先週に引き続き、トップランクがボクシング界を盛り上げてくれます。
ダブル世界戦として開催される、オハイオ州のトップランク興行です。
メインはアブドゥラ・メイソンvsアルバート・ベル、co-mainにブルース・カリントンvsレネ・パラシオス、そしてその前の試合であるタイガー・ジョンソンvsクリストファー・ゲレロの試合も含めて、無敗同士の対決3連戦。
無敗といえどもレジュメは大切になってくるため、それぞれAサイド、Bサイドがしっかり決まっているわけですが、それでもこの無敗というレコードは底を見せていないわけですから夢があります。
Aサイドのボクサーたちが順当に勝利するのか、それともどこかでアップセットが起こるのか。
ということで今回のブログは、メイソンvsベルをメインに据えた、トップランク興行の観戦記。

7/4(日本時間7/5)アメリカ・オハイオ州
タイガー・ジョンソン(アメリカ)17勝(8KO)無敗
vs
クリストファー・ゲレロ(カナダ)16勝(9KO)無敗
EOTTM所属、クリストファー・ゲレロ。このEOTTMは私は箱推し(と、若者のように使ってみる)なわけですが、流石に今回はジョンソンにその強さを見せつけてほしい、というところです。
初回、まずは互いに慎重な立ち上がり。そこから一気にヒートアップするような展開。ジョンソンが速い、巧いのは当然としても、このゲレロも速く、そして踏み込みも鋭いですね。
2R、ゴング前、えらく気合の入った雰囲気だったゲレロですが、かなりディフェンシブ。ちょっとゲレロにとって、ジョンソンは速すぎるのかもしれません。
ジョンソンのジャブはビシビシと当たり、ゲレロのジャブは当たりません。ゲレロはこの距離で勝負すべきではないですが、ここからどのように巻き返すのでしょうか。まさかこの距離で上回れる、とは思っていないはずです。
3R、ここもほとんど中間距離。ゲレロが強引に攻め込む場面も見せますが、それでもジョンソンには届きません。
4R、ゲレロも少しずつ手が出始めてはいるものの、ジョンソンは距離で外しています。変わらずジョンソンのジャブは当たっており、このままいけば何の問題もなくジョンソンが勝利していしまいそうです。
終盤、ゲレロの右が当たったように見えましたが、とはいえこの一発でそれまでをチャラにはできないでしょう。
5R、展開を変えられない、ゲレロ。私はちょっと眠くなってきたりもしています。6Rも変わらず。もしかしたらゲレロとしては、ジョンソンに出てきてほしいのかもしれません。そこに合わせようとしているのか。ジョンソンの打ち終わりにオーバーハンドの右をあわせようとしている感じ。
ゲレロがプレスをかけて攻めても足で躱され、クリンチでいなされ、どうにもならない感が出ていますから、これは「待ち」の選択肢しかないのかもしれません。
7R、ジョンソンは速いワンツー、これもどんどんゲレロにヒットしています。若干ジョンソンはそのパンチにパワーを込めてきており、このラウンド後半にはボディショットをヒットしてゲレロを下がらせています。
KOチャンスが近くなってきたジョンソン、これに対して一発逆転を狙うゲレロは、追いかけても捕まらないから、この展開はチャンスと思うのかもしれません。
8R、ここもジョンソン劇場、ゲレロは時に強引に攻め込むも効果的な攻撃はできません。
9Rも展開は変わらず、ジョンソンのジャブでゲレロは顎を跳ね上げられます。ゲレロはいよいよ歩きながらプレスをかけて、しつこい攻撃を繰り広げますが、これをもっと、ダメージを貰う前にしておけば少しはマシだったかもしれません。
ラストラウンド、ジョンソンの長いジャブがゲレロの顔を幾度か跳ね上げ、ワンツーもヒット。中盤には強い右でゲレロにダメージを与えますが、ゲレロの反撃にあうとあっさりと安全運転に移行。
ということで判定は、100-90、99-91×2、3-0でデランテ「タイガー」ジョンソン。
まあ、そうなりますね。期待通りの巧さは見せたものの、期待以上のものは見せられなかったジョンソン、一体何がしたいのかわからなかったBサイド、クリストファー・ゲレロ。
どっちにしても残念な戦いでしたね。
WBC世界フェザー級タイトルマッチ
ブルース・カリントン(アメリカ)17勝(10KO)無敗
vs
レネ・パラシオス(メキシコ)19勝(10KO)無敗1分
さて、一つ前の試合が、誤解を恐れずに言うなら非常につまらない試合だったがために、この興行のためにも強さを見せつけてほしいブルース「シュシュ」カリントン。
「Inoue」の名前を出したからには、下手なパフォーマンスはできないはずです。
是非とも期待値を高めるようなファイトを見せてほしい。
さて、ゴング。
初回、プレスをかけるのはパラシオス。カリントンは少しずつサイドに動きつつ、速いジャブ。
サウスポー相手にはジャブはなかなか当たりづらいですが、上手く届かせています。
2R、ジリジリとプレスをかけるパラシオス。時折サイドへの動きを使っています。25歳、ちょっとバムみがあるサウスポー、ニュー・メキシカンスタイルですね。
ただ、これも前試合と同様、パラシオスはもっと思い切っていかなければ行けないような気がします。
3R、カリントンが下がってくれる分、パラシオスは時折コーナへ詰める事ができています。しかしここでも良い攻撃はできず、カリントンはするりと抜け出しています。
この試合も動きがないので、やっぱりちょっと眠くなってきます。
4R、パラシオスがプレス、いざステップインで入ろうというところにカリントンのジャブ。タイミングは素晴らしく、巧いですが、またこれは最後までつまらない試合になりそうですね。
5R、プレスをかけるも、攻め込めないパラシオス。カリントンはパラシオスが来ないから、ジャブしか出せないカリントン。
興行の試合は伝染する、とも言いますが、前試合の雰囲気を引きずっているのか、山場は訪れません。
パラシオスはもっとガムシャラに行くべきだ、というのは簡単ですが、行けない何かがあるのでしょう。それでも、見ている方にとってはなかなかに辛い試合です。
6R、勝利のためには行かなければ行けないパラシオス。もう、崖っぷちです。
ここでパラシオスはようやく近い距離まで攻め込めており、ここで手数が出るようになってきています。やっぱりフィジカルもパンチングパワーもありそうで、これは勇気を持っていくべきでしょう。
7R、いよいよパラシオスも力強い連打を振ってきます。多少カリントンの反撃があってもパンチをつなげてきます。これこそが、カリントンが嫌がる戦い方。
ロープを背負う場面が多くなってきたカリントン、比較的足を使う動きも多くなってきており、プレッシャーがかかって来ていることは明白です。
8R、鋭いフックを振るパラシオスですが、このラウンドはなかなか連打は出ません。プレスをかけるのみで止まってしまいますね。
スロー映像では、パラシオスの右フックをカリントンが躱しそこねて後頭部をかすり、スリップする場面。後頭部をアピールしていますが、どちらかというと足がひっかかったような感じでしょうか。瞬間的なダメージはあったかもしれませんが、おそらく尾を引くものではないでしょう。
9R、カリントンも中間距離でストレート系のコンビネーション。少し手数を増やしています。この速いコンビネーションで、パラシオスは手を出すタイミングがなさそうです。
未だ山場こそないものの、ここに来てようやくアクションが増え、「ファイト」らしきものになってきました。しかし、もう残りはわずか3Rです。
10R、パラシオスはパワーパンチを放っていきますが、連打を離せません。これが、カリントンの巧さなのかもしれません。要所でジャブをヒットするのはカリントン、長い距離での右も浅くもヒットしています。対するパラシオスは前に出る、ということだけしかできず、あまりに近づきすぎるとカリントンのクリンチで分断されます。
11R、同様の展開から、後半、パラシオスが左のダブルをカリントンにヒット。カリントンは若干集中力が散漫になっているか、その後もパラシオスに攻め込まれます。
この試合はじめて、といえるパラシオスの強いボディショット、これでカリントンはダメージを受けたか!
カリントンはここでクリンチ、その後明らかにダメージを受けた状態で下がり、パラシオスは千載一遇の大チャンス!
1分近いこの時間を何とか耐えたカリントン。残り1R、どのように凌ぐのか、もしくは捕まるのか。
ラストラウンド、強いプレス、明らかなボディ狙いのパラシオス。カリントンはフィリーシェルで明らかにボディを警戒。どんなにみっともなくても逃げ切れば勝利を手にできるカリントン、この状態にボディを当てるのは困難です。
と、ボディへのディフェンスに全集中するカリントンに、顔面への左をヒットしたパラシオス。猛烈に攻めてカリントンをコーナー、ロープへと追い込み、ここぞとばかりに強打を放っていきます。しかしカリントンもさすがのもので、足を使ってこれをエスケープ、コーナー際で固まってもしっかりとブロッキング、ウィービングでなんとかこの難を逃れています。
これにて試合が終了、判定は116-112、117-111、118-110、3-0の判定でカリントンの勝利。ブーイングも大きいですね。
最終盤、まくられましたが、盤石の防衛を果たしたカリントン。圧倒しながらも倒しに行かなかった、ファイトしなかった、というのがブーイングの理由でしょうか。
ここはニューヨークではなく、オハイオ州です。
カリントンの巧さが発揮されたことがパラシオスの良さを消した、ということなのでしょうが、どちらも評価を上げられるような内容出なかったことは確かです。
WBO世界ライト級タイトルマッチ
アブドゥラ・メイソン(アメリカ)20勝(17KO)無敗
vs
アルバート・ベル(アメリカ)28勝(9KO)無敗
co-main、そしてその前、いずれの試合も内容としては良いファイトではありませんでした。
興行中の試合内容は伝染する、とよく言われますが、この試合すらもそのようになる可能性も秘めているのではないでしょうか。それは、どちらかというとアルバート・ベルの戦い方、ということになるかと思います。
ここは期待することは、やっぱりアブドゥラ・メイソンのノックアウト勝利です。
とはいえ、テクニシャンであるベルを倒すことは容易ではないでしょうし、それがもしディフェンシブに戦うベルであればなおさらです。
とにかく、この眠気をぶっ飛ばすようなファイトを見せてほしい。
さて、ゴング。
まずはメイソンのボディジャブ。初回からしっかりと左も伸ばしていきます。このメイソンの入り際にベルも右カウンター。こちらはどちらかというと待ちのボクサーですが、メイソンが仕掛けてきてくれるから比較的やりやすいでしょう。
ベルは非常に反応も良いですね。メイソンは非常に攻撃的なボクシング、まるでファイターのようにしつこい攻撃をボディに集めます。
2R、前2試合に対して、非常にハイペースな展開です。ともにスピードがあり、休まないということもあるのでしょう。
ベルのノーモーションの右をすっと躱して攻め入るメイソン、しかしこの右は時折メイソンを捉えています。力感のない、スムーズな左右、しかも今日のアルバート・ベルはさすがに過去イチの仕上がりのよう。
メイソンはあまりまっすぐ攻めない方が良いかもしれません。
3R、メイソンが近づいたタイミングで、もはやボディを囮としてリターンを浴びせるベル。プレスをかけるのはメイソン、先手を取るのもメイソン、アクションが多いのもメイソンですが、より効果的にパンチをヒットしているのはベルなのかもしれません。
後半、若干プレスをかけたベル、自ら攻めて波状攻撃を仕掛ける場面も。
4R、メイソンは速いですが、ちょっと単調でしょうか。このメイソンの入り際にベルはカウンター、これが単発ではなく2発3発と出てくるのが怖いところ。
若く、勢いのある王者ですが、このような老獪さに出くわした時、かなり苦しい戦いになる可能性が高い。メイソン大丈夫でしょうか。。。
5R、この状況をなんとかしようとしてか、メイソンがフェイントを多用。フェイントでベルに手を出させ、そこに攻め込もうとしているのでしょう。
時折のスイッチも含めて、状況を打破しようとするメイソン、流れが悪いとき、色々と試せるのは非常に素晴らしい事。
グイグイと前にいくメイソンですが、近づけばクリンチ、近づこうとすればサイドにピボットされ、ストレート系のコンビネーションを当てられるメイソン。これは結構キツい。
6R、若干、ベルが自信を持っているイメージで、自らコンビネーションを出していく事が増えて来ているように見えます。
メイソンがやや足を使う場面も出てきており、それでもメイソンが攻めるとカウンターを用意しているベル。攻めても待っても難しいメイソン、半分が終わったこのタイミングで、どのような戦略を練るか。
7R、広いスタンスでどっしりと構えたメイソン、やはり待つよりは自ら先手を取った方が良い、という判断でしょう。
中盤、揉み合いの展開からメイソンの左のダブル。むしろもうこの超至近の距離こそが活路かもしれません。
ガードをしっかりと固めてプレスをかけるメイソン、このラウンドはしつこくパンチを放っていき、それが比較的これまでよりはベルにヒットしているように見えます。
ベルは若干カウンターの精度が落ちているか、カウンターを取れるタイミングが減っているように見えます。
8R、このメイソンのプレスのかけ方、一歩も退かずに最後まで攻め切ろうという気概が感じられます。中途半端は許さないという雰囲気のメイソン、ちょっと楽に戦おうという気持ちに見えるベル。もしくは、スタミナや集中力的なものかもしれません。
序盤からのハイペースの展開に、もしかするとベルは結構消耗していたのかもしれませんし、メイソンの強いプレスに消耗させられたのかもしれません。ベルはクリンチに逃げる場面が多くなってきています。
ここにきて、なんとメイソンのチャンスタイムの到来。ポイントは厳しいかもしれませんから、ダウンの一つは欲しいところ。
9R、この強いプレス、攻撃にもメイソンの動きは全く落ちません。逆にベルはプレッシャーがかなり効いているメージで、一瞬の動きはまだ良いですが、全体的な手数は随分と落ちているように見えます。
メイソンにとってはクリンチで休ませない、も非常に重要ですね。
中盤から後半にかけて、メイソンは執拗なボディショット。これをかなり嫌がっているベル、クリンチを駆使し、ストレート系のコンビネーションをリターンしますが、その回転力は落ちています。
10R、ベルはボディにダメージを抱えているか、フィリーシェルのスタイルからジャブが殆ど出ません。こうなるとメイソンはインサイドに簡単に入る事ができており、それに対してベルは右アッパー等のカウンターを用意していますが、メイソンもその準備をしている分、しっかりとプレスがかかっています。
若干メイソンの手数が落ちた感がありますが、無駄打ちをなくした感じでしょうか。近い距離でメイソンはまたも執拗なボディショット。
11R、ボディを徹底してきたメイソン、そろそろ左を顔面へ。ボディを守らなければならないベルの手数は明らかに減っており、出せるパンチは払いのけるようなジャブと、右のカウンターのみです。
しかしここまでディフェンシブに戦うベルを倒し切る、というのもなかなか難しい事。判定だと前半にベル、後半にメイソン、という感じですから、微妙な決着になりそう。果たしてラストラウンド、何かは起こるか。
ラストラウンド、開始ゴングからすぐにメイソンの左がヒット!続けてメイソンが左、右で追撃すると、ベルはここでダウン!!!
立ち上がったベル、メイソンは左をフルスイング!ベルはクリンチ、しかしメイソンの勢いはものすごく、足を使って躱すベルですが、近い距離でまたも左がヒットすると、ベルはこの試合2度目のダウン!!
ここでレフェリーはストップ、アブドゥラ・メイソン、劇的最終回TKO勝利!!!
ここで倒し切るというのは本当に素晴らしい、アブドゥラ・メイソン。
12Rの最終ラウンド、あそこで一気に行けることも素晴らしい。例えば前半リードされ、後半から盛り返し、最終回に倒し切る、これができるのは、この興行に出場したタイガー・ジョンソンやブルース・カリントンには成し得ない事ではないでしょうか。
とにかく、アルバート・ベルはこの試合最高のスタートを切り、過去最高の仕上がりだったことは明白。しかし待たされ続けた宿命なのか、若きスター候補メイソンのペースについていけず、知らずのうちに、なのか、戦略的に、なのか、自身の能力を超えたオーバーペースとなってしまっていたのだと思います。
流れ的には、若き王者が老獪な挑戦者につけこまれる、という流れでしたが、それを強引にひっくり返したアブドゥラ・メイソン。
アメリカのプロスペクト(王者になったのでこの言い方は適当ではないですが)たちの中で、最も楽しみなのはやっぱりこのボクサー。
ずっと注目していたアブドゥラ・メイソン、いよいよメジャー街道に乗っかってきた感じがしますね。
今後も非常に楽しみです。
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