8/11(祝)の3150FIGHTは技術戦を楽しめた、と思っています。
特に西田凌佑のボクシングは非常に完成度が高く、かなり崩しにくいボクシング。対戦相手も好ボクサーで、本当に素晴らしい戦いを見せてくれました。
さて、世界に目を向けるとその西田が挑むIBF世界バンタム級王座決定戦が日本時間8/13(日)に行われるわけですが、世界の注目はその興行ではなく、やっぱりナバレッテvsバルデスのスーパーメキシカンファイト。
バルデスについてはハーブティ事件やら疑惑の判定やらで日本での株は急降下しているものの、個人的にはやはりあのベルチェルトを切って落とした左カウンターは忘れられないハイライトです。
ということで今回のブログは、8/12(日本時間8/13)に行われる、エマニュエル・ナバレッテvsオスカル・バルデスのWBO世界スーパーフェザー級タイトルマッチについて。
8/12(日本時間8/13)アメリカ・アリゾナ州
WBO世界スーパーフェザー級タイトルマッチ
エマニュエル・ナバレッテ(メキシコ)37勝(31KO)1敗
vs
オスカル・バルデス(メキシコ)31勝(21KO)1敗
「観客を呼ぶならメキシカン」だそうです。
メキシコ人のボクシングファンは非常に熱狂的で、個々のボクサーのファンが多い上、その試合の勝者に称賛を惜しまない、とも聞いています。
日本だと日本人ボクサーが負けると意気消沈してしまう傾向にありますが、どちらかというとそうではない、というイメージ。
とにかくボクシングという競技が大好きなこの国は、昔から軽量級から中量級にかけて名ボクサーを多数排出しているお国柄で、ボクシングで成り上がるという土壌がしっかりと出来上がっている国です。
その中での人気ボクサー同士の激突は、メキシコ人ボクシングファンだけでなく、週末、ボクシングファンにとっては世界最大の関心事でしょう。
王者、エマニュエル「バケロ」ナバレッテ
未だ微妙に得体のしれない王者と思ってしまうエマニュエル・ナバレッテ。2012年にプロデビュー、デビューから5連続初回KO勝利を打ち立てるも、6戦目で初黒星を喫しています。
キャリア初期にはままあることで、その後再起するとハイペースで試合を重ね、2018年12月、下馬評をひっくり返してアイザック・ドグボエ(現イギリス)を破り、WBO世界スーパーバンタム級王座を獲得しています。
再戦では完膚なきまでに叩きのめし、12RTKO勝利。ここで、このナバレッテの評価は固まったと言って良いでしょう。
当時「アズマー・ネルソンの再来」と謳われたドグボエは連勝記録をストップ、その評価をそっくりナバレッテに奪われてしまった感じです。
パンチがあり、独特のタイミングを持ち、鬼のリーチを持っている。
まるで手打ちのように見えるそのパンチは、次々と挑戦者たちをなぎ倒し、決して速いとはいえないハンドスピードは、そのリーチを伴って非常によく当たる。しかも謎のタイミングで。
多分、シャドーとかでは強く見えないタイプのボクサーではないでしょうか。
ナバレッテはこのスーパーバンタム級タイトルを、5連続KO防衛したあとに王座返上、主戦場をフェザー級に移します。
ウリエル・ロペス(メキシコ)との調整試合を経て、WBO世界フェザー級王座決定戦に出場してこれを獲得、防衛戦ではクリストファー・ディアス(プエルトリコ)、ジョエト・ゴンサレス(アメリカ)、エドゥアルド・バエス(メキシコ)といった名のあるボクサーたちを撃退、階級をあげた弊害としてパワーはやはり目減りしている感がありますが、やはりそのタイミングは独特です。
そして前戦でリアム・ウィルソン(イギリス)とのWBO世界スーパーフェザー級王座決定戦を制して3階級制覇を成し遂げています。
ただ、この試合はダウンを奪われる大苦戦、あわやストップ負けというところまでの大ピンチを経験しました。やはり階級への対応というのは全くもって楽ではなく、どんどんナバレッテのパワーは目減りしています。更にこの試合はウィルソンの方がフィジカル面で優れているとも感じました。
大きな武器を感じないウィルソンの大苦戦、これはスーパーフェザー級という階級において、ナバレッテがこれまで通りの強さを発揮できないことを明確にした試合でもありました。
挑戦者、オスカル・バルデス
さて、オスカル・バルデス。身長170cm、リーチ183cmという体格を誇るナバレッテに対し、こちらは身長166cm、リーチ168cm(いずれもBoxRecより)とスーパーフェザー級ではかなり小柄。
ナバレッテと同じく2012年にプロデビュー、その後連戦連勝で2016年にWBO世界フェザー級王座を獲得しています。
この王座獲得前のバルデスは、KO率も非常に高く、そのセンスあふれるボクシングとアグレッシブネスにより非常に評価の高いボクサーでした。
初防衛戦は日本の大澤宏晋を7RTKO、その後も6度の防衛を記録しています。
ただ、このタイトルショットについては判定決着も多く、世界王座獲得前よりもバルデスへの期待は薄くなっていったようなイメージです。
その後スーパーフェザー級に転級、初戦では当時無名のアダム・ロペス(アメリカ)にダウンを奪われる苦戦。結果的に7RTKOで勝負を決めてしまったものの、前途の多難さを感じるようなリスタートでした。
しかし2021年2月のミゲル・ベルチェルト(メキシコ)へのWBC世界スーパーフェザー級タイトル挑戦では、決して調子が良くなかったとはいえベルチェルトを結果的なワンパンチKO、KOオブ・ザ・イヤーほどの素晴らしいノックアウトを見せています。
この試合により、スーパーフェザー級への適合と、ともすれば階級最強とも思ったバルデスでしたが、初防衛戦で発覚したのがいわゆる「ハーブティー事件」。バルデスは初防衛戦となるロブソン・コンセイサン(ブラジル)戦前のVADAテストで陽性、この原因をハーブティーだとしてエクスキューズ。このことがまかり通り、メキシカン優遇気質のあるWBCはタイトルマッチを容認した、という事件です。
たとえパフォーマンスに影響のない範囲だったとしても、どうしてもメキシカンと癒着関係にある(しらんけど)WBCの採択だからこそ、怪しいと勘ぐってしまうところはありますね。
このニュースにより心身を乱されたか、バルデスのこの試合のパフォーマンスは落ち込み、傍目に見てコンセイサン勝利を推す声の多い中での判定決着。これがバルデス勝利と出てしまったから、これまた 後味が悪い。
結局公式ではバルデス勝利なので、致し方のないことですが、バルデスはWBC王座を保持したまま当時のWBO王者、シャクール・スティーブンソンとの戦いに挑みます。これは後にシャクールが語ったことですが、バルデスのボディショットでシャクールが効かされた場面もあったそうです。たぶん、打った本人も気づいていないでしょう。
シャクール戦で初黒星を喫したバルデスは、アダム・ロペスとの再起戦をクリア、第一戦でTKO勝利をあげているボクサーを相手にリマッチというのはいただけませんが、これを判定勝利でクリア、今回の一戦につなげています。
オッズはバルデス優位
このメキシカン・スーパーファイトは、予想がなかなかに難しい一戦であると言えます。個人的にはナバレッテかなーとか思いつつ、オッズチェッカーをチェック。
私の予想に反して、大方のオッズメーカーではバルデスが優位となっています。
ただ、その差はバルデスが-150くらい、ナバレッテが+140くらいと差はほとんどありません。(バルデスに賭けて100ドル儲けるために150ドルが必要、ナバレッテに100ドルかければ140ドル儲かる)
ドローも+1500となっており、その可能性もある方だといえますね。
確かにバルデスの方がセンスの面で上回りますが、前戦のナバレッテのパフォーマンスはイマイチ、バルデスがまあまあだったと考えるとこのオッズは妥当かも知れません。
それでも、ナバレッテは前回よりもスーパーフェザー級に順応しているでしょうし、リアム・ウィルソンは想像以上に大きかった。小柄なバルデス相手であれば、ナバレッテがこれまでの力を発揮できる可能性は十分にあると思われます。
アンダーカード、配信
ナバレッテvsバルデスは、トップランクのカードらしく、そのアンダーカードにはプロスペクトたちが次々と登場。
この多くのファンが目にするであろう注目ファイトのアンダーカードは、非常に露出量が多くなるはずで、必然的にトップランクの期待するプロスペクトたちが抜擢されていると思われます。
セミファイナルには東京五輪銀メダリスト、リチャード・トーレスJr(アメリカ)。5勝全KO無敗のトーレスJrはまだまだキャリアを積む段階ではあるものの、祖父はゴールデングローブ王者、父も1984年のオリンピック代表候補というサラブレッド。ここはトップランクとしては大事に育てていき、アメリカン・ヘビー級復権のアイコンとしたいところでしょう。
ほかにもリンドルフォ・デルガド(メキシコ)、フェルナンド・バルガスの息子であるエミリアーノ・バルガス(アメリカ)といった無敗のボクサーたちがこのアンダーカードに名を連ね、比較的早く興行が進んでいきそうな雰囲気です。
放送はアメリカではESPN、イギリスではスカイスポーツだそうで、日本での放送は残念ながら現在のところありません。
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