日本時間で9/27は、ボクシングファンにとって今年最も忙しい一日になったかもしれません。
朝早くからWBSSの決勝、そしてジョシュ・テイラーの防衛戦がヨーロッパであり、アメリカではPBCのダブルヘッダーのイベント、それに若干時間がかぶって国内の静岡の興行もありました。
↓ヨーロッパ興行の観戦記です。
今日のブログでは、アメリカPBC興行、第一部の観戦記です。
メインイベントはジャモール・チャーロ(兄)vsセルゲイ・デレビヤンチェンコ。
そしてセミにはブランドン・フィゲロアvsダミアン・バスケス。
セミセミにはジョンリエル・カシメロvsデューク・マイカー。
では早速、私の主観ですが観戦記を書いていきたいと思います。
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9/26(日本時間9/27)
WBO世界バンタム級タイトルマッチ
ジョンリエル・カシメロ(フィリピン)33戦29勝(20KO)4敗
vs
デューク・マイカー(ガーナ)24戦全勝19KO
カシメロはご存知、元々井上尚弥(大橋)との対戦相手として決定されていたボクサーです。2007年にプロデビュー、地域タイトルを獲得し、14戦目でWBO世界ライトフライ級暫定王座を獲得します。
しかし初防衛戦で僅差の判定を落とし、無冠に。再起戦で今度はIBF世界フライ級王座に挑みますが、当時の王者モルティ・ムザラネに敗北、2連敗となります。
復帰後すぐにIBF世界ライトフライ級暫定王座戦を制し、正規王座に繰り上がった後は3度防衛、4度目の防衛戦でウェイトをつくれずに王座剥奪。
またすぐにIBF世界フライ級に挑戦、アムナット・ルエンロン(タイ)に判定負けを喫しますが、再戦でリベンジして戴冠。2階級制覇。その王座を1度防衛のあと返上したあとのノンタイトル戦でジョナス・スルタン(フィリピン)に判定負け。
そして2019年にWBO世界バンタム級暫定王座を獲得、正規王者ゾラニ・テテ(南アフリカ)を下馬評不利の中3RTKOで降し、タイトルを統一、正規王者となりました。
キャリアは非常に山あり谷あり、負け数もありますが、世界タイトル戦やそれに準ずる試合が多く、経験値は多く積んでいるようなイメージ。そして世界各地で戦っており、アップセットもよく起こしています。
安定性がイマイチで、一発当たればみたいなボクシングなので試合自体は緊張感もあっておもしろいですが、ポカをする可能性もあります。
対するデューク・マイカー(以前ミカーと表記したかもしれませんが、中継局WOWOWの表記に合わせました)は、スピードのあるボクサー。
スピードのあるサウスポー、ゾラニ・テテを攻略したカシメロですが、どちらかというとカシメロはスピードのあるタイプは得意ではないように思います。
試合映像自体は多くないながらも見てみると、マイカーは素早くバックステップして、そこから攻め入るパターンが多いような気もします。このバックステップでカシメロの前進、というか突進をかわしたりいなしたりできるかどうか。
カシメロが超強引に入って、反則じみたパンチを繰り出していくならば、マイカーが崩れる可能性がありますし、逆にカシメロが空転するという展開も考えられます。
前戦、カシメロの勝利がフロックだったのかが問われる試合になりそうです。これに勝てば井上尚弥との統一戦が近づくでしょうし、負ければ口だけだったと罵られる。逆にマイカーとしてはこれまでの対戦相手の格、実績から言って失うものがありません。通常であれば精神的にはカシメロの方が追いつめられた状態で闘うわけですが、カシメロはあまり気にしなそう。
我々日本人は、一旦カシメロで盛り上がってしまったので、カシメロに勝って井上戦につなげてもらいたいですが、マイカーが勝っても特に驚きはしないでしょう。
【カシメロvsマイカー!試合内容】
立ち上がり、カシメロはリラックス、マイカーは若干固いか。カシメロはやはり思い切り右を振っていきます。マイカーも退かず、ワンツーで対抗。かなりガードは固いです。カシメロの右を警戒して左ガードが特に固い。
2R、マイカーも強気にプレッシャーをかけます。しかしカシメロの右を置いてからの左フックをヒット!マイカーはダウン、かなり効いています。止められてもおかしくないほど足が効かないマイカーでしたが、何とか残り2分を乗り切ります。
3R、なんとか再開できたマイカーでしたが、カシメロの猛攻を止められず、レフェリーがストップ。
カシメロ、パワーアップしていましたね。攻撃は最大の防御ともいわんばかりの猛攻でした。2R後半に出したアッパーは空振りはしたもののまさに「昇龍拳」でした。
攻撃の粗さは相変わらずで、ダウンを奪って以降は付け入る隙はいくらでもありましたが、マイカーにその力は残っていませんでした。マイカー、もっとうまく戦えた気がしましたが残念です。調子づかせないためにハナから接近戦を挑んだマイカーでしたが、カシメロの暴風のようなパワーに為す術なく敗れてしまいました。
圧勝、それも衝撃的な内容で統一戦に弾みをつけたカシメロ!当たれば危険、当たらなければどうということもありませんが、様々なところからパンチが飛んでくるカシメロはやはり危険極まりない存在です。
井上尚弥との対戦も楽しみですね!
WBA世界スーパーバンタム級タイトルマッチ
ブランドン・フィゲロア(アメリカ)21戦20勝(15KO)1分無敗
vs
ダミアン・バスケス(アメリカ)16戦15勝(8KO)1敗
無敗のホープ、フィゲロアは元世界ライト級王者、オマール・フィゲロアの実弟。オーソドックスを軸にしたスイッチヒッターで、ずっとサウスポーで闘ったりもしています。
2019年1月に暫定王座につき、当時の正規王者、ダニエル・ローマン(アメリカ)がIBF王者のTJドヘニー(アイルランド)との統一戦で勝利してスーパー王者となったために、正規王者に昇格しました。(そのローマンもこの興行の2部に登場。)
前回の防衛戦では、対戦相手のフリオ・セハ(メキシコ)がなんと4.5ポンド(2kg!)オーバー。フェザー級を超えるリミット(スーパーフェザー級)のセハを相手に、苦闘のドロー防衛とはなかなか不憫に思いますね。
そんなフィゲロアは激闘型といってもいいでしょう。コンビネーションパンチャーで、気持ちが強くとにかく手数が途切れないイメージです。
対するバスケスは、ステップワークを使いながら闘うボクサー。こちらは元統一世界スーパーバンタム級王者、イスラエル・バスケスをおじに持ちます。
2019年3月には(この興行の2部にも登場する)ファン・カルロス・パヤノ(ドミニカ共和国)にほぼフルマークの判定で敗れていますし、強豪との対決はそれぐらいです。井上尚弥、ルイス・ネリにKOされたパヤノにても足も出なかった、という事実は、ダミアン・バスケスというボクサーの底を知ってしまった感じがします。
なのでおそらく下馬評はフィゲロアが絶対優位にたつでしょう。フィゲロアはここをしっかり倒しきって、スーパーバンタム級で活躍してもらいたいです。
【フィゲロアvsバスケス!試合内容】
ジミー・レノンJrのリングコール、「アーロン・アラメダ」って聞こえましたけど大丈夫ですか?かわいそうなダミアン・バスケス。
立ち上がり、バスケスが良いです。フィゲロアは戦い方を迷っているのか、忙しくスイッチしながらやや強引にパワー押し。バスケスがフィゲロアの入り際にパンチをヒット。フィゲロアは1R、結構もらっています。大丈夫か?
2Rもバスケスの右ジャブが効果的にヒットします。しかしフィゲロアも強引さが薄れつつあり、今後巻き返せそうな雰囲気です。
3R、エンジンのっかかってきたフィゲロア、バスケスは苦しくなってきます。バスケスが1R目ほどパワー偏重で強引にいかず、自分のボクシングをしはじめます。4Rもフィゲロアの勢いは止まらず、フィゲロアが連打もつかっていい感じです。
バスケスはこのままだとジリ貧。近い距離では分が悪いですね。フィジカルで押し負けてしまうバスケスは思い切って出入りのボクシングをしたいところ。
中盤は近い距離の打ち合いが続き、両者被弾。被弾してもおかまいなく攻める両者ですが、ダメージはバスケスのほうが溜まり、フィゲロアのほうが見栄えがします。
8R、フィゲロアがKOを狙ってラッシュを仕掛けます。バスケスは効いていますが、なんとか持ちこたえます。バスケスはかなり頑張っています。気持ちの強いボクサーです。
9R、フィゲロアの左オーバーハンドが何度もバスケスを襲います。バスケスは右目下がかなり腫れてきています。気力で立っているバスケス。
しかし10R、フィゲロアの猛攻を受け止めきれず、ついにストップ。
フィゲロア、下馬評通りとはいかずに10Rまでかかってしまいました。序盤KOが濃厚だった訳ですが、どちらかというとバスケスのがんばりが光りました。
バスケス、気持ちの強いボクサーでしたね。
フィゲロアは序盤、力みが目立ちましたがすぐに修正。ただ、ノックダウンの場面はなく、圧倒的な力の差を見せつけることはできませんでした。バスケスのパンチもかなり入ってはいたので、ハードパンチャーとの試合では厳しいかもしれません。
本人はルイス・ネリ戦を希望しているとのことですが、ネリのパンチと相打ちは厳しいかもしれません。
WBC世界ミドル級タイトルマッチ
ジャモール・チャーロ(アメリカ)30戦全勝(22KO)無敗
vs
セルゲイ・デレビヤンチェンコ(ウクライナ)15戦13勝(10KO)2敗
チャーロ兄、4度目の防衛戦はデレビヤンチェンコ!!これはビッグマッチと言っていいでしょう。
ジャモール・チャーロは2008年にプロデビュー。キャリア初期は判定勝利が多かったですが、7戦目からは14連続KO勝利をあげ、注目を集めました。
その後2015年にIBF世界スーパーウェルター級王座を獲得、3度防衛のあとに返上し、WBCミドル級の暫定王座を獲得して2階級制覇。(のちに正規王者に昇格)
ミドル級の防衛戦では、マット・コロボフ(ロシア)、ブランドン・アダムス(アメリカ)を相手に判定勝利。豪快なKOが魅力のチャーロの評価は若干落ちてしまったかもしれません。
3度目の防衛戦では7RTKOでデニス・ホーガン(アイルランド)を仕留めますが、ずっと言われていることに「チャーロはまだ本物と戦っていない」ということがあります。
相手は格下が多く、実力者も退けてはいるものの、なかなか評価を得られないチャーロ兄。
しかし今度の相手はダニエル・ジェイコブス(アメリカ)、ゲンナディ・ゴロフキン(カザフスタン)を相手に僅差の勝負をしたデレビヤンチェンコ。
今度は強敵ではない、とは言わせんません。
ジェイコブス、ゴロフキンと互角(に近い)実力を有している「ザ・テクニシャン」デレビヤンチェンコ。
世が世なら、とっくに世界王者となって、安定政権を築いていたかもしれないデレビヤンチェンコ。ここまで無冠というのが全く信じられないほど完成度の高いボクサーです。
群雄割拠のミドル級、その今後を占う大きな一戦、それがチャーロvsデレビヤンチェンコ。
チャーロが勝って、その評価を正当なものにするのか。
それともデレビヤンチェンコが初のタイトルを手にするのか。
どっちが勝っても驚きませんが、私はチャーロを応援です。デレビヤンチェンコを応援したい気持ちもありますが。。。
【チャーロ兄vsデレビヤンチェンコ!試合内容】
1Rは慎重な立ち上がり、デレビヤンチェンコはほとんど手が出ません。チャーロは鋭いジャブを飛ばし、デレビを中に入らせません。続く2Rも展開は変わりませんが、デレビヤンチェンコの手数が若干増えてきます。
3Rは緊張感のある攻防が続く中、終盤にチャーロの打ち下ろしがヒット、たたらを踏むデレビヤンチェンコ!
4R、効かされたデレビヤンチェンコ、強気に攻めます。近づいて手数を出そうとするデレビヤンチェンコでしたが、チャーロの左右アッパーに阻まれます。やはり一発の破壊力が違います。
デレビヤンチェンコは5Rに右目上をカット。6Rに入ると距離が近いところでパンチを出し始められました。
7R、今度はチャーロがプレッシャーをかけ、迎え撃ちます。デレビヤンチェンコも良いパンチを当てますが、チャーロ優勢でしょうか。
8Rもスリリングな攻防!終盤、チャーロの右がヒット、デレビヤンチェンコは効きました!が、ここも時間が足りず。
9R、右目のカットに加え左目も腫れが見受けられるデレビヤンチェンコに、チャーロは右オーバーハンドをヒット!更にアッパーも効果的に見舞い、デレビヤンチェンコのダメージはどうか??
10Rは動きが止まる場面もあるデレビヤンチェンコですが、諦めずに前に出ます。この心身ともにタフなデレビを倒せるか、チャーロ。
11R、明らかに右のビッグパンチを狙うチャーロ。それでも前にでるデレビヤンチェンコ。この終盤にきて、デレビヤンチェンコも勝ちをあきらめていません。
最終ラウンド、劣勢のデレビヤンチェンコは意を決して特攻。対してチャーロは攻め込めず、デレビヤンチェンコの攻勢を許してきます。
狙っていたのではなく、スタミナ切れなのか、故障なのか。
デレビが本日一番の攻勢に出たところで、ゴング。
判定は116-112、117-111、118-110のユナニマス・デシジョンでチャーロ!
チャーロが見事4度目の防衛に成功。
チャーロの強打に耐え続け、自分のボクシングを貫こうとしたデレビヤンチェンコ。3度目の挑戦も実りませんでしたが、改めて地力の高さを示しました。
そしてゴロフキン、ジェイコブスよりも明確にデレビに勝利して見せたチャーロ。
相性もあると思いますが、チャーロの力も証明した一戦でもあったと思います。この勝利を手に、チャーロに統一戦の機会が訪れることを願っています。
以上、PBC興行、第一部の観戦記でした。
そしてまだまだ続く、PBC興行のボクシング!
明日にはPBC興行の第二部の観戦記をアップしたいと思います。