盛りだくさんの10月ウィークデイ。
4日しかない平日のうち、3日間が国内ボクシング興行というのはなかなかにハード。
その中でも最注目は、やはり10/12(木)に行われた有明アリーナでの興行、TBP第4弾興行でしょう。
ということで今回のブログは、U-NEXTで配信されたTBP興行の観戦記。
10/12(火)トレジャーボクシング4
WBOアジアパシフィック・スーパーウェルター級TM
井上岳志(ワールドスポーツ)vsヒラナン・マッサリ(タイ)
前戦はドローで防衛を果たした井上岳志。ムンギア、チューといった世界トップクラスと拳を交えた井上は、この階級の日本人ボクサーでは頭ひとつ、ふたつくらい抜けたワールドクラスのボクサーのはず。今後世界を目指すのであれば、WBOアジアの下位ランカーには苦戦も許されません。
初回からグイグイとプレスをかける井上、2Rには突き刺すようなジャブから体ごと叩きつけるような右。強引に詰めて倒す、というよりも比較的丁寧に、超接近戦だけではなくジャブがちょうど届く距離で戦おうとしているように見える井上。マッサリは自ら攻めることはほぼなく、井上が攻めてきたところに対応しようとする戦い方、これはなかなか倒すのに難しい相手。
4R頃からやや強引に攻めるようになった井上は、その後も突き刺すようなジャブをヒットして優勢。5Rにはワンツーをヒットしてダウンを奪取します。このラウンド後半にはマッサリをロープに詰めて左ボディ、ここで2度目のダウンを奪います。
6Rにもダウンを奪った井上はその後マッサリを詰め、またも右ストレートでダウンを奪取。ここでレフェリーはストップ。
井上岳志、6RTKO勝利!
世界へフィジカルゴリ押しで挑んだ井上は、今回突き刺すようなパワージャブを軸に外から回す右、ボディへの打ち分け、そして真っ直ぐのコンパクトな右で試合を完全に支配しました。
この試合は十分に及第点、ここからまた世界へと駆け上がってもらいたいですね。
フェザー級8回戦
藤田健児(帝拳)vsジョー・サンティシマ(フィリピン)
第二試合に登場は藤田。翌日にはアマ時代からのライバル、堤駿斗(志成)が登場予定でしたが、40度の高熱のため試合を棄権、これはちょっと対戦相手のドミニカンが不憫ですね。
ともあれ、藤田の対戦相手はサンティシマ。日本で連敗中ながらも、油断できるボクサーではありません。
初回、前手をぐるぐると動かして幻惑させながらも、強い左を絶妙なタイミングで顔面、ボディへと打ち込む藤田。このラウンドのハーフタイム頃には左をヒットしてサンティシマはグローブをマットにタッチ、早々にダウンを奪います。2Rにもジャブを置いて外側にツーステップ、左。とにかく上手い。
3Rにもサンティシマの右に左カウンターを合わせた藤田、このラウンド後半にはギアアップ。4Rにはサンティシマもプレスを強め、危険なパンチを振るって来ますが、藤田の動きは一段階上。サンティシマの攻撃に対してカウンター、リターンを打ってからのコンビネーション、役者が違います。
5Rも6Rも藤田がパンチをまとめる場面を作りますが、さすがサンティシマもタフですね。
フルラウンド、圧倒しつつも倒せませんでしたが、完勝ですね。
判定は78-73、79-72×2で藤田。
フライ級8回戦
石澤開(M.T)vsビンス・パラス(フィリピン)
ガチすぎる再起ロードを歩む石澤。今回の相手は難敵、ビンス・パラス。
軽量級パンチャー同士の対戦は、両者強いパンチを交換するような戦いです。互いにハイガード、パラスは結構外側から振ってきますが、これに石澤はブロッキング。こうすると止まらないパラスの手数に、ややディフェンス主体の戦いとなっているところはあまり良くありません。手数が多い分、パラスの方にポイントが流れてしまわないか。
4R、石澤がアグレッシブに攻めます。パラスは石澤のボディムーブによりミスブローが増え、空振りをするとパンチが続きません。しかし5Rにはまたパラスの攻勢が目立つ展開です。
6Rには打ち合いの場面もあり、疲れを見せたパラスに石澤が激しく攻め入る場面を作って優勢。パラスは明らかに疲れているものの、7Rもとにかく危険なパンチを振ってきます。
ラストラウンド、コンパクトなワンツーで攻め込む石澤、パラスもバランスを崩しながらも左右のフックを振ってきます。
互いに今のベストを出し合った戦いは、フルラウンドを戦い抜き判定へ。
判定は、78-74パラス、77-75石澤、77-75パラス。2-1のスプリット判定でビンス・パラス!!
個人的には前半かなりパラスに流れていたと思うので、仕方ないですね。
バンタム級8回戦
サウル・サンチェス(アメリカ)vs RVデニエガ(フィリピン)
慎重にプレスをかけていくのはサンチェス。デニエガは下がりながらの戦いながらも、出てくる時は非常にパワフル。初回からバチバチ、これは好試合が期待できます。
サンチェスは強いプレスで追いますが、なかなか手が出ないのはデニエガのパワーを警戒しているか。デニエガは何かを狙う素振りですが、近い距離になるとサンチェスに連打を許してしまいます。
デニエガのタイミング、集中力は素晴らしいし、サンチェスの回転力もまた、素晴らしい。5Rには互いに利き手のパンチをヒット、互いに譲りません。
ポイントの割り振りが非常に難しい展開が続く中、6Rはサンチェスの右がよく入っているように見えます。ただ、サンチェスは速いながらも左、右、左、右と比較的読みやすい攻撃のため、デニエガとしても戦いづらくはないかもしれません。
ラストラウンド、早々にサンチェスが二段階のフロントステップから強い右。このパターンを後半にもサンチェスは出しますね。デニエガはコンパクトな右カウンター、フルラウンドにわたり両者自分の良いところをしっかりと出し切って終了。
判定は78-74、79-73×2でサウル・サンチェス。
OPBF東洋太平洋バンタム級タイトルマッチ
栗原慶太(一力)17勝(15KO)7敗1分
vs
フローイラン・サルダール(フィリピン)33勝(23KO)7敗1分
いくつかの敗戦を糧に、世界を狙う栗原慶太。ここは豪快に勝利して、世界戦に備えてもらいたいところ。
初回、様子見もそこそこに右を振るう栗原。しかしサルダールも右を振るいこれが栗原にヒット!!なんとこれが効いてしまい、その後攻められた栗原はダウン!
ちょっとフラつきながらも立ち上がる栗原、右カウンターを狙うも再度サルダールの右を浴び、2度目のダウン!!!
ともすればストップしてしまう方が良いのでは、という痛烈なダウンながらも、レフェリーは日本人だからなのか、続行。ただ時間はまだ2分以上。
ガードを固めてエスケープしようとする栗原にサルダールがチャンスを逃すはずもなく、連打をまとめてレフェリーがストップ。
体が温まっていないうちにもらってしまったか、栗原慶太。
正直、ちょっとサルダールを舐めていたかもしれません。これは栗原だけでなく陣営、そして私も。
なんとも言葉が出ません。。。
やはりこのTBプロモーション興行というのは、日本人ボクサーにとって大きな鬼門。
スーパーバンタム級10回戦
小國以載(角海老宝石)21勝(8KO)2敗2分
vs
ジョンリエル・カシメロ(フィリピン)33勝(22KO)4敗
会場やライブ配信では、セミファイナルの衝撃から少し落ち着く時間もあったかもしれません。しかし私は追っかけ再生であり、さらに時間も時間なので途中の時間はぶっ飛ばし、メイン。全然心は落ち着きません。
この試合、小國に勝って欲しい気もするしカシメロに勝って欲しい気もする、みたいな試合だったんですが、栗原の痛烈なKO負けにより何故だか「小國に勝って欲しい」に思いっきり気持ちが傾きました。ということで、頑張れ、小國。
そうこうしているうちにゴング。
初回、小國のジャブにいきなり右クロス、から一気に攻め入るカシメロ。これは想定できたことで、序盤のカシメロは要注意です。
小國はブロッキングを主体としつつ、ロープの反動も利用して打ち返し、覚悟の決まった戦い方。得意のファースト・チャージが成功しなかったカシメロに対し、小國はストレート系のパンチで反撃。
おそらく小國は下がりっぱなしにならないことが重要ですが、カシメロが攻めて来たところでしっかりと打ち返し、これはカシメロを休ませないためにしていることでしょう。これは素晴らしい戦法で、カシメロにマイペースで試合をさせてはいけません。
小國は悪くない立ち上がり。いや、ベストに近いと言っても良い。
2R、初回を終え、カシメロのパワーに圧倒されなかった小國にはチャンスがあります。小國は長いワンツー、そして左右のボディ。カシメロは豪快に外側から回すフック、これを小國はガードもそのパワーにやはりノーダメージとはいきません。
小國は近年稀に見るアグレッシブさ、いや、近年は試合をあまりしていなかったか。
リスクを取るからこそ、ということですが、終盤にカシメロの右オーバーハンドを被弾。ただインターバル中、カシメロはすでにかなりしんどそう。
3R、前ラウンドの右のダメージか、小國はちょっと足元が怪しい。カシメロのパンチをブロッキングも、足はバタつきます。前に出て、ちゃんと下がる、という今回の小國のボクシング、生命線は結局足だと思います。
小國はジャブからの右ボディが良い。カシメロはやや横着なディフェンス、これはスタミナを考慮してのことでしょうが、ボディムーブでは右ボディストレートは躱せません。
4R、前半にカシメロの右がヒットしてレフェリーが割って入って、試合がストップ??と思いましたが、アクシデンタル・ヘッドバットがあったようです。
レフェリーは小國の手を取ってニュートラルコーナーへ連れて行き、ドクターチェック。
なんとこれで試合続行不可能となり、負傷判定でドロー。
見れば小國の右目付近は血に染まっており、どのタイミングでバッティングが起こったのかは良くわかりませんが、規定のラウンドに達していなかったため、負傷引き分けだそうです。これは小國、本当にうまく戦っていただけに残念ですね。
スロー映像が流れますが、「ゴチン」という感じではなく、カシメロの頭が小國の右目上を擦ったような形となり、これが流血につながったようですね。
だとすると骨云々ではなく、外傷のような気がするので、これはさほど時間をおかずに再戦、という運びにできるのではないでしょうか。と、無責任なことを言ってみる。
なんとも呪われた雰囲気のトレジャー・ボクシング興行。
次のTBP興行第5弾は『カシメロvs小國2』そして栗原にもサルダールへのリベンジの機会を与える、これで良い。と、また無責任なことを言ってみる。
で、別件ですがこのリングアナはいつも何様だ、というインタビューをしますね。
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