1月、井上拓真vs栗原慶太。
5月、清水聡vs森武蔵、中嶋一輝vs千葉開。
7月、中垣龍汰朗vs花田歩夢、桑原拓vsユーリ阿久井政悟。
10月、平岡アンディvs佐々木尽。
11月、井上拓真vs和氣慎吾。
上記全ては、大橋ジムの興行、「フェニックスバトル」で行われた(る)ものです。今年に入ってからも、とんでもないマッチメイクを連発する大橋ジムのフェニックスバトル。
この大橋ジムのトップボクサーたちの他にも、中堅ボクサーたちもそれぞれに強豪相手の戦いに挑んでおり、とにかくこのハードマッチメイク路線はすごいのひとこと(語彙力(泣))。
この素晴らしいマッチメイクの背景にある、ヨネクラスピリッツ。
今日のブログでは、先日の日本フライ級タイトルマッチをはじめとして、素晴らしい興行を届けてくれているフェニックスバトル、その原動力についてです。
↑先日のフェニックスバトル。黒いリングはかっこよかったし、一試合ずつの煽りVも良かった。写真は始まる前ですが、一試合目からしっかりとお客さんが入っていました。特にホールを満員にするような興行は、他の格闘技を参考にしつつ、盛り上げられればより良いですよね。
大橋ジム
大橋ジムは、横浜市にあるプロボクシングジムで、設立は1994年。
元世界ストロー級(現在のミニマム級)王者である大橋秀行氏が興したボクシングジムで、2010年から現在の横浜市神奈川区にて営業しています。
ジム設立10年の節目である2004年に、川嶋勝重が番狂わせの勝利を演じて世界王者となったことを皮切りに、アマキャリアを経て入会した八重樫東が3階級制覇、モンスター井上尚弥(3階級制覇)、その弟井上拓真(暫定)という世界王者を輩出しています。
さて、そんな大橋秀行氏自身は、現役時代、ヨネクラジムに所属し、1985年にデビュー、1990年にWBC王座を、1992年にWBA王座を獲得、翌1993年に引退。
150年に一人の天才という触れ込みで、最軽量級に似合わぬ強打とカウンターを武器に、名王者、張正九(韓国)、オールタイムグレートであるリカルド・ロペスと渡りあい、かつて80年代後半から90年にかけて積み重ねてしまった日本人世界戦21連敗という不名誉な記録にストップをかけた、記録にも記憶にも残る名ボクサー。
ヨネクラジム
そんな大橋(以下敬称略)の出身は、ヨネクラジム。
戦後活躍した名ボクサーで、パスカル・ペレス(アルゼンチン)、ジョー・べセラ(メキシコ)の持つ世界タイトルへ挑戦した経歴を持つ米倉健司が興したボクシングジムです。
ヨネクラジムは、3度にわたって世界タイトルを獲得した2階級制覇王者、柴田国明をはじめ、「幻の右」と持ち、今も大人気のガッツ石松、中島成雄、大橋秀行とそして、「アンタッチャブル」川島敦志という個性的な世界王者たちを輩出しています。勿論世界王者だけでなく、日本、東洋太平洋王者の育成をあげれば枚挙に暇がありません。
そのヨネクラジムのスピリッツ、いわゆるヨネクライズムというものの一つは、「敗北を恐れない」ということ。上にあげた世界王者だけでなく、ヨネクラジムに所属し、結果を残したボクサーたちは、いくつもの敗北を経験し、それを糧としながら偉大なボクサーへと成っていきました。
事実、柴田、石松、中島、大橋、川島、世界王者となったボクサーですら、無敗のまま世界王者となったボクサーはいません。
上記5名の世界王者となったボクサーたちは、キャリアの過程でいくつかの敗北を喫しながらも諦めず、そこから這い上がり、見事栄光を掴み取った面々でもあります。運、実力だけでなく、諦めずに続ける力を持った、心の強いボクサーたちでした。
ビセンテ・サルバディル、ロベルト・デュラン、ケン・ブキャナン、センサク・ムアンスリン、イラリオ・サパタ、張正九、リカルド・ロペス。ざっと思いつくだけでも数々の名王者たちと死闘を繰り広げ、敗北を経験しつつも戦い続けたヨネクラボクサーたち。
そんなヨネクラジム、米倉健治会長の指導を受けたボクサーたちは、引退後、大橋をはじめボクシング界にヨネクライズムを伝え続けています。そして、最後に薫陶を受けたのは、現在大橋ジムに所属する溜田剛士。
ヨネクライズムはオオハシイズムへ
以下は過去の大橋会長へのインタビューへの抜粋(2018)
このインタビューはこちらです。
2018年くらいのインタビューのようですね。
敗北を恐れず、強い相手と戦う。それはより大きな成長をもたらすため。そんなヨネクライズムを継承している大橋ジムの、素晴らしいマッチメイクは今後も続いていく事でしょう。
そして過去、東日本ボクシング協会会長、日本プロボクシング協会会長を務め、ボクシング界に貢献してきた雄は、今回のフェニックスバトルから「ひかりTV」を通じて全試合生中継という新しいスタイルを確立しました。
従来のヨネクライズムに加え、オオハシイズムといっても良い革新的な試み。世間的にメジャーではない「ボクサー」を、第1試合、4回戦からしっかりと煽りVをつくり、フルラウンド、生中継で放映する。
これまでもボクシング界を改革してきた大橋は、色々な業界を巻き込んで、またひとつ、新しくボクシングの可能性を開いてくれたのかもしれません。つまり、井上尚弥しか知らない、といういわゆる「ボクシングそのもののファンではない層」にも届いたかもしれない前回のフェニックスバトル。
大橋ジムにはキッズボクサーたちも多いと聞きます。新たな挑戦をしつつ、ファンだけでなくもっとライトな層、多くの人にボクシングを届けてくれる、それがおそらくオオハシイズム。
今後のフェニックスバトルの攻めに攻めたマッチメイクは勿論のこと、様々なメディアでボクシング観戦ができるようになり、もっともっと沢山の人にボクシングの素晴らしさが伝わる、そんなオオハシイズムの今後を期待せずにはいられません。