日本時間11/20、アメリカでは11/19の金曜日。
平日の夜に設定されたデメトリアス・アンドラーデの防衛戦。
このアンドラーデの防衛戦はこれまでも米国のプライムタイムではない時間に始まったり、平日の夜という開催が多い気がします。
恵まれない王者、アンドラーデ。そのスタイルはあまり人気があるとは言えないようですね。
序盤のラウンドは非常に良い動きをして、ダウンを奪う事も度々ありますが、中盤から後半にかけて「失速」というよりも安全圏で戦い、あまりエキサイティングにならない王者。
そのアンダーカードに、超攻撃的王者であるフリオ・セサール・マルティネスと、圧倒的なフィジカルとスタミナを持つ王者、ムロジョン・アフマダリエフを組み込むというのはなかなかバランス感覚のある興行です。
↓プレビュー記事
さて、今回のブログでは、11/19(日本時間11/20)に行われ、DAZNで放映されたアンドラーデvsクイッグリー、マルティネスvsアローヨ、アフマダリエフvsベラスケスの観戦記です。
11/19(日本時間11/20)アメリカ
WBAスーパー・IBF世界スーパーバンタム級タイトルマッチ
ムロジョン・アフマダリエフ(ウズベキスタン)9勝(7KO)無敗
vs
ホセ・ベラスケス(チリ)29勝(19KO)6敗2分
こっちがセミセミだったのか。ポスターではセミっぽい位置にありましたが。ロニー・リオスじゃなくなったから??
王者、アフマダリエフと、代役挑戦者、ホセ・ベラスケス。アフマダリエフにとってはイージーな試合のはずです。対してベラスケスは、短い準備期間の中で意地を見せられるか。
初回、ゴングと同時に前に出るアフマダリエフ。開始20秒にはロープに詰まってしまうベラスケス。アフマダリエフはジャブからのスムーズなコンビネーションでベラスケスを追い詰め、ベラスケスはなかなかパンチを返すことすらできません。
前半耐えて後半勝負、これは岩佐亮佑(セレス)も選択した戦法ではあるものの、序盤のアフマダリエフのパワーは半端ない。このラウンド後半、徐々にパンチを返していくベラスケスですが、そのパンチは単発、なかなかアフマダリエフには届きません。ただ、気は強そうです。
2R、アフマダリエフはジャブから左ストレート、ボディストレートで攻めます。ベラスケスは右のオーバーハンド狙い、単発ですが大きく振る分、威力は十分。ベラスケスはジリジリとプレスをかけ、今度はアフマダリエフが引くという展開。ただ、手数、クリーンヒットともにアフマダリエフ。
すでにベラスケスはタフさを発揮していますね。
3R、ガッチリとガードを固めるベラスケスにアフマダリエフは動いてジャブを打つという戦法に切り替え。そのアフマダリエフをしつこく追うベラスケス。パンチの届く距離では自信を持って振っていくベラスケスには、怖さがありますね。
アフマダリエフのパンチはどれも脅威ですが、あの押し込むような左ストレートは抜群の威力。
4R、先に攻めたアフマダリエフですが、ベラスケスのタフさ、しつこさに辟易したのか、ステップをつかって近い距離での戦闘を回避。このラウンドの中盤以降はベラスケスが攻勢に出て、アフマダリエフはサイドステップをつかってディフェンス。このステップワークもやっぱりうまい。
5R、ここまでのポイントは明らかにアフマダリエフでしょう。しかしこのラウンドもひきつづき、ベラスケスはプレスをかけ、アフマダリエフがかわしていくてんかい。おどろくほど心身ともにタフなベラスケス。
右の一発にかけるその姿は、攻撃パターンは少ないながら愚直、応援したくなるガッツを持っています。
6R、展開は変わらず、ガードを固めて前進を続けるベラスケス。アフマダリエフはやはり巧く、いなしながらポジションを変えてコンビネーション。
アフマダリエフのあのパンチをこれだけ受けながらも、まだそのパンチには力のあるベラスケス。
7R、序盤にベラスケスは右フックをヒット、攻勢に出ます。ブロッキングで固まる時間が長いアフマダリエフ。中盤以降にストレート主体のコンビネーションで反撃に出ますが、中間距離ではベラスケスの鋭い右オーバーハンドが飛んできます。
このラウンド、かなりベラスケスは頑張っています。
8R、ストレートの距離であれば右オーバーハンドのみに気をつけておけばいいアフマダリエフは、距離をとって対応。コンビネーションは冴えています。ベラスケスは何とか踏み込もうとガードを固めて隙を伺います。やはり様々な面でアフマダリエフが勝っているものの、あの右オーバーハンドがある限りベラスケスにもチャンスが見えます。
9R、後がなくなったベラスケスは、よりプレスを強めます。あの岩佐を圧で潰したアフマダリエフのパンチに怯むことなく踏み込み、単発ながら力強いパンチを振るっていきます。
アフマダリエフは強さだけでなく巧さも持ち合わせており、バックステップ、サイドステップを駆使してカウンターからのコンビネーション。
10Rも展開は変わりません。ベラスケスとしては展開を変えたいところですが、アフマダリエフを捕まえきれませんね。アフマダリエフがこんなにも下がるシーンは見たことがありません。ダニエル・ローマン戦では下がってはいましたが。
ベラスケスは近づいてフック、アッパーを強く打ちます。的中率は良いとは言えませんし、手数もアフマダリエフに比べると少ないながらも、とにかくタフさとスタミナがすごい。
11R、12Rも展開は変わらず、結局のところ何ラウンドを切り取ってみてもほぼ展開は変わらず。タフなベラスケスをアフマダリエフは倒せず。このベラスケスのタフさは異常と言って良いと思います。
試合終了後、バックフリップ→腕立て伏せ→バックフリップを披露したベラスケス。この大激戦のあともまだまだ元気です。戦績を見た限り、もう6敗もしているので、怖いボクサーには思えませんでしたが、6敗はキャリア序盤に喫したもので、アフマダリエフ戦の前まで21連勝だったようですね。
この一戦で大きく株を上げたホセ・ベラスケス。ここ最近は、無敗のプロスペクトたちに次々と初黒星をつけていたようです。スーパーバンタム級に、また楽しみなボクサーが現れましたね。
さて、アフマダリエフ。パワーだけでなく、しっかりとした技術も披露したアフマダリエフは、やはり隙がないボクサーです。
今後は今回流れてしまったロニー・リオス戦がピックアップされるということで、なかなか指名試合の呪縛から抜け出す事ができませんね。
ともあれ、4団体統一を目指し、2階級の4団体のベルトを賭けて、井上尚弥と戦いたいと語ったというアフマダリエフ、今後のキャリアも楽しみです。
WBC世界フライ級タイトルマッチ
フリオ・セサール・マルティネス(メキシコ)18勝(14KO)1敗1NC
vs
マックウィリアムス・アローヨ(プエルトリコ)21勝(16KO)4敗
超攻撃的王者、フリオ・セサール・マルティネス。対するは、前戦でとうとう暫定王者となったマックウィリアムス・アローヨ。
プロ叩き上げのパワーか、アマ仕込みのテクニックか、とも言える一戦。
厳しいでしょうが、アローヨを応援です。
初回、ジャブの差し合いからスタート。この中間距離での攻防については、アマ経験豊富なアローヨに分がありそうなものですが、マルティネスのジャブも鋭いです。というかジャブすらやはりパワーを感じます。マルティネスは角度を変えて、左フックも多用しています。これはアローヨにとって怖い。
サークリングしつつも攻撃のチャンスを狙っていたアローヨは、強く打ち込んだ右オーバーハンドのあと、左フック!この左フックがマルティネエスの顎にヒット、これが効いたとみるや荒々しくパンチを振るい、詰め切ってダウンを先取!!初回早々に王者、マルティネスがダウン、これはまさかの展開!
立ち上がったマルティネスは、さほどダメージは感じないものの、アローヨはここからアグレッシブに攻めます。強い右でマルティネスを追っていきますが、まだ力を残しているマルティネスは左フックを強く振って反撃!!ややぐらついたアローヨ!やはりマルティネスは危険なボクサーです。
そしてラウンド終了直前、今度はマルティネスの左フックがカウンターとなってアローヨにヒット!!膝を折ってマルティネスにもたれかかったアローヨは、そのままダウン!!
ともにダウンを取り合う、とんでもないファーストラウンド!
2R開始、アローヨはややダメージを抱えているように見えます。しかしアローヨにとってもここは勝負どころ、アグレッシブに攻めていきます。そしてマルティネスも速く、強い左フックを振り回し、この試合の早期決着を予感させます。
強引に振るマルティネス、コンパクトにコンビネーションを打つアローヨ!
左フックの相打ちは、パワーに勝るマルティネスが優位か。幾度めかの左フックの相打ちで、アローヨは効いてしまったか、またマルティネスにもたれかかります。クリンチに行ったと思うのですが、これを振り解いたマルティネスはアローヨをリングになげうち、これがダウン判定。
パンチで効かされた、という判定になってしまいましたが、これは不運なダウン。
ただ、やはりダメージはあるようですね。立ち上がったアローヨ、試合を決めにいくマルティネス。マルティネスに対して、ジャブで突き放しにかかるアローヨは、右ガードをしっかりして、左フックを警戒しています。
あの外側から回ってくる大きな左フックは致命傷になりかねない、この対応力はさすがです。
ラウンド終了、顔面血だらけのアローヨ右目瞼上をカットしているようです。1分頃のところでのバッティングで切ったようですね。
インターバル中は不穏な雰囲気。アローヨ、ともすれば棄権か?
結局3Rのゴングが鳴ってもアローヨはリングにでてきません。ドクターのチェックのあと、おそらく傷が深すぎるということで試合はストップ。
公式の発表はノー・デシジョン。つまりは無効試合です。
好試合になりそうだった分、非常に残念ですね。なりそうだったというか、2Rだけでも十分好試合でした。続けていればアローヨに分が悪そうだった、ということだけは言えますが、とはいえマルティネスも完璧なボクサーではなく、逆転の芽も充分にありました。
マルティネスもアローヨも、良いボクサーですね。できれば再戦を見たいのですが、やはりパワー差は顕著、マルティネスにとってはやる意味はあまりないかもしれません。
マルティネスはかねてから、このアローヨ戦を最後に転級の意向を示していました。
今後、どうするのでしょうか。WBO王者、中谷潤人(M.T)との統一戦を期待したいところですが。。。
WBO世界ミドル級タイトルマッチ
デメトリアス・アンドラーデ(アメリカ)30勝(18KO)無敗
vs
ジェイソン・クイッグリー(アイルランド)19勝(14KO)1敗
ミドル級王者の中で、最もエキサイティングではない王者、と言って差し支えないであろうデメトリアス・アンドラーデ。
このボクサーは非常にやりづらく、皆がやりたくないミドル級の筆頭でしょう。
対してジェイソン・クイッグリーは、素晴らしい戦績を持っているもののちょっとアップセットは期待できそうにないボクサー。あとはアンドラーデが今回は倒し切るのか、いつものようにフルラウンドを使ってボクシングをする、もしくはせざるを得ないのか、そこが注目。
1R、非常に慎重な立ち上がり。アンドラーデはパンチを出さず、前足(右足)で距離を測り、時折ジャブやボディストレート。クイッグリーはややアンドラーデのプレスに押されます。
そしてヒリヒリした雰囲気の中から、アンドラーデが前手のフック、左のオーバーハンドを起点にダウンを演出。再開後、攻めていきますがここは時間切れ。
やっぱり序盤に強いアンドラーデは健在。
あとは数ラウンドののちに仕留め切れなければ、安全運転に切り替わることが予想されます。
今回こそ、倒しきってもらいたいものです。
2R、アンドラーデはプレスから左のオーバーハンドで攻め込みます。クイッグリーはグローブをリングにつきますが、これはレフェリーが見過ごします。残念、アンドラーデ。
アンドラーデは完全にこの左オーバーハンド狙いですが、クイッグリーは対応できていません。しかしこのラウンド中盤、ワンツーで攻め込んで意地を見せたクイッグリー。そしてクイッグリーはリラックスしてきたのか、足が動き始めました。幅広くスタンスをとり、左手をやや前に突き出したスタイルでアンドラーデと距離をとり、良い感じになってきた気がします。
と思ったところで、すぐにその距離に対応したアンドラーデはここまでも狙っていた左オーバーハンドをヒット!腰から砕け落ちたクイッグリー!
立ち上がったクイッグリーに対してアンドラーデはラッシュ、コーナーに詰められたところで力なく倒れたクイッグリーをみて、レフェリーはストップ!
デメトリアス・アンドラーデ、2RTKO勝利!!
いや〜、今回は詰めきりましたね、アンドラーデ。お見事でした。クイッグリーはちょっと脆さもあったのかもしれませんが、2Rにダウンを奪ったあの左オーバーハンドは素晴らしいタイミングとスピードでした。
もともとアンドラーデは、パワーレスでも何でもなく、倒せるボクサー。戦法が消極的な時があったり、ポイントで勝っていれば無理をしない、というのがKO率がさほど伸びない理由です。こういう試合を次々と見せてくれれば、その強さを存分にアピールすることができ、目指すチャーロ戦も、GGG戦も、はたまた本人が記者会見に乱入してまで物申したかったカネロ戦も、話が少しは進むと思うのですが。
どうでもいいですが勝利者インタビューめちゃくちゃハイテンション笑。まあ、会心の勝利ですもんね。
デメトリアス・アンドラーデに、ビッグマッチは訪れるのか。これもまた、興味が尽きませんね。
ということで、DAZNボクシング、非常に堪能できました。まだ見られていない皆さんは、是非。今後は、テオフィモ・ロペス、デビン・ヘイニー、コナー・ベン等々の注目ボクサーが登場予定です。
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