日本ではさして注目度が高くない、デメトリアス・アンドラーデ。この2階級制覇王者は、本国アメリカでもあまり人気が高くありません。
その証拠に、今回、アメリカでの興行ながら、アンドラーデに挑戦するリアム・ウィリアムスの出身地であるイギリス時間にあわせた興行。現地フロリダでは、午後3時ころにメインイベントが開催されるということになりました。
とはいえ、このアンドラーデ、現在WBO世界ミドル級の王者です。
村田諒太(帝拳)の対抗王者でもあり、無敗のビッグネーム、アンドラーデの試合はもっと注目されて然るべき。
今回は、そんな恵まれない王者、デメトリアス・アンドラーデが登場したマッチルーム興行の観戦記です。
↓プレビュー記事
4/17(日本時間4/18)フロリダonDAZN
カルロス・ゴンゴラ(エクアドル)19勝(14KO)無敗
vs
クリストファー・ピアルソン(アメリカ)17勝(12KO)2敗1NC
無敗のプロスペクト、アリ・アフメドフとの激闘を制し、IBO世界スーパーミドル級王座を獲得したカルロス・ゴンゴラ。その勝利により、スーパーミドル級のトッププロスペクトとしての地位を確立したと言っても過言ではありません。
今回の相手は、クリストファー・ピアルソン。地力の差があると思われ、今回もゴンゴラの快勝が期待されます。
初回、まずプレスをかけるのはゴンゴラ。どっしりとした構えから美しい、まっすぐなジャブでプレス。ピアルソンはガードを固めてゴンゴラの出方を伺いますが、ゴンゴラのジャブの貫通力にガードしていてもやや仰け反ってしまいます。
2R、ピアルソン、ゴンゴラのパワーに弱気になっているのか、ほとんど手が出ず。ゴンゴラのフェイントにも過剰な反応を示します。2分頃にゴンゴラの左がヒット、よりディフェンシブになるピアルソン。
3Rも同様。このラウンド終盤、ようやくピアルソンがコンビネーションらしいものを出しました。
4Rも同じく、あまりにもディフェンシブなピアルソン。パンチスタッツが出ますが、大きな差があります。
こうなると変なところに目が行きます。両者のボクシングシューズ、ともにナイキ。
ゴンゴラはマチョマイというシリーズ(内山高志が使用)、ピアルソンはハイパーKO2(今現在、村田諒太が試しているというシューズ)ですね。ピアルソンの使っているものの方が上等です。
もう完全に大勢は決しましたし、このままピアルソンはどうしたいのでしょうか。ピアルソンも速いジャブを持っていますが、ゴンゴラは全く崩れる素振りも見せません。
5R、ピアルソンはガードを固めたままですが、少しゴンゴラの打ち終わりに手を出すようになってきましたかね。しかしこのラウンド中盤から終盤にかけて、ゴンゴラはパンチをまとめてチャージ。
6R、ゴンゴラはゴーサインが出たのか、やや強引に攻めます。このラウンドは近い距離でピアルソンを打ちのめし、決着が近い事を予感させます。ピアルソンは相変わらずガード一辺倒、稀に打ち返すもののゴンゴラを脅かすものではありません。
7R、ジャブをもらい続けたピアルソンの右目は大きく腫れているように見えます。ここまでガードをかためて、ディフェンシブに戦っているにもかかわらず、ゴンゴラのジャブのヒット率は非常に高い。
8R、残り1分のところでゴンゴラのワンツーを打つと見せかけたジャブアッパーが炸裂!ピアルソンは後退して自ら膝をつくダウンで追撃をかわしました。
その後、立ち上がりますがまた膝をつき、そのままテンカウント。
カルロス・ゴンゴラの8RTKO勝利。
大きな力の差がありましたね。このゴンゴラというボクサーは、パンチもありますが何よりも前手の使い方が非常に上手い。特に突き刺すような貫通力のあるジャブは、大きな武器ですね。
ガードを固めてディフェンシブな相手に対し、冷静に攻め続け、ついにはストップ勝ちを収めるというのは並大抵の攻撃力ではありません。
ピアルソンの右目はものすごく腫れていましたね。初回から力の差を痛感したのか、ディフェンシブというよりも最初からサバイバルモードでした。
そんなサバイバルモードのボクサーを仕留めるのはさすが。ゴンゴラの今後に期待です。
WBO世界ミドル級タイトルマッチ
デミトリアス・アンドラーデ(アメリカ)29勝(18KO)無敗
vs
リアム・ウィリアムス(イギリス)23勝(18KO)2敗1分
序盤チャージからの安全運転が信条の(?)アンドラーデ。周りの評価は気にせず、今回もしっかりと防衛ロードを歩むのでしょうか。
対してウィリアムスはアンドラーデとは真逆の粘り強いファイター。アンドラーデを追いまくられるか。
初回、サイドステップが元気なアンドラーデ、追うウィリアムス。まずは予想通りの展開です。開始30秒で右アッパーから左フックをヒット、よろめくウィリアムスを追撃し、ダメージを与えます。
ウィリアムスは早くもピンチながら、懸命に打ち返します。いかんせんハンドスピードと反応に差がありすぎます。アンドラーデは左ストレートと、前手の右アッパーを効果的にヒット。そしてウィリアムスが打ち返してくるとサイドに周り、クリーンヒットを許しません。
2R、アンドラーデは今日非常に調子の良い右アッパーを明らかに狙っています。グイグイと迫るウィリアムス、執拗なプレスで泥試合に勝機を見出したいところです。
残り30秒、アンドラーデのワンツーでウィリアムスがダウン!再開後に攻めるアンドラーデですが、ここは時間切れ。
3R、いきなり出遅れたウィリアムスですが、プレスの強さは衰えません。アンドラーデは素早い動きでウィリアムスの攻撃をかわし、いなし、ジャブを当てます。このポイントで優勢に立ってからが、アンドラーデの真骨頂。
アンドラーデが利き手の左アッパーをヒットさせますが、その後ウィリアムスも右フックを返します。ウィリアムスも侮れません。
4R、しかしこのウィリアムスのプレスは凄いですね。先程のラウンドで良いパンチを当てて非常に元気になったのか、プレスはより強まります。気持ちも身体も強く、アンドラーデがヒットを奪えば必ず打ち返します。肉を切らせて骨を断つ、危険を伴うスタイルではあるものの、これは見る者の感動を呼ぶスタイル。
5R、遠い距離〜中間距離ではアンドラーデのジャブやストレート、ロングフック、そしてアッパーが冴えます。近い距離ではウィリアムスの叩きつけるようなフックで、アンドラーデはバランスを崩してしまうので見栄えが悪い。
アンドラーデとしては自分の距離でボクシングがしたい、ウィリアムスはなるべくくっついて消耗させ、後半勝負でしょう。
6R、アンドラーデはステップワークが上手い。再度へまわりまわり、手数は少ないものの値千金の左アッパーをヒット。このアッパー、非常にワイルドなモーションながらスピードがあり、相手の視界の外へ消えてからなのでウィリアムスにとっては見えないのでしょう。
その見えないパンチを喰っても倒れないウィリアムスのタフネスも素晴らしい。
7R、前に出るウィリアムス、下がりながら回りながら対応するアンドラーデ。この展開は変わらず、ウィリアムスはやや単調か。アンドラーデはジャブ、左ストレート、左右のアッパーを効果的に使い、クリンチワークも駆使しています。
ただ、ウィリアムスの執拗なプレスに対しては闘い易いとは思っていないでしょう。このラウンド終盤もアンドラーデが右アッパーを効かせます。
8R、パンチスタッツが出ますが手数、ヒット数、ヒット率すべてアンドラーデが上回ります。確かにウィリアムスはプレスこそかけますが、近い距離でしかパンチは出ていません。
アンドラーデは軽いパンチながらも何かしらを出し続けてボックス。
9R、ウィリアムスはポイント的にもう後がなくなってきました。大きく踏み込んでのワンツーは時折ヒットを生みます。アンドラーデも後半に入り、やや疲れてきたか、再度ステップが少なくなってきました。
そこへ後半、ウィリアムスの右ストレートがヒット!アンドラーデは効いたかロープへふっ飛ばされます!その後はステップ、そしてクリンチを駆使してしのぎます。
終盤はガードを固めて近い距離でのボディの叩きあい!
10R、危険なラウンドをサバイブしたアンドラーデ、このラウンドはアッパーが冴えます。ふと距離をおいたとき、ウィリアムスの出鼻、至るところで速いアッパーを繰り出し、そのいくつかがウィリアムスにヒット。こういうところでペースを渡さないところはさすがです。
11R、チャンピオンシップラウンド、勝利を革新しているアンドラーデは逃げつつもカウンター一発狙い。序盤のように忙しなくサイドへ動き、翻弄するジャブ、ウィリアムスの入り際にあわせたアッパー、ストレート。
近づけばクリンチ、ウィリアムスの得意な距離を潰しにかかります。
ラストラウンドも懸命にプレスをかけ、何とか突破口を見出そうとするウィリアムスと、逃げ回りつつも時折鋭いアッパーを放つアンドラーデ。
やや疲れも見えるアンドラーデですが、このラウンドにきてアッパーのキレは凄まじいですね。
ウィリアムスもがんばりますが、ついにはアンドラーデを捕まえる事ができずにゴング。
規定の12Rを終えて、判定はデメトリアス・アンドラーデ。
アンドラーデにとってもかなりのタフファイトでしたね。判定は5〜9ポイント、中差〜大差がつきましたが、ポイント差以上に苦戦した内容だったと思います。
どちらかというとこのプレッシャーファイターは得意に見えるアンドラーデですが、今回苦戦したのはウィリアムスのしつこさが異常だったからかもしれません。ウィリアムスのベルトへの執念というものが、好勝負を演じさせた気がしますね。
さて、デメトリアス・アンドラーデ。
スピード、テクニックにも秀でた強い王者ですが、日本の誇る村田亮太と戦えば、どうなるでしょうか。
今日の試合を見た限りでいうと、村田のプレスもアンドラーデに通用する可能性も大いにあるような気がします。
いつもじっくりとプレスをかける村田ですが、元々身体能力も高く、走るのもむちゃくちゃ速いと聞いた事があります。
アンドラーデのサイドステップへの対策として、その追い足を鍛え、アンドラーデを追いに追って、ロープにつまらせたところに右を叩きつければ、決して打たれ強いとは言えないアンドラーデからダウンを奪う事も可能でしょう。
勿論、ブラント第一戦のように、何もできずに逃げ切られる可能性の方が大きいのも確かですが、一度そのような負けを学んでいる村田からすると、もしかするとアンドラーデ対策というのはやり易いのではないか、と期待をしてしまいます。
統一志向のアンドラーデからは、村田の名前は出なかったようです。
ただ、村田はもしGGGとの試合が組まれなかったら、このアンドラーデも候補の一人となるかもしれません。もしくは、村田がGGGに勝つようなことがあれば、アンドラーデ側からオファーが届くかもしれません。
何にせよ、アンドラーデは絶対王者ではありません。アンドラーデのボクシングは、非常に大きな集中力を必要とするがゆえに、一発逆転される可能性も捨てきれません。
村田諒太が王者でいる以上、夢が膨らむこのミドル級。
今後の王者たちの動向も楽しみです。
ところで、村田の次戦はまだでしょうか。。。