8/8、東京オリンピックが閉幕。
賛否両論ありながらも開催されたオリンピックでしたが、開催に至る経緯や開催中の政府のコロナ対策は別問題として、本当に楽しませてもらいました。
開催期間中、毎日のようにアマチュアボクシング、それも世界最高峰のものが行われているというのは非常に幸せな時間でした。
オリンピックのボクシングをここまで視聴できたことは、過去、記憶にありません。
日本人ボクサーが出場した試合や、話題のボクサーが出場した試合をかいつまで視聴してきましたが、折角の機会なので決勝ぐらいは全て見ておこう、と思いアーカイブ視聴。(本当は準決勝も見たいのですが、なかなか時間が作れません。)
今回のブログでは、5階級にわたって行われた女子ボクシング、その決勝の観戦記です。
女子フライ級決勝
ブセ・カキログル(トルコ)vsストイカ・クラステバ(ブルガリア)
35歳、ブルガリアのクラステバは準決勝で並木に勝利したボクサー。この試合でも非常に距離感が良く、フェイント→相手が出て来ればバックステップ→自身のジャブをヒットする、というパターンでしっかりとポイントを獲っていきます。
しっかりとプレスをかけていき、相手が出てきたところに放つ左オーバーハンドのカウンターも有効、それを自ら攻める時にも使っています。
プレスをかけるクラステバに対して、サークリングというよりも動かされているカキログルにポイントは流れにくい。カキログルが無理して攻めればクラステバのカウンターの絶好の的にもなり得ます。
パンチを打つ時に上体を思い切って前に倒したり、躱す時は思い切って後ろに倒したり、クラステバのこの大きな動きは相手にとっては距離感を狂わせられるものなのかもしれません。
最終回はL字に構え、鋭いジャブを飛ばしては強い左オーバーハンドを見舞うクラステバ、本当にこのちょっとの距離の使い方が非常に巧いボクサーですね。
ジャッジ4者がフルマーク、残りの1者が29−28という5−0の判定でクラステバが勝利。
ストライカ・クラステバが東京オリンピック金メダリストとなりました。
女子フェザー級決勝
ネスティ・ペテシオ(フィリピン)vs入江聖奈(日本)
日本人女子ボクシング初のメダルは、金メダル。金メダル獲得後、メディアにも引っ張りだこの入江聖奈、オリンピック開始前は一般には注目されていなかったようですね。
ただ、ボクシングファンからすると大きなサプライズではなかったと思います。入江は前々から国際大会で活躍していましたし、1回戦の戦いを見て最高にジャブが切れていたのと、ライバル、台湾のリンがトーナメント初戦で姿を消してしまったこと。
運も味方につけた、と言える入江、見事な、素晴らしい金メダルでした。
ボクシング、入江が日本女子初の金|東京2020オリンピック・パラリンピック|ニュースサイト:時事ドットコムより
女子ライト級決勝
ケリー・ハリントン(アイルランド)vsベアトリス・フェレイラ(ブラジル)
ハリントンは2018年、2016年の世界選手権を制したトップボクサー、対してフェレイラは2019年の世界選手権で金メダルをとったトップボクサー。
世界選手権の覇者同士の一戦は、まさにこの階級の頂上決戦。
ともにパンチが当たるか当たらないかくらいの距離でリズムを刻みます。ややプレスをかけているのはフェレイラ。身長、リーチに勝るハリントンはサークリングしながらカウンター狙い。時間が進むにつれて、その関係性は顕著になっていきます。
互角の展開、初回はまずフェレイラの3−2。
スイッチヒッターのハリントンは中間距離でジャブやストレートを飛ばし、フェレイラは低く入って力強い左右のフックを振るいます。体格差からか、やはりハリントンのパンチの届く距離でフェレイラのパンチは届かず、パンチの的確性でハリントンが上回ったように見えました。しかし、後半はフェレイラのプレスと力強さに、やや押されているように見えたハリントン。ポイントは5−0でハリントンに流れます。
最終ラウンド、よりプレスを強めるフェレイラ。迎え撃つハリントン、2人ともこのオリンピックにかける意気込みを感じる、好ファイトです。打撃戦、ともにクリーンヒットを奪い合う、死力を尽くした3Rを終え、判定は、ハリントン!
ケリー・ハリントン、5−0の判定で東京オリンピック優勝、見事金メダルを獲得しました!
結局、最終ラウンドもジャッジは5−0でハリントンを支持していたようです。フェレイラのパワーパンチは見栄えこそよかったものの、ハリントンの方が的確性に優れていましたね。ジャッジの方々は良く見ている。。。
女子ウェルター級決勝
ブセナズ・スルメネリ(トルコ)vsグ・ホン【Gu Hong/谷紅】(中国)
過去、欧州選手権でメダルを獲得、2019年の世界選手権で金メダルに輝いているスルメネリ。優勝候補の最右翼だったのかもしれません。まだ23歳と若いボクサーながら、かなりの実績を残しています。
対して中国の谷はアジア選手権で2015年、2017年、2019年に金メダル。世界選手権でも2016年、2018年に銀メダルを獲得している、トップボクサー。
このウェルター級も、強いボクサーが順当に勝ち上がった、という感じがしますね。
女子もウェルター級になるとかなり迫力がありますね。ガードを固めてガンガンと前進するスルメネリ、ジャブを打ちながらカウンターを狙う谷。初回、中盤以降のスルメネリの距離の詰めかたがエグい。
初回は谷が4−1でしたが、2R始まって早々に、谷がホールディングで減点。一気にアドバンテージを無くした谷ですが、中間距離で本当に良く手が出ます。
しかしスルメネリはそれに臆することなく前進、相打ち覚悟で近い距離で左右のフックを放っていきます。終盤にスルメネリは値千金のスタンディングダウンを奪い、その後もクリーンヒットを重ねてこのラウンドを5−0で獲得。前半〜中盤にかけては、谷だったと思いますが、やはりダウンの与える印象はでかい気がしますね。
最終ラウンド、スルメネリのプレスに下がる谷、ロープ際では上体が立ってしまい、そこにパンチをもらうと見栄えが悪いです。
この最終回は、3者がスルメネリを支持し、最終的に3−0の判定でスルメネリ!
かなり僅差の判定でしたが、減点がなくても3−2の判定でスルメネリでしたね。
ブセナズ・スルメネリが金メダルを獲得!!
女子ミドル級決勝
ローレン・プライス(イギリス)vsリ・チェン【Li Qian】(中国)
女子のミドル級、こんなに速いのか。。。
中国の李は非常に大きいですが、ハンドスピードは速い。ノーガードで相手を誘い、カウンターを狙っています。自分の体格の良さを完全に熟知しての戦法ですね。
プライスは李に比べて小さいながら、出入りのスピードが素晴らしい。コンビネーションも速く、このラウンドの序盤に李に次々とパンチをヒット、初回はプライスが5−0で獲得。
2R、前ラウンドを取られたことでややアグレッシブになる李。しかしプライスもフットワークを駆使、ともに警戒心も強くクリーンヒットはなかなか奪えません。相手のカウンタースキルを考えると、お互いがなかなか手が出ませんね。
ほぼ互角と見えるラウンドですが、このラウンドは4−1でプライスを支持。
3R、李は行くしかありません。大きい構えからプレスをかけ攻め込みます。しかしプライスはサイドへ回り込み、キアンは思うように攻め込むことができず、強引に攻めればプライスのカウンターが待っています。
後半、プライスの左カウンターが李の入り際にヒット、ラウンド終了のゴングを聴くと、勝利を確信して両手をあげたプライス。
判定は、ローレン・プライス!5−0、やや単発気味の李に対して、プライスはコンビネーションで攻め、3発目、4発目でヒットを奪っていました。
見事な勝利、ローレン・プライスが金メダルを獲得!
改めて、女子ボクシングもレベルが高い。重量級においても、ここまでスピード感溢れるボクシングなのか、と舌を巻くほどでした。
正直、普段プロの女子ボクシングを見る機会はあまりない私ですが、以前のアジア・オセアニア大会からアマチュアの女子ボクシングは注目していました。
それには、今回のメダリストともなった入江、並木両名のボクシングを見た事が非常に大きいです。
今回、入江が金メダル、並木が銅メダルと結果を残していますが、私がより注目していたのは並木のほう。あの小さな身体で、豊富な運動量と鋭いステップインを見た時は、パッキャオのようだ、と思ったものです。
入江は現在日体大の3年生、あと1年と少しで引退の意向。(2022年10月の全日本選手権が最後、と名言しています)どうか悔いのない競技生活を、と思いますが、いちファンとしては、もっともっと女子ボクシングを盛り上げてほしい、との思いもあります。
そして並木、まだまだこれからのボクサーです。今回、試合に勝利しても笑顔はあまり見られませんでした。しかし、表彰式では晴れ晴れとした笑顔で表彰台に登っており、本当に安心しました。
これまで様々なプレッシャーと闘い、今回の五輪は肉体的にも精神的にも非常に疲れたことでしょう。しっかりと休んで、またの活躍を心から期待しています。