やっぱり、ビッグマッチはアメリカかイギリス、もしくは日本で行われるべきです。
この3国は、3国3様ではありますが、どこも会場の雰囲気が素晴らしい。
一つ一つのアクションに大きな歓声の湧くアメリカ、謎でずっと歌い続けるイギリス、ファンが固唾をのんで見守る静かな日本、それぞれのお国柄の違いはあれど、どこも素晴らし演出を持っており、ビッグマッチ感があります。
そして最近少なくなってきてしまったアメリカでのビッグマッチですが、このプエルトリカンとフィリーという素晴らしいファンベースを持つ二人のファイトは、会場の雰囲気や期待値としては本当に素晴らしいものになるはずです。
更に二人は若く、まだまだ上を目指そうという気概に満ちたものですから、形だけのビッグマッチよりも確実に試合内容が良くなります。
そんなわけで期待値が高い、ザンダー・ザヤスvsジャロン・エニス。PPVの料金が3,500円というのは破格の安さです。
ということで今回はザヤスvsエニスの観戦記。

6/27(日本時間6/28)アメリカ・ニューヨーク
WBA・WBO世界スーパーウェルター級タイトルマッチ
ザンダー・ザヤス(プエルトリコ)23勝(13KO)無敗
vs
ジャロン・エニス(アメリカ)35勝(31KO)無敗
カテゴリー的には「トップランク興行」であり、王者はトップランク所属のザンダー・ザヤス。しかしながら、トップランク興行としてはかなりリスクをとった戦いであることは間違いありません。
リングアナウンサーもディアマンテ。
プラットフォームとしてはDAZNに一本化された世界は、この戦いがPPVファイトであることは置いておいて、ファンにとって非常にストレスのないものなのかもしれません。
月額たったの980円(だったか?)と、たとえば一ヶ月に1回とか二か月に1回のPPV、だけで世界的なボクシングを追えるのであれば、これはこれで良いでしょう。管理も楽だし。日本もどこかに一本化してほしいものです。
ともあれ、ボクシング界の未来のP4Pファイターが繰り広げる、WBA・WBO世界スーパーウェルター級統一タイトルマッチ。
いずれも、時代を代表するボクサーになり得る二人が、おそらくプライムタイムの前段階で激突することは非常に稀なことですから、これは大注目です。
会場も満員、その雰囲気も含めて、「アメリカのビッグマッチ」感が出ていて本当に良い。やっぱりリヤドなんぞでやる興行とは格が違います。
初回のゴング。
まず力強いジャブを放っていくのはジャロン・エニス。このジャブが早々にザヤスにヒットしています。右のオーバーハンドも当てるエニスは、いつの間にやらサウスポーにスイッチ、このワンツーをさらにヒットしています。
サウスポーのスタンスから左ボディアッパーのカウンターショット、ザヤスがダックしたところに右フック、タイミングの良いパンチを単発で当てたあと、ショートのワンツーをヒット。
打ち返すもその後若干動きの止まったザヤス、このタイミングを見逃さないエニスはここでいくつかのパンチをまとめ、左ストレートを撃ち抜くとザヤスがダウン!!!!
早くも試合が大きく動きます!
残りはまだ1分、攻め急がないエニスですが、それでもジャブ、ノーモーションの左をヒットしており、ショートの距離でも左フックをヒット。
ここまで差があるか、というファーストラウンドが終了。
2R、変わらずサウスポースタンスのエニス、早々に左のオーバーハンドをヒット。ザヤスも弱気にならず、プレスをかけていきますが、パンチの的確性、そしてパワーにおいてはエニスの方がずっと上。
本来、ザヤスはこの距離で戦ってはいけないはずですが、足を使う方が危険、との判断なのでしょうか。
中盤、オーソドックスのエニスは鋭いジャブ、そして叩きつけるようなオーバーハンドを使っていきます。このオーバーハンドも当たりますが、ザヤスはサウスポーのエニスよりもオーソドックスのエニスのほうが若干戦いやすそうです。
3R、やっぱり比較的近めの距離で戦うザヤス。ザヤスのパンチも当たり始めましたが、当然、エニスのパンチも変わらず当たります。
ビッグマッチにあるまじき好ファイト、若くしてまだ上を目指すボクサー同士だからこそ、の素晴らしいファイトです。
サウスポーのエニス、ここでもやはり的確にパンチを重ねていきますが、中盤、エニスの右フックとザヤスの右ストレートが交錯し、バランスを崩したのはエニス!!!
これはダメージあったか、エニスはその後下がり、ザヤスが攻めます!ザヤスは絶好のチャンス、エニスもクリンチと反撃、もっといきたいザヤスですが、このタイミングで打ち勝っているのはザヤスです!!
後半に入って持ち直してきたエニス、ここで左をヒットすると今度はザヤスの動きが止まります!
まだわずか3R、すでにともにダメージを負っています。。。!!!
4R、近い距離のファイト!!バッチバチの打ち合いに発展したこの戦いで、手数がよく出ているのはザヤスの方です。
エニスは時折オーバーハンド気味の左右をヒットし、そこからパンチをまとめます。この連打の的中率はものすごい。
5R、やはりここも距離は変わらず、互いに出せば当たる距離でのボクシング。
やはり先に仕掛ける事が多いのはザヤスの方で、しかしエニスも要所でしっかりとヒットを生んでいます。
相打ちも多い我慢比べの展開の中で、ザヤスの右に対してエニスがサウスポースタンスからの右アッパーカウンター!!!これでザヤスはこの試合2度目のダウン!!!
8カウントまで休んで立ち上がったザヤス、残り時間は1分!!
エニスはここは強引に攻めます!左右の強打を繰り出し、終わらせようとするエニス!ザヤスはディフェンス!しながらもリターン、しかしもう反撃の力は少ないか、終盤にクリンチに逃げます。レフェリーは止めるタイミングを伺っていましたが、ここでゴング!
ザヤスはゴングに救われた形になりました。インターバルに入るとすぐにレフェリーはザヤスの下へ駆け寄り、確認しています。
6R、開始早々にザヤスにドクターチェック。再開です。
ここはプレスをかけるザヤス、サウスポーの長いジャブをザヤスにヒットし、攻め込んでショートのフック。
ザヤスはまだダメージがありそうですが、しっかりと打ち返してはいます。
しかしロープに詰められ、エニスのチャージを受けるとクリンチ、長めの距離でもエニスのジャブを受けすぎでしょうか。
かなりジリ貧な感じがしてきたザヤス、しかし後半にはコンビネーションを出し始めており、回復の兆しを見せています。
これで半分、おそらく最後まではいかないでしょう。
7R、開始早々、エニスのジャブが深くヒットし、大きく顔面を弾かれるザヤス。
揉み合いのあと、逆にプレスをかけるザヤスですが、これまで明らかに近めの距離でやられているのだから、他に方法はないものでしょうか。
リング中央、近い距離での打ち合い、エニスのパンチが次々とヒットし、ザヤスの顔面を揺らしています。
ここで打ち勝ったザヤスはプレス、エスケープしようとするザヤスをおいかけてチャージ、ここでも相当なヒット率です。
最後はアッパーでしょうか、追い詰められたザヤスが膝をつくダウン。
ダメージ、というよりももはや万策尽きた、という感じ。
レフェリーはこの試合をストップ、ジャロン「ブーツ」エニス、7RTKO勝利でWBA・WBO世界スーパーウェルター級統一王者となり、2階級制覇!!
なんとも圧倒的な戦いでした、ジャロン・エニス。
敗れたザンダー・ザヤスも大きな見せ場をつくりましたが、しかしそれは一瞬のことで、ほぼブーツ劇場でした。
改めて、やはりこのボクサーは恐ろしい。
ジェシー「バム」ロドリゲスと並び、未来のP4P候補として評価の高かったエニスは、この試合で改めて各媒体のP4Pランキングにランクインするのではないでしょうか。
セバスチャン・フンドラ、バージル・オルティスJr.、ジョシュ・ケリー、バフラム・ムルタザリエフ。あとは、ティム・チューとエロール・スペンスJr。
この階級で、ぜひとも多くのファイトを見せてもらいたい。やっぱりこのボクサーはエキサイティングで、本当に素晴らしい。
アンダーカード!!
アンダーカードは、かつてのトップランク興行よろしく、実力差のあるカードが揃っている印象だったので、メイン後に視聴です。
まずはファンミタ・ロペス(プエルトリコ)のプロ5戦目。
このファンマ「ファンミタ」ロペスは、父が元世界2階級制覇王者のファン・マヌエル(ファンマ)ロペスというサラブレッドで、パリ五輪のプエルトリコ代表です。
パリ五輪では初戦でハサンボーイ・ドゥスマトフに敗北、これはくじ運がなかったとしか言いようがありませんね。
スーパーフライ級のプロスペクトということで日本でも非常に注目すべきこのファンミタ・ロペス、これは速い。肩幅が非常に広く、リーチもありそうなファンミタは、スペインのアルベルト・モトスというボクサーを全く寄せ付けず、左ストレート一閃の初回TKO勝利。
ちなみにこのロペス、父・ファンマも元オリンピアンだそうですね。アテネ五輪といえば、私も目指した五輪(目指すだけは自由なので)。あと、父、ファンマ・ロペスなんて私より年下なんですけど。。。時代を感じます。
続いて登場のジャイ・タッカー(アメリカ)については、随分前から伸び悩んでいるイメージです。
伸び悩んでいる、というか、期待されているほどの成果を上げられていない、という方が正しいでしょうか。
この試合でもエウリ・セデノ(ドミニカ共和国)の飽くなき前進にかなり苦しめられたというイメージで、イライラも募ってのリフトを披露しています。試合は勝ちましたが、果たして、という感じ。
ふたりのスター
ベンジャミン・ウィテカー(イギリス)vsリカルド・リベラ(アメリカ)
トップランク興行、風であはるものの、マッチルームも関わるDAZN興行。このプロモーターの垣根を超えたマッチアップの利点の一つは、マッチルーム所属のベン・ウィテカーと、トップランク所属のエミリアーノ・バルガス、若きスターの競演です。
この二人は実力だけでなくスター性も申し分のないボクサーで、その人気は米英国内だけにとどまらず、日本にも鳴り響いています。
まずはウィテカーの登場。
初回から素晴らしいタイミングで強い左ボディをヒットするウィテカー。すでにリベラはこのボディを効かされているように見えます。
リベラも非常に勇敢なボクサーですが、初回のラウンド後半、ウィテカーの右オーバーハンドをテンプルに浴びてダウン。ラビットアピールをするも聞き入れてはもらえず、ここは立ち上がったところでラウンドが終了しています。
2Rに入ると、より勇敢に攻め入るリベラ。しかしこれは、すでにスキル上で勝ち目がない、とわかっての特攻のように見えます。もちろん、その判断は間違っているとは言えません。
しかし深く入り込んだところでウィテカーの左フックを浴びてダウン!ウィテカーっぽい倒し方で、ひっかけるような左フックのタイミングが合ってしまった感じでしょう。
立ち上がったリベラですが、レフェリーはストップ。立ち上がる時にちょっとよろけてもいましたし、まだ初回のダウンから回復していなかったのでしょうね。
ともあれ、ウィテカーは大きなインパクトを残すU.Sデビュー。
エミリアーノ・バルガス(アメリカ)vsブライス・ミルズ(アメリカ)
スター候補、エミリアーノ・バルガスの対戦相手は、22勝(9KO)1敗という好戦績のブライス・ミルズ。このミルズはWBC USAシルバーというタイトルのタイトルホルダーのようです。
16連勝中であること、まだ24歳と若いことから、もしかすると何かを起こせる可能性があるボクサーなのかもしれません。
しかしながら、バルガス一家の中で最高の才能を持つエミリアーノ、こんなところで足踏みはできません。
初回、やる気満々、恐れを知らないミルズは激しくエミリアーノを攻め立てます。そこにエミリアーノは左のボディカウンターショット、やはりこのボクサーはうまいですね。
しかしこのカウンターをものともセずに襲いかかるミルズ、こちらもアンダードッグという自らの立ち位置に甘んじない勢いのあるボクサーです。これは良い相手。
こうガチャガチャ来られて、プロスペクトたちがそれに困らされる、みたいな場面は良く見てきましたが、エミリアーノに関してそれはなさそうで、しっかりと受け止め、終盤にはノーモーションの左を連続でヒット、ミルズの突進を止めています。
2Rもとにかく激しいミルズ。かなりハイペースで攻めていきます。そのパンチが当たる事はありませんが、後半に入った所で右のオーバーハンドをヒットし、会場を沸かせています。
しかしそれ以上にエミリアーノのノーモーションの左は素晴らしい。早く、強く、そして美しい。
そしてやはりミルズの入り際への左のボディショット、これは非常に効果的でしょう。
3R、お互いにパンチの当たる距離での打撃戦。ミルズは素晴らしい手数を出しますが、ここでももちろん印象的なのはエミリアーノの左ボディショットと左ストレート。
後半に強く攻め込んだミルズにエミリアーノは右フック、このカウンターでミルズはダウン。
4R、開始早々はミルズのパンチが当たりはじめたように見えました。実際、よく当たっていたと思います。
これにミルズは気をよくしたのか、どんどん攻めていきますが、リラックスした状態からジャブで攻め入ったところに、エミリアーノ・バルガスの左のノーモーション・カウンター!!!ドンピシャでした。
これでミルズはダウン、再開も、ダメージは明らかです。
立ち上がったミルズに対してチャージするエミリアーノ、バルガスも踏ん張って打ち返そうとしますが、自分のパンチを出した時のミスブローで尻もちをついてしまうほど、ダメージがあるようです。このダウンでレフェリーはストップ!
エミリアーノ・バルガス、4RTKO勝利!!
ハートが強く、トップドッグを喰ってやろうという気満々の若きボクサーを危なげなくストップ。
やっぱりもう1段、高い場所で戦ってほしいボクサーですね。
今回の興行は、概ね予想通りというか期待通りというか。非常に満足度の高い内容及び結果ではなかったか。こういう興行がもっと増えれば良いですね。
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