2024年、フライ級が大きく動きました。
2024年の初頭にアルテム・ダラキアンをユーリ阿久井政悟が攻略し、見事WBA世界フライ級王座を獲得。
その1ヶ月前にはジェシー・ロドリゲスとサニー・エドワーズが戦い、ロドリゲスがIBF王座とWBO王座を統一して2団体統一王者として君臨していたから、ここにWBC王者のフリオ・セサール・マルティネスを加えて王者は3人。
その後、ロドリゲスが王座を返上してスーパーフライ級へ転級、JCマルティネスも同じく王座を返上したため、一時期はWBAのみ王者がいる、という状態にもなりました。
そしてその後は後継王者の決定が済んだというのが2024年末の現在の状態。
ということで今回のブログは、世界フライ級の現在を見ていきましょう。
サニー・エドワーズvsガラル・ヤファイ
ユーリ阿久井の初戴冠と2度の防衛、アンヘル・アヤラの戴冠、アンソニー・オラスクアガの戴冠、そして寺地拳四朗の2階級制覇。
2024年、世界フライ級のタイトルマッチはいくつもありましたが、先日行われたこのWBC世界フライ級暫定王座決定戦、サニー・エドワーズvsガラル・ヤファイが世界的に見れば最大のフライ級ファイトでした。
元々評価の高かったサニー・エドワーズは、昨年末にジェシー・ロドリゲスに敗れましたが、それまでに確固としたフライ級での評価は落ちず。そしてロドリゲスがスーパーフライ級に行ったため、エドワーズはそのままこの階級で最高のボクサーの評価のままでした。
そこに東京五輪金メダリスト、次の英国ボクサースター候補であるガラル・ヤファイが挑むという構図。
この試合はご存知の通りヤファイの圧勝という結果に終わります。
エドワーズはいつものように足が動かず、ボディワークもでず、自身曰くはモチベーションの問題とのことでしたが、このヤファイを相手にした戦いでボクシングに集中できないという状態は非常に問題です。
エドワーズはこの戦いの後、引退を明言。28歳とまだ若いですが、成し遂げたことは非常に大きく、英国には「タイソン・フューリーに次いで英国現役P4Pで2位」という評価のファンもいたそうですから、ファンに残したものは大きいのでしょう。
そこにいきなりヤファイが取って代わるか、というとそうではないと思うのですが、エドワーズ戦で見せたパフォーマンスは素晴らしいものです。いずれにしろ、サニー・エドワーズを破ったことで、暫定的にこのガラル・ヤファイがトップの評価を得る、というのはおそらく世界的には問題がないことなのでしょう。
ユーリ阿久井政悟vs寺地拳四朗vsアンソニー・オラスクアガ
さて、国内は三つ巴です。
いかにヤファイが評価を上げようとも、保持しているタイトルは無理やり「王座決定戦」と名付けられたWBC世界フライ級暫定王座。
この暫定王者には正規王者との団体内統一王座戦が義務付けられます。WBCがちゃんと仕事をすればの話ですが。
そうなるとヤファイの次戦がvs寺地拳四朗となるのが必然的なマッチアップです。
ではこの両者がすぐさま交渉に入るか、というとそうではありません。
噂では前回のアマプラ興行から間も無く、WBC王者の寺地拳四朗とWBA王者のユーリ阿久井政悟が交渉に入っている、とのことで、この2人が戦うことに障害らしい障害はありません。
なので早ければ2月とも言われているアマプラ興行でこの戦いが実現する算段は非常に高い、と言えます。
拳四朗はこの階級での「4団体統一」を目標として明確に掲げており、区切りの年齢として35歳とも。そうするとやや急ぎ足での王座統一を目指すことになると思われ、とりあえず交渉が簡単なところから王座を重ねていく、というのは理に適った行動です。
そしてもしこの戦いが何らかの理由で流れたとしても、WBO王者のアンソニー・オラスクアガとの統一戦も決定は比較的容易なものでしょう。
すでにライトフライ級時代に戦い、名勝負となった拳四朗vsオラスクアガの再戦、というものは、王座統一戦という箔をつけ、これはファンが見たい戦いです。
いずれにしろ、拳四朗、ユーリ阿久井、そしてオラスクアガは帝拳プロモーションが関わっており、この3者間のマッチメイクは比較的容易である、と言えます。
期待する王座統一戦
4団体の統一、となれば問題となりそうなのはメキシコにあるIBFタイトル、アンヘル・アヤラです。
このボクサーだけはどのようにマッチメイクできるかが不明で、優秀なメキシカンですが意外にもまだメキシコ国外での試合経験がありません。
おおよそ有望なメキシカンはアメリカに行って名を上げる、が通常ルートですが、このボクサーはメキシコにいながら世界タイトルを手にしました。今年8月に王座決定戦で相対したデイブ・アポリナリオは無敗の強敵でしたが、結果は6RKO、アヤラも相手も無敗だったからこそ、まだその評価が定まらないのもまた事実。このボクサーが日本人を相手にどのように絡んできてくれるのかは今後の楽しみの一つでもあります。
さて、個人的に期待したいことは、やはり寺地拳四朗vsガラル・ヤファイです。
それが2月、と言えば早すぎるのでしょうが、もし3月か4月であればどうでしょうか。
拳四朗は前戦が10月ですから、半年くらいは空いてしまいますが、ヤファイにとっては今回ダメージもなく終えたので、タイミング的には難しくないでしょう。
そしてその同じリングで、ユーリ阿久井vsオラスクアガ、これが良い。
そして勝利したボクサー同士が今年中のどこかでぶつかる、となればフライ級は激アツで、ここで残ったボクサーが拳四朗であってもユーリ阿久井であっても、ヤファイであってもオラスクアガであっても(オラスクアガの場合は帝拳に頑張ってもらいましょう)、メキシコ人との4団体王座統一戦は可能ではないかと思います。
コンテンダーたち
今週末、WBAの上位のコンテンダーであるヤンキエル・リベラ(プエルトリコ)がリング登場です。来年か再来年にはおそらく世界タイトルにも絡んでくるであろうこのリベラを迎え、トップどころはいよいよ実力者がひしめく状況になりそうです。
そして同じく上位のコンテンダー、トビアス「ピットブル」レイジェス(アルゼンチン)も年末にリング倒叙予定。16勝(15KO)無敗1分というハードヒッターは、12/27(日本時間12/28)にニカラグアでフェリックス・アルバラード(ニカラグア)と対戦します。
アンヘル・アヤラはこのアルバラードに競り勝ってIBF王座決定戦への出場を可能にしました。
アルバラードも若手の踏み台になる時代が来たか、と嘆いてしまいそうですが、このレイジェス戦というのはレイジェス側のプロモーターがステップアップファイトとしてアルバラードを選んだのではなく、IBFからオーダーされた指名挑戦者決定戦です。
未だこの挑戦者決定戦に上がれる地位にいるアルバラードはさすがとしか言いようがありませんが、ともかくこの好戦績のボクサーが勝利するのか、アルバラードが勝利するのかは非常に興味深いところですね。
ところでこのアルバラードvsレイジェスはGEMELO PROMOTIONSというプロモーション会社が取り仕切っていますが、このニカラグアのプロモーション会社のトップはフェリックス・アルバラード本人です。プロモーターもやってるらしい。
他にも、WBCとWBOの1位にはスーパーフライ級で井岡一翔、中谷潤人と戦ったフランシスコ・ロドリゲスJr、飯村樹輝弥や富岡浩介と戦ったエスネス・ドミンゴとまだまだたくさんのボクサーが控えています。
ニッポン伝統のフライ級
さて、日本では伝統のフライ級と言われるお家芸であるこの階級、やはり日本人ボクサーが中心として動かして欲しいところ。
すでに2人の世界王者を輩出している日本ボクシング界、もはやファンベースが日本にあるといっても過言ではないアンソニー・オラスクアガを含めると3団体のタイトルが日本にあると言えます。
そしてその次のボクサーたちにも期待しましょう。
まずはやはり元ライトフライ級王者で3階級制覇を目指す京口紘人。4団体全てでランクインしており、最高位はIBFで4位というものなので、京口には是非ともアンヘル・アヤラ攻略を期待したいところです。
その前に3位のアルバラードと5位のレイジェスが挑戦者決定戦を戦い、順調にいけば夏前にはIBFの指名戦が組まれるはず。早くてその後なので、可能であれば2025年の秋、京口のIBF王座挑戦が決まるかもしれません。ここでワタナベジムのプロモーションが非常に弱い、という大問題が出てくるわけですが、ここはTBプロモーションからの帝拳プロモーションの力を借りるとか、U-NEXT BOXINGで取り扱ってもらうとか、いずれにしろ何かしらの後ろ盾を得て進めてもらいたいものです。
京口の後塵を拝してしまうのは致し方ありませんが、桑原拓もまだまだ期待できると思います。スピードスターは今年5月、満を持して挑んだはずのユーリ阿久井政悟への挑戦で完敗、初戦のような劇的な場面こそ回避したものの、初戦よりも差がついた印象を受けました。ユーリ初戦からのパフォーマンスを考えると、本当に素晴らしいパフォーマンスだっただけに非常に残念でしたね。
もう半年以上、次戦の声が聞こえてきません。今年中は無理でしょうが、来年の早いうちに再起戦が行われることを願います。
そして日本王者の飯村樹輝弥、このボクサーは日本王座を獲得後、3度も防衛していますが未だ世界ランクに入りません。この階級では日本王座を防衛していれば自然と世界への切符を掴めそうなものですが、これは不思議なことですね。
業を煮やしたか、飯村は1月にOPBF東洋太平洋王座決定戦への出場が発表されました。これはステップアップファイトといって良いのでしょう、日本王座から東洋王座へという流れはなんだか古風で良い。
対戦相手はロレンツ「ショットガン」ドゥマム-ag(フィリピン)というボクサーで、25歳のサウスポー、身長165cm、リーチ170cm(BoxRecより)という体格に恵まれたボクサーです。
戦績は10勝(7KO)無敗1分と無敗であり、前戦ではWBOオリエンタルのタイトルを当時無敗のラメル・メルカドJr.(フィリピン)と争い、初回KOで屠っています。その試合を含めて3連続KO中、これは怖いボクサーです。しかもニックネームがショットガンですもんね。
まあ何にせよ、このドゥマム-agというボクサーは二桁ながらも世界ランカー。ここに勝てば大きく道が開け、その後の戦いによっては2025年中にグッとランクを上げる可能性もありますね。
今後のフライ級戦線、大いに注目してまいりましょう。
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