日本時間、8/21(日)。
とうとうオレクサンドル・ウシクvsアンソニー・ジョシュア2の日程となりました。
前戦、ウシクは素晴らしいパフォーマンスでジョシュアを完封。ただ、ジョシュアは前戦で一番の武器である体格差を活かして戦う事ができなかったので、この再戦でのジョシュアは未知数。前回ボクシングで上回ろうと思ったのがそもそもの間違いであり、そこを修正してきた場合、ウシクにとって非常に厳しい戦いになりそうです。
しかし、それでもウシクがボックスする可能性はまだ残されています。
ウシクがここでヘビー級の元3団体統一王者、アンソニー・ジョシュアに対してまた完璧にアウトボクシングを行う事ができれば、PFPは確定でしょう。
ということで今回のブログでは、大注目、サウジアラビアで行われたウシクvsジョシュア2の観戦記。
↓プレビュー記事
8/20(日本時間8/21)サウジアラビア
ライトヘビー級12回戦
カラム・スミス(イギリス)28勝(20KO)1敗
vs
マシュー・バウダーリーク(フランス)21勝(12KO)1敗
再起以来、絶好調のカラム・スミス。スミスはこのまま好調子を維持できるのでしょうか。
初回はジャブのさしあいからスタート。ライトヘビー級という階級において、ともにスピードがあって反応が良く、すごいですね。
カラム・スミスが明らかにデカイ。こう見ると、スーパーミドルでは減量がきつかったのか、それともバウダーリークがやや小さいのか?
ともにジャブが当たりそうな距離でのボクシング、当たりそうですけど当たらないハイレベルな技術戦。後半にはスミスが体格の利を活かしてロープに押し込む場面もつくりますが、ここでもクリーンヒットはなし。これは見応えがあります。
2R、非常にハイテンポな中間距離でのボクシングが続く中、1分頃からエキサイト。スミスがバウダーリークをロープ際に追い詰め、左右のフックを強振。バウダーリークも応戦して脱出するも、バウダーリークには徐々にスミスのプレッシャーがかかっているような印象。
ジリジリとプレスをかけるスミスに対して、ジリジリと下がるバウラーリーク。バウダーリークはやや後手気味、そのリターンは素晴らしいものですが、少しずつ、パワー差が出てきたように感じます。
3R、ここで後手にまわらず、自ら攻めるようになったバウダーリーク。このままズルズルといってしまいそうでしたが、さすがボクシングを分かっています。
今度はスミスがリターンを狙う展開ですが、やはりスミスの方がパワーで勝り、ハーフタイム頃にはまた押され始めるバウダーリーク。
ロープ際の攻防、バウダーリークの左右のフックは非常にキレていますが、スミスのディフェンスも大したもので、大きな体をスピーディにダックして被弾を回避、後半にはまたロープに押し込んでいきます。
4R、開始早々にバウダーリークの左ストレートがヒット、ここから非常にアグレッシブに攻めるバウダーリーク!かと思えば、その後すぐにスミスの左フックカウンターがヒット!バウダーリークはダウン!!
バウダーリークの右をガードして、そのまま左フックを放った見事なパンチ!
立ち上がったバウダーリークを攻め立てるスミス、バウダーリークも力強く応戦しますが、スミスは少々に被弾を気にせずに左右のフックを強振!明らかに足に来ているバウダーリーク、最後はスミスが左フックカウンターを決めて、腰から砕け落ちたバウダーリークを見てレフェリーは試合をストップ!
カラム・スミス、4RKO勝利。
素晴らしい戦いでした。できればもう少し見たい、と思うくらいの好ファイトでしたね。
バウダーリークも素晴らしいボクサーでしたが、体格差が明らか。これでスミスがライトヘビーということは、バウダーリークは可能であればスーパーミドルくらいで戦った方が良いのではないか、というくらいの体格差がありましたし、これが勝敗を分けたと言っても過言ではないのではないでしょうか。
少し打たれ脆さのある感じがするバウダーリークの再起にも期待したいものですね。
これでスミスはベテルビエフへの挑戦権を獲得。このスミスの技術はベテルビエフに通用するのか。
ヘビー級12回戦
フィリップ・フルゴビッチ(クロアチア)14勝(12KO)無敗
vs
チャン・ツィーレイ(中国)24勝(19KO)無敗1分
これもまた、非常に興味深い一戦。一度はキャンセルされた試合、待望の一戦と言って良いですね。東アジアのボクサーが、この位置まで上がってくる事は非常に稀。ツィーレイはどこまで欧州ボクサーに通じるのでしょうか。
どうでも良いけどツィーレイのガウン。。。ものすごくダサくて、一周回ってかっこいい笑。
初回、まずは様子見ですが、しっかりとパンチが出ているのはフルゴビッチ。ジャブからワンツー、ジャブからボディストレートとつなげていきます。
ツィーレイはほとんど手を出さないですが、後半、巻き込むような前手の右フックでフルゴビッチが膝をつき、リングにグローブを置きます。これがダウン判定!これはラッキー。
その後、ツィーレイはプレスをかけてラウンドが終了。初回、ツィーレイは大きな大きなポイントをゲット。
2R、フルゴビッチは良くジャブが出ます。対してツィーレイの手数は少ない。出さないのか、出せないのか。
ジリジリとプレスをかけるツィーレイですが、フルゴビッチは回りながらも要所でコンビネーションを出して押し返すのでロープに詰まる事はありません。中盤、フルゴビッチはきれいな右ストレートをヒット、やや浅いですが明らかにボクシングでは上回っている印象で、ツィーレイはこのままでは前ラウンドのアドバンテージをすぐに挽回されてしまいそう。
3R、開始直後のバッティングで試合が中断、フルゴビッチの方の頭部がかなり切れているようで、流血。
ツィーレイはここからアグレッシブに攻めようと試みますが、中間距離ではフルゴビッチのボクシングが上回ります。ツィーレイは強引に攻めれば良いボクシングができています。もっとグイグイいきたい。
ようやくツィーレイの手数が出てきた、というイメージのラウンド。
4R、続いてツィーレイがプレス、フルゴビッチはサークリングしながらのボクシング。ツィーレイは押し込むような左ストレート、詰めた時の左右のフックが良く、フルゴビッチはコンビネーションが良い。
フルゴビッチのサークリングがネガティブなものに見える時もありますが、ポジティブに見えるときもあり、これはいよいよわからなくなってきましたね。
5R、それでも、ここまでは比較的フルゴビッチの距離。ちょっとツィーレイには疲れが見えるような。。。
フルゴビッチは相変わらずコンビネーション、ツィーレイはガードこそ非常に固いですが、パンチは単発気味。距離を保てばさほど怖さはないのでは?と思いましたが、終盤、フルゴビッチが攻め込んだところでツィーレイのカウンターがヒット。
6R、中間距離ではフルゴビッチ、近づけばツィーレイ、という展開。ツィーレイは我慢して我慢して近寄り、見せ場をつくります。ここで声援が多いということは、ツィーレイ応援の観客が多いのでしょうか?
7R、ちょっと相打ち気味のパンチが増えてきました。これはツィーレイが狙っているのか?それでも中盤、フルゴビッチが素晴らしいワンツーフックのコンビネーションをヒット、その後はステップワークでツィーレイを翻弄、ツィーレイは疲れもあり、ついていけない印象。
8R、序盤にフルゴビッチはまたも左フックをヒット、これはツィーレイに有効なパンチのようですね。マイペースを維持しながらも攻め入るフルゴビッチ、ツィーレイはなかなか手が出ません。何かを狙っているのか、それともスタミナ切れか。
途中、ラビットパンチをアピールするツィーレイ、こういうのがあるという事はやっぱりスタミナか。
それでもプレスをかけ、たまに単発気味のカウンターを狙うツィーレイですが、ちょっと手数が少なすぎます。
9R、ここに来てもしっかりとジャブを突き、コンビネーションを繰り出すフルゴビッチ、本当によく訓練されたボクサー。
ここまでは非常にクロスファイトですが、ここへ来てフルゴビッチが抜け出してきた印象です。とか思ったら後半、ツィーレイが接近戦で素晴らしい攻勢を見せ、フルゴビッチは後退。アッパーを交えたコンビネーションでチャージ、終盤には右カウンターまでヒット!
やっぱりクロスファイト。
10R、前ラウンド、ダメージを被ったように見えたフルゴビッチですが、またしっかりとジャブを突いてスタート。マシンか?
このフルゴビッチのジャブの距離では、ツィーレイはガードを固める事しかできません。リングが滑る、というアピールをするツィーレイですが、こういうアピールは疲れている、又は集中力を切らしている事を示すようなものです。
このラウンド、攻撃的に攻め入るフルゴビッチに対して、ツィーレイはほとんど手を出さず。温存なのか、限界が近いのか。
11R、このラウンドもフルゴビッチはマイペース。ツィーレイもさすがにここは攻める場面を作り、中盤には左ストレートでフルゴビッチの顔を跳ね上げ、見せ場をつくります。しかしその後攻められ、フルゴビッチが足を使えば追いかける気もなし。
もう限界を迎えているのかもしれません。終盤にスリップダウン、これはリングが滑ったから、というだけではないでしょう。
ラストラウンド、やっぱり冴えるのはフルゴビッチのコンビネーション。完全にバテているツィーレイは、ガードをしっかりと揚げてはいるものの、このコンビネーションに対応することはできていません。
カウンター・一発狙いのツィーレイ、フルゴビッチもこれをしっかり警戒して強引にはいきませんが、要所でパンチをまとめます。
バテバテのツィーレイは何とか終了のゴングを聞きました。
判定は、115-112×2、114-113の3-0のユナニマス判定でフィリップ・フルゴビッチ!
ダウンポイントを挽回し、フルゴビッチが見事な勝利を手にしました。
ツィーレイは残念、ただちょっと手数が少なすぎましたね。スタミナ面、戦略面で改善が必要そうです。
WBAスーパー・IBF・WBO世界ヘビー級統一タイトルマッチ
オレクサンドル・ウシク(ウクライナ)19勝(13KO)無敗
vs
アンソニー・ジョシュア(イギリス)24勝(22KO)2敗
すでに言葉は要りません。
祖国ウクライナは厳しい状況にあるからこそ、ウシクにがんばってもらいたい。
初回、まずは中間距離で様子見、ウシクの前手は非常によく出ます。ジョシュアはプレスをかけようとして、まだかけ切れていない感じはしますが、戦い方としては悪くはなさそうです。ジョシュアのジャブが浅くながら早々にヒット。
ほとんどクリーンヒットがない中で、後半二ウシクのジャブがヒット。その後も左ストレートを浅くながらもヒットしたウシク。
2R、ウシクは軽やかなステップワーク。ジョシュアはまだこのウシクの多角的なステップワークに対応できていません。
ジョシュアがパンチを出すだけで湧く会場、ウシクもパンチを当てれば会場が湧きます。
ジョシュアはボディを意図的に打っている感じがしますね。ウシクのコンビネーションに対して、強い一発を返すジョシュア。
3R、まっすぐのジャブをついてプレスをかけていこうとするジョシュア。しかし強引に詰める事はしません。あまり強引にいっても、ウシクにサイドに回られてしまうからかもしれませんね。近い距離でウシクにサイドステップをされると見失う可能性があるので、ある一定の距離を保つ事も重要です。
ジョシュアは丁寧に丁寧にジャブを突き、ボディにパンチを集めているイメージ。
4R、少しジョシュアがプレスを強めたか。ウシクはこれに機動力を活かして対応、見事にジョシュアのパンチを外しています。ジョシュアはアッパーを多用しますね、まだ当たりはしませんが、怖いパンチ。
5R、ウシクは軽快。飛び込んでの左ストレートは今戦でも有効です。ボディ狙いのジョシュアはローブローを打ってしまいますが、これもまた効果はありそうです。
しかし、ウシクには随分余裕も出てきたように感じます。ジョシュアはもう一段回、ギアを揚げなければいけません。
6R、ジョシュアがプレスを強めてアグレッシブに前に出ます。そのジョシュアのパンチを完全に外してしまうウシクは化け物。
そして回転力のあるコンビネーションを放つウシク、ポイントのとり方も絶妙。
7R、やっぱりウシク相手にボクシングをしてしまっているジョシュア。プレスをかけきれないのは、ジョシュアの問題ではないのかもしれません。ウシクがサイドへまわり、そのプレスをするりとかわすことで、安全圏で戦えているのかもしれません。
8R。もう、あっという間に8R。
序盤、ジョシュアはプレスをかけてボディ。良い攻撃を見せます。後半にも右ボディアッパーを決める等の見せ場を作っています。
ここまでで一番のジョシュアのラウンド。
9R、少しずつ、ウシクにプレッシャーがかかってきたのか、ウシクがロープに詰まる場面も散見されるようになってきました。
ジョシュアのパンチに力強さが宿り、ウシクは完璧には外せなくなってきています。
たとえガードの上からでももらいたくないジョシュアのパワーパンチがウシクを襲います!ウシクはいつの間にか削られており、かなり苦しい展開になってきています。
終盤にもジョシュアのボディが入り、ウシクはピンチか。
10R、ここでウシクは大きくサイドへ回りながらも、非常に素早い攻撃。ダメージはありそうですが、やはりウシクはウシク。
前半、運動量の多い多角的な攻撃から強い左をヒットしたウシク!ジョシュアはダメージがありそうですが、中盤に今度はジョシュアの強い右がヒット!!
後半に入ってもウシクはコンビネーションで優位、上下への打ち分けと多彩なアングルでパンチをコネクト、ここに来てラウンドを取り返しました。
いやぶっちゃけ、あと3Rしのいでほしいとか思っていた自分が恥ずかしい。
11R、信じられない事に、ウシクは9Rのあのダメージから見事に復活。足もしっかりと動いています。
ジョシュアはやや疲れが見える展開で、ウシクのサイドステップになかなかついていけていない印象。しかし、一発逆転の芽がないわけではなく、やはりジョシュアはボディ攻撃に活路を見出したい。
ラストラウンド。
前戦と違い、グイグイとプレスをかけるジョシュア。そして狙うはボディショット。と思いきや上に右を返してヒットを奪います。
ウシクは下がりながらの見事なコンビネーションをヒット、するとジョシュアも右から左をフォローしてヒットを奪います。
ジョシュアがボディを狙って攻め込む際、少し頭が低くなってガードも下がるので、ウシクにはここが打ち頃。ここでカウンターをヒットするウシク、相手が狙っているところを狙う、という見事なボクシング。
ファイナルラウンドでは、前戦には見られなかったジョシュアの気持ちが見れました。
ラウンド終了後、ともにリングに跪き、検討を称え合う両者、スポーツマンシップにあふれる、本当に素晴らしい戦いを見せてくれました。
やはりボクシングには無駄な煽り合いはいらず、試合で魅せてくれれば十分だと思う試合でした。
判定。その結果うんぬんではなく、ウシク陣営のウクライナ国旗をジョシュアもともに掲げる姿が本当に素晴らしい。やはりこのアンソニー・ジョシュアというボクサーは、人間的に尊敬できるボクサーだと思います。
で、判定は、115-113AJ、115-113ウシク、、、116-112で「STILL」!!ウシク!!!!
いやー、安心しました。これでジョシュアが勝ったらどうしようかと。。。変なジャッジは1人まででお願いしたい。(ほんとは1人たりとも入れてはいけない笑)
しかしウシクは本当に素晴らしかった。前戦の反省を完全に活かしたジョシュアのプレスを見事なまでにもかわし、素晴らしいコンビネーションをいくつもヒット。
ジョシュアのボディには苦しめられたはずですが、そこからも盛り返したウシクは、ハートの強い王者であり、そしてまた試合巧者でもあります。
両者のスポーツマンシップにも感動を覚え、本当に素晴らしい戦いに「これがボクシングだ!」と、ボクシングファンとして胸を張れる試合です。
特に10R、あの劣勢になりそうなところからの巻き返しは、震えました。
しっかりと準備してきたジョシュアを見事なまでの返り討ち、オレクサンドル・ウシク、本当におめでとう。あなたがPFPだ。
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日本のボクシング界も、イギリスのボクシング人気にあやかりたいですね。