いよいよ、全世界が注目するビッグマッチ。
プレビュー記事をいくつか書きましたが、このタンクvsガルシアについては日本でも「ボクシングファン」だけでなく、いろいろな人にリーチしているような感じがします。
WOWOWで放送された全4試合、どれも注目ですが、何といってもメインイベントはメガ・ファイト。
ということで今回のブログは、ジャーボンタ「タンク」デービスvs「キング」ライアン・ガルシアをメインに据えた、ShowtimePPV興行の観戦記。
↓プレビュー
4/22(日本時間4/23)アメリカ・ラスベガス
イライジャ・ガルシア(アメリカ)vsケビン・サルガド(メキシコ)
サウスポーのプロスペクト、イライジャ・ガルシア。14勝中12KO(無敗)のガルシアに期待です。しかしこのサルガドも15勝10KO(1敗1分)という好戦績のボクサーですね。
さて、試合は序盤から攻撃的に攻めるガルシアに対して、サルガドが頭を下げて低く対応。距離はかなり近く、これによりバッティングが発生する中でガルシアが鼻から出血。
3Rが過ぎた頃、ガルシアはやや遠目の距離でボクシング。右手をだらりと下げたスタイルから長いジャブとストレートでサルガドを距離を保ち、バッティングを警戒。まだ19歳(もうすぐ20歳)とは思えないほど対応力のあるボクシング、この冷静さは驚異ですね。
サルガドのようなガチャガチャしていてやりづらヘッドバット付きのファイターに対し、しっかりと対処した上での3-0の判定勝利。
KO勝利とはなりませんでしたが、これは良い経験になったのではないでしょうか。
ベクテミル・メリクジエフ(カザフスタン)vsガブリエル・ロサド(アメリカ)
1年10ヶ月ぶりの再戦。前回は、メリクジエフが早々に優位にたち、いつ仕留めるかというふうになったところでロサドが大逆転のノックアウト勝利。この再戦というものは、メリクジエフが前に進むためには必要なもの、ということでセットされたものかもしれません。
今日のメリクジエフは、非常に慎重。プレッシャーこそかけていくものの、強引に行く事はありません。これには会場からもややブーイングが聞こえてくる内容ですね。
この試合、メリクジエフにとっては「勝利する」事が最優先であり、ともかくロサドの意外性のある1発をもらわないことが最重要。
3Rくらいからようやく左を着弾させ始めたメリクジエフ。そして徐々に、徐々にその左に力を込めていくわけではありますが、それでも手数が大きく増えるわけではありません。
もっともっとアクションを多くすれば、今のガブリエル・ロサドをストップするのに足りると思うのですが、やはり前回の悪夢がよぎるのか、本気で倒しきろうという気概は見えません。
ひとつの敗戦をきっかけに強くなるボクサーもいれば、弱くなるボクサーもいます。そして、このメリクジエフのようにつまらなくなるボクサーもいるわけですね。
ということで試合こそベクテミル・メリクジエフの完勝という内容ではありましたが、ちょっと物足りない内容でしたね。11勝9KOのボクサーには見えませんでしたが(これで12勝9KO)、また良いパフォーマンスを見せてもらいたいものです。
WBA世界スーパーミドル級タイトルマッチ
デビッド・モレル(キューバ)8勝(7KO)無敗
vs
ヤマグチ・ファルカン(ブラジル)24勝(10KO)1敗1分
さて、セミファイナルはデビッド・モレルが登場です。このモレルは、2020年8月、デビューからわずか3戦目でWBA世界スーパーミドル級暫定王座を獲得しています。
その試合から、何だかんだと全部見ています。
初回、サウスポーのファルカンがグイグイといきます。随分と体格が違うようにも思いますが、やはり迎え撃つモレルの攻撃が非常にパワフルに感じます。
ラウンド中盤頃にはモレルもプレッシャーをかけ始め、しっかり打ち込んでいきますね。
するとファルカンは早々にダメージを負ったのか、後退。特にモレルのすくい上げるようなアッパー、これが完全に縦の軌道でファルカンを遅い、続く右フックのフォローでファルカンはぐらり。
酩酊者のようにリングを横切るファルカン、モレルはここで止めないレフェリーを確認して右フックを振るうと、ファルカンはロープにもたれかかるダウン。
残り1分強、モレルはもちろん決めに行きます!
ファルカンはクリンチで逃げようとしますが結局ガードの上からもらったパンチでまたグラつき、追撃の右フックがクリーンヒットすると前のめりにダウン!!!
これでレフェリーはストップ!
デビッド・モレル、初回TKO勝利!!
強い強い、デビッド・モレル。得意のサイドからの攻撃を使う必要すらなく、パワフルな攻撃でさっさと片付けてしまいましたね。
五輪メダリストをいとも簡単に片付けた、怪物王者デビッド・モレル。この衝撃的なノックアウトを、アメリカのボクシングファン(+ライト層のファン)が見た事は今後のキャリアにおいて非常に大きいのではないでしょうか。
今後のモレルのキャリアに期待大、ですね。
ジャーボンタ・デービス(アメリカ)28勝(26KO)無敗
vs
ライアン・ガルシア(アメリカ)23勝(19KO)無敗
いよいよメインイベント。
セミファイナルが早く終わったので随分と待ち時間は長かったですが、思ったほどには感じません。不思議なものです。
大きな歓声に迎え入れられた両者、リングコールも当然のように大歓声。
T-mobileアリーナを埋め尽くす20,000人という観衆は歴史の目撃者であり、ブーイングのないこの状態こそがやはりビッグマッチ、メガマッチに相応しい。
そして注目のゴング。
まずは先にジャブを打って仕掛けるのはガルシア。タンクは当然のごとく様子見。これはある程度予想できた事ですね。
序盤はいつもガードを高く掲げ、相手を警戒するタンク。ガルシアに対しても変わらずで、当然のことながら冷静さを保っています。
ガルシアは速いジャブでタンクを威嚇するも、その次に踏み込めば危険ということがわかっているためか、とりあえずプレスをかけつつの様子見。タンクがでてくればすぐにバックステップできる準備を怠りません。
どうでも良い事ですが、(勝手に注目していた)タンクのシューズはNIKEのTawaではなさそう。スウォッシュの位置が違うので、Furyかも。ライアン・ガルシアはNIKEのハイパーKO、ホワイト&ゴールドのものですね。
ほぼ動きのない中で注目の初回は終了。
2R、ガルシアがプレスを強めてタンクを追い、早々に仕掛けます。強く踏み込んでコンビネーション、タンクはクリンチでエスケープ。思っていたよりも早い仕掛けのガルシア、タンクのエンジンがかかる前に決めていこうという考えは良いと思います。
ガルシアはガンガン追いかけていって、得意の左フックから入ります。
タンクの頭が低い位置にあることから、効果的にアッパーを使い始めたか、という矢先、タンクの左カウンターがヒット!ライアン・ガルシアは尻もちを着くダウン!!!!!
ガルシアの得意の左フックを空振りさせ、その打ち終わりの見事なリターン!これはなんとも素晴らしいタイミング。
これはちょっとガルシアも左フックを思いっきり振りにくくなるリターン。。。
立ち上がったガルシアはその後も強気でプレスをかけていきます。
3R、まだまだ冷静なタンクは、無理に行きません。ガルシアはそれでもプレス、ダウンのダメージは感じません。
ガルシアの長いジャブ、これは素晴らしい。タンクもこの速く長いジャブは厄介でしょう。
タンクはかわして打つ、というリターンを徹底していますが、1発で踏み込むにはやはりガルシアは遠いか。
タンクとしては自ら打つ、ガルシアのリターンを誘いつつそれをかわして踏み込む、という何段階かにわけた距離の詰め方が必要になりますね。
4R、プレスをかけるガルシアも、やはりタンクのリターンを大警戒。前足を少し前目に置いてタンクが入ってくるのを妨げているように見えます。
先に踏み込んだもの負け、みたいな雰囲気が流れる中、両者ともにまえてで警戒をしつつ、カウンターの準備をした上で攻め入る隙を探す時間が過ぎていきます。
後半、ガルシアが攻め込んだところにタンクが左をリターン、これをガルシアはヘッドスリップで躱します。この見どころある一瞬の攻防により、会場はため息。
5R、変わらずプレスをかけるのはガルシア。迎え撃つタンク、見る時間が非常に長い中で、時にタンクが爆発力を持って攻め込み、時にガルシアが左フックを強振します。
アクションが少ないのにブーイングが起きないのは、この漂う緊張感というものが尋常ではないからなのかもしれません。交錯する一瞬で、全てが決まってしまうかもしれない、そんな雰囲気を孕んだ時間が刻々と刻まれていきます。
ただ、これはかなりのジャッジ泣かせの試合になっていますね。クリーンヒットが殆どない中で、どちらがジャッジに訴求できたのでしょうか。
6R、ガルシアのプレス。タンクは動き回りますが、途中、足を止めて口を動かしています。一度ガルシアをスキャンし終わった事で、タンクの集中力は少し途絶え気味なのかもしれません。
足を止めたタンクに対して、ガルシアは左を強振、その後右をヒット。これは浅いながらも強く攻め入るガルシア、これはこの小さなチャンスすらも足がかりにしなければいけない戦いです。
中盤、タンクの左を躱してガルシアが右の打ち下ろし。これをステップで躱すタンク。ここでもクリーンヒットこそないものの、当たればダウンぐらいはありそうなビッグパンチの連続に会場はため息ですね。
長い距離でガルシアが良さそうですが、さらにパンチを打ち込もうといくとすぐにタンクのカウンターが飛んできます。これは危険。もしかすると、そろそろ本格的なパンチの交換が見れるのかもしれません。
7R、開始早々にタンクがガルシアのグローブに文句をつけます。テーピングでも剥がれているのか?と思いましたが、レフェリーがチェックしても特に何もなくリスタート。
これはもしかすると、タンクの注意力は散漫になってきているのかもしれません。そのうち、リング外のメイウェザーに話しかけるかも。
と、その再開後、ガルシアのジャブがヒット、続いて外側から伸びてくる右もヒット!この双方は浅いながらも、ここでガルシアは強く攻めてでます!
やっぱりちょっとタンクの集中力はヤバいか?
ガルシアがしっかりとガードを固め、タンクの攻撃にバックステップではなく迎え撃つ構え。
タンクのジャブに左フックをあわせようとしたガルシア!
その後一瞬の交錯、それがあってからガルシアは後退して膝を着くダウン!
そしてそのままカウントアウト!!!
ジャーボンタ・デービス、7RKO勝利!!!
ななな、な、なんと、何が起こったのか全くわかりません。
スロー映像が流れると、タンクのジャブに左フックをあわせようと振るったガルシア、それをダックして躱したタンク。ここでタンクは頭を前に持っていき、もみ合い状態に近くなっています。
そのタンクに対して右ストレートを打とうとしたガルシアに、タンクの左ボディストレートがヒット!これがガルシアのレバーに刺さっています。
WOWOWの解説者、浜田氏は「これはやらなきゃいかんですよ」とのことではありますが、このガルシアの右にカウンターで入れたストレートのレバーブロー。
ガルシアにとって思ってもみないカウンターとなったこのレバーは、普通に考えたら立てないだろうし、あそこまで耐えたガルシアを褒めても良いかもしれません。
よくボディを打たれて一拍置いて倒れる、という姿を目にすると思いますが、その一拍が長い分だと考えるとよくわかります。
ガルシアは立ち上がろうとはしていましたが、テンカウントを数え上げるうちに立てなかった、というのが正しいのではないでしょうか。
ともあれ、個人的な見解としてはガルシアの評価を下げるような試合ではなく、試合後にタンクを讃えているその姿は好感を持てるものです。
キャリアにしろ、実績にしろ、タンクがガルシアに勝っていたのは闘う前からはっきりしていたこと。果たして、この戦いは「互角」というよりも劣るものが多いガルシアが、如何にその左フックでタンクに食い込めるのか、が焦点だったはずです。
この試合、もしタンクがカッカしてガルシアに殴りかかるような事があれば、もしかすると結果は違ったのかもしれません。しかし、リングIQを持つ彼は、そうはしませんでした。
懸念された集中力に関しても、しっかりと前半集中し、7Rに入って「おや?」と思ったものの、そこで試合は決まってしまいましたので今回はほぼ関係なし。
ともあれ、現時点ではタンク・デービスはライアン・ガルシアより強く、ガルシアにとっては付け入る隙はありませんでした。
傍から見ても「なぜPFPに入らないのか」と思われる程の実力者であるタンク・デービスに挑んだ若武者、ライアン・ガルシアは、その対戦を実現させようとした熱意、そして勝利を手繰り寄せようとしたハート、どれも称賛されるべきものだと思います。
そしてそのガルシアの、敗北を恐れない姿こそ、ボクサーの本質であり、ボクシング興行に必要なものだとも思います。
今後、この一戦を皮切りに、プロモーターの垣根を超えたビッグマッチ、メガマッチが行われる事を心から願います。
いやー、ジャーボンタ・デービス、本当に強かった。
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