2月13日、後楽園ホールにて
いよいよこの日がやってきました。
チケットは前売り、当日券ともに完売。
超満員の後楽園ホールには、比嘉大吾目当てのお客さんも多かったでしょう。
比嘉大吾(白井・具志堅)vsジェイソン・ブエナオブラ(フィリピン)
2018年4月15日、WBC世界フライ級王者として3度目の防衛戦を迎える予定だった比嘉大吾。しかし、既にその日、比嘉は王者ではなくなっていました。
前日の計量で体重超過、タイトルを剥奪された「前王者」として踏んだリング。減量苦からの体調不良で、またメンタルも芳しくなく、精彩を欠いた末に9RTKO敗け。
それから1年10ヶ月、比嘉大吾がリングに帰ってきました!!
調子はどうなのか??かつての動きを取り戻しているのか!?要注目です!!
1R
比嘉の動きはキレています。が、少しミスブローが目立つ。ブエナオブラはサウスポーです。比嘉、ちょっとやりづらそうですが、ちゃんとパンチには反応しているし、素早く頭の位置を変える、いつものリズムのとり方。早くもブエナオブラは左目上をカット。
2R
ブエナオブラはあまり怖さはありません。14戦7勝(3KO)4敗3分の戦績が示すとおりのボクサー、という感じです。比嘉はまれに被弾もありますが、プレッシャーは相変わらず強い。
3R
前ラウンド同様、比嘉が頭を振りながら追い、ブエナオブラはプレッシャーにおされ下がる展開。比嘉は得意の左フックが空転する場面が相変わらず目立つ。サウスポーだから距離がちょっと違うのか??そろそろ決めて、比嘉ゴン健在をアピールしてくれ、と思う。
4R
ブエナオブラは上体が柔らかく、顔面に当てるのは難しそう。ボディーから、という指示がセコンドから飛んでいます。比嘉は以前のようにストレート打ちながら入るのが少ない気がします。アッパーも精度があまり良くない感じ。
この回はバッティングでブエナオブラが今度は右目上をカット。
5R
試合を決めようとしているのか、比嘉はガンガン攻める。この回はバッティングのカットの出血がすごい。よもや負傷判定なんてないでしょうね。。。と不安に。
6R
引き続き比嘉が攻め続ける。そして右ボディーでダウンを奪う!立ち上がったブエナオブラでしたが、最後は左ボディーでダウンを奪うと、レフェリーがストップ!!
フライ級時代、体のキレと破格のパンチ力で頂点まで上り詰めた比嘉大吾。今回は階級でいうとスーパーバンタム級だったので、この階級ではパワーは埋もれてしまうのかもしれません。ただ、ダウン経験のないブエナオブラを立派にしとめたことは未来へつながる事でしょう。
しかし、勝利者インタビューでは、歯切れの悪い受け答え。この試合は、彼を応援してくれた人たちのための試合。今回の試合が決まってもモチベーションがあがらなかったようです。
ブランクの影響は、体の使い方以上に、きっとメンタルの部分がしっかりとカムバックしていなかったのでしょう。周りがどう言おうが、闘うのは本人です。我々ファンは、待つ事しかできない。
「ニート最高」と叫んだ、リングに立ちながらも「闘争心がない」状態の元世界チャンピオンは、果たして闘う理由をまた、見つけられるのでしょうか。
世界戦における体重超過という、日本人ボクサー初めての失態を犯した比嘉大吾を、それでも応援しようという人が沢山います。その想いを受けて、立って闘え、とは言えません。しかし、ファンがどれだけ比嘉の復活を求めているか、というのは、今日のこの盛況ぶりを見れば明らかです。
モチベーションを見つけ、完全復帰し、「もう一度世界チャンピオンを目指す」という比嘉大吾をもう一度見たい、と思いますが、もしかしたら叶わないかもしれません。
波乱のメインイベント。日本ライト級タイトルマッチ!
勝手に過大な期待をして、待ちに待った比嘉大吾の復帰戦は、個人的には、試合内容は及第点(KOで戻ってきたことが)でしたが、今後については少し不安を残すものでした。
そして、メインイベント、吉野修一郎と富岡樹のチャンピオン・カーニバル、日本ライト級タイトルマッチを迎えます。
吉野修一郎は日本のライト級、いやアジア全体を見渡しても(ホルヘ・リナレスを除いては)敵なしのライト級。デビュー以来、ピンチを迎えることなく、今や超安定的な王者として君臨しています。
富岡樹はセンスあふれる、スピードのある良いボクサーです。それは中谷正義戦で明確にしっています。というつもりでいました。まさかここまでとは、予想していませんでした。
1R
吉野が早速プレスをかけ、富岡は足でかわしながらジャブをつく。このジャブがかなり早い上、まっすぐ出る。その上富岡はスタンスが広いので、かなり懐が深く感じます。それでも、どこかで吉野が捕まえるんだろう、そう思っていたところに!富岡の連打からの右??で吉野がスリップ気味に膝をつく!ダウン判定!!
いきなり、波乱の展開になりました!!
終盤も、吉野が劣勢にまわる場面も。もしかして、効いているのか!?
2R
富岡はかなり余裕が出てきました。吉野はプレスを徐々に強める。吉野のパンチで富岡がカットしたようですが、それでも富岡のカウンターのタイミングがあっているのと、富岡の体重ののったスピーディーなジャブに反応しきれていない状態です。難しいラウンド。
3R
より吉野のプレスが強まる。富岡はジャブの他、入ってくるところに右アッパーをあわせたり、とここも難しいラウンド。富岡のステップも良いですが、1Rにダウンを奪っているせいか、打ち合おうとする場面もあり、打ち合うと吉野に分があります。
4R
2ラウンド、3ラウンドはどちらかというと富岡が「動いている」感じでしたが、このラウンドは明確に「動かされる」展開。明確に吉野のラウンドに。富岡としてはもっと距離をとりたいと思うんですが、さばききれていない状態です。
5R
吉野のクリーンヒットが多くなってきます。ここまで、富岡の方がクリーンヒットは多い気がしますが、見た目のダメージは富岡の方が上。
ここで途中採点、三者三様のドロー。
ただ流れは吉野。やはり、この後どこかで吉野が捕まえるんだろう、と思っていました。
6R
そして迎えた6R、少しずつ距離が近くなっていた両者でしたが、ここで富岡が改めて仕切り直し、距離をキープして素早いジャブを突き始めます。吉野は相変わらずジャブに反応し切れず、中に入れない!息を吹き替えした、富岡樹!
7R
変わらずジャブを突き続け、素早くステップを踏んでは体を切り替える富岡。6Rよりは吉野のクリーンヒットが増えてきました。しかし、ここまで効果的だった、吉野の左フックから右ストレートで入るパターンが富岡に見切られ、吉野はワンパターンになってきます。
8R
また勝負の行方がわからなくなってきたこのラウンド、吉野の左が富岡を捉えます。そこから追いかけに追いかけて、素晴らしい連打。富岡はおそらくここまでの吉野のプレッシャーでかなり削られていたのでしょう、徐々に手がでなくなっていきます。そしてついにレフェリーストップ!!
もし判定まで行っていたら、富岡にもチャンスはあったと思います。6、7ラウンドは盛り返していましたから。。。
今回は1Rにダウンを奪って「しまった」ことも、良くなかったのかもしれません。打ち合いに出ては分が悪く、もっとステップとジャブの距離で闘えていれば、ポイントは取れていたので、結果は違っていたかもしれません。
しかし、吉野のプレッシャーは相当なものだったのでしょう、インターバル中を見ても富岡はかなり疲弊しているようにも見えました。
絶対王者、吉野修一郎に食い下がり、名勝負を演じてみせた富岡樹。その才能は本物です。まだ23歳、これからの飛躍に期待です。
ガードの上からでも叩いて、倒す。KO率80%以上を誇る、吉野修一郎らしいボクシングで、素晴らしい試合でした。
前座試合
第1試合 石田智裕(RK蒲田)vs伊藤大賀(白井・具志堅)
伊藤の方がしっかりしている感じ。石田はちょっとガードが低い。ダウンもとり、伊藤が全体的に押している中、最終ラウンドに石田が逆転を狙ってチャージ。気持ちが前にいきすぎ、距離がつまりすぎて逆転は叶わず。伊藤の判定勝利。
第2試合 ルイス・ボルへ(フィリピン)vs山口臣馬(白井・具志堅)
両者ともにスピードが抜群。元世界チャンピオンの山口圭司を父にもつ、山口臣馬、鼻血を流す苦しい展開。ボルへはフィリピン人らしい思い切りの良い攻撃をしてくる、非常にやっかいな相手。しかもサウスポーの利点をよくわかっている、斜に構えてカウンターを狙う。5Rくらいからボルへは疲れが見えるものの、山口は攻めきれず終了。ドロー。
第3試合 ジョマール・パリウェン(フィリピン)vs屋嘉部悠大(白井・具志堅)
ものすごいガタイのパリウェン。屋嘉部の方がボクシングは上手い。しかしパリウェンもパワフルな攻撃で対抗。2R、右と右の相打ちで屋嘉部は効かされ、その後ラッシュをかけられて2RTKO敗け。
第4試合 三瓶数馬(花形)vsそれいけ太一(湘南山神)
ガッチリと基本通りという感じの三瓶、左右のステップがよい太一。1R後半に入ると太一がラッシュして優位に立つ。2Rは三瓶の手数が勝ったか。3R、4Rもハイペースにパンチを交換し合う展開。スタミナでは三瓶の方が上か、乱れない。太一は苦しくなってきたか?5R、三瓶の左ボディーストレートが見事にヒットし、太一はダウン。再会後、ボディーアッパーでダウンを奪い、ストップ。三瓶の5RTKO勝利。
前座に登場した2人のフィリピン人ボクサー、とても好選手でした。フィリピン人ボクサーはパンチもあって、技術もしっかりしてて、ハートも強くて強いですね。やはりマニー・パッキャオの影響はまだまだ続いている、と感じますね。