あまり納得のいかないニュース。
WBA世界スーパーバンタム級レギュラー王者、ブランドン・フィゲロア(アメリカ)と、WBC世界スーパーバンタム級王者、ルイス・ネリ(メキシコ)の統一戦が大筋合意だそうです。
今日はこのニュースとともに、スーパーバンタム級の現状を思い切り主観を交えて書いていきたいと思います。
WBC王者、ルイス・ネリ
ルイス・ネリのこれまでの悪行は大きく割愛しますが、直近のものだけでも2019年11月にエマニュエル・ロドリゲス(プエルトリコ)とWBC世界バンタム級挑戦者決定戦を闘うはずが、ネリの計量オーバー、それを金銭で解決しようとしたがロドリゲスが応じずにご破産。
しかしネリは今年9月、アーロン・アラメダ(メキシコ)とWBC世界スーパーバンタム級王座決定戦に出場。このスーパーバンタム級王座は、レイ・バルガス(メキシコ)が保持していましたが、バルガスが足の怪我(骨折)により長期離脱をせざるを得ないとの理由で休養王者となり、正規王座の決定戦が組まれたという経緯があります。
そしてそれに伴い、何故かランキング1位となったネリ、そしてランキング下位(試合決定の時は9位)のアラメダが決定戦を行う事になりました。
試合はネリの勝利に終わりましたが、バンタム級で見せた豪打はナリを潜め、メキシコ産の牛肉を食べていなかったのかもしれません。(もしかすると食べてあのパフォーマンスだったのかもしれません。)ウェイトをつくってきた所をみると、おそらく夜中に冷蔵庫を開けて、レッドブルを飲んだりもしてなかったと思います。
↓ネリvsアラメダの観戦記
そして同日にはダニエル・ローマン(アメリカ)vsファン・カルロス・パヤノ(ドミニカ共和国)という日本人にとっても馴染みの深いボクサー同士の一戦もありました。こちらはWBC世界スーパーバンタム級挑戦者決定戦としてセットされていました。
つまりは、ネリ(とアラメダの勝者)への次期挑戦者の決定戦です。
この日のパヤノは出色の出来だったように見えましたが、ローマンは旺盛な手数でこれに勝利、挑戦権を手に入れたように見えました。
しかし、ローマンは待たされることになりました。
元より、WBCの挑戦者決定戦で勝利したとしても、さほど強制力はなく、待たされるボクサーが多いのも事実です。
しかし、統一戦というのは、少なくとも何度か防衛して王者としての責務を果たし、もしくは圧倒的な力を持ってタイトルを獲得したボクサーにこそ進んでもらいたい、というのが心情です。
ネリの、脅威とは全く思えない試合の後にすぐ統一戦の話が行ったのは納得のいくものではありません。
それにより、タイトル挑戦を待たされるボクサーがいるからです。
WBCのランキングの上位を見てみただけでも、1位にはカルロス・カストロ(アメリカ)。25戦全勝(10KO)という無敗のボクサーで、井上尚弥(大橋)のスパーリングパートナーとして慣らしたゼネシス・カシミ・セルバニア(カシミ)を大差判定で破っています。
2位にダニエル・ローマン、4位には我らが「クラッシュボーイ」勅使河原弘昌(三迫)がつけています。
↓てっしーの前戦の観戦記です。
WBA王者ブランドン・フィゲロア!
Brandon Figueroa: “The Heartbreaker” - NY FIGHTSより
イケメンですね。私は自分がタレ目なので、タレ目の人には親近感を勝手に持っています。ロッキー・バルボアしかり。
WBAのレギュラー王者、ブランドン・フィゲロアは、前戦でネリvsアラメダの前日に登場、ダミアン・バスケス(アメリカ)を10RTKOに退けて2度目の防衛戦をクリアしています。
↓フィゲロアvsバスケス観戦記
なんだか上の記事の観戦記、中盤が抜けてしまっていますね。消えてしまいました。
この日のフィゲロアは、尻上がりに調子を上げていったものの、バスケスのがんばりが想像以上であり、仕留めるのに時間がかかりました。
前々戦、初防衛のフリオ・セハ(メキシコ)戦では苦闘のドロー防衛、ここの所パフォーマンスとしては芳しくありません。セハ戦では、セハが最近のメキシコ人らしく4.5ポンドものウェイトオーバーをかましましたので、参考程度に。
フィゲロアはパンチもあり、激闘型のコンビネーションパンチャー。ネリが逃げなければ、打撃戦となると思います。ただ、フィゲロアは結構被弾するイメージがあり、ネリは以前から意外とディフェンシブであり、ディフェンス面は巧い。
エディ・レイノソに師事してからはディフェンス面の向上は見られましたが、同時にオフェンス面は魅力が激減していました。ネリが前のスタイルに戻し、パワーがスーパーバンタムにフィットしていればフィゲロアにとっても強敵となるでしょう。
ディフェンシブなネリに怖さはありませんが、フィゲロアは前戦のようにスロースタートではなく、最初からプレスをかけていく必要もあると思います。
ネリがどんどんと攻めてきたならば、フィゲロアはできればネリを空転させたいところです。ネリはガードの上からでもパンチを当てさえすれば、調子にのって連打をしてくる可能性があります。
いずれにしろ、競った試合内容になりそうな予感はしますが、ここはフィゲロアにがんばってもらって、ネリを打倒してほしいところですね。ただ、ネリはここぞという時はウェイトオーバーをしてくるかもしれませんけど。
ドーピング検査もやってほしいし、ウェイトオーバーしたら王座剥奪、試合は中止でお願いしたい。そうでないとフィゲロアがかわいそうです。
フィゲロアの上位にいる王者
さて、ちなみにこのWBAレギュラー王座の上には、スーパー王者がいます。
ムロジョン・アフマダリエフ(ウズベキスタン)です。
プロデビューからわずか8戦でダニエル・ローマンを僅差で破り、WBAスーパー・IBFの2冠王者となったアフマダリエフ。
それが今年の1月でしたが、そこからまだ防衛戦は行われていません。
規定路線でいくと、暫定王者である岩佐亮佑(セレス)とのIBF王座統一戦が組まれるはずですし、今年の12月にウズベキスタンで(だったかな?)という話も出ていたと思います。
結局アナウンスはされず終いでしたね。来年早々には実現するといいですね。
ちなみにIBFのランキングでは1位、2位は空位であり、3位に我らが勅使河原弘昌。
そういえば、WBAは他の団体の王座を吸収すれば「スーパー」王者となりますが、フィゲロアとネリがやった場合、勝者はスーパー王者になるんでしょうか。
スーパー王者が二人になる、となれば、WBAの事だからまたそこに正規王者をぶちこんでくる可能性がありますね!
WBO王者は!
WBO王者は、エマニュエル・ナバレッテ(メキシコ)の返上により今年の8月、王座決定戦が組まれました。
当初はアンジェロ・レオ(アメリカ)vsスティーブン・フルトン(アメリカ)の予定でしたが、フルトンにコロナ陽性反応が出たために、レオの相手がトライメン・ウィリアムス(アメリカ)に変更。
レオは旺盛な手数とスタミナでこのタイトルを射止め、フルトンの挑戦を受ける事が既定路線。これも当初は12月に予定されていたはずですが、姿が見えません。
↓レオの戴冠戦。
ルイス“メキシカンビーフ”ネリは置いておいても、アフマダリエフ、フィゲロア、レオ、そして次点にいるダニエル・ローマンも、実力は拮抗しているように見えます。
しかも、皆逃げずに闘う、気持ちの強いファイターです。
日本からは暫定王者の岩佐亮佑も前戦でマーロン・タパレス(フィリピン)相手に素晴らしいボクシングを展開してくれましたし、各団体のほとんどで上位に食い込んでいる勅使河原弘昌は私の大好きなボクサー。
日本人世界ランカーは、他にも小國以載(角海老宝石)や赤穂亮(横浜光)といったベテラン勢もいますし、早ければ再来年早々にはモンスター井上尚弥(大橋)が上がってくるであろう階級。
心のどこかでフィゲロアvsネリが結局決まらなければいいのに、とも思っていますが、いずれにしろ誰がどうぶつかっても楽しみな階級ではあります。日本人ボクサーはネリと絡んでほしくはありませんが。
という事で、フィゲロアの奮戦に期待しつつ。