大晦日。今年も、年内最後の国内戦は井岡一翔が締めくくり。
アンダーカードにも興味深い戦いがピックアップされたLIFE TIME BOXINGでしたが、木村吉光vs坂晃典の試合は試合当日、木村が救急搬送により中止に。これは残念で、心配ですね。
ともあれ、2023年最後の興行は、どうか出場する全てのボクサーが無事にリングを降りられることを願い、今回のブログはLIFE TIME BOXINGの観戦記。
12/31(日)大田区総合体育館
堤駿斗(志成)3勝無敗
vs
ルイス・モンシオン・ベンチャーラ(ドミニカ共和国)11勝(9KO)無敗
いったいどれほどのボクサーなのかはわからない、ルイス・モンシオン・ベンチャーラ。
堤駿斗は大きな期待を受け止め、それを超えられるのか。注目のゴング。
初回、腕と足が非常に長いドミニカン、ベンチャーラ。しかも顔も小さく、非常にボクサーに向く体型。そのジャブは鋭く、ハンドスピードも速い。少し、フィジカル面には不安がありそうなイメージですが、やはりパンチのキレは素晴らしいですね。
初回からかなり近い距離でのボクシング、両者ともにアグレッシブであり、好試合になりそうな予感。ただラウンド後半になると堤が真ん中を撃ち抜くジャブ、このリードの差し合いは明らかに堤に軍配があがります。
2R、ベンチャーラはフック系のパンチ、特に右のオーバハンドが要注意。リング中央、揉み合いの展開から堤のボディ、アッパーが良い。
ベンチャーラの外側からのパンチに対して堤は内側からのパンチ、ベンチャーラは外側からのパンチを得意にしている分、結構真ん中が空いています。そこをすでにわかっている堤はやはり上手くパンチを当てていっていますね。
堤は後半に右アッパーをヒットしてベンチャーラの顔を跳ね上げると、そこから今度は外側からのクロスをヒット。うーん、これはすごい、堤。ここまでのプロ4戦の間で、最高のパフォーマンスを見せているのではないでしょうか。
3R、真ん中の空いているベンチャーラに対して見事な右アッパーをヒットし、その後右を外側からコンパクトに回してヒット。これは用意していたパンチなのか、とにかくこの右のダブルは素晴らしい。
上下への打ち分けも素晴らしい。
そして中盤、堤の左フックカウンターがヒット、ベンチャーラはダウン!!
これは見事なカウンター、そして鼻血で血だらけのベンチャーラは立ち上がるも、その後堤の強いラッシュ。ラッシュのほとんどのパンチをヒットしているその様は、かつて井岡一翔がアストン・パリクテに見せた際のラッシュにも被ります。
そしてフィニッシュは右のショートフック。この試合を通して幾度かヒットしているこのクロスで倒れたベンチャーラに対し、レフェリーは即刻ストップ!
堤駿斗、3RTKO勝利!!!
いやー見事見事、堤駿斗。さて、ここまでデビューから3戦連続判定勝利、もちろん全てが完勝にも関わらず、何かが足りなかった堤。ここでプロに馴染むとともに倒すコツを覚え、ここからぜひ大覚醒の時を待ちたい。
2024年は世界的強豪を相手に、世界にインパクトを与えて欲しいものです。
比嘉大吾(志成)20勝(18KO)2敗1分
vs
ナワポーン・カイカンハ(タイ)58勝(48KO)3敗1分
前戦で久々のKO勝利をした比嘉大吾、ここはある種の天王山。現世界王者のジェイソン・マロニーがKOできなかったナワポーンを倒すことができれば、大きなアピールになるはずです。
ということで比嘉大吾のスカ勝ちを期待してのゴング。
初回、まずサークリング、素早く動く比嘉大吾。ナワポーンはプレス、しかし比嘉の方が一段速く、比嘉はカイカンハが攻撃を発動する前に先手を取って、ナワポーンに攻撃のタイミングを与えません。
ラウンド中盤には得意のアッパー、そして手数の多いコンビネーションをヒット、ナワポーンは前に出てくるもののなかなか攻撃に繋げられていません。
2R、変わらずグイグイと出てくるナワポーン。比嘉は下がりつつも時折コンビネーションで対抗、非常にうまく足を使って戦っています。
ナワポーンは比嘉の足になかなかついていけないという状態ながらも、比嘉がロープ際に行くと旺盛な手数で攻め立てます。しかし比嘉はブロッキング、上体の動きが非常に良く、素晴らしいディフェンスを見せています。
3R、比嘉は様子見が終わった、とばかりにジャブをついて攻め立てます。ギアアップした比嘉大吾、かつてのように終わらない左右をどんどん出していきます。これこそが比嘉大吾が比嘉大吾たる所以であり、これはこういう練習をしていないと意外とできないことなのです。
ただ、ナワポーンも非常にタフであり、退きません。
近い距離での打ち合い、お互いのボクシングスタイルを考えると、ここが勝負どころです。
比嘉の手数で押されたナワポーンですが、パワーパンチで押し返し、中盤には比嘉の右に右を合わせるカウンターをヒット。これで効いてしまった比嘉はクリンチ、その後はブロッキングで回復に努めます。ここはこれまでピンチを乗り切ってきた比嘉のキャリアが奏功したような場面であり、比嘉はラウンド中に休むことの必要性、効かされた時に自分が何をするべきか、をよくわかっています。
この後も距離を潰すことでナワポーンの強打を無効化すると、終盤には距離を取ったところで右のオーバハンドをヒット。
4R、ここで比嘉がまたも出ます。前ラウンドの後半、効果的にヒットした右クロスをヒット、からの腕を折りたたんでの右アッパー。この逆パターンを堤駿斗も見せていましたが、このアングルを変えた利き手のダブル、志成ジムのスタンダードなのかもしれません。
このパンチでナワポーンは後退、そこにラッシュをかける比嘉。ナワポーンも打ち返し、我慢くらべの展開。
中盤に少し距離が空いたところから比嘉の右がヒット!ぐらりときたナワポーンでしたが、その後はしっかりと打ち返します!
この比嘉の歯を食いしばって打つ右は非常に好きです。後半にも比嘉はナワポーンをロープにつめてラッシュ!ここでダメージを被ったナワポーンはロープからエスケープするも、比嘉がこれまでヒットしているやや外側からまわす右をヒット、アングルを変えての右ショートストレート、からの左ボディ!!!!もんどりうってナワポーンは前のめりにダウン!!!
このナワポーンがダウンしているにも関わらず、の比嘉大吾の右のアッパー、ものすごいスイングの空振り!!!これはめちゃくちゃ格好いい。
このボディでナワポーンは立てず、比嘉大吾、4RTKO勝利!!!
なんだかようやく言える、「おかえり、比嘉大吾!!!!!」
ナワポーン・カイカンハという2度、挑戦者決定戦に出場したボクサーを、会心のKO勝利。
これは本当に、素晴らしい。
堤駿斗に続き、我々ファンの期待を上回るKO勝利をもぎ取ってくれた比嘉大吾。
私たちボクシングファンは、比嘉大吾というボクサーが味わった絶頂と絶望を同時に味わってきました。こんなにも、感情移入できるボクサーというのはなかなかいません。
ニッポンのバンタム級。
2024年、本当に熱く、熱くなりそうです。
WBA世界スーパーフライ級タイトルマッチ
井岡一翔(志成)30勝(15KO)2敗1分
vs
ホスベル・ペレス(ベネズエラ)20勝(18KO)3敗
そしてメインイベント、井岡一翔の相手はホスベル・ペレス。名のあるボクサーではないですが、井岡にとってはスタイル的にかなり危険な相手だと思います。
ただ、井岡はきっと乗り越えてくれるはず。
可能であれば、エストラーダ戦がピックアップされるほどの強さを見てもらいたい。
堤駿斗、比嘉大吾、ジムの後輩たちは素晴らしい戦いを見せ、ボクシングファンの期待にしっかりと応えてみせました。ではジム頭、井岡一翔はどうか。
初回、やわらかく上体を使いつつ、鋭いジャブを飛ばしてくるペレス。井岡の動きも非常にキレているように見えます。
ペレスもハンドスピードが速く回転力があり、やはりちょっと危険な雰囲気はありますね。
しかしペレスの速いジャブを貰わない井岡、ラウンド後半には井岡が右を幾度かヒット、やはり井岡の方が技術面において大きく上回るようなイメージ。
2R、ジャブの差し合い、おそらくペレスの方がリーチはあるのでしょうが、ポジショニングの妙で当たるのは井岡のジャブのみ。ペレスはギアを上げて攻め入りますが、井岡はほぼパンチをもらわない上、自らのパンチをしっかりとヒットしています。
ペレスの右オーバーは非常に危険で、これは避け方をミスれば後頭部にもらってしまいそうですね。
3R、しっかりと振り切るペレスの左右は、空振りでも非常に怖い。そこに井岡はコンパクトなパンチを合わせていきますが、比較的近い距離で戦う井岡、このペレスのようなボクシングはやはりあまり相性は良くないでしょう。
中盤、井岡のボディか、一瞬動きが止まったペレスですが、ここで前に出ることを選択。これは漢です。ここで下がれば井岡の思う壺。
ちょっとボディを嫌がっているペレスは、仕切り直しの後は距離をとって回復を図ります。
ここで井岡はプレスをかけてペレスを追いかけ、ペレスもしっかりと反撃。
4R、開始早々に井岡が右。ちょっと接近戦で分が悪いと感じたのか、それとも回復を図っているのか、ペレスは距離をとってサークリング。中間距離ではジャブの差し合いで井岡に叶わず、得意の接近戦でもパワーで押し切れないばかりか接近戦のテクニックは井岡の方が明らかに上。
後半に入ろうか、というところで井岡はペレスをコーナーに追い詰める場面を作ります。プレスをかける井岡、ちょっと追いかける最中にペレスのジャブをもらっているのが気になります。
5R、プレスをかける井岡、サークリングして中間距離で戦うペレス。驚くほど予想していた試合展開とは違う展開、というか真逆なのですが、ペレスはこの距離でも非常に多く手数を出せています。
後半、ペレスの入りぎわに井岡の右カウンター!!
ぐらりときたペレスに対して、井岡はラッシュ、ここでペレスはダウン!!
立ち上がったペレスに対して井岡は再度ラッシュを仕掛けると、右オーバーハンドで2度目のダウン!!立ち上がったところでゴング。
6R、井岡はジリジリとプレスをかけ、右クロスをヒット。その後も右をヒットしつつ、左ボディもねらい、プレス。そして1分が過ぎようかというところでラッシュを仕掛けると、ペレスも懸命に反撃、ダメージはありつつもまだパンチは活きています。
ラウンド後半にも井岡はコンビネーションをヒットするも、ペレスは何とか持ち堪えてラウンドが終了。
7R、井岡は完全に右をヒットするタイミングがわかっています。ペレスがジャブを放った打ち終わり、またペレスが攻め込んできた時。このアングルもまた素晴らしい。その上、ペレスの右に対して左ボディのカウンターも持っており、もうあとは倒すだけ、というかんじ。
後半、ロープに詰まったペレスに対し、井岡はジャブから右ボディストレート、を一度見せておいて、すぐさま今度は左フックから顔面へのクロス気味の右ストレート。
これがジャストミートすると、ペレスは膝を折るダウン!これは、体だけでなく、心をも折ったかもしれません。
カウントが10に達するまで、ホスベル・ペレスは膝をついたまま動かず。
井岡一翔、7RKO勝利!!!!
いやいやいやいや、これまた素晴らしい勝利であった井岡一翔。メインまでファンの期待に応える勝ち方をしてくれて、これはエストラーダも無視できないのではないでしょうか。
例えばこの試合が、アメリカでも放映されたり、アーカイブでも見れる環境が整っていさえすれば、それこそエストラーダvs井岡の待望論が生まれたのではないか、と思える素晴らしいノックアウト劇です。
ただし残念ながら、ABEMAは世界対応しておらず、この試合を見れた幸運なボクシングファンは日本のファンのみ。
果たして、ABEMAで戦っているボクサーたちは、世界へのアピールができるのでしょうか。この辺りを、是非ABEMAには考えてもらい、それこそ日本と繋がりのあるトップランクを通してのESPNでも良いから、アメリカでの放映というのを考えて欲しいものです。
ともあれ2023年のLIFE TIME BOXINGは、志成ジムのボクサーたちが期待通り、いや期待以上のパフォーマンスを発揮してくれたのは本当に素晴らしいことでした。2024年の井岡、比嘉、堤、大いに期待できそうです。
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