デオンテイ・ワイルダーとタイソン・フューリーの再戦。
大きな大きな話題を集めた、デオンテイ・ワイルダーとタイソン・フューリーのWBC世界ヘビー級タイトルマッチ。結果としては、7RでフューリーがTKO勝利。
結果を分けたのは何だったのか、の考察です。
↓試合前は、こう思っていました。
ワイルダージャブをつきながら右を狙い、フューリーはヒットアンドアウェイでかきまわす。。。という私の予想は見事ハズレ、フューリーが前に出るという展開でした。
1戦目よりも距離が近くなるのでは、という予想はまさにそうでしたが、ワイルダーがフューリーをKOする、という期待は脆くも崩れ、逆にフューリーがワイルダーを見事にKO。
ここからは試合後の談話等、ニュースも含めて分析していきます。
ワイルダーの敗因
ワイルダーの敗因として、今ニュースになっていることは、入場時の衣装が重すぎて、試合前から既に疲れてしまい、足が動かなかった、ということ。
そんな理由で。。。とも思いますが、鎧のような衣装で、なんだか目も電飾が入っていてチカチカして。。。
確かに私も両者の入場シーンから楽しみにしていましたが、これは本当に残念なニュースですね。それを言い訳にしているようにも見受けられますが、約18kgという衣装を着て、しかもフューリーの5分に渡る入場の間待って、自分が入場する、となるとちょっと疲れてしまうかもしれません。これは目も当てられない失敗。
確かに普段のワイルダーよりも足に力が入っていない感じもしましたし、目を気にしている様子も見受けられました。今後はパフォーマンスに差し障りのない入場をしてほしいものです。
それはそれとして、ワイルダーの敗因を探すよりも、フューリーの勝因を探す方が簡単で、合理的かもしれません。
フューリーの勝因
私が思うフューリーの勝因は、戦略、そしてハートです。
まずは戦略、としてですが、今回の試合、フューリーは試合前から「2RでKO」と豪語してきました。試合前から相手への挑発を怠らないフューリーは普段通り。私としては、策士というイメージがあるからか、この2RKO宣言が「本気」なのか、もしくは思いっきりアウトボックスする「フリ」なのか、非常に判別が難しかったです。
ワイルダー陣営も、どういう戦法でくるか、というのは、このフューリーの発言があった事で予想が難しくなったのではないでしょうか。
そして宣言通り、フューリーはゴング開始とともに、ワイルダーにプレッシャーをかけます。
ここもフューリーの勝因といえるところだと思いますが、ワイルダーに対して臆せずに前にでます。ジャブだけでなく、右も返す。フェイントを使って、プレッシャーを与え続ける。
ワイルダーは下がる時間が多くなってしまい、返すパンチもフューリーのボディーワークで空を切ります。フューリーは、おそらくこの試合、ガードでもフットワークではなくボディーワークでパンチをかわす、と決めていたのだと思います。これも、前回12Rを闘い、ボディーワークでもかわせる、という判断からくるものだったと思うのです。
ワイルダーは42勝中41KOを誇るスーパーハードパンチャー。怖くないわけがありません。前回は自身もダウンを2度喫しています。
それでも、判定までいかせない、ワイルダーをKOするという強い意志が、フューリーにその戦法を選択させ、そのハードパンチに対して前進をやめず、闘い抜いたフューリーは素晴らしかったです。
そして、前回「効かせた」ということで終わっていた自分のパンチを、「倒せる」ところまで強化し(約8kgの増量)、結果的に倒してみせました。
試合前の舌戦にはじまり、増量してつくったプレッシャーをあたえられるフィジカル、長時間を費やした入場。その全てがフューリーにとって良い方向に働きました。
逆にワイルダーは、フューリーの長時間の入場によってより疲れ、自身の増量(こちらも約8kgの増量)により、更に足が動かなくなり、キレも落ちる。大きなフューリーのプレッシャーに下がり、本来のビッグパンチを打ち込めない。
大きなワイルダーよりもより大きな骨格を持つ自分、という利点を最大限に活かし、増量(それも無理な増量ではなく、的確にパワーを出せるような)で、ワイルダーに本来あるべき姿(プレッシャーをかける)をさせずに逆にプレッシャーを与え続けた。ワイルダーはおそらく下がりながら闘う、相手が出てきた所にカウンターをあわせる、ということは得意ではないのでしょう。それも全て見越しての作戦勝ち。
「彼を知り、己を知れば100戦危うからず」の言葉の通り、ワイルダーの弱点をつき、自分の勝っているところを最大限に活かした闘い方を見せたフューリー。人間としては(パフォーマンスが)おもしろいけど試合はつまらない、と(私は)思っていたボクサーでしたが、ここにきて試合も面白くなってしまいました。
この試合で現代最強のヘビー級ボクサーが誕生したといっても過言ではありません。もう一人の対抗王者、アンソニー・ジョシュアは前戦で評判を落としましたが、ここにきてまたも衝撃を与えたフューリー。今後も目が離せません。
そして第3戦へ。。。?
試合後のインタビューでワイルダーは「言い訳はしない。もっと強くなって戻ってくる」と語ったワイルダー。かっこいいな、これからも応援しよう!と思いましたが、前述の「衣装が重かった」のニュース。これを人は「言い訳」と言います。笑
ともあれ、第3戦目があるなら本番に障るような入場は控えてもらって、是非とも万全な状態で臨んでもらいたいです。
それだけではなく、今回ワイルダーはフューリーの右で左耳から出血、この時のパンチで三半規管にかなりのダメージを負ったことも起因して、その後の精彩を欠いてしまったのだと思います。
距離が近くなって、実際はワイルダーの右ストレートが当たる確率も上がったとは思うのですが、当てられなかった、ということもこのダメージがあったからかもしれません。
結果的には圧勝でも、実は勝負は紙一重。
次回は、また違う結果になる可能性だってあります。
だからこそ、ボクシングは面白い。
特にヘビー級は、一発逆転の可能性が他の階級よりも大きい。
その巨人たちの宴を、これからも楽しみに待つとします。
※ワイルダー陣営から、第3戦の申し出があったとのニュースを見ました。試合前から敗者がファイトマネーの取り分を少なくして再戦を申し込める、というオプションがついていたので、何事もなければ夏にも3戦目がありそうです。お腹いっぱいという方もいるみたいですが、私は楽しみです!
最後に
またタオルの投入が早い、という意見や、ワイルダーもそれに乗っかったりもしているみたいです。むしろ遅いくらいだったと私は思います。
レフェリーも常に止めるタイミングをはかっていましたし、ビッグマッチになればなるほどストップのタイミングも、タオル投入のタイミングも難しくなるとは思います。
しかし、セコンドの仕事の最も大切なことは、自分の見ている選手を無事にリングから下ろし、家族の元へ返す事。そして、「試合をストップする唯一の権限を持つ」レフェリーも同様です。
危険なスポーツだからこそ、こういうことで不満がおきないといいな、と思います。