紆余曲折あった、SAIKOULUSHあらため「3150FIGHT」まで残り一週間。
なんとか開催にこぎつけることができた、ということに対して、その努力は讃えられるものではあるのでしょうが、もともと自分の間いた種、結果的にはプラマイゼロ。そして、この興行だけに絞ってみても、試合直前に選手やファンを不安にさせたという意味ではマイナスと評価されるべき事でしょう。
ともかく、この興行が飛ばなくてよかった。キルギスで出場する予定だった選手は本当に残念ですが、3150プロモーションは組む相手を間違えた、ということは明白なので、今後の興行に活かしてもらいたいですね。急いては事を仕損じる、まさに典型だと思います。
ともあれ、本日のブログは矢吹正道vsレネ・カリスト、IBF世界フライ級タイトルマッチのプレビュー記事。
6/6(土)愛知県国際展示場
IBF世界フライ級タイトルマッチ
矢吹正道(緑)19勝(18KO)4敗
vs
レネ・カリスト(メキシコ)24勝(10KO)1敗1分
33歳(試合の約1ヶ月後には34歳)にして充実度を増す、矢吹正道の、2度目の防衛戦。
2025年3月、アンヘル・アヤラ(メキシコ)を破って戴冠したこのタイトルを、同年12月27日、フェリックス・アルバラード(ニカラグア)に勝利して初防衛。
ともに終始相手を圧倒しての最終12RTKOという、全く隙のない勝利。
判定までいったとしても確実に勝利している、という状態の中、KOチャンスを逃さず、仕留めきったそのキラー・インスティンクトは本当に脱帽ものです。
2021年9月、当時の絶対王者、寺地拳四朗(BMB)に世界初挑戦、大激闘の末にタイトルをもぎ取るも、再戦でリベンジを許した矢吹。
しかしそこから6勝、しかも6連続KO勝利。拳四朗戦での黒星からの再起戦では現在のIBF世界ライトフライ級王者、タノンサック・シムシー(タイ)を7RTKOで退け、更に当時ライトフライ級最強と名高かったシベナチ・ノンシンガ(南アフリカ)を9RTKOで降して世界王座への返り咲き。さらにこのIBF世界ライトフライ級王座を保持したままフライ級へ挑戦、前述のとおり2階級制覇を達成しています。
戦うたびに、驚くほどの強さをみせてくれる矢吹正道。
その真骨頂は、硬度の高いジャブ、そしてカウンター。
その根底にあるのは、痩身ともいえる肉体に備わったハードパンチです。
19勝中18KOという軽量級として破格のKO率を生み出しているこのパンチングパワーは、おそらくただのパワーというだけでなく、ナチュラルタイミングを有しているものだと思います。
キャリア初期、荒々しくもあったスタイルは今では洗練され、比較的慎重にもうつるファイトスタイルながらも、決めるところではしっかりと決めきる、そんな嗅覚をも持っています。
はっきり言って、今の矢吹には全く隙が見えません。「負けるところが想像できない」というのは、かつて井岡一翔や寺地拳四朗、そして井上尚弥に感じたもので、それと同じ感覚で今の矢吹を見ていられます。
傍から見れば「完成」と言っても良い矢吹正道。あとは、階級をさらに上げてどうなるのか、もしくは、年齢という有限のものが、彼にどれぐらいの影響を与えるのか、という所まで来ているのではないでしょうか。
個人的には、P4P目前、もしくは、入っていてもおかしくないボクサーだと感じています。
そんな矢吹に挑戦するのはレネ・カリスト、日本でも幾度か戦った、元世界タイトルチャレンジャーです。
カリストは非常にオーセンティックなボクシングをするボクサーで、メキシカンですが「技術」を大いに磨いてきたボクサーだと見えます。
マチズモを体現する、というよりも、ボクシングのきれいなボクサーで、非常にバランスのとれた戦い方をします。
2024年12月、IBF世界スーパーフライ級王座決定戦で、現王者のウィリバルド・ガルシア(メキシコ)と対戦。
ガチャガチャとくるガルシアに対応しきれず、(少なくとも私には)大いに逃げ回ったように見えたカリストでしたが、判定はまさかのドロー。
たぶん、カリストはこの手の、「駆け引きをさせてくれない」タイプのボクサーは苦手かと思われ、2025年5月の再戦ではガルシアに判定負け、タイトル獲得はならず。
ただ、初戦の後半からはガルシアに対しても少しずつ対応しているように見えたので、やはり対応力、引き出しの多さがあるボクサーだと推察されます。このガルシア戦を経て、カリストは一段階、レベルアップをしたはずです。
このガルシア第2戦、初黒星からカムバックしたカリストは、2025年12月に再起戦をKOで勝利。3度目となるタイトル挑戦、4度目となる日本でのファイトに臨みます。
矢吹正道劇場を期待
さて、個人的には、カリストはここ最近の矢吹の対戦相手からすれば、一段落ちるボクサーだと思っています。
それは、ウィリバルド・ガルシアをあまり評価していない、ということにも起因していますが。
ガルシアのボクシングは非常に対応しづらいものではありますが、そうはいっても2度にわたり(実質)負けている、というのはカリストにとってはマイナスポイントに映ります。
そこにきて、挑むのが大充実の王者、矢吹正道、となると、カリストにとって荷が重い。
対ガルシアはスーパーフライ級、今回はフライ級、ですが、もともとカリストはパワーで押し切るタイプではないので、この階級ダウンの影響が大きくプラスに出るか、というとそうでもないし、たとえ1階級ダウンしたとしても、矢吹のパワー(タイミングを含め、効かせる能力という意味において)は、間違いなくガルシアを上回るはずです。
なのでもちろん、この試合で期待したいことは、矢吹正道の圧倒的なノックアウト勝利。
長い距離から中間距離で上回り、ジャブがビシバシと当たり、ハイライトで流れるような美しいノックアウト。この結末を、期待せずにはおれません。
と、こうなると、我々ですらそうなのですから、やはり矢吹のモチベーションも心配になってきます。
ここが王座を防衛し続ける事の難しさ、というものでしょうが、決して、このレネ・カリストは矢吹の望む相手ではないはずです。しかし、このカリストをクリアしなければ、「その次」はなくなります。
矢吹の望む「次」
試合前から矢吹が公言しているのは、王座統一戦、もしくは3階級制覇です。
実現可能性がどうか、ということを見てみると、まず王座統一戦の場合、WBA・WBC王者のリカルド・サンドバル(アメリカ)、WBO王者のアンソニー・オラスクアガ(アメリカ)。
サンドバルは寺地拳四朗から王座を奪ったあと、WBC暫定王者のガラル・ヤファイとの王座統一戦が決定、丁度この週末(現地時間で6/6)に挙行される予定でした。
これはフライ級が盛り上がるタイミング、と思っていましたが、ヤファイが怪我によりこの試合はキャンセル、サンドバルの次戦は宙に浮いています。
もう1人の王者、アンソニー・オラスクアガは帝拳プロモーション、この試合は非常に興味深いものではありますが、矢吹が3150FIGHTにいる限り、交わる可能性は低そうです。
なので、「この次」に、サンドバルとの3団体王座統一戦が決まれば、矢吹の願い通りになる、ということでしょうが、もっと実現可能性が高いのはスーパーフライ級へ進出しての3階級制覇です。
現在、WBA・WBC・WBOの3つの団体を、ジェシー「バム」ロドリゲスが保持しており、IBFのみ、ウィリバルド・ガルシアが保持している状況。
バムの動向は、今後バンタムに上がり、その勝ち方次第ではスーパーバンタムにあげて井上尚弥挑戦、という異次元のキャリアプランを持っているので一端無視したとして、やはり興味深いのはこの6/6(土)の3150FIGHTのアンダーカードに、IBF世界スーパーフライキュタイトルマッチ、ウィリバルド・ガルシアvsアンドリュー・モロニーがセットされていることです。
わざわざこの試合を日本でやる意味、というのは、ここでお披露目の上、その次に矢吹正道vs「ガルシアvsモロニーの勝者」という青写真があったからではないでしょうか。
ストーリーとしては、完璧。
しかし今や、それを実現する元手がない、という状況。
胡散臭い輩が去り、それはそれで一つ良い事なのですが、3150プロモーションの資金ではこの試合の開催は難しいでしょう。
ここでもおそらく救い主はABEMAで、今回の興行だけでなく、矢吹の「その次」、3階級制覇まで(とあとその後)しっかりとフォローアップしてもらいたい。
間違いなく、救世主はABEMA。
今回、6/6の興行が無事に開催できたならば、おそらく亀田興毅のプロモーターライセンスにはサスペンドはつかないはずです。(キルギスはJBC管轄ではないため)
そうなると、あとは亀田氏が興行にちゃんとボクサーを集められるかどうか、という点と、カネを捻出できるかという点にかかっています。
そんなわけで、ABEMAのバックアップに期待しつつ、矢吹の次戦に大きな希望を抱き、ともかくこのレネ・カリストを相手にスペクタクルなノックアウト勝利を期待して見たいと思います。
配信情報
この興行は、アンダーカードにルイス・ネリvsジョンリエル・カシメロというほぼエンタメファイトみたいな試合と、ウィリバルド・ガルシアvsアンドリュー・モロニーのIBF世界スーパーフライ級戦、そしてIBF世界バンタム級挑戦者決定戦としてケネス・ラバーvsマイケル・アンジェレッティなる大変興味深いカードが組まれ、横山葵海vsビンス・パラスというホープの実力を測るに非常にわかりやすいカードが組まれています。
その他にも6回戦が3試合と長時間興行が確定の3150FIGHT、6/6(土)12:30からABEMAにて配信です。
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