11月最大のビッグマッチが終わり、放心状態。
非常に高い前評判を更に上回る激闘が繰り広げられたさいたまスーパーアリーナ。
しかし、ボクシングファンには休みがありません笑。
11/3(木)には関西でREAL SPIRITS、ホールでは東日本新人王決勝が開催されるウィークデイ、週末にはダイナミックグローブ、海外ではビボルvsスルドという注目興行。
今回のブログは、この週末の最注目興行、ドミトリー・ビボルvsヒルベルト・ラミレス、ドバイでのゴールデン・ボーイプロモーション興行のプレビュー記事です。
↓11/1、LIVE BOXINGの観戦記はこちら
11/5(日本時間11/6)アラブ首長国連邦・ドバイ
WBAスーパー世界ライトヘビー級タイトルマッチ
ドミトリー・ビボル(ロシア)20勝(11KO)無敗
vs
ヒルベルト・ラミレス(メキシコ)44勝(33KO)無敗
さて、この試合も実は拳四朗vs京口ほどではないにしろ、よく決まったな、と思えるような試合だと思います。
この評価がすべてではないにしろ、おなじみリングマガジンのライトヘビー級ランキングでは、王者が空位、1位にドミトリー・ビボル、そして2位はアルツール・ベテルビエフ、3位がこのヒルベルト「スルド」ラミレス。
リングマガジンランキングの1位と3位の激突は、ともすればリングマガジンベルトが賭けられても良いようなものですが、この階級にはベテルビエフがいるからか、その動きはないようです。
ともかく、このビボルとベテルビエフという2強をもし、崩すとするならばこのスルド・ラミレスであり、カネロですら崩せなかった牙城に挑む、最後の勇者とも言って良い。
ドミトリー・ビボルは、2016年にWBA世界ライトヘビー級暫定王座を獲得、その後正規王座の決定戦を経て正規王者に昇格、暫定王座から数えるとすでに11度の防衛を果たしている超安定王者です。
ヘビー、クルーザーに次ぐ重量級であるライトヘビー級において、決して高くないKO率。ジャブを主体とし、時にコンビネーションにつなげるボクシング。
相手の力量を測り、ジャブのみで勝てそうであれば本当にジャブだけで勝ってしまうような勝利至上主義にも見えるボクサーのため、手を抜いている訳ではないのでしょうが、おもしろいと言いにくい試合も非常に多い。
技術に秀で、戦略面にも優れたボクサーですね。
前戦では「判定で勝つのは不可能だろう」と言われたサウル・アルバレスを相手に見事なアウトボクシングを披露、ジャブとステップワークでカネロのプレッシャーをシャットアウト。
後半にはコンビネーションでカネロにダメージを与えた、ポイント差以上の完勝でした。
↓ビボルvsカネロの観戦記
ここで一気に評価を高めたビボル、カネロに続いて強豪、ヒルベルト・ラミレスを迎えます。
ヒルベルト・ラミレス、相性は「スルド」、左利きという意味です。
カネロの次のメキシカンスターと言われたラミレスは、デビュー以来破竹の快進撃で2015年にWBO世界スーパーミドル級王座を獲得。
世界王座獲得までは豪快な倒しっぷりを目にする事が多い、倒し屋というイメージが強かったラミレスですが、世界王座獲得以降は落ち着き、判定勝利が多くなっています。これはありがちなことで、気持ちの面で守りに入ってしまうこと、そして必然的に対戦相手の質が上がってしまう事、両面ありますね。
世界王座の防衛戦では、5度の防衛戦のうちKO勝利は1つだけ、とやや停滞気味だったラミレスでしたが、ライトヘビー級に転級後は5連続KO勝利を挙げています。
前戦では、元IBO世界ライトヘビー級王者で、元WBA世界ライトヘビー級暫定王者でもあるドミニク・ボーセル(ドイツ)を4Rでストップ、会心の勝利を挙げています。
このボーセル戦はここ最近のパフォーマンスでは飛び抜けて良く、ボディムーブも非常に軽やかで、そのパンチにはキレがあり、大いに期待を感じさせる内容でもありました。
↓観戦記
この一戦が非常に興味深いのは、前述のとおり、ともにリングマガジンから特別な評価を受けていることと、互いに前戦が最高のパフォーマンスを発揮していること、この2点です。
それこそ、寺地拳四朗も京口戦の前、矢吹第二戦では素晴らしいパフォーマンスを披露しましたし、京口も寺地戦の前、メキシコという完全アウェーの地で強さを見せつけての激突でした。
こういうタイミングで両者がちょうどぶつかる、というのは実は以外と少ない。
今回のビボルvsラミレス、大いに期待して良いのではないでしょうか。
個人的には、スルド・ラミレスが、ライトヘビー級という階級に大きな風穴を空けてくれる事を期待しています。
IBF世界スーパーフェザー級王座決定戦
シャフカッツ・ラヒモフ(タジキスタン)16勝(13KO)無敗1分
vs
ゼルファ・バレット(イギリス)28勝(16KO)1敗
IBF世界スーパーフェザー級王座は、2022年が始まった時、尾川堅一(帝拳)の手元にありました。
当初はシャフカッツ・ラヒモフと尾川の決定戦と報じられた試合は、ラヒモフの怪我によりアジンガ・フジレ(南アフリカ)と尾川の決定戦となり、2021年11月、王者が決定。
その後、指名挑戦者であったはずのラヒモフと尾川の試合はなぜか組まれず、マッチルーム傘下のジョー・コルディナ(イギリス)との防衛戦となりました。
完全アウェーの地に乗り込んだ尾川は、まさかの2RTKO負けで王座から陥落。
ここで新王者、コルディナとラヒモフの間に指名戦がオーダーされますが、今度はコルディナが怪我で離脱、そうするとIBFは王座を剥奪、ラヒモフとゼルファ・バレットとの間に王座決定戦が行われると決定されました。
突然の王座剥奪に、コルディナは不運としか言いようがありませんね。
これは果たして、待たされたラヒモフへの配慮によるものなのか、それとも、マッチルームが同階級で最も売り出したいプロスペクトであるバレットへの配慮によるものなのか、よくわかりません。
さて、タジキスタン出身のシャフカッツ・ラヒモフ、こちらは世界に聞こえた強豪です。
2019年にアジンガ・フジレとの無敗対決を8RTKOで制し、当時の王者、ジョセフ・ディアス(アメリカ)へ挑戦したのが2021年2月のこと。この間も非常に待たされていますね。
この試合で王者、ジョジョ・ディアスは1.6kgものウェイトオーバー。その不利条件ながらも、12Rにわたりディアスと打ち合い、ドローで王座獲得とならなかったラヒモフは、本当に運のないボクサーです。
その後、2021年12月に調整試合をクリア、怪我による離脱を経て11ヶ月ぶりのリングで、王座決定戦への出場と相成ります。
非常にタフで、フィジカルが強く、コンビネーションが武器のシャフカッツ・ラヒモフは、個人的には心から王者になってほしいと思うボクサーの一人。
対するのはゼルファ・バレットは、マッチルーム期待のプロスペクトです。
このバレットと、前王者となったコルディナとの戦いを画策しようとしているのがマッチルームの狙いであり、これが実現すれば英国ライバル対決の実現、非常に盛り上がる事でしょう。
「ブラウンフラッシュ」というニックネームを持つバレットは、いわゆるオーセンティックな英国ボクサーとはほんの少し違い、やや低めのガードスタイルからカウンターを得意とするボクサーです。
リンドン・アーサーのいとこだそうで、伯父も世界挑戦経験者のパット・バレット、ボクシング一家ですね。非常にセンスを感じるボクシングをします。
唯一の敗戦は2018年のロニー・クラーク戦で、下馬評優位の中、ダウンを奪われての判定負け。やや線の細い印象を受けますね。
2021年にキコ・マルティネス(スペイン)に勝利してはいるものの、これは判定に疑義を生じているという内容であり、ちょっとやぱり頼りなさがあります。
なので、やはりここはラヒモフが優位か、というのが一般的な意見でしょう。
まあ、このラヒモフは、シャクールが抜けた今、この階級最強のボクサーかもしれません。
もともとコルディナ戦も、どう考えてもコルディナ優位の予想を立てるのは難しかったと思います。
ただ、ゼルファ・バレット、今回初のタイトル戦となる一戦で、これまでの評価を一気に覆すパフォーマンスを披露する可能性は大いにあると思います。
「挑戦者」は常に3〜4割増し、どちらかというとモチベーションが高いのは、この偶然にも転がり込んできたチャンスを得た、バレットのような気もします。
こちらはきっとそのうちに日本人ボクサーも絡んでくれる階級だと思いますので、非常に楽しみですね。
世界女子スーパーライト級4団体王座統一戦
シャンテル・キャメロン(イギリス)16勝(8KO)無敗
vs
ジェシカ・マッカスキル(アメリカ)12勝(5KO)2敗
この試合がセミファイナルかもしれません。
WBC及びIBFのスーパーライト級王者であるシャンテル・キャメロンに、ウェルター級の4団体統一王者、ジェシカ・マッカスキルが挑むという一戦。
ちなみに、なぜか空位のWBAタイトルとWBOタイトル、ついでに空位のIBOタイトルも賭けられたメジャー4団体王座統一戦となっています。ちょっと意味がわかりませんが、ウェルター級のUndisputedチャンプが挑むから、色をつけたという感じなのでしょうか。
女子では結構頻繁に4団体統一戦が行われていますね。
これは4団体王座統一戦、というよりも、4団体統一王座決定戦、といったほうが良いか。
その他のアンダーカード
その他のアンダーカードには、東京五輪フライ級金メダリスト、ガラル・ヤファイ(イギリス)、そしてその兄で元WBA世界スーパーフライ級王者、カリド・ヤファイ(イギリス)が登場です。
ガラル・ヤファイ(2勝2KO無敗)の相手を務めるのは12勝(1KO)1敗1分の戦績を誇るゴハン・ロドリゲス・ガルシア(メキシコ)。KO率こそ低いものの、好戦績のメキシコ人をあなどってはいけません、フィリピン、メキシコあたりはアップセットボクサーの宝庫です。
兄、カリドは2020年2月のローマン・ゴンサレス(ニカラグア)戦以来の復帰戦で、実に2年8ヶ月のブランク。ロマゴン復活の狼煙を上げさせてしまったヤファイ兄、ある程度のサビつきは致し方ないと思いますが、どのようなパフォーマンスを見せてくれるか楽しみです。
放送・配信
この興行は、DAZNが生配信。
ドバイでの興行ですが、現地時間というよりもイギリス時間に合わせた興行のため、日本時間では11/6(日)AM2:30〜の放映開始です。
メインイベントは通常のイギリス興行であればAM6:00〜7:00くらいでしょうか。
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