本当に素晴らしい興行だった、一昨日のトップランク×マッチルーム興行。
敗れはしたものの、ザンダー・ザヤスは王者としての意地を見せ、しかしジャロン・エニスの怪物ぶりを止める事はかないませんでした。
ザヤスはまだ23歳、いくらでも挽回のチャンスがあります。いつの日か、P4Pランキングに名を連ねる日もくるかもしれませんから、これからも良いパフォーマンスを見せ続けてほしいものです。
一方で、想像通りなのか想像以上なのか、というパフォーマンスを見せつけたジャロン「ブーツ」エニス。
これまで混沌としていたスーパーウェルター級は、間違いなくこのエニスを中心にまわっていくはずです。
できれば、リヤドシーズンに取り込まれる事なく、ズッファボクシングに取り込まれる事なく、マッチルーム傘下のままで良いからアメリカのリングに立ち続けてほしい、と願います。
ということで今回のブログは、これからまた面白くなりそうなスーパーウェルター級について。

統一王者、ブーツ
WBO世界ウェルター級王者となり、さらにWBAとIBFを王座統一したものの、そのポテンシャルに比して「ライバル不在」と言われ続けたジャロン・エニス。
本人が目指していたかどうかは別にして、テレンス・クロフォードという大魚を逃したことは彼のキャリアにとって大きかった事でしょう。
しかしながら、クロフォードからすれば、エニスとやる意味は全くと言って良いほどなかった、と言えます。
そんな恵まれなかったエニスですが、ウェルター級事態、カレン・チュカジャンとのIBF世界ウェルター級王座決定戦を制して戴冠、その後に正規王者へと格上げとなったあと、ロイマン・ビラ、デビッド・アバネシアン、チュカジャンとの再戦を制し、当時のWBA王者、エイマンタス・スタニオニスとの王座統一戦を経て、スーパーウェルター級へ転級。
転級初戦でウイスマ・リマをわずか1Rでノックアウトしたのち、ザンダー・ザヤスの保持するWBA・WBO統一タイトルに挑戦、7RTKO勝利でこの統一タイトルを獲得しています。
とてつもない強さを見せたエニスだからこそ、即「Who's Next?」と言われるのは致し方のないことです。
最大のライバルはフンドラ、ケリー、ではなく
この階級の他団体の王者は、WBC王者のセバスチャン・フンドラ、そしてIBF王者のジョシュ・ケリー。
フンドラは、2023年にブライアン・メンドサに不覚のTKO負けを喫した後、身長差を活かして戦う方法にシフト、ティム・チューを2度、その他にコーデル・ブッカー、キース・サーマンを退けています。
メンドサ戦での敗北は、それまでリードしていたにも関わらず、一発で決着がついてしまった試合。これは油断があったのだと言われれば信じてしまいそうなファイトであり、果たしてもう一度やれば、フンドラがリベンジを果たす可能性がかなり大きいような気がしています。
現在3連続ストップ勝利中ということで、ファイトスタイルも含めて、今現在がプライムタイムといっても過言ではないボクサーです。
この規格外のサイズを持つスーパーウェルター級と、エニスがどのように戦うのかは非常に楽しみですね。
そしてIBF王者のジョシュ・ケリー。
前戦でIBF王者となったボクサーですが、エニスとは別に「もう1人の怪物」候補として恐れられた恐怖の大王、バフラム・ムルタザリエフからタイトルを奪取しています。
倒し倒されの大激闘、2-0のマジョリティデシジョン、ともかくケリーが勝利するとは思われていなかった状況で粘り強く勝ちきった印象ですから、このボクサーも当然評価は高めています。
少なくともムルタザリエフ戦を見る限りは、ケリーはスピードと距離感をストロングポイントとしているボクサー。
だからこそ、エニス戦は厳しいかもしれません。
ザヤスはケリー以上に体の柔軟性を備え、更にスピードもディフェンススキルも持っていたボクサーでした。
しかしそのスキルは、エニスに通じることはなく、途中見せ場をつくったものの、結果だけを見れば「刃が立たなかった」となってしまいます。
そうなると、正直ケリーだともっと厳しいような。
ケリーが経験で抑え込もうとしても、右も左もどちらも性能を発揮するエニスには、難しいのではないでしょうか。
この試合は、両者ともに地元を離れたくない、損をしたくない、となるならば、いっそリヤドが好都合かもしれません。
しかしこのWBC王者、IBF王者を差し置いての本命は、バージル・オルティスJr..です。
バージル・オルティスJr.とのメガマッチ
この階級で、エニスにとって最もカネになる試合は、ほぼ間違いなく、バージル・オルティスJr.でしょう。
横紋筋融解症という難病で、いっときブランクをつくったオルティスJr.ですが、今現在はしっかりと活動してきています。
2024年にセルヒー・ボハチュクとの決定戦を経てWBC世界スーパーウェルター級暫定王座を獲得。そしてその後は、その人気ゆえにか正規王者との王座統一戦をオーダーされる素振りは一切なく、獲得した「暫定王座の防衛戦」という本来であればあり得ない道のりを歩んでいます。
クロフォードを苦しめたイズライル・マドリモフ、もう古豪と呼ばれるに相応しくなったゲートキーパー、エリクソン・ルビンを退けて、暫定王座は2度の防衛中。
ルビン戦からもう半年が経過している中、次戦の発表がまだされていない(と思う。たぶん)という状況はあまりよくはありません。
いずれにしても、この人気者がエニスに挑むとなると、これはアメリカボクシング界の「メガマッチ」に該当するファイトになるのではないでしょうか。
プロスペクト時代から何かと比べられる事が多かった、エニスとオルティス。いよいよ雌雄を決する時は近いのかもしれません。
そしてこの試合を、より盛り上げるためには、それぞれがもう1〜2戦戦い、できれば王座を統一することで盛り上げてもらいたい。
それには、オルティスのWBC暫定王座は一旦無視して、オルティスにはケリーに挑み、エニスがフンドラとの統一戦を行う、というのが最も良さそうに思います。
元王者たち
現在の王者たちでは、どうしてもエニスが頭2つぐらい抜け出ている、という感じがします。
そして、個人的にはその下にはセバスチャン・フンドラがいる、と思っています。
しかしながら、その「次」を考えると、王者もコンテンダーもなかなか優劣がつけづらい。
オルティスにしても、ケリーにしても。そのケリーに負けたムルタザリエフにしても、もう一度やればケリーにリベンジできる可能性は大いにあるでしょうし、オルティスに僅差判定負けを喫したイズライル・マドリモフだったそれは同じ。
そして、その序列に元王者となったザンダー・ザヤスを加えるとするならばどの辺りなのか、というのは、今はまだわかっていないことです。
ザヤスについては、この初黒星からの復帰戦で安易にミドルに上げるとか言わず、もう少しこの階級で見てみたい。
このトップ下辺りの争いもこの階級は非常に面白く、まだティム・チューもいなくなったわけではないし、そのチューと復帰戦を戦うエロール・スペンスJr.だって復活の可能性を残しています。いずれにしても、ここで復活ロードを辿れるのはこの試合に勝ち残ったもののみ、でしょう。
突如として現れ、突如として去ってしまったアバス・バラオウだってまだまだ怖さを持っているボクサーで、あのフィジカルはなかなかです。これはムルタザリエフと猛烈にタフなファイトが見たい、と思ってしまうものですね。
絶対王者候補の登場で、その嵐が早く過ぎ去る事を願うのか、それともその嵐の中に飛び込むのか。
スーパーウェルター級はここから少なくとも1-2年、大きく動きそうですね。
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