いよいよ2022年の大晦日。
井岡一翔と戦う、ジョシュア・フランコに帯同してジェシー・ロドリゲスも一緒に来日。ロドリゲスはまだ帝拳所属なのでしょうかね。帝拳ジムでトレーニングする姿がSNSに上がっていました。
「バム」ロドリゲスが一緒に来る事は(非常に仲の良い兄弟なので)当然なのですが、試合直前にはなんとWBC世界スーパーフライ級王者、ファン・フランシス・エストラーダ(メキシコ)も来日する、という情報が入りました。
「勝者と戦いたい」と語るエストラーダは、ガチのようです。
このスーパーフライ級も、4団体統一に向かっていくのでしょうか。
井岡、フランコの勝者には、WBO世界スーパーフライ級の指名挑戦者である中谷潤人(M.T)との一戦が義務付けられる予定でいます。
果たして勝者が次に戦うのは中谷なのか、それともエストラーダとの統一戦なのか。
その後も非常に興味深いものではありますが、まずはこの眼の前の大試合、日本ボクシング界が「王座統一戦」で盛り上がった2022年を締めくくるにふさわしい、井岡一翔待望の王座統一戦を見届けましょう。
ということで今回のブログは、毎年恒例、大晦日興行の観戦記。
12/31(土)東京・大田区総合体育館
放送前のアンダーカードでは、KO決着続出だったようです。どうせ映像が見れないので、ボクシングモバイルをチェック。驚きなのは、渡邊海(ライオンズ)があの中井龍(角海老宝石)に2RTKO勝利というニュース。
ボクモバには「渡邊が左フックを振り抜きダウンを演出。」とありますが、これはおそらくカウンターなのでしょう。センス、スピードのある渡邊、まさかあの中井を倒してしまうとは恐れ入ります。こうなると全日本新人王決定戦で引き分けた岩下千紘(駿河男児)の凄さも際立ちますね。岩下はまだ6回戦、相手探しに苦労しそうです。
これで渡邊は岩下戦での引き分け以降、3連続KO勝利。完全に倒すタイミングを掴んでしまったのか、非常に恐ろしいボクサーに成長していそうです。2023年、大注目のボクサー。
大湾硫斗(志成)9勝(6KO)1敗
vs
ロビン・ラングレス(フィリピン)11勝(4KO)4敗
初回、まずはリング中央、互いに距離を計りつつ、様子見。中盤、ワンツーで攻めた大湾はそれをミスするとすぐに左フックを返し、これはヒット。
その後、ジリジリとプレスをかけるのは大湾、ラングレスは逆ワンツーで鋭く攻め込んできますが、後半にはこの逆ワンツーに左フックを合わせた大湾。抜群のタイミングでぐらつかせますが、ラングレスは踏ん張ります。
2R、前半にラングレスが鋭い踏み込みから右オーバーハンド!大湾は相手の攻めに対して左を下げてしまい、このパンチをもらってしまいます。ぐらついた大湾、更にこのパンチをもらってダウン、したように見えましたがこれはスリップ裁定。映像では当たっているように見えました。
残りは2分、ブンブン振り回してくるラングレス!ピンチの大湾ですが、その後はファイティングポーズが乱れる事はなく、リターン、カウンターをチラつかせる事でラングレスの攻撃意欲を削ぎ、終盤にはラングレスの入り際に右カウンター!ダウンを奪取!!!
立ち上がったところでゴング!大湾、ナイスリカバリー!ですが、ちょっとあのスリップ裁定はいただけません。
3R、ここまでの流れを見ると、大湾は少し待ちのボクシングをしたほうが良いかもしれません。ラングレスの踏み込みは鋭く、右オーバーハンドは非常に気をつけるパンチですが、先に打たせてリターンを狙った方が良さそうです。
ラウンド後半、大湾はラングレスの右の打ち終わりに右をヒット。
4R、互いにリターンを狙っていることもあってか、不用意には踏み込んではいけません。入るタイミングを探す両者、先に動くのはラングレス。
ラングレスの攻めに対して、大湾は下がらずにカウンターを放ち、その後接近戦を挑みます。
接近戦では大湾の回転力が大きく上回り、ラングレスはやはり助走をつけたような右オーバーハンドが最大の武器であり、近い距離ではあまり武器がなさそう。
大湾はこのラウンド後半、接近戦で左ボディからショートの右でダウンを追加。
5R、序盤にラングレスの入り際に右カウンターから左フック。自分から攻め込んでも上下への打ち分けのコンビネーション、よく伸びるジャブも相まってもう安心して見ていられます。
後半、もみ合いのところからラングレスが膝をつき、これがダウン判定。その前に左ボディが当たっていた、というのもありますが、これでダウン判定はラングレス、可哀想です。
6R、中盤にラングレスの入り際にワンツーフックのコンビネーション・カウンター。その後も左フックをヒット、ラングレスはいくつも良いタイミングでもらっていますが、なかなかにタフ。
しかし後半に入ると大湾のコンビネーションの度に大きく後退するラングレス、そろそろ限界が近そうな感じです。
7R、前半から振るってくるラングレス。これに大湾も対応、鋭い左フックを幾度もヒット。ラングレスはとにかく右オーバーハンドに望みを繋いでいるようなイメージ。終盤は大湾が攻め立て、ラングレスの顎を跳ね上げて攻勢。
ラストラウンド、大湾は鋭いジャブからコンビネーション。ラングレスは大湾のパンチを受けつつも諦めず、とにかく体ごと踏み込んできます。
上下の打ち分けも見事な大湾ですが、粘るラングレスを倒し切る事はできず。
判定は、3者ともに80-69、フルマークで大湾硫斗。
非常にタフなボクサーでした、ラングレス。これまで唯一のストップ負けは、定常育郎(T&T)相手に途中で試合を投げてしまったもの、のようです。
それでも、大湾にはここを倒して勝ち上がってほしかったですね。
堤駿斗(志成)1勝無敗
vs
ペテ・アポリナル(フィリピン)16勝(10KO)3敗
初回、ともにリズムをとりながらフェイントのかけあい。1分が経とうとしたころ、アポリナルの鋭い右オーバーハンド、これを鼻先でかわす堤。
その後もアポリナルの攻撃はステップ、ブロッキングで無効化する堤、打っては上へ下へと散らします。
2R、プレスをかけて距離を詰めてきたアポリナル。これを真っ向から受け取めた堤、接近戦でもパンチのアングルが素晴らしい。距離が空けばしっかりとワンツーで攻め込む堤は接近戦を辞さず逆にプレスをかけていきます。
3R、前半、接近戦でアポリナルの右フックがヒット。バランスを崩した堤でしたが、ダメージはなさそうです。ちょっとヒヤリとしました。
しかしその後はアポリナルの入り際に右カウンター、接近戦でもガードの隙間を狙ってフック、アッパー、ショートの右。
4R、前半、アポリナルがジャブで攻め込んだところに堤の右アッパーカウンター!!!これでぐらりときたアポリナルにガンガン攻め込む堤、アポリナルもここは何とか耐え、中盤にはこちらも左アッパーをお返し!これは危険なタイミング。その後、堤のローブロー?をアピールして休憩をゲットしたアポリナル。
再開後、ダメージから回復したように見えるアポリナルに、堤はプレスをかけてラウンドが終了。
5R、堤は強いプレスからスタート。アポリナルはスイッチも交えて対抗しますが、堤は手数、ヒット数ともに上回ります。ただ、このラウンドアポリナルのパンチにより堤は鼻から出血。
6R、中盤にコンビネーションの中でアポリナルの左フックにあわせた堤の左フックがヒット!明らかにぐらついたアポリナルに、堤はラッシュ!非常にワイルドなパンチをヒット、逃げるアポリナルを追いかけて右をヒットしたところでアポリナルは膝を着いてダウン!
立ち上がったアポリナルを仕留めようと、堤は引き続きラッシュ、アポリナルはクリンチ、上体の動きでサバイブを試みますが、防戦一方。武居戦ではこの状態で止められましたが、今回はこの状態でもレフェリーは止めず、ラウンドが終了。
やっぱりアポリナルはディフェンスに徹すれば巧いですね。
7R、堤は試合を決めようとプレス。タフなアポリナルを仕留めるには、カウンターが必要ですが、アポリナルは比較的ディフェンシブな戦い。手は出しますが、堤を倒そうと手を出しているようには見えません。
ラストラウンド、接近戦での戦い。アポリナルは非常に回復力もありますね、しっかりと接近戦を受けてたちます。左右のフック、アッパーを振るう堤、アポリナルも接近戦でのパンチはアングルが豊かで多彩、いくつかのアッパーは堤の顔面を捉えています。
このままKOならず、規定の8ラウンズを終了した堤駿斗。
判定は、79-72、80-71×2、勝者は堤。
堤駿斗の花が大きく開くのは、今年ではありませんでした。ポイント的には圧勝ではあったものの、途中、危険なタイミングでの被弾もあり、ヒヤリとさせられました。
本当にやや不安に思ったのはそれだけなんですが、やはり、堤駿斗というボクサーについて、我々(わたしだけ?)は神格化してしまっており、ちょっと期待を大きく持ちすぎているのかもしれません。
普通に考えれば、プロデビュー2戦目でペテ・アポリナルに完勝というのはやっぱり怪物の類。
それでも、やっぱり期待してしまいますね。
2023年もこれぞ堤駿斗というボクシングを是非見せてもらいたいものです。来年の楽しみがまたひとつ、増えたように思います。
WBA・WBO世界スーパーフライ級王座統一戦
井岡一翔(志成)29勝(15KO)2敗
vs
ジョシュア・フランコ(アメリカ)18勝(8KO)1敗2分
そしていよいよ、井岡一翔が登場です。
良くも悪くもいつもどおりの「地上波のボクシング」演出。17:00という時間も含めて、果たして今回の視聴率というのはどれくらいいくのでしょうか。いつもは10%前後くらいだと思いますが。
初回、様子見もそこそこに、お互いにアクションを起こします。フランコがアグレッシブに出てくるのは当然ですが、井岡も序盤からコンビネーションを放っていきます。
プレスをかけるのはフランコ、井岡はサークリングをしつつ、フランコのパンチをしっかりと外します。
フランコの旺盛な手数をステップとブロッキング、上体の動きで外すと、コンビネーション。これもフランコのハイガードの上。
2R、フランコがジャブで攻め込みます。井岡はそのジャブの打ち終わりに右クロスからリターン。素晴らしいテンポの試合。
フランコの攻めは左ジャブから、左フックから、右ストレートからと多彩ですが、近い距離では井岡がしっかりとアングルを固めたパンチで反撃。
フランコも本当にスムーズなコンビネーション。こう見ると、流れるようなコンビネーションという点で両者は少し似ているところもありますね。終盤、フランコの猛攻も、井岡の素晴らしいディフェンスでノーダメージ。
3R、更に攻勢を強めるフランコ、よりパワフルに。近い距離での回転力は素晴らしいですね。ただ、井岡のコンパクトなパンチの方がフランコを捉える場面が多い。
ともにハイガード、ディフェンスの最終防衛ラインともいえるブロッキングが素晴らしいだけに、パンチを当てる技術が試されます。
4R、前進し続けるのはフランコ!しかし、井岡は下がりながらもアングルをつけた右、左ボディをヒット。この右のアングルは最高ですね、フランコのやや下がる左ガードの上からテンプルを叩きます。
この近い距離で、手数の多い相手に対しての安定感というのは群を抜いています。
5R、攻勢、手数はフランコも、井岡はラウンド早々にフランコの右にあわせた右カウンター。
印象的なパンチを放つも、このラウンドはちょっと前半フランコの手数に対して反撃が少ない。中盤以降は井岡もコンビネーションで反撃。
6R、やっぱりフランコの手数は素晴らしいものがあります。井岡は前半、手数が少ないですが中盤からはコンビネーションで反撃、フランコも下がらず近接戦闘。
頭をつけた距離で左ボディ、からのストレートコンビネーションをヒットした井岡、フランコのフックの連打に対してはコツンとアッパー。ロープを背負っても時折カウンターで反撃、クリーンヒットは井岡ですが、フランコには迫力があり、ジャッジによっては攻勢点を与えられそうです。
7R、フランコの手数は止まりません。このラウンドは中盤に右をヒットしたフランコ、井岡はちょっとこの伸びてくるストレートを距離でかわそうとして見誤っている場面があります。
井岡は下がりますが、詰められそうなところではしっかりと前に出て押し返す辺りはさすがのリングIQ。終盤は互いに相打ちのタイミングでパンチを出し合う、スリリングな展開。
8R、前半はフランコの攻勢、井岡はちょっと手数が足りないか。それでも中盤以降はやはり井岡のカウンターが冴え、コンビネーション、特にガードの高いフランコに対してのアッパーは非常に有効。これはもうポイントはわかりません。
インターバル中、珍しく井岡に表情が見えます。やはりフランコのプレスは相当キツイのかもしれません。
9R、まだまだ衰えないフランコのパワーと手数。井岡は丁寧なディフェンスから反撃、フランコがジャブで踏み込んでくれば、ややタイミングをずらした右クロスからの左フックは良く当たります。
ただ、プレスをかけられ続けている分、削られている可能性もありますね。
10R、ちょっと雑になってきたように見えるフランコ。特にジャブでの入り際。
接近戦での手数は相変わらず非常に厄介ではありますが、井岡はしっかりとブロッキング。ただ、このラウンドはフランコの打ち終わりにコンビネーションを返し、これはヒットが多い気もします。
11R、とうとうチャンピオンシップラウンド。ここまで、フランコの獲ったラウンドもいくつかはあったと思いますが、井岡優位に思いますが、果たしてどうか。
フランコ、後半に入ると少しは落ちると思いましたが、とにかく素晴らしい手数。そこに井岡は狙いすました左フックカウンターを放ったり、右から攻め込んでヒットを奪ったりといくつものクリーンヒットを奪いますが、フランコの手数は未だ驚異。
終わった、と思ったところからもまだまだ出てくるフランコのパンチ、これは嫌なボクサーですね。終盤、フランコの手数に合わせた井岡でしたが、ここはフランコのヒットが多い印象。
ラストラウンド、気合いを入れてコーナーを出た井岡。
やっぱり先に手を出してくるのはフランコですが、それを完璧なブロッキングでいなす井岡、その間隙に左ボディ。やっぱり無理には打ち合わず、ディフェンスから組み立てる方外丘にとって正解です。
フランコのジャブに右カウンター、それでも止まらないフランコ。
後半にはロープ際でのディフェンスから印象的なヒットを奪った井岡。
両者ともに持ち味を出し合った12ラウンズが終了、終了ゴングとともに両者は勝利をアピール!
判定は、115-113でフランコ。114-114×2でドロー。
なんと1-0のドローで王座統一ならず。
おおお。。。
競った試合だという認識こそありましたが、「ドロー」という結果を想像していませんでした。
王座統一戦でドロー、両者に土がつかなかったと考えると良かったのかもしれません。いや、良くはないか。
井岡本人も言うように、大切なことは次につながったこと、なのかもしれません。
さて、ということは、次は中谷潤人かエストラーダか。
井岡一翔の旅はまだ、続きます。
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