フェザー級がやばい。
先日のWBOアジアパシフィック王座決定戦で、藤田健児(帝拳)がタイトル奪取、格闘技一家である藤田家に初めての「正規」チャンピオンベルトをもたらしました。
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2023年5月にはアマ時代のライバル、堤駿斗(志成)がOPBF東洋太平洋フェザー級王座決定戦でタイトルを獲得、それに続く形での日本人によるアジア王座の獲得。
堤は2023年末に初防衛戦を済ませるとともに、覚醒したとも言えるパフォーマンスを披露しています。
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その堤のライバルだった松本圭祐(大橋)は堤戴冠の1ヶ月前、佐川遼(三迫)との王座決定戦を経て日本タイトルを戴冠。
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各々が素晴らしいパフォーマンスを見せてプロボクシングへの適応を見せた上での戴冠撃は、3すくみとも言える状態になりつつ、いやがうえにも激突の期待は高まっていくのです。
ということで今回は、国内で三国志状態となったフェザー級戦線について。
3人のプロキャリア
アマチュアボクシング、という観点で切り取ると、序列的には「堤駿斗>藤田健児>松本圭佑」となりそうな気がします。
アマ13冠の堤、アマ10冠の藤田、そして松本は大学を中退してのプロ入りであり、2冠。子供の頃から注目はされているもののアマ実績において二人には劣ります。
プロ入り後の過程を見てみると、まず最初にプロ入りを発表したのは松本圭佑。
2020年8月にデビュー戦を戦った松本は、初戦、2戦目とやや危うさを見せながらもしっかりと倒して勝利し、その後は抜群に安定したパフォーマンスを見せて勝ち上がっています。
見るからに強靭なフィジカルから繰り出されるパワーパンチで、現在の戦績は9勝(7KO)無敗。昨年には日本タイトル、WBOアジアパシフィックタイトルを獲得しており、プロでの実績はライバル二人を上回っています。(WBOアジアパシフィックタイトルは獲得後、間も無く返上。)
そして続いてプロデビューを飾ったのが藤田健児。
木村元祐(JM加古川)を6RTKOで降してプロデビューしています。このデビュー戦でよく日本人選手が見つかったものだと感心しますが、この「アマエリートのデビュー戦の相手」というのはチャンスと捉えられます。
ただ、藤田の場合は全く危なげのないパフォーマンスであり、このデビュー時から期待通りの強さを見せていた、と感じます。
その後は日本人の対戦者が現れるはずもなく、フィリピン人を相手にキャリアを積み重ねていきます。前々戦でジョー・サンティシマ(フィリピン)を破り、この度王座決定戦に勝利してWBOアジアパシフィックタイトルを獲得しています。
3人のうち、プロデビューが一番遅かったのが堤駿斗で、2022年7月13日。
特例でのA級デビューとなった堤は、ハナから強敵との試合であり、そうであったにも関わらず圧倒的な勝利を期待される状況。2022年に2戦2勝、そして2023年5月にジョー・サンティシマを破ってOPBF東洋太平洋王座を獲得、同年末に初防衛戦で待望のKO勝利を飾っています。
いよいよ覚醒か、というタイミングで、今後ますますの活躍が期待されています。
3国時代に突入、激突はあるか
この3人の王者たちは、今年、どのように勝利し、また苦戦し、はたまた敗北を喫するのか。
まずもって非常にわかりやすい難敵を迎えるのは松本圭佑であり、3人の中で最も修羅の道を選んだと言っても過言ではありません。
近年において、アジア王座の防衛戦よりも日本王座の防衛戦の方が非常に難しく感じるし、盛り上がるようにも見えます。来月22日、強敵前田稔輝(グリーンツダ)を迎えて防衛戦を予定しています。
この指名挑戦者を退けた後にも木村蓮太朗(駿河男児)、そして95年世代最強とも謳われる中野幹士(帝拳)もランクインしており、このランキングの中だけでも国内最強を手にするのは骨が折れそうです。
対してOPBFランキングを見てみると、1位に世界挑戦を控える阿部麗也(KG大和)、2位に日本王者、松本圭佑。3位にマイケル・ダスマリナス(フィリピン)と我々がよく知るボクサーたちが並ぶこの階級でも、中野幹士や前田稔輝の名前があります。
2024年、おそらく何かしらのタイトル挑戦を目指したい中野からすると、松本か堤のタイトルに挑戦するという選択肢しかありません。いずれにしても挑戦者中野からすると難しい相手ではあるものの、迎える王者側としても相当なリスクを背負わねばならず、この戦いが決まるのは難しいかもしれません。
WBOアジアパシフィックのランキングにおいてはそのほとんどが日本人ボクサーであり、この階級には帝拳ジムのボクサーも多いので、なかなか防衛戦の相手には苦労しそうです。
果たして堤、藤田はタイトル防衛をして世界ランキングをあげよう、という思いはあるのか。
このまま3者がタイトルを防衛していくと、必然的にぶつかる流れにはなりそうではありますが、はっきり言ってアジアレベルでぶつかるよりももっと大きな舞台で出会ってほしいというのがファンの本音なのだと思います。
それには、当然世界の舞台に3者が並び立たなければいけないわけですが。
現在世界フェザー級戦線
現在、世界フェザー級のタイトルホルダーは4人。
WBAはリー・ウッド(イギリス)の返上により現在空位で、3月にオタベック・ホルマトフ(ウズベキスタン)とレイモンド・フォード(アメリカ)の間で王座決定戦の予定となっています。
WBCは正規王者にレイ・バルガス(メキシコ)、暫定王者にブランドン・フィゲロア(アメリカ)。バルガスはスーパーフェザーにちょっかいを出して失敗、このフェザー級タイトルを獲得してから1年半の間、防衛戦は行なっていません。WBCはバルガスvsフィゲロアにオーダーを出していますが、なんだかんだ決まらない状況が続いています。
もうバルガスの王座は剥奪で良いと思うのですが、メキシコ人に甘いWBCにそんな裁定はできないでしょう。
IBFのルイス・アルベルト・ロペス(メキシコ)はバルガスと違ってよくリングに登場しているボクサーであり、次戦は3月に指名挑戦者である阿部を迎えての防衛戦の予定。
阿部にとって苦手なタイプではないとは思いますが、何せこのロペスのパワーと勢いは恐ろしいものであり、場所もニューヨークということで阿部の不利予想が予測されるところ。全米の度肝を抜いて帰ってきてほしい。
WBO王者のラファエル・エスピノサ(メキシコ)は前戦でロベイシー・ラミレス(キューバ)をアップセットで破って世界初戴冠。元々ランキングにも入っていなかった無名のボクサーのアップセットは、映画ロッキーをより現実離れさせたような展開です。
ラミレスとしてはエスピノサとのリマッチを希望しています。そして、そのエスピノサに勝利した後、そのほかのメキシカン(バルガスやロペス)と戦いたい、とのこと。
順当にいけば、WBAは王者の決定とその初防衛戦、WBCは団体内王座統一戦が席の山かもしれませんし、一つくらい防衛戦ができるかもしれません。WBO、IBFにおいては今年2戦くらいの防衛戦があっておかしくはない状況。
そして迎える2025年、初頭に王座を持っているボクサーに、松本圭佑、堤駿斗、藤田健児のいずれかが挑戦する、という流れは、決しておかしなものではないかもしれません。
フェザー級を困難にするもの
さて、フェザー級のこの流れを困難にする、一気に流れを持っていく要素、というものが、まだ存在することを忘れてはいけません。
それはPFP、井上尚弥の存在です。
2023年に2階級目の王座統一を果たし、BWAA、リング、ボクシングシーンといった主要メディアのFOTY(ファイター・オブ・ザ・イヤー)を独占した我らが日本のモンスターは、早ければ2025年にはこの階級に進出してくるのではないか、というのが見立てです。
本人は2023年当時、「来年、再来年はこの階級で防衛」と語っているので、2024年、2025年はスーパーバンタムに留まるとしていますが、年3回戦うという希望を叶えた上で、そこまで対戦相手がいるかどうかというと非常に微妙なところです。
もしこれ(井上尚弥のフェザー級進出)が2025年になろうものなら、三国志たちのプランは練り直さなければいけない可能性が出てきます。
その影響を顕著に受けるのは松本圭佑であり、これは階級を変えるか先に譲るかのどちらか。
同じジムの二人は、あい見えることがありません。
そして堤、藤田の両者(もちろん阿部も含めてのことですが)としては、できればタイトルを持って井上を迎え入れたいところでしょう。
ロベイシー・ラミレスがコケてしまった今、大きくワクワクドキドキを持って井上を迎え入れられるボクサーは少ない。
すでに実力の知れているレイ・バルガスは話にならず、フィゲロアは僅差とはいえフルトンに負けています。
エスピノサは特異点を持っているボクサーのためほんの少しの期待はできそうなものですし、ロペスも同じく基本にしっかりとしたタイプのボクサーではないため、何かが起きる可能性を感じられるボクサーでもあります。このロペスに勝つ可能性がありながらも、阿部vs井上となった場合、阿部が井上を降す姿はまったく持って想像はできません。
ではここに、堤、藤田が入って来ればどうか。
この二人がフェザー級という利点を活かし、元々はライトフライ上がりという井上を迎えうったならば?
それまでに二人がしっかりとレガシーを築いている、という前提の話であれば、この日本人対決は非常に盛り上がるのではないでしょうか。
その場合、いやその場合でなくとも、松本は階級を上げても良いかも知れません。何せ松本はこの階級で非常に大きく見えますから、減量はかなりキツいはずです。
ということで、今後様々な状況が絡み合っていくフェザー級戦線。今後数年は、全く目が離せませんね。
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