いよいよやってきました、さいたまスーパーアリーナ。
興行としても今年最も注目カードが並び、メインイベントに至っては全盛期で実績を残している王者同士の統一戦、であるにも関わらず、チケットプレゼント等が行われており、どうやらチケットが余っているようです。
まあ、これがボクシングの現状、仕方のないことですね。
ただそれでも、この統一戦のカードは草の根活動。これからも、別に人気が爆発する必要なんてないので、強者と強者のぶつかりあいを見せてもらいたいものです。
ということで、今回は、待ちに待った11/1ライブボクシング、寺地拳四朗vs京口紘人、そしてセミファイナルのジョナサン・ゴンサレスvs岩田翔吉による、WBO世界ライトフライ級タイトルマッチの観戦記。
↓プレビュー記事
11/1(火)ライブボクシング
WBO世界ライトフライ級タイトルマッチ
ジョナサン・ゴンサレス(プエルトリコ)26勝(14KO)3敗1分
vs
岩田翔吉(帝拳)9勝(6KO)無敗
王者、ジョナサン・ゴンサレスは、非常に捕まえづらいアウトボクサーで、強かさのあるボクサーです。とはいえ、岩田の踏み込みを持ってすれば捕まえられるのではないか、とも思います。
新王者誕生の瞬間を期待したい、WBO世界ライトフライ級タイトルマッチがスタート。
初回、フェイントからプレスをかけるのは岩田。対してゴンサレスはサークリング、予想通りのスタートです。サウスポーに構えるゴンサレスの左ストレートに対して岩田は右をリターン、当たらずともこれは良い攻撃。
2R、岩田は引き続きプレス、互いに奥の手を狙います。ゴンサレスは速く、ちょっとゴンサレスの左が当たり始めたようなイメージ。
岩田は飛び込みアッパーが出せていないな、と思っていたところに、飛び込みのフック!しかしここでバッティング、ゴンサレスはなかなか起き上がれません。会場は相当ざわつきましたが、無事に再開。ここで終わってしまうと、ゴンサレスのドロー防衛になってしまいます。
3R、ゴンサレスは見事なヒット&アウェーを繰り広げ、その他はサークリング。岩田が手数で攻めてもボディムーブでかわす、等のテクニックを見せます。
強引めに攻める岩田、バッティングも起こっているでしょうし、右ボディはちょっと低いような気がしますが、このしつこい攻撃に対してゴンサレスは嫌がっているように見えます。
このラウンド、ゴンサレスは偶然のバッティングによりカット。
4R、岩田はプレスを強め、ゴンサレスはステップワークで対抗。またもバッティングで中断、ローブローに対してもアピール。
ゴンサレスはアピールしすぎのような気がします(集中力を欠いている?)が、岩田は岩田でちょっとラフすぎるような気がします。
5R、序盤はサークリングしたゴンサレスでしたが、それはそこそこにしてプレスをかけてきます。ゴンサレスとしては、自分からプレスをかけた方がバッティングの危険が少ないからなのかもしれません。
岩田の攻撃は、そこまで当たっているようには見えませんが、岩田の攻撃に対して会場は沸くので、その分で焦りもあるのかもしれません。
6R、ゴンサレスがプレス、岩田は下がるという展開ですが、岩田はここで下がってしまって良いのか、は疑問。
ゴンサレスの入り際に岩田は良い右を当てましたが、ゴンサレスはけろり。
撃たれ脆さはどこへ行ったのでしょう。打ち合いは、互角に見えます。
7R、相打ちのタイミングで放つ岩田のボディはやっぱり低い。ゴンサレスは前進して左ストレートをヒットしますが、途中、足が揃ってしまう辺りは慣れていないのかもしれません。
ただ、プレスの掛け方自体は非常に上手い。
8R、ゴンサレスは序盤にプレス、のちにアウトボクシング。どちらもうまく戦っており、岩田のクリーンヒットはほぼありません。ただ、当然会場の歓声は岩田寄りなので、当たってはいなくともジャッジが流されてしまう可能性はゼロではない、とは思ってしまいます。
9R、ゴンサレスはアウトボックス、すると岩田はプレス。中盤、岩田はボディで攻め込みますが、これは低いのも含めて効果的、このローブローも含まれたボディ攻撃により、ゴンサレスは足が止まったのか、それとも、ここで退いてはいけない、という嗅覚が働いたのか、岩田が攻めてきたところに打ち返します。ただ、この距離でもしっかり強いゴンサレス。
10R、ゴンサレスがプレス。こうもアウトボックスと前進を使い分けるというのはなかなか予想外。前進すると被弾もありますが、ボクシングするとほとんど被弾せず、ノーモーションの左をヒットしてするりと抜けていきます。これこそが、我々のよく知るジョナサン・ゴンサレスのボクシング。
11R、岩田はプレスを強めます。「後がない」との判断だと思いますが、すでにちょっと遅すぎるような気もします。
岩田は前進しながら、そしてゴンサレスは下がりながら、互いの後ろの手を当て合いますが、ビッグパンチではありません。岩田は良いボディを打ちますが、ゴンサレスは止まらず。
ラストラウンドも同様に岩田がプレス、ゴンサレスがアウトボックス。
昔、この構図は本当によく見た覚えがあります。本当によく見たのか、それとも印象的だったからそうと認識しているだけあのか。
中南米あたりの体の柔らかいボクサーに、固そうな体を持つ日本人ボクサーが挑み、捕まえられず、一瞬交錯する際にパンチを当てられ続けて判定負け。
今回はそんな昔よくあったように錯覚しているボクシングの試合を思い出し、試合は終了。
判定は、117−111、116−112×2でジョナサン・ゴンサレス。
歓声に惑わされず、公平なジャッジにまずは安堵。ちなみに、個人的にはレフェリーに対し、岩田のローブローはもっと注意すべきではないか、とは思いました。ちょっとゴンサレスが気の毒でした。
岩田には期待していましたが、ゴンサレスに届かず。足運び、プレスのかけ方があまりよろしくなかったように感じたのと、鋭い踏み込みは得意でも、やはり相手が止まってくれなければそれは使えない、ということがわかりましたね。
これを人は伸びしろ、と言います。是非とも今後、頑張ってもらいたい。
WBAスーパー・WBC世界ライトフライ級王座統一戦
寺地拳四朗(BMB)19勝(11KO)1敗
vs
京口紘人(ワタナベ)16勝(11KO)無敗
前日計量を見た感じ、ウェイトがきつそうに見えるのは拳四朗。京口は非常に肌の色ツヤも良く、自身のYoutubeでも発信しているようにコンディション調整は非常に得意そうですね。
対して拳四朗は断食減量、胃腸も強固で、メンタルも強い拳四朗だからこその減量法なのかもしれませんが、ちょっと教え子たちには進められません。
さて、コンディションが大きな差を分けそうに思いますが、両者の調子はどうか。
どうでも良いですが、コミッショナー宣言とかいらないですよね。
さて、注目の初回。
まずはジャブの差し合い。鋭いジャブが行き来しますが、手数は拳四朗。京口はより様子を見ている感じです。
先に右を振ったのは拳四朗で、これは矢吹第一戦での、自身のジャブへの評価を考慮してのものでしょう。
京口は中に入るタイミングを窺っているように思いますが、まだまだ中間距離、つまりは拳四朗の距離です。
ただ、右クロスを積極的に使おうとしているあたり、これは明らかな拳四朗対策であり、少しずつ、タイミングもあってきているような気もします。
2R、京口は大きく体を振り、いよいよプレスを強めます。
拳四朗も積極的に右を出し、いよいよ互いに戦闘モード。
この右が非常にモーションが小さく、外せない京口、ガードの上ではあるものの、これでは中には入れません。
拳四朗は大きく足を使うことなく、細かい足捌きでプレスをかけ、中間距離をキープ。
京口も得意のアッパーで攻め入り、互いにヒットを奪い合う濃密な展開です。互いに良いところを出しあい、早々と、好試合。
3R、落ち着いた序盤をすぎ、拳四朗の右カウンターがヒット。
京口はもっとガンガンいきたいと思うのですが、拳四朗のジャブが邪魔か。ジャブだけでなく、ストレートも邪魔なのでしょう。
京口は連打につなげられませんが、ジャブは不思議とよく当たる。拳四朗のファイティングポーズがちょっとオープン気味な所に由来すると思うのですが、だからこそ、拳四朗のシャープな右もよく当たります。これに京口は対応できていません。
拳四朗の右は、まっすぐ出たり、フック気味に出たり、ぐるりと回してアッパーを打ったりと非常にアングルが多彩です。
4R、いよいよプレスを強める京口。
しかし拳四朗はそのプレスを受け止めて、打ち返します。kキング、
まっすぐに下がらず、サイドにまわり、決して詰まることがありません。
もう一歩、いや半歩でも良いから近づきたい京口、完全に拳四朗の距離で戦ってしまっています。
ここで京口が下がります!下がってはいけないはずです。
しかし京口も流石のもの、意地を見せてワンツーをヒット。拳四朗もまだ思い切ってはいけません。
5R、拳四朗は冴わたるジャブを京口にヒット、かいし30秒ほどのところで右をヒットして京口はダウン!!!
立ち上がった京口に対して攻め入る拳四朗ですが、ここにきても小さなバックステップを織り交ぜて丁寧にラッシュ!
苦しい京口はブロッキングと上体の動きでこのラッシュを凌ぎますが、ダウンのダメージもあるのでしょう、かなり苦しい!
攻めに攻める拳四朗、ここで若干回復の兆しを見せた京口は徐々に打ち返し、得意の左ボディ!そしてアッパーをヒット、続いて起死回生の左フックをヒット!
これでありありとダメージを受けた拳四朗は後退!!!
ここから大きく反撃に出た京口!
これはともすれば矢吹第一戦の再現か?と思うほどの形成逆転!!攻め入る京口、しかしここでゴング!!
あのダメージから、ここまで押し返せたことこそ、完全アウェーで勝利をもぎ取ってきた京口紘人というボクサーの真骨頂なのでしょう。
6Rは少々落ち着き、拳四朗にとっても、京口にとっても、回復を試みたラウンドになったのだと思います。
ただ、このラウンドでも拳四朗は鋭いジャブを絶やさず、京口をインサイドに入れません。
7R、前ラウンドの序盤よりも両者ともにスピード、パワーが戻っている印象です。
今日、お互いに当たっているジャブから入り、より積極的に右を振るっていくのは拳四朗。
拳四朗はワンツーで攻め入り、京口を後退させますが、京口もワンツーで拳四朗を押し返すという展開。
少し、拳四朗の早いジャブに対して反応が遅れているように見える京口ですが、京口のジャブもガードの低い拳四朗にはよく当たります。
中盤、左ボディの差し合い、ジャブの交換、右の交換がありますが、未だ距離は拳四朗の距離。
そして後半、拳四朗がワンツーで京口を下がらせたかと思うと京口もワンツーで押し返し、まさに一進一退の攻防の最中、拳四朗の強いワンツーがヒット!京口は吹っ飛ばされ、リング外に出そうなところでレフェリーが即刻ストップ!
寺地拳四朗、7RTKO勝利!!!
何という素晴らしい王座統一戦、だったのでしょう。
序盤からリードしたのは拳四朗で、やはり総合力では拳四朗が上回った印象ではありましたが、5Rは拳四朗も相当危なかった。
あのまま圧倒しそうだった拳四朗を、一瞬のうちに大ピンチに陥れてしまった京口の嗅覚は素晴らしかったと思いますし、もしかすると、あの場面がもう少しだけ早めに訪れていたら、勝敗は変わっていたのかもしれません。
ただ、敗因を上げるとするならば、やはり京口はフックの当たる距離で戦うことができなかった、ということに尽きると思います。
たら、ればを言いはじめればキリがありませんが、もしも拳四朗が、矢吹に喫した一敗がなかったならば、あそこで京口の大逆転ノックアウトもあったかもしれません。
あの場面、効かされてすぐに無理をせずに下がった拳四朗は、あの試合で学んだのではないか、と思います。
そして、その直前、チャンスにおいて丁寧に攻めることができていたのも、7Rに丁寧に攻めることができていたことも、その時の経験からきているものだと思っています。
ともあれ、互いに持てる力を出し切って戦った二人のボクサーは非常に美しく、また感動を呼ぶものでした。
この素晴らしいマッチアップが続いたクアドラプル・ヘッダーにおいて、本当に素晴らしいメインイベントを見せてくれた寺地拳四朗と京口紘人。
両者の今後にも、大いに期待したいと思います。
↓他のメインの観戦記
【宣伝】
ボクシング用品専門ショップ、やってます!
是非覗いてみてください!