、ウシク戦の敗北をどう消化してリングに戻ってくるのかが最大の焦点となりそうです。
当日のコンディションと、精神的な準備がどれだけ整っているか。
それがデュボアの勝敗を大きく左右するのではないでしょうか。両者ともに一発KOの力を持つだけに、試合がどちらに転ぶか全く読めない面白さがあります。
2位:メキメキと頭角を表すWBC暫定王者
クルド系のドイツ人として知られるカバイェルは、Bサイドからあっという間に成り上がってきたボクサーです。
2023年12月にアルスランベック・マフメドフ(ロシア)を4RTKOで倒してその名を轟かせると、2024年5月にはフランク・サンチェス(キューバ)をKO、そして昨年2月にチャン・ツィーレイ(中国)を6RKOで下してWBC暫定王座を獲得。
本年1月には無敗のダミアン・クニバ(ポーランド)を3RTKOで退けて初防衛も果たしています。
ゲームプランの確かさと、どんな相手にも対応できる懐の深さがカバイェルの最大の武器でしょう。
それだけに、ウシクとの正規タイトル戦がなかなか実現しないまま「最も報われていないコンテンダー」的な状況に置かれているのは、なんとも歯がゆいところです。ウシクがヴェルホーフェン戦に向かう今、次の機会がいつ訪れるのか、カバイェル陣営としては気を揉む日々が続いているのではないでしょうか。
3位:ジプシーキングの動向
今年4月にアルスランベック・マフメドフを相手に復帰戦を行い、12R判定勝利を収めたタイソン・フューリー。
試合内容については、往年の切れ味とはほど遠いと感じたボクシングファンもいたのかもしれません。
ただ、フューリーというボクサーの「商品価値」は依然として絶大であり、アンソニー・ジョシュア(イギリス)とのメガファイトは英国ボクシング最大の宿題として残り続けています。
二人ともに全盛期を過ぎているのでは、という声はあるにせよ、この一戦が実現した際の英国の盛り上がりは計り知れないものがあるでしょう。今年中の実現に期待したいところです。
5位 フィリップ・フルゴヴィッチ/7位 エフェ・アジャグバ
クロアチアの強打者、フィリップ・フルゴヴィッチ(クロアチア)は2024年6月にデュボアに敗れてIBF暫定王座を失いましたが、その後は再起を果たして着実に上位に返り咲いています。今年4月にジョー・ジョイス(イギリス)を判定で下し、その後デヴィッド・アデレイヤ(イギリス)にも判定勝利。
「エル・アニマル」のニックネームに恥じない粘り強さで、2敗目以降のキャリアを立て直してきました。長身から放たれる重いパンチと堅固なディフェンスは、依然として上位クラスに通用するものがあるはずです。
一方、ナイジェリア出身のエフェ・アジャグバ(ナイジェリア)は昨年5月にマーティン・バコーレ(コンゴ)とドロー、今年2月には元IBF王者チャールズ・マーティン(アメリカ)を4RTKOで退けています。
リーチ224cmという規格外の体格を誇るアジャグバは、まだその才能を完全には発揮しきれていないようにも見えますが、当たれば間違いなく相手を倒す力を持っています。マッチメイクの充実次第では、もう少し上の評価を得られるボクサーではないでしょうか。
6位は超新星、モーゼス・イタウマ
2004年12月生まれ、現在21歳のモーゼス・イタウマは、今のヘビー級において最も楽しみなプロスペクトの一人です。
今年3月にジャーメイン・フランクリン(アメリカ)を5RTKOで下し、プロ14戦全勝をキープ。スピード、パワー、そして試合勘のすべてが同年代のボクサーとは一線を画しており、この年齢にしてすでに世界レベルのコンテンダーとして認識されています。
次戦は8月にロンドンのO2アリーナで予定されており、ウォードリーvsデュボアの勝者を含めたWBOとWBCのタイトル戦線を意識したマッチメイクになるものと思われます。
これだけのフィジカルとセンスがあれば、あとは経験を積み重ねるだけ、というのは確かでしょう。ただ、ヘビー級は一発があるだけに、焦らず丁寧にステップアップしていくことが何より重要です。急いでウシクやカバイェルと対峙する必要はなく、2026〜2027年にかけてじっくりと名を上げていけば、それだけで十分な存在感を示せるボクサーではないでしょうか。
8位 リチャード・トーレスJr./9位 ムラト・ガシエフ/10位 ジャスティス・フニ
8位のリチャード・トーレスJr.(アメリカ)は東京五輪の銀メダリストで、プロでも14戦無敗を維持しているサウスポーのパンチャーです。
5月23日にはピラミッド興行でフランク・サンチェス(キューバ)との一戦が予定されており、この試合の結果次第でトップ戦線への足がかりをつかめるかどうかが決まってくるでしょう。
9位のムラト・ガシエフ(ロシア)はかつてIBFクルーザー級王者として活躍し、ウシクに敗れた後にヘビー級に転級。前戦でWBAレギュラー王座を手にしています。33勝2敗という戦績が示すように、まだまだ存在感を保ち続けています。
10位のジャスティス・フニ(オーストラリア)は今年4月のフレイジャー・クラーク(イギリス)戦で多判定勝利を収め、ランキングへの返り咲きを果たしました。ウォードリー戦のKO負けという苦い経験を糧に、着実にキャリアを立て直しているところです。
バホディル・ジャロロフ
リングマガジンのランキングには現時点で入っていませんが、今週末のウォードリーvsデュボア興行のアンダーカードで、アグロン・スマキチ(セルビア)と対戦するバホディル・ジャロロフにも触れておかなければなりません。
2021年東京五輪、2024年パリ五輪とスーパーヘビー級で連続金メダルを獲得したウズベキスタンの絶対王者。プロでも17戦全勝と無傷のままここまで来ており、サウスポーから放たれる左の破壊力は折り紙付きです。身長201cm、リーチ206cmという恵まれた体格も大きな武器で、コンビネーションの鋭さはアマチュア時代からずっと変わりません。
プロとしてはまだ主要団体のトップランカーには至っていませんが、それは単純にキャリアの積み上げの問題であり、実力面での疑問符はほとんどないと言っていいでしょう。今週末の試合の内容いかんによっては、一気にランキング上位への浮上も夢ではないかもしれません。個人的には、この先のヘビー級において最も楽しみな存在の一人です。
ヘビー級の覇権はヨーロッパへ
こうして見渡してみると、今のヘビー級トップ10はウシクのウクライナ、ウォードリー・デュボア・フューリーのイギリス、カバイェルのドイツ、フルゴヴィッチのクロアチアと、ほぼヨーロッパ勢で占められています。
かつてはアメリカを中心に回っていたヘビー級ですが、アメリカは、というと、デオンテイ・ワイルダーの次、に期待されたジャレッド・アンダーソンはコケてしまったから、次に期待がかかるのはリチャード・トーレスJr.ということになりそうです。ただ、トーレスJr.だけだとあまりにも弾数が少ない。
今後この階級を大きくかき回すのは、アマチュアの絶対的王者ジャロロフと、スーパープロスペクトのイタウマ、この二人ではないかと思います。
どちらも将来的にはウシクの後継者を争う存在になりえるだけに、今から目が離せません。すっかりヨーロッパに移ったヘビー級の覇権を、アメリカが取り戻す日はまだまだ先になりそうですね。
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