日本人ボクサー史上2人目の3冠王者が誕生する予定だった4/8(土)。
しかし、WBA・WBC・WBO世界ライトフライ級王座統一戦、寺地拳四朗vsジョナサン・ゴンサレスの一戦は、ゴンサレスのマイコプラズマ肺炎の発症により中止の憂き目。
そして新たな対戦相手候補としては、WBO世界ライトフライ級13位のサウスポー、ジェラルド・サパタ(ニカラグア)、WBA世界フライ級2位のアンソニー・オラスクアガ(アメリカ)の名前が上がりました。
対ゴンサレスのトレーニングをしてきた拳四朗にとっては、同じサウスポーのサパタの方がありがたかったかもしれませんが、結果、対戦相手はオラスクアガに。
オラスクアガは中谷潤人(M.T)のアメリカでのジムメイトであり、プロたった5戦ながらも世界上位ランカーという希代のボクサーです。
さて、このオラスクアガ、充実の統一王者寺地拳四朗を脅かす存在なのか。
という事で今回は、もしかするとゴンサレス戦よりも注目すべきかもしれない、拳四朗vsオラスクアガのプレビューです。
4/8(土)ライブボクシング
WBA・WBC世界ライトフライ級タイトルマッチ
寺地拳四朗(BMB)20勝(12KO)1敗
vs
アンソニー・オラスクアガ(アメリカ)5勝(3KO)無敗
私は無敗のボクサーを紹介するときに、「底を見せていない」という表現をしています。敗北を喫していないということは、まだ全てを出し切っているボクサーではないということだからです。
しかし、この寺地拳四朗というボクサーは、敗北を喫しているにもかかわらずまだ底が見えないという不思議なボクサーです。
2021年9月、矢吹正道(緑)にまさかの10RTKOで敗れ、一敗地にまみれたわけですが、そこからの上昇ぶりは素晴らしく、矢吹とのダイレクトリマッチでは圧倒しての3RTKO。その後当時のWBAスーパー王者、京口紘人(ワタナベ)との日本人同士の王座統一戦でも、その強さを遺憾なく発揮、途中1度のピンチを切り抜けての結果的には圧勝の7RTKO勝利。
↓拳四朗vs矢吹2の観戦記
↓拳四朗vs京口
世界王座を初戴冠したのはもう6年近く前の事で、2017年の5月。ガニガン・ロペス(メキシコ)を相手に僅差の判定勝利、その後元王者、ペドロ・ゲバラ(メキシコ)にも僅差の判定勝利。どちらも2-0のマジョリティ判定勝利ということで、今では考えられないくらいギリギリの世界王者でした。
そして、世界初挑戦の前から三迫ジムに通い、加藤トレーナーの指示を仰いだ拳四朗のボクシングが花開いたのは、3度目の防衛戦であるヒルベルト・ペドロサ(パナマ)戦からでした。
抜群の距離から長いジャブ、カウンターでリングのすべてを支配するようになった拳四朗は、ペドラサを4RTKO、続く4度目の防衛戦では元王者のガニガン・ロペスを2Rで切って落とします。その後も元王者のミラン・メリンド(フィリピン)を7RTKOで降して3連続KO防衛。
続くサウル・フアレス(メキシコ)こそ判定勝利だったものの、ほぼフルマークの完勝で、その次はジョナサン・タコニン(フィリピン)、ランディ・ペタルコリン(フィリピン)に連続KO防衛。
ペタルコリン戦が2019年12月、その後世界は未曾有のコロナショックに見舞われます。
この間、拳四朗は泥酔事件を起こしたりもしつつ、2021年4月、一度は流れてしまった久田哲也(当時ハラダ)との一戦でも判定勝利。ただ、この試合はやや精細を欠いた内容で、久田が意地を見せた事もありますが比較的今までの相手よりも久田のパンチは当たっているように見えました。
そこから半年後、矢吹正道(緑)第一戦でプロ初黒星。
禊ともいえる久田戦をクリアし、万全だったはずの拳四朗でしたが、ジャッジの途中採点、予想外の矢吹のハートの強さ、様々な事が重なっての敗北となりました。
拳四朗のモチベーションからすると、ここですっぱりとボクシングを諦め、もう一つの夢であったボートレーサーになったとしても驚きはなかったかもしれません。
しかし、拳四朗はリングに戻ってきてくれました。
推察ですが、これはきっと自身が問題を起こした時に支えてくれた人たちがいたり、矢吹戦での敗戦を経験しても支えてくれた人たちがいたからでしょう。きっとまだまだボクシングで恩返しをしないといけない人たちがいたから、そして、「防衛記録」という道が途絶えた代わりに、「王座統一」というモチベーションを見つけられたことも大きかったのではないか、と思います。
そして「帰ってきた拳四朗」の強さは筆舌に尽くしがたいもの。
矢吹第二戦で手に入れた、原点回帰のファイトスタイル。そのままそのファイトスタイルに傾倒し、もしかすると隙が多いボクシングになってしまうのではないか、という心配もありました。
その矢吹第二戦のあとの、京口戦。完全に自分の距離でボクシングをしてみせた拳四朗、決めに行こうとして反撃に合ってしまったということはあったものの、あれはほんの少しの気負いと矢吹戦のKOがさせた、とも言えるのではないでしょうか。
あのまま攻め急がなければあのピンチはなかったと言えますが、それでもその後のラウンドで持ち直したのは流石。これは、拳四朗というよりもおそらく加藤トレーナーの指示で、この加藤トレーナーこそが拳四朗のブレーン。拳四朗はまさに超高性能なマシーンだと思います。
そんな拳四朗は、ゴンサレス戦中止の報にもめげず、「4団体統一」という目標を継続することを明言。
モチベーションの低下を招かなければ良いですが、このタイミングでの対戦相手の変更は精神的にはかなり痛い。が、拳四朗がそれを気にするのかは微妙です。
プリンセサ(お姫様)
そんな我が国が誇る絶対王者に挑むのは、アンソニー・オラスクアガ。
「プリンセサ」というニックネームを持つオラスクアガは、ルディ・エルナンデスのもとで中谷潤人と切磋琢磨する軽量級のホープです。
わずか5戦で、世界ランキングはWBA世界フライ級2位(1位はユーリ阿久井)、WBO世界フライ級12位という24歳で、その両拳には軽量級離れしたパワーが宿っているボクサー。
しっかりと打ち込むコンビネーションは多彩で、「決められたコンビネーションを速く打つ」というよりも、一発一発のパンチをしっかりと打ちつつ、相手をよく観察し、相手の空いているところをねらって打っているという感じ。
ピンク色のトランクスに、NIKEのハイパーKO2のピンクカラーモデルが非常によく似合っています。
このオラスクアガのプロデビューは2020年9月のことで、2RTKOでプロデビューすると2戦目ではサウル・フアレス(メキシコ)に6R判定勝利。このフアレスは連敗中とはいえ、かつては拳四朗に挑戦したボクサーです。
3戦目で当時空位のWBAフェデラテン・フライ級タイトルを獲得、ノンタイトル戦で6RTKO勝利をしたあと、このタイトルを初回TKOで防衛しています。
これが最新試合であり、このマルコ・サステイタ(アメリカ)戦は一つのハイライトとなっている試合。Youtubeにはいくつもあがっています。
リカルド・サンドバル(アメリカ)に5RTKOで敗れ、ジェシー・ロドリゲス(アメリカ)に8RTKOで敗れていたこのサステイタを、オラスクアガはなんと1Rで破壊。
オラスクアガは強さと、そして未来とを見せた試合でしたね。
↓ベースボール・マガジン社の記事
上の記事を読む限り、拳四朗とオラスクアガはすでに手合わせ済みですね。
さて、このフライ級という階級において、彗星のごとく現れたオラスクアガは、非常に才能あふれるボクサーであることは疑いようがありません。
しかし、今回の相手は寺地拳四朗であり、更にオラスクアガにとってライトフライ級での初の試合となること、そしてキャリア面でも1試合で経験した最長ラウンドが8Rであること、等々、オラスクアガの戴冠を阻む理由は非常に多い。
しかし、評価の非常に高いこの若武者は、まだ全くその本質を我々に見せているわけではないから、この試合は非常に興味深いものとなります。
はっきり言って、拳四朗vsジョナサン・ゴンサレスの一戦は、どのような展開になったとしてもゴンサレスの勝ちが見えにくかった事が現実ですが、このオラスクアガはわかりません。試合映像がたくさん出回っているわけでもなく、初回TKOで終わった試合(と、中谷とのつながりがあることや期待されている、という漠然としたもの)のみしか情報がなく、未知の部分が非常に多いという事が非常に興味をそそります。
もしかすると、このオラスクアガはあのハードパンチを拳四朗にあてる術を持っているボクサーかもしれません。それは、戦ってみなければわかりません。
帝拳プロモーションがプロモートするボクサーであることも、拳四朗ファンにとっては「不安」を煽る要素かもしれません。帝拳プロモーションといえば、かなりの高確率で勝てる勝負を組んでいく傾向が強いからです。
さて、オラスクアガは我々が、世界が想像する以上のモンスターなのか。
それでも、やはり拳四朗のあの安定感のあるボクシング、負ける姿は想像できません。しかも、相手はプロたった5戦のキャリアであり、いかにパワフルであろうとも匠の技を持つ拳四朗にその拳が届くことは考えづらいですし、短期間だとしても拳四朗陣営はオラスクアガをしっかりと研究して試合に臨むはずです。
「怖さがあるボクサー」このことをしっかりと拳四朗陣営が認識していれば(していないはずはないと思う)、その対策ができるはずで、問題となるのはこれまで見せている何倍、いや何十倍もの力をオラスクアガが有していた時。果たして加藤トレーナーの想像を上回るボクシングを、オラスクアガが見せるかどうか。
結局それも考えづらいわけですが、それでもこの寺地拳四朗vsアンソニー・オラスクアガの試合は未知の部分がたくさんあって非常に面白い。
フライ級からは問題なく下げられそうな体つきをしていますので、さほど減量に関しては心配していませんし、フライ級のオラスクアガですらまだ未知なのに、ライトフライ級のオラスクアガはもっと未知。
期待としては、オラスクアガがそのポテンシャルを遺憾なく発揮しつつ、それでも拳四朗がそれを圧倒的に上回る形。
そして、中谷潤人に倒されたときのように、オラスクアガにはぜひともそこから大いに這い上がってほしいもの。
ともあれ、本来であれば4/15(土)にTBプロモーション興行に出場予定で、更に日本で岩田翔吉(帝拳)のスパーリングパートナーを務めているオラスクアガも、万全に整えてくるはずです。
本当は拳四朗の相手はサパタで良いや、くらいに思っていたのですが、決まったらこんなに楽しみな試合はないですね。絶対王者vs未知の若手ボクサー、これは非常に楽しみな一戦です。
放送・配信
Amazonプライムビデオ presents 4/8(土)「LIVE BOXING」は16:00からの放送開始。
話題の5試合はすべて生配信の対象のようです。
現在Amazonプライム・ビデオでは、那須川天心デビュー戦直前スペシャルも配信中!
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