コロナがこれでもかと勢いを増し、各地で大雨が猛威を振るう8/15。
災害のため、もしくはコロナショックで、ボクシングどころではない、という方もいらっしゃったかもしれません。
私の住む地方は幸いにも避難勧告等も出ず、雨脚は強いながらも安心して過ごす事ができました。そしていよいよ迎えた8/15。
まずは日本のボクシングファンが、最も注目しているであろうジョンリエル・カシメロvsギジェルモ・リゴンドーをメインに据えた、PBC興行の観戦記です。
↓プレビュー記事
8/14(日本時間8/15)
バンタム級10回戦
ラウシー・ウォーレン(アメリカ)18勝(4KO)3敗
vs
ダミアン・バスケス(アメリカ)15勝(8KO)2敗
まずはセミセミ。元王者、ウォーレンと、元世界挑戦経験者、バスケスによるバンタム級のサバイバルマッチです。
初回、サウスポー同士の両者。やはりウォーレンは速い。前に出ようとしているのはバスケスですが、ウォーレンはカウンターを狙います。
近い距離でもバスケスはあまり的中率がよくありません。ウォーレンはディフェンス能力が高く、ディフェンシブな戦いですがカウンターがピンポイントで入り、まずダウンを奪取。引っ掛けるような右フックでした。
その後、KOを狙って積極的に攻め入るウォーレン、またも右フックでダウンを追加。
このまま終わってもおかしくはありませんでしたが、このラウンド、荒いパンチを出し続けるウォーレンから、バスケスはなんとかサバイブ。
2R、カウンター戦法に戻したウォーレン。バスケスとしてはここをしっかり回復していきたいところですが、このボクサーはやはり攻撃重視のボクサー。ワンツーを軸に攻め込んでいきますが、強く踏み込むたびにカウンターを合わされてしまう展開。
終盤、バスケスのジャブをダックしてかわし、左ストレートをヒットしたウォーレン、ふらふらとダウンしたバスケスを見てレフェリーはこの試合をストップ!
ラウシー・ウォーレン、2RTKO勝利!!
まさかこの一戦がKO決着とは、思いもよりませんでした。今回のウォーレンはカウンターのタイミングが完璧、タフに思えたバスケスも、抜群のタイミングのカウンターには耐えられませんでしたね。
良い勝ち方で勝ち残ったウォーレン、年齢的にはこれから若手のテストマッチが待っているような気がしますが、そこも勝ち残ってもらいたいものですね。
WBA世界バンタム級暫定王座決定戦
ゲイリー・アントニオ・ラッセル(アメリカ)18勝(12KO)無敗
vs
エマニュエル・ロドリゲス(プエルトリコ)19勝(12KO)2敗
こちらはラッセル兄弟のアントニオ・ラッセルが、元王者エマニュエル・ロドリゲスに挑むという一戦。WBA暫定王座決定戦となります。ちなみに、この階級のレギュラー王者はリゴンドー、WBAはリゴンドーがWBO王座戦(この興行のメイン)に上がったところで剥奪をする、ということなので、この試合が終わったあと、レギュラー王座は空位になります。なので、この試合に勝利した暫定王者が、正規王者に格上げされるかもしれません。(もしかしたら、正規王座の決定戦が別で組まれるかもしれませんが。)
初回、サウスポーのウォーレンが右フックを振りながら踏み込み、それを交わしてロドリゲスが左フックカウンターを狙いましたが、ここでバッティング!ロドリゲスはおびただしい出血、試合がストップ。1Rわずか16秒でノーコンテンスト。
なんと形容してして良いかわかりません。
ほんの数秒でしたが、両者の動きは良さそうに見えたので非常に残念。即時再戦を願います。
完全に呪われていますやん。。。
WBO世界バンタム級タイトルマッチ
ジョンリエル・カシメロ(フィリピン)30勝(21KO)4敗
vs
ギジェルモ・リゴンドー(キューバ)20勝(13KO)1敗
この試合については、散々記事を書いてきました。私はリゴンドーを精一杯応援します。
注目の一戦、ゴング!!
初回、まずはともに距離を測ろうという出だし。かなり体重を戻したというカシメロは、かなり大きい。ジリジリとプレスをかけるカシメロ、ロープを背にサークリングするリゴンドー。
カシメロは自分の距離にならなければ強引にパンチを振るってはいきませんが、かなり強いプレスでリゴンドーを追い詰めていきます。後半、カシメロのプレスでリゴンドーはマットにグローブをタッチ、これはスリップ判定。しかしこの判定が遅かったため、カシメロは動かないリゴンドーにパンチを浴びせかけています。
その後もプレスをかけ続けるカシメロ、ややそのプレスに押され気味のリゴンドー。
2R、さらにプレスを強めるカシメロに対して、リゴンドーはステップ、そしてカウンター。先ほどのラウンドよりもリゴンドーはカシメロのプレスを受け止めることができているように見えます。
脚を使い続けるリゴンドーに対して、会場はブーイング。いつもの感じになってきました。このブーイングが起きることで、リゴンドーペースになってきた、というのがわかりますね。
3R、カシメロはさらにプレスを強めます。リゴンドー相手にはこれしかありません。リゴンドーはステップがより良くなってきています。
イライラしたカシメロが手を出せば軽いながらもカウンター。リゴンドーが真骨頂を発揮し始めている、というところでしょうか。
4R、カシメロの左フックは完全に見切られ、まっすぐ入ればストレートのカウンターを取られてしまいます。カシメロはプレスをかけるものの、入り方には迷いがありますね。
この、パンチ数が少なくなっている感じはリゴンドーペースといっていいでしょう。このままいけば、リゴンドーにポイントが流れていくのかもしれませんが、リゴンドーとしてももう少し明確に攻めたい。カシメロはどこかでこの状況を打破したいところでしょう。
5R、カシメロは変わらずプレス、ラフに腕を掴んででもパンチを放っていきます。どんな形であれ、近い距離に入ればカシメロの回転力、ハードヒットは怖いところです。
リゴンドーはやはり手数が欲しい。どちらにもクリーンヒットが非常に少なく、これはカシメロの攻勢にポイントがいっても仕方がありません。
6R、ここまで互いに微妙なラウンドが続いています。リゴンドーはやりたいように戦っていると思いますが、ポイントをとれているかどうかは微妙。ここから抜け出してもらいたい。
リゴンドーの左手は、カシメロに照準をあわせているライフルのよう。射程圏内に入ってくれば、素晴らしい左ストレート、左アッパーが飛んできます。これでカシメロはなかなか中に入れません。
7R、カシメロは左ガードを下げてリゴンドーを誘いますが、これでリゴンドーの右ジャブを浴びてしまいます。
かなりイライラしているカシメロ、攻め続けますがするりするりと逃げていくリゴンドー。かわしてジャブ。かわしてジャブ。
8R、リゴンドーへのブーイングというのはリゴンドーへの称賛にも思えるほど、完全にイラついているカシメロ。リゴンドーは本当にダンスを踊っているだけ、に見えますね。このラウンド、リゴンドーはほとんどパンチを出していません。ここはカシメロの攻勢点を取るべきでしょう。
9R、走って突進するレベルのプレスをかけるカシメロ。リゴンドーはかわすだけ!カウンターチャンスがそろそろ来るのか?
10R、カシメロの攻撃はラフさを増していきます。リゴンドーは相変わらずのマイペース、カシメロがパンチを出す分、リゴンドーのパンチも相対的に増えていく印象こそあるものの、それでもやはり数は少ない。採点は、全くわかりまん。
11R、展開は変わらず。本当にボクシングとして非常に面白くない、だからこそ、これこそがリゴンドーのボクシングです。ただ、ひいき目に見てもリゴンドーにポイントが流れている、とは考えづらい。リゴンドーもどこかで爆発してもらいたい。
12R、これでもかというほど空振りを繰り返すカシメロ。強いカウンターを取れないリゴンドー。最後まで逃げ続けたリゴンドー、追いかけ続けたカシメロ。
最終ラウンドのゴングが鳴った瞬間、両者ともに手を挙げて勝利をアピール!!
世紀の大凡戦、その結果は、115-113リゴンドー、116-112カシメロ、117-111カシメロ、2-1の判定でジョンリエル・カシメロが勝利。
リゴンドーの衰えとカシメロの優位性
どちらもクリーンヒットはほぼなく、手数も少ない。この注目試合にして、素晴らしい大凡戦。リゴンドーは、もしかするとカシメロのパワーに臆していたのかもしれませんね。
カウンターを取るべきタイミングはあったと思いますが、リゴンドーは手を出せませんでした。それは、カシメロの圧がそうさせた、とも言えますし、リゴンドーの反応の衰え、加えて耐久力に対する自信のなさ、ブランクの影響というものがあったと思いますし、やはりかつてのリゴンドーとは違いました。
初回を除いた序盤のラウンドではほんの少しのジャブ、入られ際のストレートやアッパーなどでヒットを重ねたように見えたリゴンドーでしたが、後半にいくに従って手数が減ってしまったところが痛いところ。序盤の闘い方からペースアップして、もっとアジャストできると思ったのですが。。。
カシメロは逃げ回るリゴンドーを詰め切れなかったのは事実として残りますが、あそこまで逃げに徹したボクサーを詰め切れるボクサーは数少ない。しかも逃げているのがあのリゴンドーとあれば、捕まえられなくても致し方ないかもしれません。
もちろん、攻め方に幅がなく、序盤で見切られた左フックを多用し、その左フックを躱された所にどう打ち込むか、等の策を講じられなかった、というところは難点。カシメロ、もしくはカシメロ陣営は、柔軟に作戦を変更する事が出来ず、当日の対応は不得手であり、そのボクシングの幅は広い、とは言えません。
このカシメロの勝利は、私にとっては非常に残念な結末でした。
しかし結果が出てしまいました。
ともあれ、WBO王者カシメロは勝ち残り、タイトルはそのまま。リゴンドーの持っていたWBAレギュラー王座は剥奪、空位に。
この後、井上尚弥vsノニト・ドネア2が今秋、開催され、来年春にはバンタム級で史上初めて、4団体統一王者が誕生することを楽しみに待ちましょう。