今週末の海外興行には、およそ「ビッグマッチ」と呼べるものはありません。
しかし、週末のように「ビッグマッチ」と言えるものがないスケジュールであったとしても、世界各地でボクシング興行自体は開催されています。
ビッグマッチがなくても、注目すべき試合はいくらでもあります。
その全てを追うことができれば良いのですが、なかなかそうはいかないのも現状です。
さて、今回のブログでは、今週末の注目海外興行について書いていきたいと思います。
7/9(日本時間7/10)DAZN
ヒルベルト・ラミレス(メキシコ)41勝(27KO)無敗
vs
サリバン・バレラ(キューバ)22勝(14KO)3敗
ラミレスのデビューは2009年。メキシコのホープらしくキャリア初期はかなりのハイペースで戦績を積み上げ、34戦目で世界初挑戦。
2016年4月、マニー・パッキャオvsティモシー・ブラッドリーをメインに据えた興行のセミファイナルで、アルツール・アブラハム(アルメニア)にフルマークの判定勝利を収めて初戴冠。
その後、2年半超の在位期間で5度の防衛に成功後、返上してライトヘビー級へ進出。
2019年、2020年にそれぞれ1試合ずつの調整試合を経るとともに、長らく在籍したトップランクから離脱、現在はGBPと契約しているようです。今回は、GBPでの初戦となります。
ラミレスはボクシングが巧く、長身のために遠い距離は勿論得意ですが、接近戦もいけるなかなかの万能型サウスポー。あ、ちなみにポスターにもあるラミレスの愛称、「ZURDO」はスペイン語で左利き、つまりサウスポーの意味です。
序盤に良い動きでペースを握り、後半から終盤にかけては安全運転、退屈になるような流れになることもここ最近は多く、あまりワクワクするタイプのボクサーではありません。
ただ、その実力たるや折り紙付き、これからライトヘビー級戦線に絡んできてくれるのなら大歓迎。そもそもGBPとの契約は、同じGBPと契約しているデミトリー・ビボル(キルギスタン)戦を目指して締結したものだと思うので、この調整試合をクリアすれば次戦にもビボル、という発表がなされるかもしれません。そのビボル戦に際し、期待を抱かせるような内容で勝利してくれることを願うのみです。
バレラのこれまでの3つの敗北は、2016年のアンドレ・ウォード(アメリカ)の他は2018年のデミトリー・ビボル(12RTKO負け)、そして2019年の前戦、ジェシー・ハート(アメリカ)戦の判定負け。
ラミレスは以前ハートに勝利しているものの、なかなかの接戦でした。
ラミレスは油断してはいられませんが、あくまでもAサイドはラミレスであり、ここは圧倒した勝ち方をしなければビボルには届きません。
ただまあ、このバレラ戦は、ラミレスにとっても好マッチメイク、ここで良い形で勝利することで大きなアピールになりそうです。カネロvsベテルビエフなんていう噂もありますから、ここで勝利し、ビボルと戦えれば超大型報酬を獲得できるカネロ戦のチャンス。
今後も含めて、非常に楽しみな一戦です。
そしてこの興行は、セミファイナルやアンダーカードにも注目試合が盛り沢山。
セミファイナル
WBC世界ライト級暫定王座決定戦
ジョセフ・ディアス(アメリカ)31勝(15KO)1敗1分
vs
ハビエル・フォルトゥナ(ドミニカ共和国)36勝(25KO)2敗1分
ジョセフ・ディアス、愛称はジョジョ。このニックネームから、日本でも人気の出そうな王者ですが、ディアスのキャリアは非常に残念のひとこと。
アマキャリアを経て2012年にプロデビュー、世界初挑戦は2018年5月。ゲイリー・ラッセルJrに判定負けを喫して実りませんでしたが、その前に降してきたボクサーはレネ・アルバラード(ニカラグア)、アンドリュー・カンシオ(アメリカ)等々、のちの世界王者を含む骨太な相手。
しかし。
ラッセル戦後、再起戦でWBA世界フェザー級タイトルに挑戦が決まったディアスは、なんと挑戦者なのにここで体重超過。ここで勝利したディアスでしたが、タイトルは獲得ならず。
その後スーパーフェザー級に上げて2020年1月にテビン・ファーマー(アメリカ)の持つIBF世界スーパーフェザー級タイトルに挑戦し、判定勝ちでこれを獲得。
しかし。
初防衛戦で1.6kgもの体重超過を犯し、秤の上でタイトルを失いました。
そして挑戦者、シャフカッツ・ラキモフ(タジキスタン)との一戦はドロー、こちらのタイトルは空位となりました。
だったらせめてラキモフにタイトルを明け渡してあげてほしかったですし、もっと言うなら全ての逆境を跳ね返して王座についた、ファーマーから王座を奪わないでほしかった、とも思います。(ただただ、心情的な話です。)
そんな心情的に応援したくないボクサー、ジョジョ・ディアスの相手は、あのハビエル・フォルトゥナ。
本来この一戦は、ライアン・ガルシアの持つWBC暫定タイトルに、フォルトゥナが挑む一戦でした。しかしガルシアの鬱病の発症により、試合をキャンセル、フォルトゥナにこの舞台が用意されてよかった。
かつて、内山高志とも対戦の噂のあったフォルトゥナに、ここは何としてもディアスを成敗してほしい。
2009年にプロデビューして2015年にWBA世界スーパーフェザー級王者となったハビエル・フォルトゥナは、2度目の防衛戦でジェイソン・ソーサ(アメリカ)に11RTKO負けを喫して陥落、その後IBF世界ライト級王座に挑戦しますが、ロバート・イースターJrに判定負けを喫して2階級制覇ならず。
再起後、ここに来て強さを見せ、ガルシア戦の前はホルヘ・リナレス戦も決まっていたもののリナレスのコロナ感染により流れ、前述のようにガルシア戦も流れ、今度はディアス戦。
今度こそ、の思いも強いですが、前科ありのジョジョはライト級のウェイトでも体重超過を犯す可能性はゼロではありません。ともかく、ルールの範囲内でこの試合が挙行されてくれることを望みます。
さて、この勝者は大きな報酬を手に入れられそうなライアン・ガルシア戦、もしくはWBCの正規王者であるデビン・ヘイニー戦へと進む可能性があります。この一戦での勝ちは大きく、この一戦はイベントのセミファイナルであっても、その次はビッグマッチ。
ディアスに望むことはちゃんとウェイトをつくってきてくれること、そしてフォルトゥナには勝利を望みます。
そしてその他にも。
ヘクター・タナハラ(アメリカ)19勝(5KO)無敗
vs
ウィリアム・セペダ(メキシコ)22勝(20KO)無敗
アメリカの無敗のライト級プロスペクト、タナハラが、同じく無敗、メキシコのセペダを迎えます。
Aサイドは身長178cm、リーチ191cmという嘘みたいに恵まれた体格のタナハラですが、このセペダというボクサーのKO率には非常に惹かれますね。
24歳のタナハラと、25歳のセペダ、ここはセペダが喰えば大きいでしょう。「セペダ」。応援したくなるような、良い名前です。
その他にも、スーパーバンタム級の世界挑戦経験者、アザト・ホバニシャン(アルメニア)が登場し、スーパーフェザー級の世界挑戦経験者、レイモント・ローチ(アメリカ)も登場します。
そして、この興行には日本人ボクサーもふたり、登場!!
WBO女子世界ライトフライ級タイトルマッチ
天海ツナミ(山木)18勝(12KO)9敗1分
vs
セニエサ・エストラーダ(アメリカ)20勝(8KO)無敗
WBA女性世界フライ級タイトルマッチ
藤岡奈穂子(竹原&畑山)18勝(7KO)2敗1分
vs
スレム・ウルビナ(メキシコ)12勝(2KO)1敗
2019年7月、藤岡と天海は闘い、三者三様のドローに終わりました。そこから2年、このふたりが初のアメリカのリングに立ち、敵地で防衛戦を行います。
女子ボクシングはまだ市民権を獲得しているとは言えず、藤岡、天海ともに名王者ながら知名度としてはまだまだ。
特に藤岡は既に45歳、所属するジムの元王者、畑山隆則と同い年ということですから驚きです。それぞれの対戦相手、エストラーダとウルビナというボクサーについてはよく知りませんが、GBPのイベントなのでGBPの所属選手であり、やはり藤岡、天海にとっては明らかな敵地。
こうなってくると変な判定に泣かされないかが心配で、とりわけ注目のマッチアップというわけでなければ、疑惑の判定だとしても大騒ぎにならない可能性は大いにあります。
無論、藤岡、天海両王者には明確に(できればジャッジに仕事をさせずに)勝利を挙げてもらいたいと思っています。
さて、天海の相手、セニエサ・エストラーダは前戦でWBA世界ミニマム級王者となっており、2階級制覇をかけて臨む一戦。未だ無敗であり、かなりの強豪であることが予想されますね。この階級の女子ボクサーとしてはかなりKO率も高い方でしょう。
そして藤岡の相手、スレム・ウルビナは前戦で敗北を喫しており、これまでの対戦相手の質(戦績でしか判断できませんが)としても「?」マークがつきます。勿論油断できる相手ではないでしょうが、ここは藤岡は絶対に落とせません。良い勝ち方をして、次につなげてもらいたいですね。
ともあれ、両者ともに勝利して、今後のキャリアアップに繋げてもらいたい一戦です。
この興行はDAZNで生配信。
DAZNに加入していなくても、藤岡、天海の試合はゴールデンボーイ・ファイトナイトのフェイスブックページから無料で見れるそうです。
↓DAZNはこちら
↓ゴールデンボーイ・ファイトナイトのFBページはこちら
https://ja-jp.facebook.com/GoldenBoyFN/
ちなみに、7/10(日本時間7/11)にはイギリスで注目のライトヘビー級戦、リンドン・アーサー(イギリス/18勝12KO無敗)vsダビデ・ファラシ(イタリア/15勝7KO無敗)という無敗対決が行われます。
これはなかなかの試合ですが、BTスポーツのみの放映かな?日本はおろかアメリカでも見れなそうなので、Youtubeに上がったらチラ見してみようとは思っています。
それよりも来週、再来週は国内、海外興行ともに激アツ。既に気持ちはそっちです。