1/26(金)、フィリピン。
アメリカで世界王座を獲得した伊藤雅雪の仕掛けるトレジャー・ボクシング・プロモーションの第5弾興行です。
海外とのパイプを作り、興行を行えるというのは日本のプロモーターとしては数少ない試みですね。
日本人のボクサーとしても海外のリングに比較的安心して立てる舞台であり、今後は是非日本で試合の組みにくいトップアマたちのキャリア形成にも役立てて欲しいものです。
ということで今回のブログは、最注目はセミのサルダールvs栗原慶太、TBP興行の観戦記。
アンダーカード
第一試合に渡邉響太(ワタナベ)、第二試合に細川兼伸(ワタナベ)が登場。
フィリピンでフィリピン人を相手に戦う、その意気や良し、ですね。両ボクサーともこの経験は糧になるはず。
渡邉は惜しくも敗戦、デビュー戦とのことですが、強いハートを示せました。細川は格上と言えるロニー・バルドナドにスプリットの判定勝利、こちらも素晴らしいハートとガッツ。バルドナドといえば、田中恒成、石田匠、武居由樹との対戦経験があり、日本でもよく知られたボクサー。どうやら下位ながらもOPBFランキングにも入っているようで、この勝利はでかいですね。
第3試合には関根幸太朗(ワタナベ)が登場。対戦相手はアル・トヨゴン。このトヨゴンもリナレスや正木修也、佐川遼との対戦で日本でお馴染みのボクサー、なかなかの強敵ながらも、下の階級から上がってきたボクサーでは関根のハードパンチに耐えうるか、というと難しい感じもします。
関根はいつも強気ですが、3R以降くらいでしょうか、ちょっと距離が近すぎる印象で、近距離の打撃戦のシーンが多い。技術もパンチもある選手なので、もう少し効果的な距離で戦えそうな感じがしています。(このトヨゴン戦の選択が悪いという話ではなく。)
1-2Rとかはジャブが当たる距離での戦いであり、サイドへのステップとかフェイントとか、ああいう戦い方から強打を打てれば良いのではないでしょうか。
この試合は、トヨゴンのカットにより6Rにドクターストップ、関根のTKO勝利が決まっています。
まあ何せ、このスーパーライト級の国内戦線は熱い。
王者・藤田炎村(三迫)は指名挑戦者の元トップアマ、李健太(帝拳)を迎えてのチャンピオンカーニバルを控えます。これは「スタイル・メイクス・ファイト」の激アツの試合ですが、ここで藤田が勝利して、現在日本ランキング2位の関根が挑戦するなんていう話になれば、これまた「技術を駆使した殴り合い」の激アツの試合となりそうです。
今年、スーパーライト級国内戦線からは目が離せません。
OPBF東洋太平洋バンタム級タイトルマッチ
フローイラン・サルダール(フィリピン)34勝(24KO)7敗1分
vs
栗原慶太(一力)17勝(15KO)8敗1分
おそらくこのブログでは何度も書いていますが、この栗原慶太というボクサーは叩き上げの希望の星です。
小さい頃からボクシング競技を始める、というボクサーが多い中で、アマキャリアなし、ボクシングを始めた年齢も遅いとなると、正直この位置まで来るのは(特に今の時代において)非常に難しい。
しかもキャリア初期には負け越しとなってしまった時期もある叩き上げであり、その中でも考えて努力することを続け、自分の力でこの地位を掴み取ってきたのでしょう。
いくつ負けたっていい、「最後に勝つ」それを体現してもらいたいと思っています。
が、井上尚弥が蹂躙し去ったあとで、戦国時代となったバンタム級。良い位置につけていただけに、やはり前戦のサルダール戦での初回KO負けというのは痛い。
そのダイレクトリマッチが今回の一戦。
このタイトル戦のダイレクトリマッチというのは嫌がる人もまだいるのかもしれませんが、地域タイトル戦であること、ホーム&アウェーのように互いの国を行き来するのはまだマシの部類でしょう。私は応援しているボクサーだから全然気になりません。(応援していないボクサーだとオイオイ、となりますね。)
初戦は全く心配していませんでしたが、あの負け方、あの負け方からの気負い、カカリ、さらに敵地。不安要素が非常に大きい状態ながらも、なんとか勝利をもぎ取ってほしい。
さて、初回のゴング。がなった瞬間、栗原が一気に距離を詰めます!とここで現地の映像が遮断、これはすぐ終わりそうでしたが映像が戻った時にはまだ終わっていませんでした。
よかった。
栗原はやはりかなり掛かっている印象ですが、「強打を当てる」よりも「ガードから入る」ということを意識していそう。これは良い傾向に思います。
ただ、ちょっとストレートの距離というよりもフックの距離まで詰めており、このフックの距離はサルダールの距離ではなかろうか。
サルダールはどちらかというと足を使いつつ、下がって打つ。これはかなり危ない打撃戦です。栗原の覚悟は分かりますが、ちょっと強引すぎやしないでしょうか。
2R、とにかく前進してフルスイングの栗原!千葉戦第2戦と同様に、強引に振るっていく方が栗原の長所を活かせる、ということなのでしょうか。
果たして栗原はサルダールを押し始め、このラウンドには前半でサルダールをコーナーに詰めて全弾フルスイングの猛攻。力づくでサルダールを攻め立てますが、その分ガードの隙は大きく、被弾も多い。左右のパンチが同時打ち、完全な殴り合い!
後半、若干サルダールの手数が少なくなったように見えます。
やっぱりあれですね、この思い切りの良さ、覚悟、ディフェンス自体は度外視して思い切っていける、というのは栗原の強みかもしれません。ここまでいけるボクサーは非常に少ないと思います。
3R、栗原がまた当然のように行きます。初回だけはブロッキングから入った栗原でしたが、やはり打っている時はかなりルーズ。危ないタイミングも非常にありますが、パワー、フィジカル、スタミナにおいては栗原が上回るか、サルダールをどんどん押していきます。
くっついての打撃戦の中で体を押し付けて休むサルダール、それを突き放してパンチを振るう栗原。ちょっとこの離れ際は注意、というか先に手を出すのがサルダールなので、ここは栗原は頑張りたいところ。
4R、なんだかもう意地になって打っていく、というふうにも見える栗原。崩れた体勢からでもパンチを振るい、それによってバランスを整えていくようなイメージ。これはこれで良いのですが、サルダールが少し距離を作ろうとしている分、体が崩れてしまったところにもらってしまっては元も子もありません。ただ、ここから丁寧に戦うのが良いのか、と言えば当然そうは言えませんが。栗原はおそらくこのまま行くつもりなのでしょう。
お互いのビッグパンチを当て合い、動きが止まり、ぐらつく。
後半、栗原のショートの右がヒット!サルダールがダウン!!
立ち上がったサルダールに襲いかかる栗原、サルダールはダラダラと逃げてとにかくエスケープ。
5R、ここは当然行く栗原!序盤にボディを効かせ、ロープにつめてラッシュ!サルダールはディフェンスに専念しつつ、時折単発のカウンター!このカウンターは非常に危険、栗原のガードが空く分的中率は高い。
頭を下げて亀のようになるサルダールに対してはアッパー、サルダールが下がるところに追いかけていく栗原はまっすぐそのまま行くので、ここでのサルダールの反撃は怖い。
ロープに詰めた時はチャンスですが、そこでサルダールは亀となり、栗原の右に合わせようとのカウンター!これはちょっと危ない。
6R、序盤、サルダールの右がヒット!やはり追いかけていく時の栗原は隙が大きい。
これでダメージを負った栗原に、サルダールは猛ラッシュ!!この辺りの嗅覚はさすがと言えるサルダール、栗原はクリンチでエスケープ!
足に力が入らないか、栗原はスリップダウン、しかしサルダールも体力の残りゲージは少ないか。
少々回復した栗原は大反撃、サルダールをロープにつめてラッシュ、これはサルダールがうまくディフェンスした後に反撃。シーソーゲームです。
栗原の的中率は悪く、足もフラフラながらも手数は多い。サルダールはほぼディフェンスの時間ながらも、そのディフェンスタイムが済んだ後に反撃、パンチをまとめられています。
7R、栗原はまたもプレス。サルダールの足はまだ動きます。サルダールは大きく動き、ジャブを使って休憩を試みています。
しかし前半、栗原の右がヒットしてサルダールの顎が跳ね上がります。
ここから栗原が距離を詰めてロープに詰め、ここで細かなパンチからのコンビネーション。これまで強振しかしなかった栗原、ここでようやく軽打を出し始めますし、これで良い。こうするとサルダールは避けづらくなります。
サルダールはかなり疲労感満載ですが、ホームということもあって非常に頑張ります。
後半、サルダールは右をヒットしたところでラウンドが終了。
8R、このラウンドももちろん栗原が詰めます。頭を押し付けてくるサルダール、そこに栗原はコツコツとアッパー。
1分が過ぎようとした頃、栗原は右ストレートをヒット!これでズルズルと後退したサルダール、コーナーへと追いかけ最後は左ボディでサルダールはダウン!!!
ここでサルダールは立てず、栗原慶太、8RKO勝利!!!
いやいやものすごいファイトでした。栗原慶太。
とにかく、大復活。
今後、魔境であるバンタムでどのような戦いを見せてくれるのでしょうか。
↓国内バンタムの勢力図
↓世界のバンタム級戦線
で、OPBFだけでなくてIBFの地域タイトルもかかっていたというこの試合、これでもしかするとIBFの下位ランクとかに入れてくれるかもしれません。あとはWBCのランキングは一桁台には戻りそうですね。
全てをかけて戦った、というのが本当に大袈裟ではなく、よくわかったファイト。
魂を燃やし、命を燃やしたファイトを見せてくれたこの試合は、非常に荒々しくありつつ、ボクシングの試合としては非常に稚拙であり、非常に原始的な殴り合いとしては最高のものでしたね。
ラバーマッチは。。。ちょっと止めておいてほしいですが。サルダールもやりたくはないような気もします。
あとメインイベントのクリスチャン・アラネタvsアービン・マグラモはアラネタの初回TKO勝利。アラネタがIBF世界ライトフライ級の指名挑戦権を獲得。
アラネタ非常に距離が長く、良いジャブを持っていますね。マグラモも上体の動き等は素晴らしいものがありましたが、結果的にはこの上体が動いたところにアッパー。ぐらりときたマグラモに対してアラネタはラッシュ、アッパーでダウンを奪います。
本来的にはここで勝負がついてもおかしくありませんでしたが、立ち上がったマグラモは特攻、ここで右フックカウンター、ダウンしたマグラモは立てず、試合終了。
とてつもないカウンター。。。
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